奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正、244様、kuzuchi様ありがとうございました!


第九十五話 デモの影響

「・・・・・・いやいやいやいや来週ってそんな」

 

いきなり来週から大規模なキャンプが始まる、と宣言された会議室はざわめきに満たされていた。

医師のブートキャンプが始まる前は暇が出来るから、ダンジョン攻略を進めたり新しいマジックアイテムの開発に充てたいと真一さん自身が言っていたのだ。このいきなりの方針転換に混乱が起こるのは必然だろう。

 

「すまん、これについては本当に先ほど連絡が来たんだ。現在、下原さんが近隣の宿泊施設に連絡を入れて急ピッチで受け入れ態勢を整えている」

「ゴメンなさい。他の国、本当に焦っテマス。人員が決マッて、すぐにと言わレマシタ」

 

申し訳なさそうなケイティの顔に、相当せっつかれているのだと理解する。

 

「・・・・・・で、それを受け入れた理由があるんだろ?」

「・・・う、む。正直、本人達は善意の行動だから文句も言えないんだ」

 

そのやり取りを黙って見ていた恭二は、そう言って真一さんを見る。まぁ、普通は断るよな、こんな急な話。明らかに何かがあったのだ。

眉を顰める俺達に、ケイティは場所を移動し、会議室に備え付けられたPCをつけてプロジェクターで画面を出す。

 

「これハ、各国の抗議デモの主催者の一覧デス」

「抗議デモ?」

「ほら、一花ちゃんの件で変な文書が来ただろ。あれを公開したんだが、その件が結構大きくなってな」

「恭二、こっちを見るな。ちゃんと皆に確認して動画にした。お前にも相談したろうが」

 

物凄い目でこちらを睨む恭二にそう反論すると目を逸らされた。生返事っぽいからあんまり理解してなかったんだろうな。俺もここまでの話になるとは思わなかったけど。

 

「・・・・・・なんか見知った名前が並んでるんだけど」

「見知った・・・・・・オリバーとファビアンの名前が見えるんですが」

 

俺と恭二が遊んでいる間に文書を読み進めていた一花と御神苗さんが、少し声を震わせてそう言った。

ケイティが見やすいように画面を操作すると、イギリスのデモの代表はオリバーさん、フランスではファビアンさんが代表をしているらしい。

どちらもその国の冒険者のリーダー的な存在だ。

 

「彼らは勿論、非常に適切で平和なデモを行ってくれた。貶められた彼らの恩師の名誉を回復する為に、というお題目で。各国のマスコミは挙って彼らのデモを称賛している。冒険者協会としては、この辺りは全く問題ない」

「問題あるノハ、彼ラがデモを行ッタという事に反応した各国ノ治安維持組織デス。平和的なデモは問題ナイ。けど、コレが暴動に発展シタら?トップレベル冒険者一人の戦力はMBT並とされてマス。しかモ人間サイズの。軍が出ナイト彼らヲ止められナイ。その事を彼らハ、とても不安に思ッてマス」

 

一花の事を、彼らは本当に慕ってたんだなぁ・・・たまに御神苗さんとかが怯えた目で見てる時があるから、とんだスパルタ教師だと思ってたんだが。

あと、よく意味が分からなかったのでMBTって何か一花に訪ねたら、戦車の事らしい。

ほー。俺達、戦車と同レベルって見られてるのか。流石に戦車砲はバリアじゃ防げないと思うんだがな。

 

「あー・・・ええっと。つまり、捕まえるのが怖いから対抗手段を早くくれって言われてるんだよな?」

「その通りだ。実際佐伯の件もあったし近々やらなければいけない事が前倒しになった形だな。医者のブートキャンプを後に回して2、3月に始める予定だったんだが」

「自分の国の冒険者位信じ・・・られないか。最初にやらかしたのは日本人だけど、そこは良いのか?」

「そこは・・・・・・一郎の名声による所が大きい。あと、何だかんだ世界冒険者協会の女性支持はかなりのモノだぞ」

 

そんな名声本当にいらない。

だが、周囲はその言葉で納得したようで意見はそれ以降出なかった。それで納得されるのも割とこう、もにょるんだよな。動画撮ってコスプレしてるだけなのに。

自分の話をされてる筈なんだが、全然別の人間について語っているように感じるというか。うーむ。

 

「まぁ、事の発端はともかく、元々やる予定の物を前倒しにするだけだからな。それに警察とは出来るだけ良好な関係で居たいしな」

「お上に逆らったらおまんま食い上げちゃうからね」

 

社長の言葉に一花が戯けて答えると、騒然としていた会議室に和やかさが戻ってくる。

 

「さて、悪い話ばかりじゃない。前々から協議されていた川向こうの小学校だが、買い上げることが出来た」

「あ、町議会がめちゃめちゃ吹っ掛けてた所だ。どうなったの?」

「東京都と政府を動かした。代わりの代替地は中学校隣を整地して建て替える予定だ」

「親方日の丸万歳!」

「小学校の跡地には大規模な病院を建てる予定だ。こっちは川口医師と話して決めた。前々から、魔法を医療に役立てる場が欲しいとは声も上がっていたし・・・・・・あと、去年の黒字が大き過ぎて不味い」

 

ボソリと本音が聞こえてきた。冒険者教育もそうだが、臨時冒険者の受講料も何割かはそのダンジョンの持ち主に入ってくる上、迷宮のドロップ品や魔石は現在奥多摩から出ているものが殆どだからな。

しかも、昨年は魔力発電やらマジックアイテムの開発やらが上手く行き、かなりの売上が出たらしいし・・・そりゃ儲かってるだろうな。

儲かり過ぎて不味いってのも変な話だが。

 

「病院の建設費や小学校の移設費用はウチが出した。これも広義の意味で設備投資だしな。あと、ブラス嬢からの要望があった魔法医師の研修先にもしようと思っているから、この病院のスタッフは全て冒険者免許持ちになる予定だ。医師のブートキャンプの際に彼らも合流して教育する事になる」

「奥多摩だけで足りるのか?」

「足りんな。だから、西伊豆と忍野も使う」

 

足立さんの居る西伊豆はともかく、忍野?自衛隊が管理してる忍野が何故ここで候補に上がるんだ?

俺達の疑問の視線を受けて、社長は真一さんに目配せをする。

その視線に頷いて、真一さんは席を立ち、ケイティと入れ替わって会議室のパソコンを操作する。

画面が切り替わり、パワーポイントが開かれる。

そこには大きな文字でこう書かれていた。

 

【忍野ダンジョン購入計画】と。

 

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