奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。ハクオロ様、244様、kuzuchi様ありがとうございました!


第九十七話 新層への挑戦

「さて、こっから先は未知の領域だな」

 

31層へ続く階段を見ながら恭二は興奮を隠し切れない様子でそう言った。

このダンジョンキチにとって、この階段の先には宝の山が眠ってるように見えてるのかもしれんな。

ウィルが合流している為、現在俺達は5人・5人の2パーティで編成を行っている。本当は6人パーティが一番バランスが良い為6・4で分かれても良いのだが、31層の敵についての情報も無い状態では片方に戦力を固めるのは良くないとこうなった。

20階層の動物系の敵のように高速でこちらの背後に回りこんでくる敵もいるのだから、背後からの奇襲は起こりえるものとして考えた方が良い。気配が読めても相手の速度が速くて回り込まれる事はあるからな。

 

「一郎、後ろは任せた。恭二、先行チームの要はお前だ。初見殺しの可能性もあるから、俺とウィルが前衛として当たる。俺が指示を飛ばせない状況になったらお前が動け。最初の敵と交戦した後は、対策を練ってから本格的に31層攻略に当たるぞ」

「うっす」

「了解」

 

真一さんの指示に頷く。20層以降初見殺しと言えるものは居なかったが、バンシーを一度でも経験した冒険者に未知のモンスターを侮る者は居ない。

真一さんを先頭に真一さん、ウィル、恭二、沙織ちゃん、ケイティちゃんの順番で31層への階段を下りていく。

突入の際に多少時間差を置いたのは降りてすぐに戦闘中だった場合、人数が多すぎて邪魔になる可能性を考えての事だ。都合よく広場があるとは限らないしな。

 

「さて、じゃあ3分経ったら降りようか。無線はちゃんとONにしといてね!」

「了解です。先頭は僕とシャーロットさん、真ん中にマスターが入って、デビッドと一郎君が。指揮権の順番はマスター、僕、シャーロットさんで移行ですね」

「了解です」

『ラジャー。じゃあ時間を測るよ』

「頼んだ」

 

時計を持ったデビッドの声を待ち、俺達は31層に突入した。

そして、潜ってすぐに「これは面倒くさい」と感想を持つことになる。

 

地下水脈による自然に出来た洞窟、という物だろうか。所々に坑道的な石組みの横坑はあるが、基本的に自然が生み出した天然の洞窟を使われたもののように思える。

降りてすぐの場所には敵は居なかったらしく、無線で確認すると先行チームはすでに先に進んでいるらしい。

魔力的な感知にも引っかかりは覚えない。近隣に敵は居ないらしい。

シャーロットさんが記録用とはまた別のカメラを構える。

こちらは通常のヘルメットに備え付けられたビデオカメラと違って動画を撮る為のものではないが、新層に潜る際に少しでも鮮明な画像を残す為に用意したものだ。ライトボールの明かりの下、シャーロットさんはパシャリ、パシャリと周囲の風景や岩肌、生えているコケなどを撮影している。

 

「思ったより明るい・・・?」

「いや、むしろこれは・・・コケが光っているように感じますね」

 

御神苗さんが周囲を見回しながらそう言うと、カメラを撮りながらシャーロットさんがそう言った。

彼女がレンズを向ける先にあるコケは、確かに微量の光を放っているように思える。ライトボールの光が反射されているものとは明らかに光り方が違うようだ。

カメラから目を離し、シャーロットさんが手袋をつけたままコケを岩肌から剥がす。すると、光が消える。

首をかしげるシャーロットさんの手元で、またコケが光を放ち始める。

 

「どうやら、魔力を送ると光り始めるようですね」

「おおー。岩肌で光ってたのはダンジョンの魔力でかな。結構光るね」

「流石にライトボールほどではありませんが、この程度の魔力でこれだけ光るのなら・・・色々利用価値はありそうですね」

 

そう言ってシャーロットさんはボディアーマーの腰部分につけていた小型のバッグから金属質の小さなケースを取り出した。

ダンジョン内の物をサンプルとして持ち帰るために幾つか持ち込んでいる物だ。コケをいくらか入れた後、別のケースに近くの岩を少し砕いて破片を入れる。

この岩にも魔力が通っているようだし、何かの素材になるかもしれないからな。

 

ある程度様子を撮影しサンプルも入手した後、俺達は先に進む。先行チームは川に出くわし、かなり冷たい様子の為迂回すると連絡が来た。

了解の連絡を送り、そのまま歩き続けると川に差し掛かった辺りで先行チームから戦闘に入ったと連絡が入る。

今までの階層と違い中々会敵しなかったためもしかしたら敵が存在しないのではないかと思っていたが、そんな事も無かったようだ。

まぁ、向こうには恭二も真一さんも居るし、ウィルもサビは十分に落としておいた。特に心配はないだろう。

 

念のため急いで合流する旨を伝え、川の水をサンプルとして回収した後、川沿いに道を急ぐ。

先行チームは敵と戦った後すぐの場所で止まって対策会議を行っていたようで、すぐに合流する事が出来た。

 

「バジリスク?甲賀忍法帖の」

「違う。モンスターの方だ・・・ほら、龍だったり蛇だったり国によって姿が違うアレ」

「ああ・・・・・・え。誰か石化したのか?」

 

モンスターのバジリスクと言えば石化で有名なモンスターだ。後、凄い毒。アンチドーテがあるとは言え即死してしまえば効果があるとは思えないし、非常に危険なモンスターだ。

いきなりこのレベルのモンスターが出てくるか。30層台もこれは侮れそうに無いな。

因みに石化を受けたのは真一さんらしい。バジリスクと眼があった瞬間に体が動かなくなったそうだ。

 

「流石に危険すぎるな。これは一度戻って対策を練った方が良いだろう」

「ああ。くそ、せめて32層に行きたかったぜ!」

 

真一さんの言葉に恭二が悔しそうに笑ってそう言った。

早速引き返す事は悔しいが、思った以上の難敵に闘志を燃やしているらしい。

次に潜るまでには完封する魔法を考えると張り切っている。

それと、バジリスクからドロップした鱗付きの皮。これも何か役に立ちそうな気がするとの事。

なんでもバジリスクはフレイムインフェルノ2発に耐え切るタフネスぶりで、恐らく相当高い魔法抵抗力があるとの事だ。

ボディスーツの強化に役に立つかもしれないし、魔法抵抗力が高いと言う事はマジックアイテムの外装にしたりしても良いかもしれない。

たった1層進んだだけでこれだけの新発見が出たことに真一さんとケイティはかなり興奮しているようだ。

 

「やはり、ヤマギシチームはどんどん前に進むべきなのでしょうね・・・・・・」

「早めに攻略に専念できるようになりたいな」

 

御神苗さんの言葉に真一さんがそう返す。

日程の関係上リベンジアタックは時を置いてからになるだろう。

まぁ、恭二も真一さんもやる気満々だし、そう遠くはならないかもしれないがな。

一先ず今日は帰って飯を食べよう。うん?どうした恭二。

不完全燃焼だから30層から20層まで逆タイムアタック?

この野郎・・・・・・面白そうじゃねぇか!

 

 

 

尚、女性陣はさっさと帰ってしまい大分遅くなった男組は夕飯を食べ損ねてしまった為、ラーメン屋で祝杯をあげることになった。

勝者は真一さん。恭二と俺の潰しあいをさっさと避けて先に進んだのが決め手だそうだ。

いや、ちょっと熱くなってしまったんだよね。うん。次は絶対に負けん。

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