奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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引っ越しの手伝いをしなければいけないので、14、15日は更新出来ないかもしれません。百ニ話と百三話は出来次第あげる形にします。

誤字修正、Haru-1732様、フレディ・エルム様、244様ありがとうございました!


第百一話 銀幕再デビュー?

 警官隊の教育は、関係者一同が思ってもいなかった速度で進んで行った。2月に入る頃には、すでに参加者全員が目標としていたストレングス、バリア、アンチマジックの習得に成功。

 

 更にダンジョン内部での活動や逃走した犯人を追いかける為に感知の魔法の習得と訓練も行っており、余裕のある物はそこから他の魔法、例えばスパイダーマンの時に使っているネットの魔法や、自身の重さを軽くするウェイトロス、壁走りを可能にするウォールラン等を練習している。

 

「俺が使う魔法多くね?」

「基本殺さずに捕えるって考えるならスパイダーマンすっごく優秀だからね。警官に教えるって考えるなら偏っちゃうよ」

「あの人たちにレールガン教えても意味ないだろ?」

 

 俺の疑問の言葉に一花と真一さんが答える。二人共今日は完全にオフで、今から出掛けるのだと一花が嬉しそうに言っていた。

 最近、この二人にシャーロットさんを加えた3名のヤマギシチーム頭脳班は昼は訓練、夜は研究や会議への出席と忙しく動き回っていたが、訓練の段階が進んだ結果ようやく少しはゆっくり出来るようになったらしい。現場でしか役に立たない身としては少しでも疲れを癒やしてくれと願うばかりである。

 

「じゃあ、何かあったら連絡してくれ」

「行ってくるぜぃ!」

 

 真一さんと一花はそう言って車に乗って出かけていった。一花の奴、はしゃいでるけど恭二達と現地合流する予定なのを覚えてるだろうか?

 あの様子だと完全に頭から抜け落ちてるっぽいが、肝心な所で大ボケかまさない事を祈るばかりだ。

 

「さて、俺達も行こうか!」

「……緊張してきた」

 

 俺は努めて笑顔を浮かべて昭夫君と肩を組む。今日一日である程度俺達の所は終わらせるらしいから頑張らないとな。何って? 

 勿論銀幕デビューだよ。

 

 

 

「デビューおめでとう。いや、前のスタントマンを含めたら再デビュー?」

「やかましい」

 

 ニヤニヤと笑う恭二に悪態をつき、俺はジャンさんの操作するPCに顔を向ける。ボウリングが楽しかっただの一花が可哀想だっただのと今日の報告をした後、急に悪い笑顔になって何を言うかと思えば。

 本日分の撮影は順調に終了した。初代様も大満足の出来だったらしい。魔法とか撃ちまくって演出をやってた昭夫君はめちゃめちゃ疲れた顔をしてたけど。

 そう。今日の俺と昭夫君の主な仕事は演出だ。後は、初代様以外の登場ライダーのスーツアクターだな。初代様は自力でライダーキックしてたから手助けの必要はなかった。

 

 今、ジャンさんがやっているのは、この魔法を使った演出の見栄えが良くなるように画像を調整する作業だ。この手の作業の経験値でうちの撮影班を超える人材はこの世界に居ないからな。ちゃんと契約を交わしてこの分の協力費も貰っているし、彼らもヤマギシ撮影チームの全力を見せるんだと張り切っている。

 そう。ヤマギシ撮影チーム。影に日向に俺達を助けて来てくれた彼らの技術が、遂に日の目を見ることになったのだ。魔法を使った演出はそれはド迫力だが、何でもかんでもリアルであることが素晴らしいわけじゃない。爆炎や煙、土埃、破裂した岩が石礫になって飛来するなど、リアルすぎる環境ではまた必要とする撮影技術も編集技術も違ってくる。

 

 奥多摩は現在山を削って土地を広げている為、採掘現場のような広い空き地がそこかしこにある。ここの許可を取り撮影を始めた監督さんと初代様は、最初のシーン撮影で当初思っていた以上に魔法演出の良さを引き出せていない事に気づいた。一旦撮影を取りやめて俺に普段の動画撮影の際の様子を尋ねてきた。そこで俺はすぐに携帯を取り出して動画編集作業中だったジャンさんを呼び出し、彼を監督に紹介したのだ。

 初代様もジャンさんとは九州で会っており、その際にうちの撮影班の人間であると言う事も覚えていた為、彼への協力要請はスムーズに決まった。

 

『うーむ。やはり一号の動きについていけてるのは君と昭夫君だけだね』

「あの人本当に改造されてるんじゃないかな?」

 

 今回の撮影では初代様の他に現在放送中のライダーも参加しているんだが。そっちのライダーの動きと初代様の動きの凄みが違いすぎてチグハグなイメージになっている気がする。

 何と言うか、初代様の迫力が半端ないのだ。勿論加減しているし相手も初代様もバリアをかけた状態で殺陣をしているのだが、パンチやキックは元より、走る挙動や着地、果ては変身ポーズまで。力を余し、そして緩めず。

 

 40年以上戦い続け限界を超えて酷使され続けた肉体という設定の為、所々で体が言う事を聞いてくれない、衰えたような演技は入っている。しかし、それらを抜きにしても一つ一つの動作から、溢れる躍動感や力強さが滲み出ている。

 ありていに言えば超カッコいい。

 

『これ、衰えたって演出必要なのかな? むしろ今が全盛期って気がするんだけど』

「初期プロットではそうだったし一応撮影スケジュールはそう組んでるみたいだ。途中で変わるかもしれないけど」

『……そうか。彼は改造人間だから外見年齢が変わらなかったんだな』

 

 まさか肉体年齢が2~30も一気に若返るなんて企画スタッフも思わなかっただろうからな。俺等もここまで若返るとは思ってなかったから、彼らを責めるわけにもいかないだろう。完全に皺とか消えちゃったし。

 画面の中では初代様が変身を決めるシーンが再生されているのだが、「あれ? これ息子さん?」と言わんばかりの若さの男性が往年のポーズを決め、一号ライダーに変身を行う。この変身も勿論本人の魔法で行われている。このシーンだけで金が取れる動画が作れる気がする。

 ……後で、東京の映画会社さんに聞いてみよう。

 

 警官教育の関係上、俺は小まめに参加する事はできないし、昭夫君も学校がある為毎回参加することは出来ないが、関わっている以上できる限りの支援はやりたい。初代様のこの映画にかける思いも知っているしな。

 携帯電話を取り出して、初代様に連絡を入れる。まずはご本人に確認をしよう。この思い付きを、喜んでくれると良いんだが。

 

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