奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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何とか14日分は完成しましたが、14、15日は作業時間が取れず15日更新はちょっと無理っぽいです。
定期更新が出来ず申し訳ない。


誤字修正。日向@様、244様、kuzuchi様ありがとうございました!


第百二話 実地訓練 VSウィル

『さ。どこからでもいいよ?』

『……』

 

 ウィルの言葉に、正面に立つイギリスの警官は一つ頷いてジリジリと距離を詰め始める。それに対してウィルは木刀を半身で構えて周囲を見渡す。

 

 油断しているわけではない。一度に3名を相手にしている為、一人に注意を絞るわけにはいかないのだ。周囲に散った2名は、ちらちらと視界から外れるように動きながらウィルの隙を伺っている。それぞれの警官はバラバラの国籍の警官同士で即席のトリオを組んでこの訓練に参加している。事前に与えられた5分の相談時間で、彼らはウィルへの対処に包囲による捕縛を選択したのだ。

 

 周囲にはその様子を眺める各国の警官隊、約50名。彼等は必要とされる魔法や感知能力等を習得し、基礎講習を合格した組の面々だ。

 彼等はここに至るまでの基礎訓練で平均的な2種冒険者と渡り合える基礎能力を身に着けており、ここから先は母国の他の警官への教導を行う為の練習と、ここに来た最大の目的……一線級の冒険者を捕縛する為の訓練が始まる。因みにこの組は最も過程が進んでいる組で、まだまだ200名近くが基礎訓練を行っている。

 

 つまり、こちらは最低限の人数で回さなければいけないわけで、そうなると魔法が得意じゃないウィルと、特殊すぎる俺にお鉢が回ってくるわけだ。因みにウィルは5戦目、俺は先程4戦目が終わった所だ。

 結果? 勿論全勝している。

 

『時間をかけ過ぎ』

『うわっ!』

 

 隙を伺っていた警官の1人の意識がずれたと感じた瞬間にウィルが右斜め後ろの警官に飛び掛り、蹴り飛ばした。感知の魔法を使いこなしていれば、相手の動きは何となく分かる。ポジションをずらそうとした瞬間に文字通り一直線に飛んできたウィルの速度に反応できず1人が蹴り飛ばされ、ネットの魔法で拘束される。

 これで包囲が崩れた。後は1人ずつ順番に倒していけば良い。瞬きの間に1人が脱落した警官チームは、連携が崩れた隙を突かれてあっと言う間に残り一人になり、そしてその1人も10秒もせずに脱落し全滅判定を受ける。これで模擬戦は終了だ。

 

『はい。じゃあネットを解除するから反省会と行こうか。まず、何が不味かったかから。意見のある人は手を挙げてくれ』

 

 そして一度模擬戦が終わってからはディスカッションの時間になる。この時間は実際に戦った人物が気づいた反省点を言ってもらい、それに対して教官役がどこが悪いと感じたか、狙いやすかったかを感想として話す。

 

 教官と言っても俺達は対人戦は素人。基本的にモンスターと戦うつもりでやっているので、視点としては冒険者目線になる。むしろ、その方が冒険者に対する対策としてはありがたいらしい。彼等の仮想敵はまさしく冒険者なのだから。

 

 因みにこの一連の流れは全て録画されている。勿論ディスカッションも含めて。彼らの後に続く残りの警官隊は、このディスカッションと彼らの模擬戦を見て事前に対策を取ったり、誰と組んでも大丈夫なように意見交換や連携の練習を行う筈だ。

 彼等は前回訓練した冒険者達と違い、モンスターを相手にするのではなく犯罪者に身を落とした冒険者が相手となるため、どこで、どんなタイミングで遭遇するかわからない、という前提がある。

 

 例えば街中で。例えば建物の中で。お行儀良くダンジョンの階層毎に出現して対策できるモンスターとは違い、冒険者は人間である以上どこにいるかわからない。そうなると気心のしれた仲間以外の警官と共同して抑える役割を果たさないといけない事もあるだろう。

 そういった際に連携が取れずに被害が拡大した等という事を防ぐ為に、このキャンプでは対冒険者用の基本戦術の開発と、それを全員に共有する事が求められている。ここで開発した戦術が俺達ヤマギシチームにも効果があれば、今回のキャンプは大成功と言えるだろう。

 

『僕もナチュラルにヤマギシチーム扱いなのは嬉しいね』

「ウィルはほら……名誉ヤマギシ隊員?」

『ワッペンと制服の着用許可とかもらえるのかな。あ、両方貰ってるや』

 

 昼食の時間になった為、食堂でウィルと並んで飯を食べる。ピロシキは好きなんだが、スープ系はお腹に貯まる気がしないんだよな。5杯位飲まないと。

 周りの連中は午後の訓練に向けて昼食を食べながらディスカッションを進めている。席順は特に決められていないのだが、自然と先ほど組んだ面子同士で集まって話をしている。ここに集まっている50名は翻訳の魔法をすでに覚えている為、議論はかなり盛り上がっているようだ。飯を食べることを忘れなければ良いのだが。

 

『お疲れ様でした』

「お、昭夫君おっつ。撮影終わったの?」

『やぁ、アッキ。お久しぶり』

『ウィルさん、お久しぶりです。凄い熱気ですね』

 

 今回のキャンプにはノータッチの昭夫君が周囲の様子を見てそう感想を述べる。確かに、前回の冒険者キャンプの時と比較しても彼らはかなり熱心だろうな。人数的にも前回の比ではないし。

 

『いやー、参りました。初代様が急に路線を少し変えようと言い出して、今向こうは編集会議中ですよ。一郎さんおめでとうございます。名前持ちキャラになりそうですよ僕ら』

「うそやろ」

『そうか、それはおめでとう! これで名実ともに俳優の肩書きが増えるね!』

 

 冗談なのか本気なのか。頬を引きつらせて笑う昭夫君の言葉にウィルは単純に喜びの声をあげる。そして、一縷の望みをかけた俺の問い掛けに昭夫君は静かに首を横に振った。

 ……ピロシキが冷める前に食べよう。編集会議でもしかしたら否決されるかもしれないし。しれないよな。してくれ編集スタッフさん。

 

 その1時間後、初代様からの着信が入り望みが絶たれた事を知った俺は全てのエネルギーを訓練に振り分ける事になった。八つ当たりじゃないよ?

 

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