誤字修正、244様ありがとうございました!
『祖父の夢。仮面ライダー……貴方と共に戦うために僕は来ました』
『き、君は』
傷を負った1号ライダーを庇うように立つ男が居た。いや、男がというよりは少年だろうか。少し高さを残したその声。背丈もそれほど高くはない。だが、不思議と懐かしい気持ちがする。
『僕は滝。滝一也。戦えなくなった祖父の夢、僕が引き継ぐ』
少年が振り返る。黒いヘルメットの隙間から見える素顔にかつての戦友の面影を感じ、1号ライダーは驚きの声をあげた。
「めっちゃ良い役貰ってね?」
「そっすね、ライダーマン2号」
シナリオの修正が行われた後の収録で見せてもらった編集前の画像を見て、つい口から出た言葉に静かな口調で昭夫君が返した。付け焼き刃の標準語はイントネーションが微妙だが、映像の中の昭夫君の台詞は特に違和感なく行われている。まぁ、声優に声をあてて貰ってるからね。そりゃ綺麗に聞こえるだろう。
邦画なのに声優と聞いてちょっと違和感があるかもしれないが、勿論声自体は昭夫君の声だ。声優が昭夫君の声を使って声をあてる、という不思議な現象が起こってるわけだな。この種は翻訳と変身の魔法のバリエーションにある、変声という魔法にある。
この魔法、なんと他人の声を変える事が出来る上に翻訳と違って録音できるのだ。といっても他人の声を変えられるほど器用に魔法が使えるのは一花と恭二位で、俺は自身の声を変える位しか出来ない。バリエーションというだけあってかなり難しい魔法でもある。
昭夫君の付け焼き刃の標準語は、明らかに口の形がおかしくなるのを防ぐ為の物で、実際は昭夫君の演技や動きに合わせて声優が声をあてているから発音もはっきりし、かつ爆音に紛れて声が聞こえなかったりするという事も防げる。後は発音に問題がある俳優の起用にも役に立つとか立たないとか。
「オンドゥル語が駆逐されてしまうね!」
「あれはああいう方言だから」
一花の言葉に思わず弁護を入れてしまうが、実際あの言語はある種究極の滑舌だと思う。普通あんな発音できないからな。
「監督から、是非これからも力を貸してほしいって言われてたみたいですが」
「初代様から頼まれなきゃヤダ。私もお兄ちゃんも、特にフリーの昭夫君は魔石狩りに専念したほうが儲かるし、そっちが本業でしょ? これで色気出して俳優業のパイまで食べちゃ駄目でしょ」
「ゴーレムだけ狩ってた方が本当は儲かるんだよなぁ」
それがなくても訓練の講師代もめちゃめちゃ高給だし。実際、ここ最近の講師代としてヤマギシから支払われた報酬だけで、初代様も数年分の収入稼いだって仰ってたしな。ヤマギシは儲かってる分社員や従業員への報酬に還元して(税金対策をして)いるから、業績が上がれば上がった分だけ報酬も青天井で上がっていく。
また、冒険者免許持ちはそのレベルによって基本給が変わる為、魔石などを取ってこなくても結構な額の収入が入る。その分色々仕事が振られるけどな。
3月から入社予定のマニーさん達なんか、予定される初任給の額に思わず誤字なのかと問い合わせてきたそうだ。本当に桁が一つ上がったらしいが、彼らは全員がレベル20を超えるチームの冒険者だからな。この程度はむしろ安いし、ここからの歩合でどれだけ跳ね上がるか分からないと伝えたら泣きながら恭二と社長に感謝の言葉を言っていたらしい。
「そういえばマニーさん達の社宅はあのマンションになるんだっけ」
「うん。両親も連れてくるって言ってたし、大きめの部屋を渡す予定だよ!」
「親孝行したいって言ってたしそれ位は福利厚生になるか」
ダンジョン関係者のみが居住する大型マンションの一室に彼らは居住する事になる。流石に1フロア丸々とは行かないが、家族が多い人には部屋を少しいじって広くする位は行う予定だ。彼らの加入は人材不足に喘ぐヤマギシにとって福音と言ってもいいからな。
何せ、教育に手を取られている現状。需要がまるで満たせていない魔石狩りに専念できる人材が5人も加入するのだ。しかも、単独でゴーレムが狩れる練度の冒険者が。そして、どうしても手が足りない時に教官になってもらう事もできる。
こんな冒険者を雇えるなら、一戸建てをぽんと渡してもお釣りが来るだろう。社長なんか彼らが来る日を毎日カレンダーとにらめっこしながら数えてる位だ。
仕方が無い事とは言え、毎日のようにせっつかれるのが辛いと言ってたしな。毎日胃の辺りを押さえながら自分にリザレクションをかける社長を見るのもこれで最後になるだろう。あれ見てて悲しくなるからなぁ……
「お、やられたー」
『ハァ、ハァ……や、やった!』
『ついに、ついにイチローを捕らえたぞ!』
『やった! おい、カメラ撮っていたか!?』
ネットに捉えられた俺の姿に周囲の面々が歓声を上げる。ロックマンモードのままネットに絡まれた俺はもぞもぞと体を動かしてみて、完全に抜け出せない状況になっていると確認してからアンチマジックを撃つ。この訓練中は基本的にアンチマジックは禁止していた為、一種の終了の合図だ。
拘束から開放された俺を見て勝者である警官チームが一瞬身構えるが、アンチマジックが使用されている事に気づき顔を紅潮させる。これが意味する所はただ一つ。教官の捕縛成功という事だからだ。
『素晴らしい結果だった。即席チームでありながら見事な連携もそうだったし、読みにくい特殊な魔法を扱う相手に良く対処できている』
『君達3名は実技試験の合格を通達するよ。これからは実技に関しては参加自由。そして、別のチームになるだろうが後2名、実技で教官を捕まえる事が出きれば繰り上げ卒業の対象になる』
『はい! ありがとうございます!』
『よし、切りも良いし今回はここまで。各自、体のケアをした後は解散してくれ』
俺の言葉を引き継ぐようにウィルが解散を告げると、警官達は口々に3名の合格者を囲んで祝福を投げる。この3名の合格者の中にはアリアさんも含まれている。彼女は名実ともにこの合宿最優のメンバーの1人になった。
満足そうに頷くウィルを見る。彼女の姿を見ていると、本当に男女の差が全く無くなる日ってのが近いうちに来るのかもしれないなと感じる。
だがそれはそれとして負けたのが悔しい。これでまた恭二の笑いのネタが一つ増える事になる……しかし恭二を警官隊にぶつけるのは可哀想を通り越してイジメになってしまう。今度何か逆転のネタを考えなければいけないだろう。
滝一也:滝和也の孫という設定。老いて戦えなくなった祖父の代わりに日本を守る為に立ち上がった少年。祖父譲りの戦闘術と特製のバトルスーツを用いて戦う。このスーツはとある天才科学者謹製のバトルスーツで、着用者に人間の数倍の力を与えると共に衝撃吸収能力、更に両腕両足に電撃発生装置をつけており、ライダーパンチとライダーキックも使用可能。スーツが戦闘モードになると、ヘルメットにドクロのマークが浮かび上がる。