奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第百二十四話 騒動の顛末(あとしまつ)

『やぁ、また会っ痛い、ちょ、マスターまで』

「残念でもなく当然」

「流石に今回は私もさ! 思う所があるかな!」

 

 兄妹二人のローキックを両足に受けて堪らずウィルが膝をつく。暴行? いやいやこれ位は許されるだろう。せめて事前に伝えろと。

 

「別に受ける気ないから見合い位何遍でもやってあげるのに」

『すみませんマスター、僕がそれをやると本当に世界各国の同士に殺害されてしまいます』

「アンタらは私を嫁き遅れにしたいのかい」

 

 切実な様子のウィルの言葉に一花が顔を青褪める。いつものテンションが維持できてないって事は本気でドン引きしてるんだな。

 

 というか一花一門はこいつの事をどうしたいんだろうか。割と俗な人間だってのは理解してる筈なのにやたらと神聖視しようとするし。その割には貢物に海外発売のゲームソフトとか贈ってくる辺り趣味嗜好はしっかり理解出来てるみたいだしな。

 

 まぁ、その辺りの藪を突いてヤマタノオロチが出て来ても困るし丁寧にスルーするとして、だ。

 

「それで、あの怪獣二人はどーすんだよ」

『もう一人の方までは責任を負いかねるんだけど』

「そっちはもう一人の保護者が頑張るから大丈夫」

 

 この数週間、奥多摩を中心に暴れ回る二体の怪獣に対して保護責任を求めると割と前向き? な回答が返ってきた。流石に責任を感じてはいたらしい。

 

 さて、怪獣と称された件の二人、イヴとジェイだがこの二人本当に仲が悪い。聞けば同じ大学に通っているらしいんだが、大学でも事ある毎に衝突しているらしい。それを日本に来てまでやられても困るんだけどその喧嘩の内容が更に困るんだな。

 

『イッチはこっちが好き!』

『アンタの想像で話してるんじゃないわよ!』

「タコスもチミチャンガも好きなんで両方頼むって」

『『ダメ!』』

 

 とかいう日常的な物から、

 

『こっちのルートが早いはずよ』

『貴方の感知狂ってるんじゃない? こっちに決まってるでしょ』

「どっちも遠回りなんだけど」

 

 等のダンジョン内部の物まで。特に後半は浅い階層じゃなかったら危なかった。

 意外というかイヴも筋が良くて割と早めに1級冒険者レベルには至ったのだが、流石にジェイと比べればまだまだレベル差はある。しかし、彼女が絡むとジェイが途端にポンコツになるので誰かストッパーが居ないとこの二人を組ませてダンジョンに潜らせる事が出来ないのだ。

 

 現在ヤマギシでストッパーとなりえるのはケイティか一花のみ。俺は余計に助長させる為先述のダンジョンアタック以来組むことを禁じられたので除外されている。恭二? あいつは「わかった。なら両方行こうぜ!」って回答になるから除外だ。命の危険がないって意味ならストッパーとして入れていいかもしれない。

 

 とりあえず一連の流れを保護者枠に説明すると何度か頭を掻いた後にウィルは俺に尋ねてきた。

 

『正直すまんかった』

「出来れば引き取ってほしいんだけど。もしくはジェイと引き離して、どうぞ」

『あちら次第ではあるけど、了解した。ジェニファー嬢とそこまで相性が悪いとは思わなかったよ』

 

 俺もその点についてはびっくりしてる。何せジェイは前回の冒険者研修ではあと一歩で最優秀と言われるレベルの成績だった冒険者だ。そのジェイがあんな凡ミスをする位に精神をかき乱されるってのは相当な物だと思うからな。

 

 

『ご迷惑を、おかけしました』

『申し訳ありませんでした……』

 

 保護者を交えての会談の結果。二人は並んでこれまでに迷惑をかけていたヤマギシの関係者に頭を下げて回った。背後にいるケイティとウィルの圧力もあると思うが、本人たちも自分達がやらかしているのは分かっていて、ただこの相手にだけは負けたくないという一心で暴走気味だったらしい。出来ればウィルが来る前にそれが出来ていればなぁとは思うが、きっかけが掴めなかったのかもな。

 

 今回の件では完全にヤマギシはとばっちりであり、俺も騒動を引き起こした側の立場になる為、彼女たちの謝罪行脚には俺も付き合うことになった。事前に一言挨拶を入れて、場を設ける程度の事なのだが、その俺の様子に罪悪感を持ってもらえているようなので流石に次同じ失敗をすることはないだろう。ここで何も感じないならもう俺じゃどうしようもないし。

 

「というか、お前がやれよ兄貴」

『兄と呼んでくれるか義弟よ……ごめん、スパイダーフォームに無言で変わるのはやめてくれ。わかってる、冗談だって』

「流石にこのタイミングではそれは冗談にならないからね」

 

 一花様が猛り狂っておられるぞ。いや、なんか今回の件で一番怒ってるの、実は一花なんだよね。何でも自分の見合いの代わりに兄に見合いを持ってくるこの流れが無性に気に食わないらしい。そこは自分に持ってこいよ、と。

 

「私に持ってきてたらイケメンのアメリカ人がちやほやしてくれたんでしょ?」

「ウィルだったかもしれんが」

「ウィルにはいつもちやほやしてもらってるから良いか。じゃなくて、代わりがいる扱いとか本命はお兄ちゃんとかさ。私のピュアなハートが今回ボロボロにされたんだけど」

 

 それ前半が本音だろ。まぁ、うん。将を射んとする者はまず馬を射よ、と馬扱いされればそりゃ気分良くないわな。最近は自分にしか出来ない分野を見つけて前より自信をもってた分、余計に心に来たのかもしれない。やっぱりジャクソン家許せねぇわ。

 

 というのをジャクソンの次男坊に話すとその瞬間一花の足を舐めんばかりの勢いで謝罪に行ってたから暫くしたら機嫌も直るかもしれんが。騒動の発端になった二人は暫くケイティとウィルの監督の元扱きつつ、修行をしてから本国に戻るらしい。どっちも冒険者としては優秀だから、そちらで評判を上げてほしいものだ。

 

「所でお兄ちゃん。いつの間に金髪に染めたの?」

「……いや、地毛だが?」

 

 足を舐められそうになりながらウィルを蹴たぐる妹にそう返すと、場の空気が静かに凍った。え、俺今金髪になってんの?

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