奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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何のイメージに引っ張られたのか茶髪じゃなく金髪にしてしまったので少し修正入れてます。
ゲームでピーターが頭を撫でるシーンをいつも見てる筈なのに()

誤字修正。244様いつもありがとうございます!


第百二十五話 変異

「金髪……いや、色の薄い茶髪?」

 

 手鏡を借りて頭を確認すると確かに髪の色が変わってる。俺の黒々とした日本人らしい髪は影も形もなく……あとちょっと髪が伸びた気がする。

 

「とりあえずお兄ちゃんはハルクには絶対にならないでね。アシタカも」

『あ、はい』

「……言葉まで英語になってる」

 

 悲しそうな顔でうつむく一花に慌てて日本語にシフトする。意識しないと日本語から英語に切り替わってしまうせいでうまい事話せない。これはもう最初から翻訳を使っとく方がいいな。

 現在地はヤマギシ本社の開発室だ。現状を真一さんに報告するためと、何か大きな違いが出ているかの確認をしなければいけないからな。実際に発明品を動かすために面積の広い開発室は確認作業にも向いている。

 

「……冗談キツイぜ、おい」

 

 思わずといった様子で俺の髪が変色するのを見ていた真一さんは、ぽつり、とそう呟いた。これ、変身を解除したら黒髪に戻るので俺と恭二は疑似サイヤ人ごっこと言ってる。それを聞いた一花にしこたま怒られたが。

 

 ひとまず何が出来るのか、と尋ねられたのでひょいっと天井まで飛び上がる。それはもう見知ってる、と言われたのだが、魔法を一切使ってないと言ったら真一さんと先輩は黙り込んだ。俺がいつもスパイダーマンとして動く際には、ストレングスとウェイトロス、それに天井に張り付く際はエドゥヒーション(粘着力の付与)を使っているのを二人は知っている。俺はそれらの魔法を今使っていない。

 

「おい、まさかだが左手は」

『そっちはシューターがないので』

「……あれば出来るって事だな。そうか。そうか……」

 

 ひょい、っと飛び降りて二人の前に立つ。体が何というか、馴染むような感触だ。そう、今までは右腕と他の部分が歪だった。だが、今は違う。全身が右腕に合わさったようなそんな感覚だった。

 

「前々から、一花ちゃんやケイティが語っていた懸念が本格的になったって訳か。大学の設立まで間に合わなかったな……」

「設立予定だったんですか?」

「忍野でな。こっちは面積が足りん」

 

 忍野は平野が多いから奥多摩と違って土地の確保が簡単なのだ。大規模な施設を作るのならあちらに、とは言われていたのだが、確かに現状手いっぱいの奥多摩でこれ以上大規模な建設は難しいだろう。これに合わせて青梅街道を再開発して忍野までの道をもっと通りやすくする計画も出ているらしい。まあ、これは国からの許可が下りればという所か。

 

 大学が出来た時には現在のヤマギシの研究施設もそちらと合同で行うことになるそうだ。ヤマギシとブラスコ出資の私大になる予定だしそうなると先輩や真一さん達ももっと大規模な実験等を大手を振って出来るようになるわけだ。

 

「いやいや。その場合は君たちにも手伝ってもらうよ」

『いやー、考えるの苦手なんですよねぇ。大学にも行く気はなかったんで』

 

 うんうんと唸る真一さんを横目に俺と先輩さんは雑談交じりに思い浮かんだ魔法アイテムのネタをあーでもない、こーでもないと話した。この人はロマン重視の部分があるが、流石に工学を専門にしているだけあって実現できれば実現したいというアイデアが山のようにある。それらに対して俺は一冒険者としての視点や民間人としての視点で回答を返す。

 

「うん、一郎、それは何だ?」

『え? 落書きですよ。シューター作れないかなって思ってたんですが』

「……にしては随分と綺麗な設計図だね」

 

 そんなやり取りをしながら落書きをしたりメモをしたりとしていると、考えがまとまったのか真一さんがこちらに目を向け、俺の手元の落書きに目を向けた。ミギーのおかげか最近は絵心が急激に上がっておりきれいな描写で手首につけるブレスレット式のウェブシューターが書かれている。

 

「……先輩、これ3Dプリンターで」

「了解。ちょっと興味わいてきたよ」

『いや、落書きですよこんなの。どうせ作るならこう』

 

 すらすらすら、とメモ帳代わりにしているノートに再び絵を描きこむ俺に、二人は険しい目を向けてきた。俺も気づいている。明らかに俺の知識レベルにあった内容のメモではないからだ。描き始めた手を停めることなく描き切り、俺はそれを先輩さんに渡した。

 

 受け取った先輩さんは軽く口笛を吹いてから3Dプリンターにデータを入力。数十分ほど待つと、中からどこかで見た事の有るブレスレットが出てくる。

 

「左手でつけて見ろ」

『分かってます。ちょっと待ってくださいね……ボタンはこうか』

「やばい、ちょっとドキドキしてきた」

 

 適当な物を試験場代わりにした広間に置いて左手でウェブを発射。すると体の一部が何かに引っ張られる間隔と共に蜘蛛の糸が発射される。成功だ。巻き取り機能も試してみたら問題なく動く。これで左手からもウェブを使えるようになったわけだ。

 

「といっても暫くはお蔵入りだがな」

「公表したらまずいでしょ」

『そうですねぇ』

 

 三者三様だが、意見は一致しているみたいだ。これは公表したらまずい。主に俺の立場とか色々な物が不味い。今まででさえ結構混同視されてたのにこの現状が広まれば俺≠スパイディとようやく持ってきた今の図式が崩れてしまう。アメリカで警官にお世話をかけた一件でリアルにヒーローやるのは流石に懲りた。

 

「でも、これで研究の相談が出来る人が増えたのは大きい。これからもよろしく頼むよ」

『あんまり頭良くなった気がしないんですがねぇ』

「使い方が悪いんだろ」

 

 あの、それ頭の使い方ってようはバカってことなんですが。あ、そのままの意味ですか。はい。

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