“勝つ”ために   作:アグナ

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見覚えがある? 別人じゃないかなオリ主だもん(すっとぼけ)

本来書いているSSを書ける時間が無いための八つ当たり。
連載がついてるが続くかどうか分からないという。

エタ作者を信用してはならないのだ……(戒め)


勝利とは

 「朝は早起き、夜は早く寝なさい」「将来のために勉強しなさい」「友達を大切にね」「ちゃんと良い子にしていなさい」「悪いことをしては駄目よ」と──どれも何処かで耳にするフレーズだ。

 

 子供の時分に一度は親に言われた正しさを説く言葉たち。

 それこそ何を今更というべきものだが、意外なことにコレをキチンと全て守れている人間は全体的に少ない。

 

 朝は一人で起きれない。夜は友人との会話や消費娯楽に夢中で夜を更かし。面倒くさいと勉強は放り投げ、数年間ともに過ごした友達は環境変われば話すことがなくなり、良い子にしてなさいと言われれば反発するように禁則破り。悪いことはするたびに快楽を覚え、小さなことからやがて犯罪モドキへと。

 

 正論──正しい事という奴を守れる人間は驚くべきほど少ない。

 人は“正しさ”を当たり前だと笑うくせに、その当たり前こそが全く出来ていないのだ──正論を受け入れ守り、当たり前に努力する。そんなことすら。

 

 一方、“正しさ”を知りながらも、その当たり前が出来れいれば大抵は実るという意見に対して──いやいや、努力が報われるなんて嘘と言う者も居る。ただただ努力しない言い訳とも取れるが同時に一つの正論でもある。

 努力して努力して……それでも才能と言う壁は確かにあるし、己が努力するように相手もまた努力しているのだ。その過程で差が出た結果、自分の努力が報われなかった。なんてことは彼らの言う通り確かに存在する。

 

 ──だが、仮に努力したというならば思い返して欲しい。

 それが無駄だと断ずることができるかどうかを。

 

 努力の果ての結果が自らの望んだもので無いにせよ。出た結果は無駄か? 報われなければ、叶わなければ無意味か? 無価値か?

 そうと言い切れるほどその結果は残酷な者だったか? 

 

 いいや、否だ。

 

 「ああ、勉強しておいて良かった」「努力していて正解だった」後々に思わずそう呟いた経験は努力を重ねたものであるならば幾らでもあるだろう。例え報われなくとも積み重ねた時間は確かに己の自力なのだから。才能を除けば何もしてこなかった人間よりは遙かに優れた自力を手に入れていると言って良い。

 正論とは、どうしようもなく正しいことだ。

 これを守っていれば余程の不運に見舞われない限り間違いなく損はない。

 

 目標に向って頑張ってきましたと、テレビ出演するような大成を成し遂げた者は決まって口にするが、これは一重にどうしようもなく正しいからだ。才能という切符があろうとも競う相手もまたそれを持ち、持たぬ相手は努力で以て差を埋めてくるのだ。競争の場で成功し続けたいのなら、“勝ち”続けたいのならば、裏道裏技を探すのではなく努力を重ね続けるしかない。

 

 才能の差は努力の差で補強するしかないし、努力の差もまた努力の差でしか埋められない。取り繕った裏道裏技など確たる自力を前にすぐに破綻する。

 それは古今東西に存在するあらゆる事例が認めている。不正、ズル、搦め手──それを突き詰めた場外戦術を会得することに努力を重ねた外道を選んだ者は例外として、正論から逃げ出すためだけにそちらの道に転がり込んだ輩が成功し続けることなど不可能。

 

 外道にも外道なりのやり方がある、積み重ねがある。蛇の道に潜むのはその道に優れた蛇なのだから。

 蛇の道に逃げ出してきた半端物(どっち付かず)など破綻し、破滅するのみだ。

 

 “勝つ”ためには努力しなければならない。重ねた自力は如何なる才能を持っても覆しがたく、奇策で持っても破りがたい。王道とは多くの人間が歩んできた道であり、多くの先駆者(勝者)たちが歩んできた道でもある。

 先達に学ぶこそこそ“勝利”への近道なれば、倣うが道理。

 

 成功を得たいのであれば努力せよ。

 約束された将来のために努力せよ。

 己が夢見る理想のために努力せよ。

 

 努力せよ、努力せよ、努力せよ──全ては“勝つ”ために。

 

 王道を往き、己が“勝利”をその手に掴む。

 それこそが三鷹勝理(みたかしょうり)の人生だった。

 

 

 

 

 春。桜舞散る中、勝理はバスに揺られていた。

 

「──高度育成高等学校は国立の高等学校。進学率、就職率は例年ほぼ百パーセントにも及ぶ全国屈指の名門校。方針として文武両道を掲げており、勉学に問わず運動に優れた者も受け入れることからスポーツの分野においても優秀。在学生の中には大学、就職の他にプロスポーツ選手の道へと進んだ生徒も少なくない、と」

 

 バス内に居る乗客の多くは勝理と同じ制服を纏った学生ら。

 その殆どが音楽やら携帯やらの嗜好品に手を出している中、これから入学する学校のパンフレットを読み込む律儀さは正に勝理の性格を物語っていた。

 

「駄目だな、情報が少ない。入学が決まった段階で何度も読んだが予想外に内実の情報が載っていない。インターネットでも本でも学校の資料や在学生の体験や愚痴(リーク)でも出てこない辺り、意図的に隠していると見るだな」

 

 もう二桁と読んだパンフレットを閉じ、バスの椅子に肩を預けながら少し気を休めるように息を吐いた。

 今年以て晴れて高校生となる勝理。

 普段から全力、予習復習事前の準備を怠らない彼は当然、試験に合格し入学する学校について事前に調べておくのは当然のことだった。

 

 入学先は先ほど口にした高度育成高等学校。

 国立の全寮制であり、特筆すべき点として在学中は外部と接触できないという箱庭のような生活を強いられること。

 そのため学校内には三年間敷地内で過ごすための充実した施設が充実している……此処までは学校紹介のパンフレットや学校の教師、進学指導の人間が言っている言葉であり、自らの手で調べ上げた情報にも記載されていることだが──手に入る情報に対してどういった授業があるのか、またどういった学生生活を送っているのかという具体的な内部の情報が一切ないのだ。

 

 まるで示し合わせたように、進学就職率ほぼ百パーセントという輝かしい謳い文句で誤魔化すばかりで情報がないのだ。それこそ卒業生である者たちも含めて。

 何とか自前でOBに接触をして問いかけてみても詳しいことは教えてもらえなかった。

 

「つまるところ情報の遮断は意図的だということだ。ならば、その必要性は? 一体何の意図があってそれを秘匿する?」

 

 意図的な学校内部における内状情報の遮断……。

 

 そこから真っ先に思い浮かぶのは後ろ暗い事情があるというものだが、まずこれに類するものは無いと見ていいだろう。

 仮にも国立、即ち政府主導で建てられた学校だ。そんなところで黒い事情が纏わることをすれば唯でさえインターネットの出現により相互監視型社会に等しい今の世の中である、後ろめたいことが一切露見しないなんて事はまず有り得ない。

 

 例え国家権力やそれに類する巨大な力によって押さえ込んでも、ただ権力だけでどうにかできるほど現代の民意は甘くない。

 昔ならばいざ知らず、今の日本で後ろめたい陰謀論を画策するには限られた規模で行なうか、相当に選ばれた一部でなければ完全に外部へ情報を遮断することなど絶対に不可能である。

 まして外部から入学生という子供達を引き入れている時点で関わる人間は生徒側の関係者のみでも親兄弟親戚含めれば数千規模だ。此処に管理者側の人間まで加われば漏れる可能性がある口は考えられないほどに膨らむ。

 隠したところで不正、不法の類いなど即座に露見だろう。

 

「であるならば、これが合理性に、必要性に基づく判断から行なわれているというのが次の推測になるが……」

 

 突き当たるのはそこだ。情報を隠す意図。調べて出てこないのだから隠蔽が意図的であることに最早疑いはない。

 ならばそこ、次に考えなければなるまい。一見して不合理且つ無意味な方針を。詳しい学校の紹介により新規新入生の獲得出来るという考え得る限り学校側が得られるリターンを切り捨ててまで態々、入学後には露見する内部の情報を外の人間に伏せるという意図を。

 そう、“分からない事を分からないままにして良い筈など無いから”

 

「教育方針? 情報を知らせぬ事が生徒の教育に繋がる? 或いは情報を公開しないことが高水準の進学就職率に関係している、というのはどうか」

 

 仮に必要だから学校内部の情報が隠蔽されているならば、次に考えなければならないのは必要性の内容、つまりは隠す理由であろう。

 例えば教育方針上、内部の情報を隠蔽しているならばどうか? 即ちは優れた生徒を育成する上で情報を隠すことが必要であると判断された場合だ。

 しかし、一体情報を隠蔽することで何を養い、何を育てる?

 

 それとも何か必要性に駆られてことなのだろうか?

 だとすれば逆に、疑心を持たせるようなマネをしてまで齎される必要性とは一体何だという?

 

「疑うこと、疑問を持つこと。或いはそれこそが目的なのか? そして、それを考えること、生徒に考えさせること……もしや入学前から何らかの試験や査定の類いが始まっているということか?」

 

 答えはない、確証はない。だが、違うと断ずる理由もまたない。

 ならば検証し、比較し、解答に迫るしかない。

 学校に着けばその意図も分かるだろうが、誰かから一方的に与えられるだけでは一体何が得られるという。己は学生、学び習うこそこそ本分なれば、ただ与えられた答えを見るだけで満足するなど、金魚が口を開閉してエサを貰うと同然。思考停止も甚だしい。努力しないままに得る“正解”には何の意味もない。

 

 なので、当然の行動として勝理は躊躇いなく答えを取りに行く。

 情報が足りなくてこれ以上考えを進められない?

 いいだろう。ならば不足を補うまでだ。

 

「すまん、ちょっといいか?」

 

「……え? 俺?」

 

 己が考えを深めるために勝理はまず他者を探る。

 自分と同じ新入生という条件を満たす他者を。

 

 だが、そんな勝理の意図や思考など突然に声を掛けられた入学生が理解できるはずもなく、勝理が声を掛けた同じ制服を纏った入学生は困惑している。

 当然である。彼と勝理は顔見知りでもなければ接点があるわけでもない。強いてあげるならば同じ学校へ入学する同級生候補であるくらいである。

 つまり簡潔に言えば二人は初対面。

 

 にも関わらずいきなり声を掛けられれば勝理はともかくとして相手側は余程の人間で無い限り困惑するのが当たり前だ。だが、そんな事などお構いなしに勝理は目的を遂げるべく会話を続行する。

 

「俺はこの制服の通り、今年から高度育成高等学校に入学する三鷹勝理だ。突然のことで悪いんだが、簡単な筆問を二、三聞いてもいいか?」

 

「え、あ、ああ。別にいい、けど?」

 

「率直に聞くが、俺たちが入学する予定の学校。君はどれほど知っている? 俺も自分なりに調べたが全寮制であることと、三年間の外部接触禁止であること以外は殆ど情報が手に入らなくてな。知っていれば教授して欲しい。授業内容、過ごし方、或いは在学生の所感や卒業生の感想、論文。インターネットに書き込まれた学校に対する愚痴や文句なんかの書き込みでもいい」

 

 勝理の真っ直ぐな目を見て男子生徒は一瞬たじろぎ、その後ばつが悪そうな顔で……。

 

「あー……悪い、オレも今お前が知っているって言った情報以上は知らない。ちょっと受かればいい程度の感覚で受けたからあんまり……」

 

「そうか、ありがとう。参考になった(・・・・・・)、よければ名前を聞いておきたいんだが?」

 

「綾小路だ、綾小路清隆……ええっと、宜しく? 三鷹……で良いのか?」

 

「ああ、構わない。同じクラスになるかは分からないがその時は頼む。例え別々のクラスになったとしても知人として話しかけてくれると嬉しい」

 

 綾小路、と名乗った生徒と軽く言葉を交わしながら勝理の頭は再び思考の海に没入していく。

 問いかけてみたのはまだ一人、しかも彼自身学校のことに興味が無く調べていないという答えのみ。めぼしい情報など無いが……。

 少なくとも自分の持つ情報は同じ入学生であれば持っているという事実を確認することは出来た。つまり手持ちの情報は入学生が共有する平等に与えられた情報だ。

 

「ならば入学生に事前に与えられている情報に俺の見落としは無く、また他の学生と異なるというわけでもないということだ」

 

 ……手持ちの情報が少ない場合、まずはその精度を上げるべきだ。貴重なそれが間違った情報であるならば推測にも意味が無くなるからである。そして情報が手に入れるのが難しくまた、少ないときはその精度こそが貴重な力である。

 

「もう何人かにも声を掛けておきたいな……」

 

 目線を上げれば幾人もの同じ制服の生徒達。

 元より高度育成学校行きの公共交通バスである。

 まして今日は入学式。

 勝理と条件を同じくする生徒たちが溢れかえっている。

 

「──席を譲ってあげようとは思わないの?」

 

 バス内にそんな声が響いたのは丁度、その時のことだった。

 

 声に釣られて注目の目がそちらに向く。何も勝理だけではない、隣の綾小路を含めた数人の学生や利用者たちが声の方向を見た。

 

 声の主は正しく出勤途中のOL然とした女性、そんな彼女が声を言い放った対象は派手な金髪の髪を持つガタイの良い同じ入学生だ。

 入学生が座る席が優先席である点と、その目前に老婆が居る状況から見るに、場面は優先席を譲らないあの入学生をOLが詰っているというところか。

 ……ちょうど良い。

 

「そこの君、お婆さんが困っているのが見えないの?」

 

「実にクレイジーな──」

 

「ああ、見える。代わりに俺が代わろう」

 

 突然割り込んできた第三者にビクッと当事者たちが驚いた様に視線をこちらへと寄こし、周囲の注目も必然的にこちらに向く。

 態々、面倒な騒ぎの中心へと踏み込むマネをする勝理に対して、思わず隣の席の綾小路は「えぇ……」とでも言いたそうな微妙な顔をした。

 

「優先席だからと言って席を譲る義理はない。優先は、優先であって強制ではないからな。例えば乗務員に強制されない限りはそこの彼が席を譲る理由はないだろう」

 

「な、そんな──」

 

 一見して道理の正しさだけで思いやりのない言葉に、優先席に座っていた男子生徒を詰っていたOLの矛先が此方へと向きかける。

 しかし一息ついた後、勝理は続けて言葉を告げる。

 

「そして優先席だからと言って譲る義務がないように、優先席じゃないからといって譲ってはいけないという義務もまた無い。余裕のある者こそ、譲り合いの心を実行するべきだろう──ご婦人、俺が代わりに席を譲ります。それで如何に」

 

「まあ……ご丁寧に、ありがとねえ態々気を遣ってくれて。貴女も、私のためにごめんなさいね」

 

「い、いえ……私もすいません。勝手に熱くなってしまって……」

 

 勝理の言葉に老婆は礼を言う。ただ自分のために席を譲る譲らないで他人が口論になりかかっていたことに気を病んでいたのか。好意に甘える。

 同時に自分のために態々、形はどうあれこちらに気遣ってくれたOLの女性に感謝の言葉をつけた。それを受けて女性もまた毒気を抜かれたように言葉を返す。

 

 堂々と注目を浴びながら円満に事を解決した勝理は老婆に席を譲り、OLにも目礼する。これ以上とない見事な解決の手腕に周囲はやや感心したように注目を外していき、騒ぎの中心にいた女性も生意気な金髪の男子生徒に一度、不満そうな視線を向けたものの、問題が収束したことでこれ以上突っかかる理由を無くしているため、何を言うことも無く口を閉ざす。

 これにて車内の小さな騒ぎは解決した。……はずなのだが。

 

「ところで、金髪の君。一つ尋ねていいだろうか?」

 

 火中の栗を拾いに行くように勝理は平気でそもそもの元凶へ声を掛けた。優先席に座りながら老婆に席を譲ることをしなかった……少なくとも他人に協力的な態度を取る様子が見えない金髪の男に。

 こともあろうか普通に声を掛けにいった。

 背後で綾小路が遂に「えぇ……」と声を上げる。

 

「ふむ? 何かな道理を弁える生真面目なボーイ。先ほど君が口にしたように優先席だからと言って席を譲る義理は無い筈だが?」

 

「無いな。それについて異論はないし、これ以上何かを言うつもりも無い。目上に対する君の態度には物申したい点もあるが人には人の事情と性格があるし、現時点では君と俺との関係は他人でしかない以上、問い質す必要性があることではないだろう。今後関わるならば何処かで注意することもあるやもしれないが」

 

「その通りだ。しかし、ふむ、君は中々に道理と言うものを心得ているようだ……。いいだろう、先ほどのちょっとしたハプニングを代わりに収めてくれた例に君の質問とやらを聞こうではないか」

 

 フッと前髪を掻き上げながら気取った風に言う男の態度はとても鼻につくような様であり、いっそわざと人を苛立たせようとしているかのようだ。現に先ほど口論になりかけたOLの女性が無関係にも関わらず眉を顰めている。

 だが、対して勝理はその態度を特に気することもなく続ける。

 

「簡単な話だ。これから入学する学校について調べたのだが幾らか気になる点があった。授業内容、生徒の過ごし方、教師陣、或いは既に卒業している生徒の事情でも構わん。知っていることがあれば教えてくれると有り難い」

 

「……ほう?」

 

 その時、初めて金髪の生徒は「勝理を見た」。実に興味深げに、今までの適当な無象無象へ応じているような態度から面白いものを見たと。

 一方、再度注目している周囲の人間はあの傍若無人が服を着たような男子生徒と会話をしてみせる勝理に対して驚愕と関心の目を向けている。

 

「成る程、成る程。仮にも名門と言うだけはあるだねェ。他と変わらないつまらない場所かと思えば、君は中々に優秀なようだ。勿論、この私には劣るがね」

 

「恐縮する」

 

「その上で返答するが、残念なことに私も情報は持ち合わせていないのだよ。すまないね、生真面目ボーイ」

 

「いや、構わない。実に参考になった(・・・・・・)。宜しければ名前を聞いても?」

 

「フッ、いいだろう。私は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子にして、いずれ日本を背負って立つ人間となる者だ。よろしく、生真面目ボーイ」

 

「ああ、宜しく頼む、俺は三鷹、三鷹勝理だ。同じクラスになったならばクラスメイトとしても、宜しくして貰いたい」

 

「覚えておこう」

 

 金髪の男……高円寺と呆気なく、そして問題なく終わった。

 それを周囲の人間は珍妙なものを見たとばかりに、大小の差はあれど皆唖然としているが、勝理の方はそんな周囲の様子をやはり気に留めることも無く、そのまま立って綾小路、高円寺の言葉をかみ締めながら勝理は思索する。

 

「どっちも知らないか……」

 

 やはり情報は意図的に隠されている。

 そう見て間違いないだろう。

 

 またこちらは予想外の成果だが、如何にも唯我独尊といった高円寺だが態度はともかく優秀なのだろう。

 隠したわけではないが彼はこちらの意図に気付いていた。

 そして気付いていたということは彼もまた疑問に思い、勝理ほどかどうかは分からないにせよ、彼なりに調べたはずだ。

 その上で知らないという答えが返ってきたのだから……。

 

「……なるほど、どうやら一筋縄ではいかない学校であるということか」

 

 その時、バスの運転手が告げる。

 次は高度育成高等学校前──と。

 

 どうやら目的地に着いたようだ。

 これから始まる三年間高校生活……気の抜けないものになりそうだと一人予感しながら勝理はバスを降りた────。

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