テンノオト   作:オオミヤ

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第6話

アマネは凛たちに確保された後、よくドラマや映画に出てくるような、要人警護のための大きなバンに乗って護送されていた。運転手は大火だ。アマネの両隣りには凛が陣取り、そのすぐ後ろの席には東弥が座っている。

 

「大丈夫ですか?アマネさん」

 

凛が心配そうに顔を覗き込む。

 

「うん。大丈夫」

 

アマネは気丈に答えるが、内心気が気ではなかった。なにせ殺されるかもしれないからだ。それでもこの世界に留まったのは、自分になにが出来るか見極めるためだ。

 

「嘘つかないでください。手、震えてますよ」

 

「えっ」

 

慌てて手を抑える。

 

「嘘です。でも大丈夫じゃないみたいですね」

 

「‥‥‥」

 

カマをかけられ、あっさり虚勢が見破られた。アマネは俯く。

 

「異界人に、何かされたんですか?」

 

「‥‥‥ううん、そうじゃないの。ただ」

 

「ただ?」

 

殺される。その言葉が頭の中をぐるぐると巡っている。そのことを言ったら凛は守ってくれるのだろうか。それとも組織の命令を優先するのだろうか。

 

「りん先輩、私と初めて会った時のこと、覚えてる?」

 

「はい、勿論です。アマネさんから話しかけてくれたんでしたよね」

 

「うん、私が移動授業の場所が分からなくなって、それで一緒に教室行って‥‥‥6月だったよね?たしか雨降ってた」

 

「そうですね。木曜日でした。木曜日は移動授業多いから、つい忘れちゃうよねって言って笑ってました」

 

「あれから一緒に話すようになって、仲良くなって‥‥‥りん先輩のおうちにはびっくりしたけど」

 

「ふふ、すみません」

 

「でも何処かで納得してった言うか、びっくりしたけど、なんかやっぱりなって思って‥‥‥りん先輩、なんとなく普通じゃなかったから」

 

「こら、ちょっとどう言う意味ですか」

 

「ごめんごめん。でも、何回もりん先輩のとこにお邪魔して、一緒に遊ぶようになって、もう2年じゃない?私、今言うことじゃないかもだけど、りん先輩のこと大事だなぁって思ったの」

 

「アマネさん‥‥‥」

 

凛はしばらくアマネを見つめる。アマネには、アマネを見つめるその瞳に憐憫の情が含まれているように思えた。穿ち過ぎかもしれないが。

 

「私だって大事ですよ。何言ってるんですか」

 

「うん、ごめん。なんか言いたくなっただけ‥‥‥りん先輩」

 

「はい?」

 

「私、どういう風になっても、りん先輩のこと、恨まないから」

 

「‥‥‥それってどういう」

 

凛が問おうとした瞬間、バンが止まった。同時に、大火がこちらを振り返る。目の前には綺麗な高層ビルがそびえ立っている。都会の一等地、ビジネス街のど真ん中だ。

 

「ついたぞ。本部だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

幾重にも厳重に警護され、指紋認証、迷彩認証、カード認証をくぐり抜けた先に、アマネたちはやっと本部と呼ばれる場所についた。見たところ、普通の人が想像する会社と外見も中身もそう変わらないように思える。入った瞬間に受付が目に入り、そこの先にはいくつもの会議室やオフィスと思しき部屋やスペースがある。

大火は一行を代表して受付に向かった。

 

「畠山だ。保護対象を連れ戻した」

 

「はい、伺っております。理事長は自室でお待ちになっております」

 

その他二言三言交わした後、アマネたちは理事長室に向かうため、いくつもの会議室への扉に面している廊下を進んでいる。

 

「ここが本部なんですか?」

 

「ああ、まあ詳しくは久世さんから説明があると思うが‥‥‥久世さんというのはここの理事長だが‥‥‥ここが俺たちの本丸。政府直轄異界対策部隊日本支部東京師団。通称境界協会。どうだ、シャレが聞いてるだろ?」

 

「え?ええ‥‥‥はは」

 

正直微妙だ、なんて言ってはいけない。

 

「まあ名の通り異界に対してのあらゆる研究、対策はここでされてる。あとイギリス、中国、アイスランド、アメリカに支部がある。日本にはあと北海道、京都、長崎に師団があって、本部は国連直轄だ。まあ表向き、存在は無いものにされてるけどな」

 

「もしかしてこのビル全体がその協会なんですか?」

 

「ああ。このビルは主に情報を取り扱ったり、部隊が駐屯する本部で、研究を主にする場所は向かいのビルだ。この二つは地下エレベーターで繋がってる」

 

「ここ都会の一等地ですよね?そんな風に使われてるなんて知らなかった‥‥‥」

 

「一応ここはいくつもの会社が入ってるペナントビルっていう設定だからな。でもセキュリティは日本一どころか世界レベルだぜ?‥‥‥と言いたいところだが、どうやらさっきの騒動の時に敵に侵入されたらしくてな。どうなったんだか‥‥‥」

 

「え?でも随分綺麗ですけど」

 

「ここはカムフラージュのための階。襲撃されたのは上のフロア、オペレーターがいるところだ。そういえばその時に君の親父さんが出たぜ」

 

「親父さん‥‥‥?」

 

次の瞬間、凛が鬼のような表情で大火をひっぱたいているのが見えたような気がした。が、断じて凛はそんなようなことをする人物ではないはずだ。

 

「あ、アマネさん、私少し急用を思い出したので、ちょっと大火さんと行ってきますね。先に東弥さんと向かっていてください」

 

「う、うん」

 

「もうっ行きますよ!何考えてるんですか!」

 

「すまんすまん、つい口が滑って‥‥‥」

 

大火は凛に引っ張られて行った。

「‥‥‥行っていいか?」

 

「ああ、うん」

 

東弥が促して歩を進める。アマネはそれについて行った。

 

「お前、記憶‥‥‥」

 

「う、うん、戻ったよ。はなぶくろくん」

 

「だからかたいだってば‥‥‥いつからだ?」

 

「あのトカゲみたいなヒト? に会って、おかしいな?って。でもマスケさん‥‥‥あのエイに乗ってたヒトに戻してもらったんだ」

 

「異界人と話したのか?」

 

「うん。あれ、言っちゃまずかった?」

 

「いや、いい。あとでどうせ問題にならない」

 

アマネはおずおずと東弥の包帯で巻かれている右手を指差した。

 

「その、手の怪我、私のせいだよね。ごめんなさい!」

 

そう言って頭を下げる。

 

「あー、違うよ。これ昔からだから」

 

「そ、それに、あの時、君に酷いこと言っちゃって‥‥‥」

 

「あの時?」

 

「ほら、ソラ‥‥‥異界から出る時に‥‥‥」

 

「別にいいよ、気にしてない」

 

ぶっきらぼうに言い、進んだ先のエレベーターの前で止まった。東弥は懐からカードキーを出すと、それを認証機にかざす。すると、静かにエレベーターの扉が開いた。

 

「どうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

2人がエレベーターに乗ると、再び静かにドアが閉まり、特に振動もなく快適にエレベーターは上昇している。

 

「これ、本当に進んでるの?」

 

「ああ」

 

全く身体に感覚が来ないため、つい疑ってしまう程だ。

 

「あの、さっき、大火さんが私のお父さんがいるって‥‥‥」

 

東弥は言いづらそうに頭をかく。

 

「あー、それは‥‥‥くそっ、あの人、本当に‥‥‥俺も確かなこと言えないんだけど、うちの副理事の名前が立松なんだよ。だから俺もあれ?って思った」

 

「私、お父さんの仕事、聞いたことなかった」

 

「そうなのか?」

 

「というか、なんとなく聞けなかった。お父さん、しょっちゅう家空けるし、忙しそうだったから」

 

「‥‥‥そうか」

 

エレベーターが止まり、ドアが開く。その先にまた扉があった。東弥が扉をノックする。

 

「第3部隊第2班所属、花袋東弥です。保護対象である、立松アマネさんをお連れしました」

 

「どうぞ」

 

中から穏やかな声が聞こえる。

 

「失礼します」

 

東弥が扉を開けた。促され、アマネは先に部屋に入る。

理事長室は広く、一般家庭のリビングルームをさらに一回り大きくしたようだった。手前には来客用のソファ。奥には、理事長用と思しき人物が書斎机に手を顔の前で組みながら座っていた。髪をオールバックに固め、痩せぎすでどことなく狡猾な雰囲気が漂う男だ。

 

「どうも。君が立松アマネさんだね?私は久世。久世鳴海というものだ。よろしく」

 

アマネの姿を確認すると、久世は書斎机から立ち上がり、アマネの前に立って手を差し出した。アマネはその手を握る。

 

「た、立松です」

 

「君には詳しく聞きたいことがあるんで、こっちに来てもらった。‥‥‥しかし、大変だったね。しばらくゆっくりしていくといい。君のことは、我々が責任を持って保護しよう。確か、君はうちの隊員の雫山君と友人だったね?」

 

「は、はい」

 

「なら彼女を護衛につけよう。女の子同士なら安心だろう‥‥‥花袋君」

 

「はい」

 

「下がっていいよ。しばらく下で待機だ。まだしばらく警戒態勢は解かないよう乾、岩永両隊長に伝えてくれるかな」

 

「はい。‥‥‥少し、よろしいでしょうか」

 

「なんだい?」

 

「あまり、手荒なことはなさらないで下さい。彼女はうちのお嬢の大切な人、なので」

 

それを聞いた久世はしばらく黙っていたが、少しすると笑った。

 

「心配いらないよ。私だって丁重にもてなすさ。当たり前だろう?かすり傷一つだって負わせないよ」

 

「‥‥‥わかりました。失礼します」

 

東弥は丁寧に一礼して部屋から出て行った。久世はアマネの方へ振り向く。

 

「それでは、話を再開しよう。座って」

 

アマネは来客用のソファに促される。

 

「さて、君にはまず謝らなければならないことがある。君の記憶についてだ」

 

「‥‥‥はい」

 

「このことについては本当にすまないと思っている。当人の許可なく他人の頭を弄るなんてのは、本当はやってはいけないことだ。だが、私たちにはこの方法しかない。巻き込まれた人物を危険なことから遠ざけるためには、この方法が一番確実かつ無難なんだ。このことはわかってほしい」

 

「‥‥‥そして、なにも覚えてない人たちを殺すんですか?」

 

「なに?」

 

「私、聞いてしまったんです、あるヒトに。異界に迷い込んだ人を秘密裏に殺してしまうって‥‥‥。本当なんですか?それが、記憶を消すって意味なんですか?」

 

「‥‥‥なにか少し誤解があるようだ。私達は人間を守るための組織。同胞を殺すなんてことはありえない」

 

「でも、実際に確認したって‥‥‥!」

 

「異界人が言ったんだね?」

 

「‥‥‥っ!」

 

アマネは息を飲み込んだ。久世は表情を何も変えてはいない。語調も、姿勢も。ただ、彼の発する雰囲気が変わった。銃を突きつけられている感覚というものはこういうものをいうのか。

 

「‥‥‥はい。私を攫ったノウナです。彼が私の記憶を元通りにしてくれました」

 

それを聞いて、久世は息を長く吸った。気持ちが切り替わったのか。

 

「わかった。正直に話そう。確かに、我々は異界に迷い込んだ人間を処理した」

 

「私もですか?」

 

「違う、これはそういう話ではない。これには訳がある。それはーー」

 

「アマネ!」

 

突然、扉を乱暴に開ける音が背後で聞こえる。振り向くと、

 

「パ、パパ‥‥‥」

 

「アマネ!無事だったか!」

 

部屋に入ってきた男がアマネに駆け寄り、しかと抱きしめる。アマネもそれに応じ、相手の背中に手を回す。

 

「パパ、パパなの‥‥‥?」

 

「良かった‥‥‥!無事で本当に良かった!お父さん、本当に心配で心配で‥‥‥!」

 

久世が咳払いをする。

 

「すまないが、真剣な話し合いの最中だったんだが。用があるならノックをしろと毎回言っているだろう。それに下の階は大丈夫なのか?」

 

苦言を呈する久世を、アマネの父親は睨みつける。

 

「もう大丈夫だよ。所詮中身の無い傀儡兵だ。すぐ終わった。それより鳴海、アマネに怖い思いをさせてないだろうな! もし何かあったら‥‥‥」

 

「パパ、苦しいよ‥‥‥」

 

「ああ、すまん」

 

アマネの父親はアマネを解放する。アマネは父親を少し信用を失った目で見つめた。

 

「やっぱり、ここで働いてたんだ‥‥‥」

 

その目線に父親は少したじろぐ。

 

「黙っていてごめん。仕方なかったんだ、守秘義務があって‥‥‥それに、一般の目には基本的に触れない仕事で、アマネにも、アマネがもし関わらなければ一生言わないつもりだった」

 

「礼司!」

 

久世が語気を強める。

 

「まだ彼女と話が終わってないんだ。話の腰を折らないでくれないか」

 

「悪いな、交代だ。俺からすべて話をする。お前は青少年に悪影響しか及ぼさない存在だからな。これ以上アマネと接触させるわけにはいかない。さ、アマネ。お父さんの部屋に行こう。凛ちゃんも待ってる」

 

「う、うん‥‥‥」

 

部屋から出ようとすると、久世が立ち上がった。

 

「私も行く」

 

「おい、やめろよ。しつこい男は嫌われるって、音乃にも散々言われたろ?」

 

「お前では信用ならん。話をするのは構わないが、私が監督する。文句は言わせないぞ。理事長命令だ」

 

「‥‥‥わあったよ」

 

礼司は渋々頷いた。

 

 

 

 

 

 

礼司の自室は久世のものより少し小さく、仕事場という感じではなく、どちらかといえば本当に自室という雰囲気だった。具体的にいえば、バーのようなラウンジや大きなソファなど堅苦しくない家具が置いてある。

礼司は冷蔵庫を開けた。そこにはさまざまな飲み物が陳列されていたが、ほとんどは酒類だった。L字ソファに座った久世、凛、アマネに飲み物を勧める。

 

「アマネはコーラで良かったよな。凛ちゃんは‥‥‥」

 

「日本酒で」

 

「せんぱい‥‥‥?」

 

「これでもいける口なのよ?」

 

普通に違法だ。

 

「鳴海はスピリタスか?」

 

「殺す気か。水でいい」

 

礼司が出したのは牛乳だった。久世の額に青筋が浮かんだ。礼司はどかりと座り、ウィスキーを勢いよく飲んだ後切り出した。

 

「じゃあ、話の続きをしようか。鳴海、どこまで話したんだ?」

「異界に行った人物がこぞって死ぬ話までだ。彼女はそのことを異界人から殺されると言われたらしい」

 

「ど、どういうことなの‥‥‥?」

 

「異界に行った人間は死ぬんだよ。多分、大気の構成比率とかの問題だとは思うが、あそこはもともと人間が住める場所じゃないのさ。だから異界人が言ったことは多分、脅し半分か、それとも本当に気づいてないのか」

 

「え‥‥‥?」

 

異界に行ったら死ぬ。そのことはすぐには飲み込めなかった。

 

「俺たち戦闘員は、手術を受けて異界でも活動出来るんだが」

 

「じゃ、じゃあ私は? なんで生きてるの?」

 

「‥‥‥分からないんだ。それが。最初にお前が異世界にいるなんて行った時には、本当に冗談と思ったんだが」

 

「もしかして、花袋くんが異界に来たってことは、パパが?」

 

「ああ。お前の居場所が異界にあることを知って、凛ちゃんと東弥くん、あとは手の空いていた第4班のみんなを向かわせたんだ」

 

「‥‥‥そう」

 

「あの」

 

凛が小さく挙手する。

 

「私もあの時動揺していて分からなかったんですけど、どうして礼司さんはアマネさんが異界にいると思ったんですか?」

 

「それは彼女が行方不明になった場所が今まで一般人が異界に行った時と同じだったからだ」

 

久世が補足する。

 

「これも黙っていて悪かったが、我々の関係者には発信機を取り付けている。これは特別なもので、異界にいても機能するようになっているんだ。異界人が我々の関係者を攫っても居場所がわかるようにな」

 

「え‥‥‥」

 

アマネが少し軽蔑した目で父親を見る。礼司は恨みがましく久世を睨む。久世はどこ吹く風だ。

 

「じゃあ、私の行動を全部監視してたってこと‥‥‥?」

 

「ま、そういうことだが‥‥‥違う、誤解しないでくれ。発信機にはアラート機能があって、緊急事態に知らせが来るようになってるから、普段の行動までは見ていないんだ」

 

「ほんとに‥‥‥?でも、私が迷子になった時、りん先輩が私のことすぐ見つけてくれるの、不思議だったんだケド」

 

「‥‥‥すみません」

 

凛が深々と頭を下げる。

 

「違うよ。謝らないで。ただ‥‥‥パパ、最後に家に帰ってきたのいつか知ってる?」

 

「‥‥‥覚えてない」

 

「2週間前だよ? 寂しかったのに、パパは私の居場所知ってたって‥‥‥こんな仕事してて、言えないのは分かってたけど、でも‥‥‥。ちょっと、ひどいよ」

 

礼司は心底参ったような顔をしている。ちらりと隣の久世を見るが、久世はどこ吹く風だ。

 

「‥‥‥ごめん、バカな父さんを許してくれ」

 

「ヤダ。絶対ヤダ。一生根に持つから」

 

「参ったな、許してくれよ。頼むよ。悪気があったわけじゃなかったんだ。ただ、この仕事は本当に人間と異界の戦争なんだ。だから‥‥‥」

 

アマネは拗ねたように下を向く。凛すらも礼司を少し諦めたように見つめた。

 

「アマネさん、私の家に泊まってる時も、ほんとに寂しがってました。だから」

 

「分かってるよ。‥‥‥うん、たしかに音乃の言う通りだったな。‥‥‥ごめんな、アマネ」

 

「‥‥‥うん」

 

アマネの目尻に溜まった涙を、礼司は優しくハンカチで拭き取る。

 

「寂しい思いをさせて悪かった」

 

「‥‥‥うん」

 

ぐしぐしと袖で涙を拭くアマネを見て、久世は心なしか表情が軽くなった。

 

「本当に柚子さんにそっくりだな」

 

「‥‥‥お母さんを知っているんですか?」

 

「ああ、もちろん。彼女とは礼司が結婚する前からの中でね。もっというなら、礼司と私は幼馴染なんだ」

 

「‥‥‥え?」

 

アマネは礼司と久世を見比べる。

 

「本当?」

 

「ああ。そもそもこの組織は父さんと鳴海が作ったんだよ。さらに言えば、凛ちゃんの両親も幼馴染なんだ」

 

「‥‥‥そうなの?」

 

凛は悲しそうな顔をする。

 

「‥‥‥黙っていてごめんなさい。礼司さんのことは幼い頃から知っていて、実はアマネさんのことも‥‥‥」

 

「じゃあ、私たちが出会ったのって、偶然じゃないの?」

 

「それは‥‥‥」

 

「それは偶然だよ。本当に偶然だ。だからびっくりしたんだよ。アマネと凛ちゃんが友達と知って」

 

「じゃあ、りん先輩は、昔から異界の人と戦ってきたの?」

 

「‥‥‥はい」

 

「‥‥‥そっか。久世さん」

 

「なんだい?」

 

アマネは向き直る。

 

「なんで人間とノウナは戦ってるんですか? なんで戦わなきゃいけないんですか?」

 

「‥‥‥それを知ってどうするんだ?悪いが君をこれ以上巻き込むわけにはいかないんだ」

 

「私は‥‥‥なんでか分かんないけど、ノウナと話せます。だからもしできるなら、ノウナと話し合って、この戦争を終わらせたいと思ってるんです」

 

ソラのためにも、と心の中で付け加える。

 

「鳴海」

 

身を乗り出した礼司を鳴海は手で制す。

 

「‥‥‥もしできなかったら? 我々だってこの戦いを終わらせたいと考えている。20年前から続くこの戦いを。奇しくも今は膠着状態だ。特に3年前の大きな戦争でお互いに大きな痛手を負った。我々も多くの戦士を失った。だから、今の戦力は殆どが若者しか居ない。このままいけば、人類が滅ぶ。それが分かった上で、その言葉を言ったのか?」

 

「はい」

 

アマネは迷いなく答えた。なぜこんなにもうちから勇気が溢れるか分からなかったが、これが自分の使命だと信じて止まなかった。

 

「‥‥‥そうか。なら話そう。我々とノウナの因縁を。我々がなぜ戦わなければならないのかを」

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