大魔王軍総本部─絶海孤島ナザリック─   作:絶海孤島至上主義同盟

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ナザリック、絶海の孤島に転移する

 VR-MMORPG「ユグドラシル」は、最高のゲームだ。

 少なくとも、モモンガはそう思う。

 ユグドラシルは北欧神話を題材としたオンラインゲームで、プレイヤーは人間種(人間やエルフにドワーフなど)か亜人種(ゴブリンなど)か異形種(モンスター)の3つの種族から選び、その中からさらに種族(エルフなど)を選びプレイをする。

 異形種はモンスターと同じだからPKしてもいい(これを異形種狩りと言う)という風潮があり、モモンガ自身も被害に遭ったがそのおかげで最高の仲間に会う事が出来た。

 そして最高の仲間と共に9つある世界を旅し、笑い合い、喧嘩をし、苦難を乗り越え、喜び合った。

 仲間たちとギルドを立ち上げギルド長となり、ギルドランキングで数千あるギルドの第9位となったり、1500人もの大侵攻を返り討ちにしたり。

 幼くして両親を失ったモモンガにとって、ユグドラシルは人生であり全てだった。

 例え人気が衰え、ギルドメンバーがほとんど引退し、実質自分だけになっても。

 ユグドラシルがサービス終了になったとしても。

 モモンガにはユグドラシルしかなかった。

 

「そうだ、楽しかったんだ」

 ギルド拠点「なナザリック地下大墳墓」の最奥部。玉座に寄りかかりながら、モモンガはただ1人でそう呟いた。

 ユグドラシルサービス終了日にギルメン全員に集まらないかとメールをして、来てくれたのはほんの数人。その数人も既にログアウトしてしまった。

 明日ばかり4時起きだなと思いながら、モモンガは目を閉じユグドラシルを終えた。

「……ん?」

 そして、伝説が始まる。

 

(ユグドラシルが終わらない……バグか?)

 最初はバグを疑い、コンソールを出そうとするが出ない。強制ログアウトもGMコールも不発。

 モモンガは焦り、感情が爆発しかけた時。一気にそれが抑え込まれた。

 訳が分からず、戸惑っていると女性の声がモモンガの耳に届いた。

「いかがされましたか、モモンガ様?」

 声の方を見ると、そこには長い黒髪の絶世の美女が居た。

 彼女の名はアルベド。ナザリック地下大墳墓の最上位NPCだ。

「い、いや、何でも無い。ところでアルベド。お前はGMコールと言う言葉を知っているか?」

「……申し訳ございません。私にはじーえむこーると言う言葉が何の事か分かりません」

「そうか(か、会話してる)」

 もちろん、ユグドラシルでNPC喋り出す事はある。だがそれはプログラムを組んだ場合であり、この様に会話をする事など出来はしない。それに、アルベドが喋ると口が動いている。

 ユグドラシルでは、そこまで再現はされていなかった。

 先程の精神の沈静化───とでも言うべき現象───も加味すると、あり得ない───突拍子もない事ではあるが───ゲームが現実になったのかもしれない。

 確かめるには、だ。

「アルベド。今から1時間後までに、玉座の間に第4・第8階層守護者を除く全ての階層守護者を集めよ。次にセバス」

「はっ」

 跪いている執事服の老人が顔を上げる。彼はセバス・チャン。執事で家令という設定のNPCだ。彼も例に漏れず目には意思の光が見える。

「プレアデスを1人連れて周囲1㎞を捜索し、知的生命体が居れば極力戦闘は避け連れて来い。相手の条件は全て飲んでも構わない。戦闘に入ったのなら、プレアデスを逃がす事を優先し、情報を持ち帰れ」

 プレアデスとは、セバス直轄の戦闘メイドでメンバーは6人居る。詳細は割愛する。

「残りのプレアデスは第9階層へと上がり、侵入者を警戒せよ」

 最後に全員を見回し、告げる。

「行動を開始せよ」

「はっ!」

 一斉に玉座の間を出て行くNPCたちを見送り、モモンガは深いため息をついた。

(検証、検証だな)

 その後、魔法やスキルの検証をしたり、集まった階層守護者たちから忠誠の儀を受けたり、周辺が海に囲まれた絶海の孤島だと報告を受けたり。

 モモンガの心が休まる時間が来るのはまだもう少し先になるのだった。


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