あべこべ・フリート(仮)   作:仙儒

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この小説はネタの天丼になってます。

伏線何て存在しません。……タブン


頭を空っぽにして読んでください。


病院でまったり

「あの、その、宜しければ今度一緒にお食事でもいかがですか?」

 

「あー! 抜け駆けズルい!!」

 

 なぜ、こうなったし!

 

 って言うか事情聴取じゃないんかい。

 

 現在ブルーマーメイドの職員二人と俺と立石と艦長である岬が事情聴取を受けている。

 

 

 あの後、俺は海に投げ入れた立石をフィッシュし、大人しくなった立石の再採血をちみっこに頼み、採血をしてもらった。その間、抱えていた立石が猫のように俺に体をすりすりこすりつけてきていたが、あれは何だったのだろうか?

 

 そのあと、本物の猫が原因である鼠モドキをくわえてやって来た。その鼠モドキもちみっこにあらかじめ用意させていた虫かごに入れる。あとは専門家に任せることにした。

 

 それから修理や燃料、足りなくなった物資を補給中に事情聴取が行われることになり、反乱の意思がないことや、さるしまをどうして攻撃したのかの経緯を軽く話した。

 

「恐らく、どうしても晴風を反乱分子にして討ってしまいたかったのだろう。海上保安局の速すぎる対応に不審に思わなかったか?」

 

 考えればおかしな点が幾つもあるだろう? その言葉にブルーマーメイドの二人は黙り込む。晴風生徒である二人の顔には陰りが差す。

 

 今回の件、宗谷家の権力と晴風のクラスに宗谷家のご息女がいたから何とかなっているが、恐らくは相手も責任逃れを考えて死に物狂いで次の手を打ってくるだろう。そうなれば、幾ら宗谷家の影響力強しと言えど、何時までもつか…。

 

 絶望ついでに伝えておく。

 

 晴風クラスの岬と立石はショックを隠し切れないようだ。隣に座っている岬は微かに震え、俺の制服の袖をちょこんと握っている。

 前髪に隠れて顔は伺えない。

 

 まぁ、そうならないための俺なんだけどな。

 

「岬、すまないがお前に渡していた通信端末を俺に返してくれないか?」

 

 その言葉に岬はポケットから長方形のスティックを俺に差し出す。

 それを受け取ると端末を起動する。

 

「状況証拠はこちらにあります。物的証拠もあなた方の情報端末に送ります。これで晴風と宗谷家は大丈夫でしょう。他に聞いておきたいことがあれば……」

 

 最初こそブルーマーメイドの二人は目を白黒させていたものの、状況を飲み込めてからは速かった。

 

 

 すぐさまボイスレコーダーのスイッチを切り、彼女は居るかとか、好きな女性の好みとか、好きな食べ物の事とか根掘り葉掘り聞かれて冒頭に戻るわけだ。

 

 

 因みに俺はこのままブルーマーメイドの艦で保護されることが決定された。俺は晴風に残ると言ったんだが、怪我の状態から、速くちゃんとした機器がそろった病院で手当てを受けることを決められた。

 まぁ、それもそうか。

 

 

 

 それで、晴風と別れてブルーマーメイドの艦に。

 

 それから何日かその艦の医務室のベッドで横になって過ごした。

 

 入れ替わり立ち代わりにブルーマーメイドの職員が来たから暇はしなかったが、君たちはそんなに暇なのかね? 少し疑問に思った。

 

 港に着くと、そこには救急車が一台待機していた。流石に大げさすぎだろうと思ったが、せっかく待機しているので乗っていくことにした。

 

 男性専用病院とか言うのに入れられて、早速検査を受けた。脳波心電図その他諸々異常なし。血液検査だけ結果をジャスティスがこの世界の男性の平均的なものとすり替えてくれた。コーディネーターは遺伝子をいじっているのでその結果が出るのはまずいんだよね。後は助けられる前後の記憶が無いことにしたら、一気にその場の空気が死に、急いで心療内科の病棟に移された。どうやら助けられたのを女性たちに囲まれて過ごしていて、極度のストレスでそうなったのではないかと言うミラクルな結論に至ったらしい。この世界の男子、どんだけ女性嫌いなんだよ。状況的に考えて100%頭の傷のせいだと思うだろ普通。

 

 で、専属のカウンセラーがついた。男だ。そのカウンセラーにそう言えばこの病院に入ってから男性しか見かけていないがとさりげなく探りを入れたら、「大丈夫ですよ、ここには男性しか勤務してませんから。女性におびえる必要ないですよ」と返ってきた。マジか……、何が嬉しくて野郎の花園に放り込まれなきゃならないんだよ。

 

 そんで、まずは自己紹介から始まり、住んでいる所はどこかとか、その辺を聞かれた。開始二つ目の質問につまずくとは……、そもそも俺の設定どうなってんの? ジャスティス? 問いかけると珍しく、ジャスティスから返事が返ってこなかった。まぁ、ジャスティスが用意したものなので疑われる余地のないものだとは思うし、ばれることもないと思うが。

 

 俺が沈黙したのを深刻そうな顔をしながらカルテに何かを書き込んでいくカウンセラー。結局、ほとんどの質問に答えることができなかった。

 

 質問が終わるとカウンセラーは速足で出て行ってしまった。

 

 手持無沙汰になった俺は端末を手にする。開くのは俺がアスランになる前の世界でのヒット作品(主に小説等)をジャスティスのアドバイスを受けながら俺流に少し書き換えた二次創作だ。

 因みに前の世界では八年越しの花婿が大ヒットした。まぁ、俺の前々前々世で大ヒットしていたので、当然と言えば当然だが…。前の世界ではネウロイの襲撃により記憶喪失になった花婿の設定をこの世界に合うように、書き換える。

 この世界では日本は海洋大国だから無難に、旅行中に水難事故に見舞われて記憶を失った花婿にするか。他にも細かいところを修正する。

 

 

 修正が終わった後は、前の世界から書き続けていた日記を書く。この世界ならば、前の世界のことをラノベとして書いて出しても売れそうな気がするな。いや、まぁ、売れたいから書くわけではないんだけどさ。

 

 どこかのアニメで言っていたけど、その時代に起きたあらゆる出来事に足搔き、もがき、苦しみ、傷つきながらも進み続けた努力を、栄光を無かったことにはしたくない。例え皆が忘れても、俺だけは覚えておかなきゃいけない。

 

 それにしても暇だな。暇だと色々ブルーな気持ちになってしまうから困る。と言うか、ジャスティス、何でさっき俺の念話無視したの? 今までそんなことしなかったじゃまいか。え? 寝てた? そんな一秒でばれる嘘つくんじゃないよ。全く…、今回はそういうことにしといてやる。ジャスティスにはいつも世話になってる。決して俺のマイナスになるようなことをする奴ではないのはこの俺が一番理解しているつもりだ。故に何か理由があるのだろう。

 

 最初からわかりきったことを聞いたのは、俺の暇つぶしのためだ。気持ちを切り替えないといざというときに対応できない。要は、ブルー一色に染まりつつあった思考を切り替えるきっかけが欲しかったのだ。

 以前はチェスに将棋、果てはしりとりまでやったが、未だに一度としてジャスティスに勝ったことは無い。そのたびにアスランの負けず嫌いが発動したが、結局、勝てなかった。それで、三日三晩寝ずにありとあらゆる戦術書を読み漁ったり、戦法を考えたりしたことがあった。これには流石のジャスティスも予想外だったようで、わざと負けてくれたが、それがショックだったのと、寝ずのフル活動が重なってぶっ倒れたことがあった。それ以来、ジャスティスは将棋、チェス、しりとり。戦術に繋がる暇つぶしは断るようになった。

 

 俺が、日記や小説を書きだしたのは、それからだ。

 

 ニールマンに発見されて死ぬほど恥ずかしい思いしたんだけど、マジ泣きしているニールマン見てちょっと引いた。

 まぁ、あの世界は戦争戦争で娯楽に飢えている所もあったから……、皆元気かな?

 

 

 また、ブルーに成りかけた気持ちを切り替えようとしたときに、何かを言い合っているような声が微かに聞こえた。

 

 何だろうか? 数日間寝たきりの生活だったが、そのおかげか、立ち上がって普通に歩ける程度には回復した。

 

 丁度いいので、野次馬にでも行こう。

 

 

 病院内はちょっとした高級ホテルみたいな感じだった。エレベーターに乗り込み、下の階に向かう。

 

 エレベーターの扉が開くと、エントランスホールの方から女性と男性が言い合っている声がする。あれ? 女性は居ないのでは? と一瞬思ったが、入院している方のご家族だろうと思い至った。

 

「ですから、重要参考人としてこの方の事情聴取をしなくてはならないんです。面会の許可をお願いいたします」

 

「何度も言ってますが、彼は今、精神的ショック等で面会できる状態ではありません。お引き取りください。幾らブルーマーメイドの方でもこれ以上無理強いをすると言うならば、男性保護法に基づいて警官を呼びますよ。聞けば、この患者さんはブルーマーメイドに拘束されて過ごしたそうじゃないですか。それが最大の原因だと我々は判断しています。せめて、ホワイトドルフィンの方に代わって頂きたいですね」

 

「拘束したわけではありません、保護したのです」

 

 対応している受付スタッフは丁寧語を使っているが、嫌悪感を隠しもせずに女性に応対している。毒も吐いてるし。

 それにしても、この世界の男性は女性を嫌いすぎてないか?

 

 その光景をなんとなく眺めながら自販機で買った紙パックのジュースを飲む。

 

 ジュースを飲み終わる頃には女性の方が折れて、エントランスから病院の外に出ようとしていた。流石に気の毒に思ったので紙パックのジュースを買い、女性に近づく。

 

 俺が紙パックのジュースを頭に乗っけたことで、女性はようやく俺と言う存在に気が付いたらしい。

 

「頑張って」

 

 そう言ってウインクを決める。少しハニカムのも忘れない。やっておいてなんだけど、これ、恥ずかしいな。我ながらこれは無いわ。そのまま逃げるようにエレベーターに乗り込む。

 

 ああああ、恥ずかしい。もう少し考えて行動しよう。絶対何アイツって思われたわ。

 

 今度から気をつけよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱりと言うか、何と言うか。私じゃ通してくれないか。

 

 今回の事件のカギとなりえる人物がまさか男性だったなんて……、古庄教官のお見舞い兼、事情聴取を先にしたのが不味かったかな? こんなことなら部下たちに頼んで足止めしてもらうべきだったか?

 

 だめだ。そんなことをすれば世論が黙ってはいない。

 

 はぁ、妹のましろじゃないけどついてないわね。

 

 ホワイトドルフィンも一枚岩じゃないし、こういう時に信頼できて、かつ、連帯を取れれば良いのだが……、

 

(こればかりはどうしようもないか…)

 

 世の男性が女性のことを良く思っていないことは知っているつもりだ。

 

 年々、減り続ける男子の出生率に反比例するように増え続ける女性の男子に対する犯罪率。この間も、国会議員が男性を監禁していて逮捕されたと言う事例があった。男性は精神崩壊を起こしてしまったと言う最悪のケースだった。

 

 その他にも様々な理由から男は女を嫌う傾向にある。

 

 立場上、私もホワイトドルフィンの方と話す機会があるが、皆、不機嫌さを隠しもしない。

 

 今回のような対応がテンプレートとなっているが、未だに慣れないな。部下の中には、その蔑まれた様な態度がまた良いというものも居るが、私はそうは成れなかった。

 

 現在進行形で蔑んだ目、或いは敵意を孕んだ視線が私を見つめている。

 

 

 私が他の女性から一歩引いて物事を考えたり見つめたりできるように成ったのは9年前の、夢のような出来事を目の当たりにしたからだと思う。

 

 一切の敵意も嫌悪感も孕まない宝石のような瞳。

 

 作り物の人形のような輪郭。

 

 そして、態度。

 

 きっと、紳士と言う言葉は彼のためにあるのではないかと思ったほどだ。

 

 それ以来、他の女性に比べて男性と言うのを強く意識できなくなった。寝ても覚めても思うのはあの日、諏訪神社でたった一回しか会ったことのない彼だけ。

 

 これが恋と言うのに気が付いたのは、ブルーマーメイドになりたての新人の時。先輩の方たちに言われて気が付いたのだ。男に興味がないのか? そう問われて。そのまま思い出話を強引にさせられて、それは『恋だ』と。

 

 そうか、この気持ちが恋なのか……。

 

 まぁ、そんな女の理想が体現したような男は居ない、少女漫画や小説の読みすぎだと否定されたが。

 

 気が付いてからは速かった。周りの同僚をよく観察し、どういう態度を男性が嫌うのか、研究した。幸い、ブルーマーメイドは仕事の関係上、ホワイトドルフィンの方たちと最低でも年に1回は合同艦隊演習がある。

 

 それらを基に淑女としての在り方を見つめなおし、結果として、他の女性よりは男性の風当たりは弱くなった。

 

 ごく一部ではあるが、同性からもモテるように成ったのは全くの誤算だったけど……。

 

 とにかく、全てはあの忘れられない彼に嫌われないため。我ながら執念深いと言うか、何と言うか。きっと彼と出会った瞬間に私はもうおかしくなってしまったのだろう。

 

 もう会えるとは思えないのに。

 

 

 頭に何かが乗せられる感覚に意識が現実に引き戻される。

 

 

 え?

 

 えっ、えっ?

 

 そこには9年前の彼の姿があった。

 

 違ったのは着ている服が患者服に変わり、頭には包帯を巻いていたが。

 

 

 

 ――――頑張って

 

 

 

 声が出なかった。

 

 夢を見ているのではないかと思った。

 

 流し目をしながら、優しい微笑を浮かべている。

 

 その横顔に見惚れていた。

 

 陽だまりのようなその笑顔、忘れる筈がない。

 

 少しの間、身動きができなかった。脳の処理が追い付かなかった。

 

 急いで振り返るが、彼はいなかった。

 

 白昼夢……だったのだろうか?

 

 未だ、夢心地だったが、彼に触れられた頭に手を乗せてみると、何かが置かれていた。

 

 それを掴んで見てみると紙パックのジュースだった。

 

 それが、先程の光景が夢や幻でないことが実感できた。私は今、どんな顔をしているだろうか? きっと人さまには見せられないようなだらしのない顔をしているのだろう。

 それと同時に、また名前を聞くのを忘れてしまった自分のことを少し恨めしく思うが、それ以上に満たされた感覚が私を支配した。

 

 ……、彼は患者服を着ていた。つまりは、此処に来れば彼がいる。まだ名前も知らない彼が。チャンスはゼロではない。それだけが私の心に甘く染み渡る。

 

 今はそれだけでいいか。

 

 お仕事…、頑張らないと。また明日来よう。

 

 彼とはまた遠くないうちに会う気がする。女の勘だ。

 

 その時には、私もありったけの笑顔で伝えるのだ。

 

 

 私、宗谷真霜の名を。

 

 そして、名前を教えてと。

 

 

 

 

 

 余談だが、部下から自慢メールに彼の姿が送付されていたのを見て、思わぬ所で彼の名を知ることになるとはこの時は知る由もなかった。




評価を頂けるのはありがたいのですが、低評価をするのならば、理由を書いてくれると嬉しいです。

それを改善できる文才が私にあるかは別ですけど……。

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