エターナる短編集   作:ENE

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――これは、とあるメイド狂いが最高のメイドになるまでの物語だ。
CV:緑谷



OVERメイド(原作:オーバーロード)

――サービス終了前、現在地:ナザリック地下大墳墓。

 

 

 

「はあーっ、ついに終わっちゃうんですね……」

 

しょぼくれた顔をした骸骨頭が、黒き円卓の一席にて虚空を見上げて呟いた。

 

十二年の長きに渡るユグドラシルのサービス終了。己が幸福の全てを其処に見出していた独身男の切なる想いも、あと十数分ほどで過ぎ去った過去と化すのだろう。

ギルドの長たるモモンガが、もう一度、溜息と共に己の気持ちを吐き出した。

 

「ユグドラシル、楽しかったなあ」

「――ええ、まったくもって素晴らしいメイドゲーでした」

 

(いやメイドゲーって何だよ。ユグドラシルはそういうゲームじゃないからねっ?)

 

鋭いツッコミは言葉にならず、モモンガの胸中のみにて溶けていく。

独り言のような骨の呟きに対する素直な相槌、方向性が迷子になった頓痴気発言。

本来ならばモモンガ一人きりだった筈の円卓の間にて、彼と終わりを共にする人影が、立っていた。

 

衣装の大半を白で統一した改造メイド服。

白に限りなく近い銀の長髪、その頂点にはホワイトブリムが揺れている。

涼やかな青の視線と、自信に満ちた小さくも柔らかな微笑み。

白銀色の麗人。優美なる侍女姿。かつて設けられた円卓四十二席、その最後の一つを埋める者。

 

――至高のメイドが、其処に居た。

 

 

「あの。最後くらい、座りません?」

「メイドが自室以外にて椅子に腰掛け気を抜こうなど言語道断。私は此方で充分です」

 

モモンガの気遣いを一息で切り捨て、円卓の一角、己のために割り振られた座席の背後にじっと立つ。

それを見て、骸骨男が溜息を吐いた。

 

相も変わらず筋金入りのロールプレイヤー。もはや二人しか居ないナザリックの中、最後くらいは一緒の目線で、なんて考えていた寂しがり屋のモモンガなのだがこの通り、取りつく島も無さそうだった。

同ギルド員たる彼の溜息を聞き届けてか、言い訳のように『冥土降臨』エフェクト(総課金額200円)を背後に光らせる白銀メイド。それでフォローのつもりだろうか。思わず笑ってしまったモモンガは、人が好いにも程がある。

 

「色々ありましたねえ……」

 

これで三度目、モモンガがまたも小さく呟いた。独り言のような、思い出語り。

 

思い返すのはユグドラシルにおける様々な出来事。彼にとっての宝物。

恩人であり憧れだった人との出会い。ナザリック地下大墳墓の初見攻略にギルド武器用素材集めの集団苦行。我らがギルドの黄金期、色褪せない思い出の数々。櫛の歯が欠けるように姿を消していく友人達。

そして何より、最初から最後まで変わる事無くメイド狂いで在り続けた、今も此処に居る白銀のメイド。

 

ふふ、とまたも骸骨が笑みを零した。

 

「《メイド召喚魔法》とか、きっと早々に引退した人達が聞いたら「何だそれ!?」って笑うんだろうなあ」

「運営は実に良い仕事をしました」

 

ふんす、とメイドが豊かな胸を張る。無駄に可愛い仕草であった。

必要以上に肌を晒した改造メイド服から覗く真っ白な素肌と胸の谷間が実に眩しい。ただのゲーム用外装とはいえ異性に免疫の無いモモンガの視線はついつい泳ぎ、なるべく見ないようにと逸らされた。当然メイドはそれに気付いた。

 

閑話休題。

 

かつて、アインズ・ウール・ゴウンが誇るメイド狂いの成した偉業の一つ。

世界級アイテム【五行相克】を用いた、魔法システムの一部変更要請――《第N位階侍女召喚(サモン・メイドサーヴァント・Nth)》魔法の創造。

 

運営が狂った。

いや運営は元から狂ってる。

またAOGがやらかした。

糞運営が神運営になった日。

 

――等々、当時は随分と騒がれたものだが、そんなものは未だ序の口だった。

 

 

ほう、とメイドが物憂げな溜息を吐いた。

 

「心残りは、ついぞ理想のお嬢様を見つけられなかった事ですね」

「ゲーム内で探すものじゃないと思いますけどね????」

 

このメイドはメイド狂いだ。

装備品は当然ながら総神器級のメイド装束で、口調も振る舞いもやっぱりメイド。そのプレイスタイルは徹頭徹尾メイドを意識し、同ギルド員であるメイドスキー戦隊はデザイン担当のホワイトブリム氏を筆頭としてヘロヘロにク・ドゥ・グラース他、謎の熱気に悪乗りしてきた他メンバーさえもを手懐けて、己がメイド道を邁進してきた。

 

リアルでは何をやっている人なのか、という点に関しては一切不明な白銀メイド。

メイド狂いはリアルメイドなのか、否か。ゲームだからこそ狂える類のファッションメイドなのかも知れぬ。

顔や本名に職業はおろか、実のところ年齢性別も不詳のままだ。聞こえる声は間違いようなく綺麗な女性のソレであったが、「最近は超高品質なボイスチェンジャーもあるから」と、こっそり男性説を推していたナザリック一の問題児るし★ふぁーという阿呆も居た。

 

とはいえそんな話は今更というか、ギルド員大好きなモモンガとしては元々追及する気だって無いのだが。

 

「仕える相手って男性じゃ駄目だったんですか?」

 

たっちさんとか。と、身内贔屓にかつての憧れも相まって、知人の名前を挙げたモモンガ。

が。

駄目です。と、あっさり切り捨てられる。どうやらメイド狂いにはメイド狂いなりの定まった理想があるらしい。

 

「ギルド長、私は私の理想とするお嬢様にこそお仕えしたいのです」

 

求める立場はレディースメイド。女主人の傍仕え。

 

そしてこれまた言外に、未だ諦めてはいないのだと気炎を上げる。操作キャラクターの頭上に輝く感情アイコンも、やる気満々だと告げていた。

はえーっ、と呆けたように感心するしかない。モモンガの感情アイコンもなるほどなー、と頷いている。

 

溢れかえるほどの熱意を注ぎ込んだユグドラシルが終わりを迎える今この時に、それでも彼女は全くその意気が衰えていない。果たしてゲーム終了のその後に、いかなる努力を続けるつもりなのかも当人以外には知り得ないものだったが――。

 

 

「がんばって、くださいね」

 

 

ユグドラシル以外に何も持っていないモモンガは、そんな彼女の熱意に対して精一杯の言葉を送った。

まったくもって飾り気の無い、人によっては気持ちが籠ってないぞ童貞、なんて彼の言葉の上っ面だけを読み取った文句を返すだろう真っ直ぐな励ましに対して。

 

 

「――ええ。勿論ですギルド長。その時は、必ずや貴方にも私の御嬢様を紹介します」

 

 

白銀色に輝くメイドが色艶のある頬を緩めて、とても美しく微笑んだ(・・・・)

 

 

 

00:00:00

 

 

 

――サービス終了後、現在地:異世界。




アズレンのベルファストがデザイン可愛かったので書き上げた話。
勿論続かないです。
以下、設定めも。

 オリ主
メイド狂いの銀髪メイド。全体的に白い。巨乳。
世界級アイテム二十の内、【五行相克】と【永劫の蛇の指輪】の二つを用いてメイド召喚魔法の創造、及びメイド種族レベル&メイド職業レベルを運営に実装させた、アインズ・ウール・ゴウンの誇るメイド狂。
【永劫の蛇の指輪】によって種族と職業双方のメイドLv実装を同時要求した際、運営からは「流石に一度で二つ以上を頼むのはNG」と至極常識的な返答を受け取ったのだが「世界の可能性はそんなに小さくない(おこ」と迷言で返した結果、糞運営の極々一部に実に糞運営らしい熱意の火を灯して後の栄光を勝ち取った、ユグドラシルにおける迷レジェンドの一人。
上記の、通称『冥土級(メイデン)アイテム事件』によってwikiに専用ページが設けられた。
――中の人は異世界転移を事前に知り得ていた転生者かもしれないし、メイドに狂ってしまった世界最高峰の近未来製人工知能かもしれない。

 メイド召喚魔法
正式名称《第N位階侍女召喚(サモン・メイドサーヴァント・Nth)》。Nは自然数、1~10の位階数が入る。
その名の通りメイドモンスターを召喚する位階魔法。
ただし召喚されるメイドモンスターはあまり強い方ではないため、戦場においては見た目可憐なメイドさん達が荒くれた冒険者連中の無慈悲な暴力によって次々と薙ぎ倒されていく様から絵面が最悪極まりない。
華やかな見た目とメイド召喚という一発芸的な需要はあるが、種族or職業のどちらかでメイドLvを一定数取得する必要があるため実情としては不人気に当たる。オリ主は当然超位まで極めた。
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