エターナる短編集   作:ENE

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とあるの世界に生まれた転生オリ主が盛大に拗らせる話。シリアス。
クロスオーバー要素『とある魔術の禁書目録』×『ジョジョの奇妙な冒険』

※Arcadia SS投稿掲示板とマルチ投稿。


とある虚空の黄金心臓(原作:とある魔術の禁書目録)

転生した。

色々と言うべきことも説明しなければならないことも多々あるが、つまりはそのたった一言に集約される。

 

爆走するトラック。轢かれそうになる子供。手を伸ばして駆け出して、小さなその背を押し出すと同時に己の肉体が強く強く跳ね飛ばされた事を確かな記憶として今この時に至るまで保持し続けていた。

 

真っ白な空間で、誰かと短い言葉を交わす夢を見る。

薄っぺらい黄金のDISKが、頭から内側へと沈み込む不快感。同化するナニカの存在。

――君は生まれ変わるのだ。微笑む誰かがそう言って、己の全てが落ちていく。

そうして生まれる。転生する。

 

だから今日も彼の背後には、転生の特典として下賜されたソレ(・・)が静かに佇んでいる。

 

 

「あぁー、地球爆発しねぇーかなぁー」

「何言ってるんだ、ジョーマエ?」

「なんでもないですじょー……」

 

クラスメイトの問い掛けに、いつも通りの欝々とした声で答える。

両手をズボンのポケットに捻じ込むと、人並み外れた長身がだらしない猫背になって歩き出す。

錠前(じょうまえ)発条(ぜんまい)。高校生、男子。

筋骨隆々とした男の肢体、伸びっぱなしの黒髪、その奥に金色の両目を光らせる大柄な少年こそが、この物語の主人公である。

 

「ファミレス行こうぜ、ファミレス。あっこのバイトちゃんが可愛くてなー!」

「激しく金が無い」

「……奢らねぇぜ」

「……そこは奢ろうぜ」

 

並んで歩く友人との他愛のないやり取り。

つまらなくはあっても決して不快なものではない、そんな軽い言い合いを終えて。

ちらりとだけ、その金色の瞳が錠前自身の背後を見遣る。

 

そこには一人の巨漢が佇んでいた。

――佇んでいた、だけだ。

 

「うりぃィ……」

 

小さく、隣を歩く友人にさえ届かないほど小さく細く。

高くもあり低くもある声で不快そうに短く唸り、少年は強く振り切るように友人の背を追った。

 

 

 

 

二年次 一学期末 身体検査

錠前 発条/ジョウマエ ゼンマイ

判定:無能力者(レベル0)

 

 

 

 

大きな舌打ちが一つ鳴る。

 

期末考査と合わせて行われた身体検査(システムスキャン)の結果。相も変らぬ文字列に、錠前は苛立ちを隠せなかった。隠す気さえも、遠い昔に無くして久しい。

男子寮の一室。友人と別れて一人きりになった彼は部屋の中心にうつ伏せて、手に持った一枚の紙を宙に放った。

 

 

――錠前発条は無能力者だ。

 

転生。

一度死に、神を名乗る謎の存在に今一度の生を与えられた当初、彼は希望に満ち満ちていた。

かつて、精一杯に努力するだけの気概も無く、気概を持つに至る理由、何の目標も得ぬままに、だからといって誰かに誇れるような『特別』だって持っていない一凡人。それが死ぬ前の彼だった。

 

期待は、した。

生まれた瞬間から一定以上の知識と経験を持ち、神様じきじきに与えてくれた特殊能力もある。

うまくいくと思ったのだ。

今度の人生は頑張れる、きっと自他共に誇れる『何か』になるのだと。

 

それが例え自らの行いとは一切無関係で、偶発的に、赤の他人から与えられたに過ぎないチャンスでも。

かつて違う名で生きた彼は、錠前発条と名付けられた新しい自分であれば精一杯、一生懸命に生きていけると信じ、その想いのままに努力し。

 

失敗した。

挫折、した。

その責任は、全てが彼に起因するわけではないけれど。

 

 

――此処に、学園都市という街がある。

高い壁に囲まれ、外界とは隔絶した技術力によって『超能力』を開発する。そんな夢のようなものがこの世界には存在していた。

 

当時の彼は焦っていた。

持って生まれた知識と経験によって、彼は周囲から優れた人間として見られていた。スタート地点が違うのだから当然といえば当然の状況に、しかしたった一つだけ影を落とすものがあった。

 

能力が、――神様からもらった特殊能力が扱えなかったのだ。

 

学園都市というものの存在だけは知っていた。両親も優秀な彼を見て、自慢の息子を学園都市に入学させようと考えた。

扱えない、生まれ持った特殊能力。学園都市で開発する超能力。どちらをどう望んだかはともかくとして、彼は、学園都市で行われる『能力開発』にこそ期待した。

 

誤解無きように述べるなら、錠前発条は努力していた。

生まれ持った優位性を失くしてしまわぬよう、独り学び、皆と遊び、万事において結果を出し続けてきた。その姿は、転生の実情を知っていてさえ紛う事無き神童そのもの。

学園都市に行こうともその生活を変えるつもりなど全く無く、彼は一生懸命に、頑張ろうとしたのだ。

 

そして入学と同時の身体検査。

 

能力の発現は――確認された! 彼は歓喜の声を上げ、周囲の大人達も新たな能力者の誕生に口端を歪めて取り囲む。

だが問題があった。大きな問題が。

 

学園都市の科学者たちには、ソレ(・・)が何なのか分からなかったのだ。

 

確かに、ある。視覚では捉えられず、聴覚、触覚、五感全てにおいて認識は出来ない。だが、ありとあらゆる観測機械を用い、あるいは通常の法則からズレた感覚を持つ能力者に観せてみれば、確かに、ある。

 

――居る(・・)

そう表現するべきナニカが、錠前の傍ら、当時小さなその背の後ろには立っていた。

 

身長は成人男性の平均よりも大きく、恐らくは人型。筋骨隆々と思いきや、人間には存在しない造形も全身のそこかしこに見える――ような気がする。その程度。

 

Stand By Me.

幼い少年の傍らに立つもの。通常の感覚には捉えきれない何か。

何をするでもない。何が出来るでもない。何が居るのかさえ、明確に理解することは出来なかった。

錠前本人に問いかけても、そこに立つ何かの姿がより詳細に知れるだけ。幼い彼が必死に口にしたそれの名前など、そもそも研究者達にとっては何の意味も無い戯言だ。

 

ソレはそこに立っているだけだった。

 

錠前が前へ進めば同じだけ前へと進み、動かなければ変わらぬ位置に佇むのみ。

何も無い。何もできない。確かに在ることは分かったが、だから何だというのだろうか?

開発できなければ意味が無い。発展性の無い研究に、いつまでも時間と資金をかけてはいられない。

 

一度目の身体検査から、二年の後。果たしてそれは、長いものか短いものか。

錠前発条は先天的能力者『原石』の一人と診断されて、だが何の成果も、利益も生まず、唐突に放り出されることになる。

 

その日から先は何も変わらない。

 

二年間のたらい回し、芽の出ない実験、研究。向けられる視線の色がただ一つに染まりきるには一年もあれば十分で。成果の無い事に誰よりも強い焦燥を感じていたかつての少年の精神は、少しずつ歪んで、濁り始める。

 

元より、そこまで強靭な精神性を有していたわけでもない。

気がつけば努力をする事も酷く億劫になり、もはや世界が輝いて見える事などついぞ無く。

 

とある一人の主人公は、未だ何者にもなれず、この街に居る。

 

 

 

 

うつ伏せのまま、瞳を僅かに横へと逸らす。

 

見えたのは黄金の爪先。

更に見上げるように視線を上へとずらしていけば、全身を黄金色に輝かせるナニカがそこに居た。

はち切れんばかりに逞しい肢体。全身に纏う甲冑染みた装甲。節々にはハートの装飾。

錠前発条が赤子の時からその傍らに立つ、物言わぬ彫像。

 

「……ざ・わーるど」

 

呟いてみたが、黄金の巨漢は身じろぎひとつせずに錠前の姿を見下ろしている。

昔から。

その存在に気づいた時からそうだった。

 

命じても、動かない。願っても、動かない。

いつも。いつも。何時まで経っても。常に自分の背後、何を語る事も無く立ち尽くす雄雄しい様に、時折、酷くストレスを掻き立てられる。

 

「【ザ・ワールド】ッ!!」

 

叩きつけるように叫びを上げて、吐き出しきれない感情を、拳を床に突き立てることでようやくゆっくりと飲み込んだ。

 

それでもやはり、背後に佇む黄金の巨漢――【ザ・ワールド】は応えない。

 

転生する際、神様によって与えられた特殊能力。

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第三部において、最後の敵が使用した能力。不滅にして最強の幽波紋とさえ言われるもの。

頭部へと物理的に沈み込むスタンドDISKの不快感には絶叫さえしたものだが、己の内側に同化すると同時に理解した能力、その名称、見知った力の形に彼は強く感謝し、喜んだ。

 

転生して、その存在を直に目にして、自分には扱えないという現実に直面する、その時までは。

 

見上げれば、理知的とさえ言える静かな双眸が錠前を真っ直ぐ見つめ返した。ゆえに、奥歯を噛み締める。意味がないと分かっていても、その視線を睨み返してしまうのはやめられない。

幼い時分より努力して、褒められて、それでもたった一つだけ錠前の心に影を落としていた存在。他の全てにおいて成功し続けていた幼い彼だからこそ、思い通りにならないたった一つに強く執着した。

だが、結果は失敗。そもそも干渉することさえ不可能な、自分以外の何か。

 

自身の意に沿わぬスタンドに、何の意味があるッ!!

 

強く、首の付け根を爪で引っ掻いた。拙い自傷行為だが、痛みで己の激情に水を差す。

そこにある星型の痣に赤い爪痕を薄っすら残すと、ほんの少しだけだが気分が落ち着くような錯覚を覚えるのだ。例えそれが気のせいだとしても、一人自室で暴れているよりはマシだろう。

 

息を吐く。大きく、聞かせるような溜息を。

不愉快な感情を抱えたまま部屋に篭りきるのは良くない。星型の痣を赤く染めた御陰だろうか、未だ熱を持つ頭でも、その程度の判断は出来た。

 

その様を、変わらず見下ろす幽波紋。

 

生まれついて所持していた能力。『原石』と呼ばれ、特別な意味を持つその名称にまた自尊心を擽られ、なのに二年もかけてさえ一切の成果を残せなかった己の能力。

確かに在る(・・)ことは認められた。問題は、それを錠前自身も利用する事が出来ず、ほぼ一部の例外、観測系能力者の特殊な感覚でしか捉えられない――どう開発すれば良いかを調べる事さえ叶わない、正体不明の力の塊であったこと。

 

調査、検査、診査。ただただそれに二年も消費して、放逐された。

何も無かった。何も出来なかった。何も起こらなかった。関わった科学者たちのプライドもあったのかもしれない。一欠けらの成果さえ残せなかった『原石』に、彼らは【無為無能】と、錠前にとって悪意しか感じられない名称を冠して全ての支援を打ち切った。

 

何をすることもなく無為、何の役にも立たない無能。

 

God's In His Heaven. ――神、空にしろしめす。

All's Right With The World! ――なべて世はこともなし。

 

腹立たしいほどの曲解であり、とんでもない皮肉だろう。だけどかつて聞かされたこの言葉が、いつまでもいつまでも、見下す瞳と笑い混じりの声が耳元に木霊していた。

 

レベル0:【無為無能(ザ・ワールド)】。

 

正に自身の背後に立ち尽くすコイツに相応しい。そうやって自嘲の笑みを浮かべられるようになるまで、どれだけの時間が必要だった事か。それすらもただの強がりなのだと、錠前本人も無意識に自覚しているのだが。

 

「……コンビニ、行こう」

 

言うが、小さな独り言に応えるものなど、この部屋のどこにも存在しない。

 

財布を掴み、靴を履き、扉を開ける。

生まれ持った大柄な体躯を、身を屈めるほど歪な猫背で台無しにしつつ、相変わらずの鬱屈した顔で、伸びっぱなしの黒髪の隙間からは不気味な金色の虹彩が覗いていた。

そんな錠前発条の背後を、物言わぬ巨漢が静かに追従する。足音も無く。

見上げた空は僅かに曇り、翳る太陽に少しだけ錠前は眉を顰めた。

 

「いっそ、俺がDIO様みたいな吸血鬼なら、お前も動いてくれたのかね?」

 

ひひひ。

揶揄する言葉と共に、意地の悪い笑いが落ちた。

他意の無い悪態である。誰に聞かせたわけでもなく、意味を持たせようとも思わない。彼はこの世界に吸血鬼が存在するらしいという情報さえ、持っていないのだから。

 

そも、動いてくれたのか、などと。

無意識的に、まるで取り返しの付かない過去を語るように口にする彼は、既に決定的などこかで諦めているのだ。

 

主の虚ろな呟きに、傍らに立つソレは相変わらずの沈黙を保ったまま付いて行く。

その静かなる様は物言わぬ金塊にも、沈まぬ黄金の太陽にも見えた。

 

「路地裏でいいよな、こっちの方が近いし」

 

錠前の小さな独白に、ザ・ワールドが答えることは無い。

世界(ザ・ワールド)】は、未だその少年の意思に応えることは無い。

 

けれど。

 

どこか遠く、暗く、深い、闇の奥底で。

一人の『人間』が笑っていた。

 

 

 

今はまだ、誰も知らない事ではあるが。

――これは『天国』へ至る物語だ。




すごく古い投稿作品のリメイク。
ここまででエター。続きません。
以下、設定めも。

 主人公
錠前発条。JOとJOが離れ過ぎており、あだ名でジョジョと呼ばれる事が絶対に無い名付け方。
雰囲気が鬱々とし過ぎて人混みが割れて道が出来る黒髪DIOイメージ。友人は隠れ十字教徒。

 路地裏突入からナンヤカンヤあって『妹達』のために【一方通行】と戦闘、覚醒、時の止まった世界という演算不可能領域で一撃見舞って昏倒――からの病室で目覚める。ベッドの傍らに居た『妹達』に「助けられて良かった」と凄く嬉しそうに笑いかけるが、主人公が気絶した後普通に実験再開、からの守りたかったシスターズが死亡したという衝撃の事実を知る。
「ミサカは貴方の助けたかった彼女ではありません、とミサカは――」
みたいな事を言われて人生二度目の挫折。病室で血とゲロを吐く主人公。
――ここでサブタイトル、『第○話 ジョジョにはなれない』。
そのあと絶対能力者進化実験は原作通り上条さんが止めたので、己の役立たずっぷりと比較して三度目の挫折。絶望。ひひひ、とメンタルクラッシュからの暗部落ちコンボ。
 闇堕ちした主人公の傍らにはかつての彼の頑張りによって仄かな何かを芽生えさせた『妹達』が幾人か寄り添っていたが、その心の内を察する余分など残っていない。故にひたすら堕ちていく。
そしてやはり『人間』は笑う。

みたいな妄想を何年も前にしていたような気がするけれど、一発ネタなので打ち切りです。
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