転生者は勇者であっても英雄ではない   作:頭のない案山子

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鷲尾須美と転生者は勇者である
第一話、神様は実在したようです。


side???

 【恋】とは余りにも不完全なものだった。これが【恋】だと証明できる方法もないし、永遠の愛を誓いあっても別れることなどざらにある。

 

 だからこそかこの感情を【恋】と定義したことはない。

 仕事をしている時も、食事をする時も、身体を洗っている時も、それこそ四六時中彼女の事を考えているがこれは【恋】などではない。

 

 その上、相手が生きる人間ならばいいが本の向こう側──二次元とよばれる世界に生きる住人では周りから白い目で見られてしまう。いや、既に見られているのだ。

 

 特段隠すことではないと堂々と彼女が印刷された服を着て出歩く。その度、こちらを見ながら会話をしてくるので人の視線にすぐに慣れてしまう。オタクと呼ばれ俺は世間からすれば腫れ物に他ならない。

 

 それでもいい。なぜなら僕には彼女がいるから、一方的に嫁と呼んではいるが、そこにあるのは【愛】ではなく【哀】だ。

 

 悲惨な最後、ハッピーエンドではなくバットエンドの終わり、彼女が死にそれでも物語は動く。すでに【運命(fate)】に定められた宿命。

 

 助けることは不可能。彼女は何度も何度も何度も死ぬ。仲間をかばい死んでしまう。

 

 出来ることならばそんなクソッたれな【運命(fate)】変えてやり──けれどそんな力あるわけが無い。

 

(作者)でもなければ(編集者)でも無い。ただのどこにでもいる平凡な社会人。

 

 けれども頭は彼女が助けられればと考えてしまう、不可能なのだと理解していても心は妥協しない。ひたすらに解を探していた。

 

 

「と、そんな君が死んでしまった訳だが、何か質問はあるかね?あぁ一から説明しろと言うのはよしてくれ。あまり君一人に時間を取られる訳にはいかないのでね」

 

 目の前の白髪の男は告げた。

 ピシリと決めた黒のスーツはいかにも高そうな物で、万年平社員の俺では到底買う事も見ることすらままならない代物だろう。

 

 一体誰なのか、疑問に浮かべた同時に男は呆れたため息を吐く。

 

 

「はぁ...最近の君たちはもう少し物わかりがいい方だと思っていたがね。こういう時は喜んで私にせがむと思うのだがね、君もそう言う物語を読んでいたであろうに。

 異世界転生、君ならばこのフレーズだけで分かると思うよ。そう、私は神だ。

 人類に無理難題を押し付け、異世界へと送り込み、世界を壊し、世界を作り直す、仕事は沢山あるよ。君の想像している通りの神である」

 

 男は指を鳴らして空虚から一瞬にして現れた黒の椅子に腰を下ろしながら説明をしてくれた。

 

 その説明にはいきなりの大量の情報が含まれていて、頭は一気にパンク及びショートする。

 

 神だの異世界転生だの夢なのか何なのか理解が追いつかない。そんな状況下でも一つ確定しているのは

 

 

「俺は死んだのか」

 

 何か確信がある訳では無い。もちろん死んだ時の記憶も一切ないがそれでも死んだのだと心のどこかで納得していた。

 

 諦めたように両手を上にあげ答える。

 

 

「いいよ、異世界転生で犬でも温泉でも聖剣でも、どんな転生先でも満足するからさっさとどうぞ」

「随分と気が早いな、早いのはいい事だ。されども、私の話を全て聞いてからにしてくれ。一体ここはどこなんだとか、どうして異世界にとか聞くと思ったんだがね。私の予想は大きく裏切られてしまったよ、いやそれの方がいいのかもしれないがね」

 

 自称神は顎に手を添え品定めするかのように眺め何度も頷く。

 

 

「とは言えだ。なんの説明もなしに放り出すという訳にもいかないのでね、簡単ではあるが説明させて頂こう。

 今私達はとある思考実験を行っている。それは世界の定め(運命)に人間の意思が打ち勝てるのかとね。

 もっと分かりやすく言えばだ。物語上死ぬ事が定められた者の運命を変えられるかと言う実験だよ。」

「なっ──」

 

 喉から手でも足でも頭でも出るほどまで手に入れたくても手に入れられなかったチャンス。それが神の言ってる事が正しいのならば舞い込んできた事に他ならない。

 

 【三ノ輪銀】それが彼女の名前。

 仲間の為、友の為、家族の為、世界の為、知らない他人の為、全てを守るために命を賭して戦い命を散らした戦士。

 銀の生き様に俺は心を動かされた。誰が他人のために命を捧げられる、顔も知らない奴になんでと。少女ではあるが辛さも悲しさも全てを抱え込み太陽のように周りを照らす。そんな彼女がバットエンドあっていいわけが無い。

 

 

「本当なのか、銀を救えるのか・・・」

「分からん。だが、君次第だよ」

「俺は・・・俺は・・・・・・」

 

 救いたい。だけれど彼女を救う力は俺にはない。

 勇者と呼ばれ世界を守る彼女らに比べ俺は、一人生きていくのだけが限界の敗者。思いやプライドを投げ捨て今を生きるために必死な俺。

 

 そんな俺が本当に助けられるのか?妄想や夢ではいくらでも助けてきた。それに今目の前に現れたチャンスは嬉しくもあり怖いのだ。敵は圧倒的な力を持つ怪物。

 

 想像しただけで身体は恐怖し両手は小刻みに震え始めてしまう。

 

 情けない。情けなさすぎる。これでどの口で助けるなんて言っていたのか、俺は助けると怒鳴りたいけれど身体は拒絶し声を出す事すらままならない。

 

 

「安心するのだね。君の行く世界は戦いに溢れているのだから、それ相応の準備という物がある。手始めとして──君の記憶をさらに見させてもらうよ」

 

 ゆっくりと近づく神の指は額に当たると、水滴の落ちた水源のように波紋が広がる。どこか暖かく落ち着き心地いい波紋。

 

 「ふむなるほど」と何か分かったのか指を額から離し指を鳴らす──刹那世界は光に包まれる。

 

 何の前触れも無く訪れた光に視界を両手で守る。一秒か二秒か、はたまた十秒なのか詳しい時間は判断できないが光が収まり手を退けると、視界の先に金が映る。

 

 

「え、金?」

「答えは簡単だ。君の記憶を読み取らせて貰った、その中で最強だと思っている者の力を再現したのだよ。

 その拳は地を山を砕き、速度は圧倒的な速度第三宇宙速度まで加速できる人間とは思えない肉体。とはいえ、所詮はその程度一から作るなど簡単だよ、君らの世界らしく言うならばペットボトルのキャップを開けるより到底楽だね」

 

 

 「はははっ」瞬時に起こった超常現象に乾いた笑い声しか出ない。

 

 神は強靭で最強の肉体を一から生成し与えてくれた。彼女助けるための力として。

 

 やれる、これならば存分にやれる。負けようがない、助ける未来しか見えない。

 

 

「なんで俺なんだ。他にだっていたんだろ?なんで」

「公平なランダムの結果だね。結論としては運が良かったって事だよ」

「運か・・・はははは!ならその手に入れた運を活用しなくちゃな。ありがとう神様」

「ふっ・・・感謝される言われ無いね。君は僕達の実験に参加させているのだから、怒ってもいいところだろうに。だからこそ人間の意志の力を信じているのかもしれないな」

 

 その言葉がどこまで本当なのかなんてどうでもいい。ただ、救えるチャンスを手に入れらたこれが一番大きな事なのだ。無神論を唱えていたが今日限りで神のことをしっかりと崇めていこうと心に決めた。

 

 震えていた身体も自然と収まりいつも通りの落ち着いた平常な状態。発車寸前の電車のように今すぐにでも行きたい、覚悟を決めた瞬間から身体は早くしろと訴えてくる。

 

 

「注意点などは今話しても忘れてしまうだろうからね、簡潔に言うとだ。あちらの世界に君の拠点があり、そこに情報をまとめた紙を置いてある。それを絶対に読んでくれ頼んだよ」

 

 神の説明も遂に終わり全ての事前準備が完了した事により身体は粒子となり白い光を散らし始める。

 最初はつま先から徐々に上へと上がっていきものの数秒で腰下全てを消してしまった。

 

 

「何か言って起きたい事はあるかね」

「特にはない・・・けど、絶対に銀を救うそれだけだよ」

「吉報を待っているとしようか。それでは君はこれより私の使命を受け異世界へと飛ぶ。そこにはきっと困難や辛い事もあるだろう。だが、これだけは忘れないでくれ・・・君には力がある、世界を変えるほどの強い強い意思が。それを信じ突き進めばきっと何とかなる。

 だから諦めるな。後退するな。逃げるな。

 戦い勝ち意思の力を示して見せて魅せろ(・・・・・・)。奮闘を期待する」

 

 神の鼓舞をしかと受け取り一気に気合が入り目が大きく開く。神の語ったような力があるのか傍から見れば不安な程に細い腕を、一切疑問にすら思わずに大きく肩を回す。

 

 そして、遂に身体は全て粒子となりその場から消失。夢のような現実へと旅だった。

 

 完全に消えると身体を翻しておもむろに虚空から取り出した一枚紙の、実験番号一〇一と慌てて追加されたような欄に記入を開始する。そこにはこれから起こりうる全ての事象を記入していく事になるのだ。

 




色々言いたい事は山ほどあるのですが私は初小説書きデビュー致しました。

初めてな文色々間違いはあるとは思っていますが、それでも生暖かい目で見てくださいお願いします。
それと、原作の小説を持っていないのでアニメを元に制作していくので大きな問題点など浮上しましたら随時教えてくださいお願いします。
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