最上の娘   作:かんよう植物

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あけましておめでとうこざいます!
年内に投稿しようと思ってたら年が明けていました。
紅白見てたんですけど凄く面白くて家族と一緒に笑いました。


とっくんそのに。【すばやくうごいてみよう】 

 

 

 

 

 

とっくんそのに。【すばやくうごいてみよう】 

 

 

トリオン感知。すなわち接近してきたトリオンに反応する反射神経さえ持っていれば無敵なのだ。

そんな陳腐な子供が思いつくような考えも、極めれば強くなれる。

 

「とりあえず狙撃手のアイビスから慣れてみよー」

 

「知ってますよね、私狙撃手相手の戦闘はやったことないです!」

 

 

「大丈夫大丈夫、的になるから当たらないように避けるだけだよ。」

 

 

 

手を挙げて自分の意見を言ってみる。だけど軽く流されてしまった。

 

 

簡単に言うけどそれって難しくない?

弱気というか今までしたことのない練習方法は難しいと感じた。隊にも入ってないからチームランク戦にも参加していなくて、当然狙撃手との遭遇がない。

だから攻撃手・銃手・万能手としか戦ったことがない。

 

 

 

『他の銃よりは弾速遅いからって避けるなよ~。当てるのが狙撃手の仕事だからな。』

 

「迅さん、この人本当に手伝ってくれるの?」

 

 

 

内線から知らない人の声が聞こえる。手伝ってくれている狙撃手の人らしいが、言っていることが訓練と矛盾している。避けられる可能性は低いので勘弁して欲しい。

自分が避けられるようになるための訓練なのに相手はただの的当てだと思っているらしい。

 

 

「いやー高い確率で断られる未来だったんだけど可能性の低い方に進んだからラッキー。当真の実力はトップだから扱かれてきなよ。」

 

『狙撃手1位様の的になることに感謝しろよ~』

 

相手の発言に顎が外れてしまいそうになるほど驚愕する唯。

 

 

「今までと訓練の内容が違いすぎてついていけない…今からでも内容変えましょうよ。」

 

特訓中は迅さんは何を言っても止めようとしない。未来を視てから最善を選んで行動しているからそれに従うよう言われる。分かってます感が溢れてなんだか癪だ。

今はちゃんと言うことを聞いているけど反抗してみたくなる。

 

 

 

 

「何言ってるの。この前宇佐美と似たようなことしたでしょ。」

 

 

 

 

***

 

宇佐美栞は、元風間隊の一員で、機械の扱いに優れ、処理能力に長けている本部内でもトップの実力を持つ名オペレーターだ。

そして、オペレーターとしては異色な能力も持っている。近界技術に対しての知識が多く、機械を使って活用している。

最近はプログラミングで試行錯誤しながらオリジナルのトリオン兵を作成をしている。

彼女は近界技術に関心があり、更に知識を深めるのを理由に玉狛へ移籍したほど。

 

玉狛にご飯を食べに行くと常にパソコンに何かを打ち込んでいたりする光景をよく見ていた。その時もプログラミングの途中だったらしい。試作がどれくらい訓練に役だてるかなどを実際に体験する手伝いをして欲しいと頼まれ、それを唯は了承していた。

 

前日のトリオン感知の方の特訓はある程度上達したと迅が判断して膨大な宝探しゲームは終わり、次はなんと宇佐美の研究の手伝いをすることになった。

 

今現在三門市で確認されたことのあるトリオン兵のプログラミンは作れるが、宇佐美はさらに改良を重ねて試作をどんどん作っている。

今回はそれとは違うが、また次回は宇佐美特製のトリオン兵の、試作に協力することになった。

 

 

方法は至ってシンプルだった。

通常サイズのバンダーを唯から100m離れた場所に全範囲に設置しての唯の周りに囲ませる

そこからスタートしてランダムで毎5秒に1発バンダーの光線を発射する。唯はただ感知しながら避けていくだけ。

だけとは言うが、唯は避けることしか出来なかった。

チャンスがあればバンダーを倒しに行っていいと言われていたが、余裕がなくてスタート地点からほとんど移動できなかった。

フルシールドの使用は許されていたが、すぐに次の砲撃に備えるために瞬時に切り替えることを要求され、頭をフルに使って対処しなければならない。

 

遠い場所から放たれる光線に最初は慌てて避けていたが、だんだんと慣れていき、六日目にはバンダーに接近し1体撃破することに成功した。

 

 

今日珍しく迅が本部で特訓すると言い出して唯が訪れたことのない狙撃場で特訓の続きをするとは思わなかった。

 

 

 

 

 

「唯のサイドエフェクトはボーダーに貢献してくれるって上の人達は判断してる。でも唯自身がそれを認識してなかったからまだあまり使いこなせてないでしょ?だからわざわざ練習場所を提供してくれてる。」

 

 

「貢献?」

 

「トリオン感知ってのは防衛任務に物凄く重要だ。門が開いてもその場に到着するのが早いほど対処までの余裕が生まれる。」

 

 

「?本部にもレーダーがあるからそれは私のと変わらない能力じゃないんですか?

オペレーターから指示がなくても自分で分かるくらいしか私の利点は見当たらないです。」

 

「いや精度は抜群に良いよ。」

 

 

 

レーダーに映るのは普通のトリオン体で、例えばバッグワームを付けていると場所が分からなくなる。唯の場合、距離は限られてるが精度の点で優れている。

 

 

「それが唯一無二の力になる。だからオレたちはそのサイドエフェクトを伸ばしてもらいたいんだ。

さっそろそろ始めるよ」

 

 

 

 

この先を視て知ってるのかな、いや最善を選びたいんだこの人はいつも。

絶対的な彼の意思に反抗期のような心で何でもかんでも否定してしまいたくなる訳じゃない。

 

強くなる近道を教えてくれる迅さんに頼ってばかりで良いのかと頭の中でずっと考える。狡い奴に自分はなっていると唯は感じていた。

それでも今はなにも変えることは出来ないとも理解している。中途半端に罪悪感を感じることは無駄だと自分に言い聞かせる。

 

 

 

 

『おっ始めるか?』

 

スコープ越しに唯をみた当真は、唯がスコーピオンを身体から取り出して構えるのを捉えた。

 

 

「お待たせしました。正直すぐに緊急脱出すると思いますが、これからよろしくお願いします!狙撃場の人!」

 

『オレは当真な。先輩付けて敬えよ、チビ。』

 

 

唯が感じたのは一瞬だった。

当真との内線が切れた後にすぐ飛んできた銃撃。感知しても反応することに遅れシールドを展開できなかった。

狙われた心臓部分からトリオンが多く漏れている。このまますぐに戦闘不能になるだろうと察する。

 

 

「(銃手と全然違う。1つの弾の威力もちゃんとあって速いし距離があるから感じにくかった。)」

 

 

 

「トリオン体損傷 緊急脱出 」

 

無機質な音声の通り、唯のトリオン体が破壊された。

 

 

 

 

***

 

 

その後何回か続け、1度休憩が入ることになった。

 

 

 

 

「狙撃手とは初めて戦いました。」

 

「あーチーム戦やらないんだっけ?

オレたちは基本サシでやることないからな。どうだった初めての狙撃は。」

 

「はい、正直銃手と似たような武器っていう印象しかありませんでした。遠くから撃てるのは良いと思うけど、撃ったら位置が割れるからそこがどうも悪く感じてましたけど。でも今日で考えが変わりました!狙撃手って凄いです!」

 

 

「狙撃手なめんなよ。まあ狙撃手っつーのは大体味方の援護してる連中だ。オレは点取れるけど。」

 

 

昼食を兼ねての休憩でご飯を買いに来ている2人はそこで初対面を果たした。

人見知りがある唯は突然のリーゼントに驚きつい迅の後ろに回って逃げた。

警戒心の強い猫のような姿に当真は面白がり、迅は苦笑して2人の仲介となった。

簡単に2人の紹介を済ませて自分は本部に用があるからと迎えに行く時間を告げて何処かへ颯爽と去っていった。

 

 

 

唯一と言っても良い知り合いが自分を置いて消えたことでひとり(+リーゼント)の唯は、自分の中の勇気を振り絞って声をかけた。

 

「最上唯です。び…B級、で、す、!」

 

 

先程迅がした紹介を自分でやり直し、しかもどもっているのを見て、当真はニヤニヤ笑い昼食を一緒に食べると誘うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

年上のリーゼントにしばらくの間緊張していた唯だが、先程までは普通に話せただろ? と当真に言われたことで彼女にしては早く人見知りが薄れ、内線時と同じように会話をすることが可能になった。

後輩だからと当真が奢ってくれたA級定食を食べながら先程のように狙撃手との戦闘の感想を述べていた。

親切にも当真は狙撃手の利点や不利な点を教えてくれた。大雑把な説明でも唯が分からないところは少し細かくかみ砕いた解釈で伝えられた。

 

2人が特訓の話を終了し、唯が食べ終えた時に当真が全く別のことを聞いてきた。

 

 

 

 

「最上は迅さんの本部の用事って聞いたか?」

 

 

「迅さんの?………いいえ。聞いていません。いつもは玉狛で特訓をさせてもらっているんですけど、今日は特別に本部でやると言われて来ました。」

 

 

「それは別に分からなくもねえよ。最上のサイドエフェクトを強くするにはコンピュータだけじゃなくて考えて攻撃する奴が必要だからそれなら少数の玉狛より本部の隊員のオレの方が都合がつく。」

 

 

確かに。狙撃手が必要なら玉狛にもいる木崎が手伝いを了承してくれる筈だ。気遣いや優しさで満ちていて筋力もある住処も玉狛で迅は頼みやすい筈なのにとは最初唯も感じていた。

 

 

 

 

「オレは隊長たちに任せて参謀とか頭使う役割になってねえからなんとなくとしか言えねえが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

最上は迅さんが何考えてるか知ってるか?強くなりたいんだろ?ちゃんとお前自身が考えているか?」

 

 

 

会って一日の人に言われた事を真に受ける必要はない。けれど、自分で考えるということは迅に初めて会ったときにも言われたことだった。あの時と理由が違えども、唯自身の考えを求められている状況に立たされている。

まだ彼女は考えることが出来なかった。

 

 

 

 

 

「…………分かりません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局自分の考えというものが分からなく、この日の午後の特訓は少し身が入らず終了した。

最後に当真は「悪いな」と唯の頭をガシガシと乱暴に撫でて自分の隊室へと帰って行った。

 

 

 

ラウンジで待つ唯を迎えに来た迅はいつも通りヘラヘラとした笑い顔で、それに少しだけ、唯はホッと心の中で安心することが出来た。

 

 

 






暫く更新は遅くなると思います。
作者はある作品にハマりこのところずっとその本を読んでいます。面白い。
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