最上の娘   作:かんよう植物

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お気に入りと評価ありがとうございます。
今回は少し短いです。


第2話

 「まずは1度トリオン体になってみよう。アタシはトリオン量凄い少ないから唯ちゃんも気絶しないはず!」

 

 

 

 

 

 

 

自己紹介をした後、A級風間隊のオペレーターの宇佐美栞が唯を励ますために言葉をかけた。

 

奇妙な体質のせいで、訓練の前にまずはトリオンになれることになった。

 

倒れた日から唯は訓練室から遠い、オペレーター室に近い空き部屋で一人練習していた。

 

トリオンの豊富さによる異例の事だった(サイドエフェクトが発現したせいだった)。上層部は貴重な戦力になり得る唯に早くなれて戦えるように、という指示を出してきた。

 

トリオンなんて日常で使うこともなかったので使い方も分からない唯に、ボーダーはトリオンについて教える者を特別に選出することになった。通常の訓練室で行うと、沢山のトリオンに囲まれるせいで最初気絶してからもう一度試してもまた気絶しかけたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

慣れるための練習を始めてから1週間、少しずつ成果が出てきた。初めは宇佐美たちオペレーター組のトリオン体すらも拒絶したが、戦闘員と比べて体内にあるトリオン量が少ないためサイドエフェクトに体が影響されることは徐々に減っていき、遂には相手と話せるレベルに達した。

 

 

 

 

 

 

 

「まだ1週間だけど慣れた?」

 

「はい、トリオンを感じるなんとなくの認識を自分で持てるようになった気がします…戦闘員の人たちは認識する前に量が多くて酔うのでオペレーターの皆さんの、宇佐美先輩たちのおかげでトリオンの存在に慣れた気がします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったあ、まずは小さいモノから慣れるべきだからね!唯ちゃんのサイドエフェクトもそれに当てはまってよかったよ~。」

 

 

 

 

 

 

 

話しやすくすぐに打ち解けた宇佐美に名前で呼ばれ少しの照れを感じるが、唯も自分の変化に興奮していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【違和感】があって、今も消えないけどそれは元からあったように認識が私の中に溶け込んでいて、もう痛くもないし酔いも感じないんです。

 

式で倒れてサイドエフェクト?を知らされた時のはじめは痛みも酔いも消えてくれなくて、凄く不安でした。」

 

 

 

 

 

診療室で聞かされた時も感じた建物全体から伝わる【違和感】。入ったときはまだ気づかなかったが、この力を知らされ改めて認識することで建物からも感じてしまった。気絶はしなかったものの、【違和感】に分からない恐怖を覚え泣き出してしまいそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

唯は宇佐美をはじめ、自分の為に数々のアドバイスをしてくれた人たちに感謝してもしきれなかった。

 

自分ではすぐに思いつかないような方法を提案してこの体質を克服させることに協力してくれた。

 

今まで生きていて鋭く感じたことのなかった未知の感覚に恐れを抱かずに、慣れようと意識するようになったのも宇佐美たちの配慮の賜物だと唯は思う。きっと自分だけだったらもっと時間がかかりこの体質にももっとうんざりしていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、宇佐美先輩たちが色んな方法をつきっきりで考えたり、上手くいかなくても励ましてくれたりして根気強く粘ってくれたおかげで今は不安なんて感じないです!あと、今まであまり感じなかった日常生活でトリオン体にならなくてもな・ん・と・な・く・みんなのトリオンを感じられました。」

 

 

 

 

 

唯はとても嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

 

 

この時はまだ誰も知らないことだが、トリオンを感知するようになると今度は量ではなく人が移動することでまたトリオン器官も動くのでそこで酔うことになる。

 

これには今度は部屋に籠もるのではなく、トリオン体に換装し2週間ほど毎日本部内を動き回るようになることを知らない。まだ、誰も。

 

 

 

今はただ慣れ始めた力に喜び、呑気に一緒にご飯を食べる約束をしている唯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▲△▲△▲

 

 

 

 

 

「ジンユウイチ?迅さんのことかな。いるよ、ボーダーに。」

 

 

 

宇佐美先輩に誘われたお昼ご飯で、頼んだオムライスを食べながら聞いた質問で聞きたかったことを聞くことができた。

 

 

 

 

 

ジンユウイチは本部じゃなくて支部のタマコマに所属しているS級隊員。

 

A級よりも強くて、普通の人には扱えない2つある特別なトリガーのうち1つを持つ人。

 

 

 

探していた人が思っていたよりもボーダーで重要人物だと聞いて驚いた。三門市に絶対いるとにらんでいたが特殊な立場にいるとは想像してなかった。

 

 

 

「唯ちゃんはもしかして迅さんに助けられたとか!それでボーダーに入るキッカケ?あっでも県外スカウトだったよね?嵐山隊ならともかく迅さんボーダー以外だと知られてないし。」

 

 

 

尋ねられた疑問に少し考えながら答える。

 

 

 

「私の親がその人と関わりがあったらしくて、少し聞きたいことがあって会わなきゃと思って。」

 

「…そっかそっか~。あまり深くは聞かないけど、もし玉狛に行きたかったらアタシが紹介するよ。知り合いは多いから!」

 

「ありがとうございます!……でもまだ新しい生活に慣れていないので自分から会いに行くのはしばらく後にします。」

 

 

 

 

 

 

 

ジンユウイチは最上宗一を必ず知っている。

 

数年前、自分の父親が死んだという報せを聞いた私は葬式に参列できなかった。宗一が自分の娘を離れた祖父母の元に置いてまで活動していた職場、組織が関係し、遺体すらも残らなかったという。自分の父親だった男は一体何をしていたのか、確かめたかった。彼は父の手紙に一番出てきた名前だったから。

 

 

 

 

 

 

 

「いや~本部から指導命令が来たからど~ゆーこっちゃと思ったけどね、確かに唯ちゃんの体質に合わせると私達が適任だね。」

 

「…宇佐美先輩は風間隊だけど、私なんかの世話ばかりして大丈夫ですか?私のせいで風間隊の活動に支障が」

 

「だいじょーっぶ!!防衛任務外だし、隊の作戦会議の予定とも被ってない時間に唯ちゃんと毎日会っているのです!新しいカワイイ後輩の面倒を見たい先輩なんだ。種類は違うけど。誰かから聞いたかもしれないけど、トリオン感知なんて精度高めればかなり役立つ能力だから、B級昇格も近づくよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界を守る活動している組織にいる」

 

「ここじゃないある場所から大切なものを奪ってくる者たちからこの世界を守る戦いがある」

 

「奪ってくる者は決して全てがこちらの世界の悪ではない。それでも分かり合える奴らと仲良くなって、平和に暮らせる世界にしたい。」

 

 

 

 

 

 

 

誕生日に時々プレゼントと一緒に贈られてくる手紙があった。誕生日を祝うテンプレなメッセージを書いた後は、いつもこんな意味不明な文があった。小学生だった唯には書いてある言葉の意味を全ては理解できなく、コレはたまに見かける厨二病かと見たことのない父への好感度は下がった。

 

けれど今なら辻褄が合う事が多くある。

 

父が言っていた組織とは、「ボーダー」ではないかと。

 

異界からの奪略者─近界民から三門市で戦っているボーダー。それなら誰かは父のことを知っているのではないか、

 

 

 

 

 

唯はスカウトされた後にこの疑問が浮かび、ある行動を思いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンユウイチに会いに行こう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし唯にはいくつか弊害がある。

 

まだ訓練生であること、

 

トリオン酔いでトリオン量が多い者に会う度に気持ち悪くなって動けなくなり誰かの助けを借りて診療室に向かいソレが繰り返され仮入隊に1回も参加できなかったこと、トリガーをまだ一度もまともに使っていないこと。

 

サイドエフェクトに振り回された結果、唯のB級への道は遠ざかった。

 

この目的が叶うのはトリオン酔いがなくなり戦い方を知る日まで先延ばしにされた。

 

 

 

 




投稿するのに手間取って時間かかりました。
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