最上の娘 作:かんよう植物
書き忘れましたが、主人公千佳と同い年の設定です。
もしかしたら鬼怒田さんに可愛がられる未来もあるかもしれない。
「訓練は、擬似トリオンで本人のトリオンを消費せずに何度も戦うことで経験を積むシステムなんだ。
トリガーとコンピューターをリンクさせてトリオンの働きを擬似的に再現する方法だから、最上さんが持っているサイドエフェクトも使えるよ。」
実際には変わらないトリオン量も訓練中はコンピューターのおかげで唯の力も機能して減ったように感じる事が出来るらしい。
遂に訓練らしい訓練を唯はスタートさせた。
その頃には『仮』が付く入隊式は終わり、既に本当の入隊式が始まってしまった。
トリオン酔いをなくすことが結局間に合わなかった唯は、戦闘を何も出来ない体でしていたことは主にふたつだった。
1つはトリオン体になり基地内を散策すること。大体の人がトリオン体に換装している状態で彷徨いていることが多いので、そこで酔いになれることを目指した。
2つ目は隊員たちの戦闘記録の鑑賞だ。C級に許される範囲での映像をチェックして自分が戦うイメージを膨らませた。実践みたいなものはしなかったけど、とても有意義な時間の使い方だったと思う、これでトリオン体に慣れるようになった気がした。映像はC級だから使い方ガイドみたいな映像しか無かった。
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以前と似た私達を鼓舞する挨拶をした本部長と入れ替わるように嵐山隊がまたトリオン関係の説明をしていた。同じことを言っていたので暇で欠伸が出そうになったが、やはり1回倒れてそのまま1回も仮入隊に出ていなかったから倒れたことを知っていそうな人らから度々視線が刺さっている気がする。
「村上先輩!」
「最上、話すのは久しぶりだな。」
「もしかして今まですれ違ったことありました?」
「いや、練り歩いてるのはよく見てた。あと、有望だって噂になっていたぞ。」
私が倒れた後のことを話すと、村上先輩にもサイドエフェクトかあると診断されたらしい。トリオンに影響されて稀に発生する特殊能力、【強化睡眠記憶】。眠ると100%モノに出来る力だった。戦闘面でも非常に有用性のあるものなのでポイントを高く貰ってB級に近づいてホクホクとか。
実際にホクホクなんて言ってないけど、なんとなく嬉しそうな雰囲気を出していた。
「オレはトリガーを孤月に決めたが最上はどうするんだ?」
「私は、スコーピオンにしました。正隊員の方の映像を見て、体のどこからでも出せるのが凄いと思ったので。」
「スコーピオンか、学校にいるボーダーの奴も使っていると聞いた。」
次は学校の話になり、村上先輩は4月の初めからの登校だったのでもう話せる人も多いらしく沢山の話をしてくれた。高校2年生にはオペレーターと戦闘員がどちらも多いらしくその人たちとよく話すそう。
「最上はこの前初登校だったんだろ、大丈夫だったか?」
「大丈夫か」の意味が沢山含まれてそう。まだ2回しか会えてないのに心配の目を向けられる。
「大丈夫です!クラスのみんなが沢山話しかけてくれるので孤立してないから大丈夫です!」
そんな目で見られたくないが為に変に大丈夫を2回言ってしまったが逆に怪しく見えてしまう…?
実際学校では教室や時間割が分からなくなったらみんなが声をかけてくれたり一緒にいてくれたりする。私の学校生活は順調に進められている。
今日は本格的な訓練をすることになった。狙撃手は違う部屋での訓練らしく、今日は最初からいなかった。
説明が終わった後にすぐに対近界民訓練をすると言われザワザワする訓練生たち。
「仮訓練もこんないきなりだったんですか…?」
「いや、トリオン体で生身と違うことを説明されて実際にそのまま運動してみたりしていたんだ。起動して各々のトリガーを素振りや試し撃ちはしたが全て的で仮装近界民なんて戦ったことないな。」
「みんな平等に初めてなんですね………次は村上先輩ですよ。呼ばれてます。」
「ああ」
近界民にも色々と種類があり、私たちがこれから戦うのはバムスターと言うらしい。
三門市に住んでいて、大規模侵攻を生き延びた人なら1度は見たことのある言ってしまえば【トラウマの象徴】だ。他の人の様子を見てみると、自分を抱きしめて何かに耐えるような顔をして戦闘を見ていたり、憎しみを表情に出して戦う人がいた。私たちは全てを知っているわけではないけど、きっと三門市には沢山の犠牲があって今まで生きていたんだなと思った。
近界民を憎む人が復讐のためにボーダーに入ることだってあるんだと、この前宇佐美先輩から教わった。
家族を失った人や、連れ去られた人もいる。被害者じゃないから気持ちに共感できない、
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「強くなって何をしたい?」
早朝、ランニングの途中で公園で座っていたときに知らない男の人が隣に座ってきた。当たりが出た、と言って自動販売機でよく見るサイズのお茶をくれた。お礼を言って飲んでいるとジッと私を見てボーダーなのかと聞いてきた。胡散臭かったがお茶を貰ったのでそれくらいは話しても良いかと思い、入ったばかりだと答えた。そしたら質問してきて、ボーダーに入った理由を聞かれた。
「強くなりたいから」とまた答えれば、何故か困ったように笑い、彼は私にこう言った。
「強くなって何をしたい?」
とても困る質問だ。私は何もしたいと考えてなかったから。強くなって戦って、防衛任務をこなしていくことしか考えていなかった。淡々と、きっと今を維持するための役割を果たすだけなんだと。強くなりたいのだって、私は別に誇れるような意志なんかない。この街を守りたいって気持ちだってまだ薄い。
「近界民を倒すだけで、未来を考えていないと君は死ぬ。明日を想像することは、生きる活力だぜ?」
何言ってるんだこの人。
最後にそんなことを言って私の頭をポンポンと撫でて公園の外へ出て行った。お兄さんは、トリオンが多かったからボーダー関係者だったのだろうか。
「強くなるだけじゃ、ダメなのかな。」
結局新しい考えは思い付かず、学校に行く準備をするために家に戻った。
▲▲▲
村上が近界民を倒し、ついに唯の番となった。
村上は1分かからなかったことでまずまずの成績らしい。この訓練でもポイントは与えられ、成績が良かった順に高く付くらしい。私も頑張らなくては、と拳をグッと握った。
『制限時間は5分です。1号室用意、始め。』
誰かの声で合図がされる。バムスターが前に出現した。目の前の敵は通常よりも一回りは小さくその分固いと言っていた。
少しずつ慣れてきたサイドエフェクトのおかげで、近くで見ると対象のトリオンを細かく感じられるようになっている。このバムスターは、周りはかなりトリオン密度が高いのに中身はスカスカのように外と比べるとかなり密集されてない。きっとトリオンで硬度を上げて固くしているんだ。スコーピオンはそこまで固いモノを良く切れる訳ではないと言っていたから、わざわざ外殻を削っていく作業は効率が悪い。私はまだ酔いが全部克服したわけじゃないんだ。
せっかくトリオン体で体が軽いんだから、一気に終わらせよう。
ひとっ飛びでバムスターの前に着き、もう一度飛んで今度は回転しながら刃を出して目のような部分を中心に横に切り裂いた。腰ほどまである髪の毛が視界を邪魔している。
『!……1号室終了、記録5秒。』
「よし、出来た。」
1号室から唯が出てくると、さっきより多くの視線が集まった。ただでさえ仮訓練時にいきなり倒れ込んで運ばれていき体が弱そうな印象が残っていたにも関わらず、他の者と圧倒的な差を見せられたのだ。今期一番の成績だった。面識のない者は話しかけには行こうとしなかったが、ジロジロと唯を見ていた。近付いていったのは村上だけ。
「最上、すごいな!一番早かったぞ。」
「…ありがとうございます、イメトレしてたのでソレが良かったんですね。」
元々の運動神経が高いこともあり、彼女は特に動きの流れが良かった。
1番はトリオン酔いがツラかったので早く部屋から出たい、が本音だった。
実力派エリート、会いたがられていた人に偶然?会ったのに初対面から胡散臭いと思われた。可哀想、流石にセクハラを目撃している場面を初対面にするのは忍びなかった。