最上の娘   作:かんよう植物

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最新刊の表紙、鋼さんでしたね。あの佇まい素敵です。



第4話

  数ヶ月で4000ポイント貯まり、正隊員に昇格できた。週2回の合同訓練と、あとは1対1でポイントを奪い合うランク戦でコツコツ貯めてやっとたどり着いた。

ランク戦で開始の直後に相手の元にすぐに近づいてスコーピオンでスパッと切っての繰り返し、それでも時間はかかってしまった。

 

 

慣れてきたとはいえ、一日に何度も戦うとトリオン酔いが酷くなることは入隊初日で分かったので数回戦った後はラウンジで休憩するように唯はしていたことでB級に上がるのが遅かった。自分のポイントが上がるごとに個別訓練で勝ったときに相手から貰えるポイントが少ないのでソレもひとつの原因だ。

休憩していたラウンジには正隊員もC級も関係なくいるのでここで交流を深めている人も見かける。

この前は唯と同期で唯一名前を知っている村上が同じくらいの歳の男の人たちと楽しそうに喋っていた。

唯には仲がいいと呼べる人はいない、入隊式の1番はじめの近界民を倒した時間の特異さに近寄りがたい存在となっていた。故に、一人でいることが多い。B級に一足先に進んだ村上は、スカウト組が選べる所属先を「どこでも」と回答したことで支部に所属さることになったらしい。それでもランク戦をするために本部にいるのをよく見かけるのでそこまで寂しくなることはなかった。

 

 

 

 

 

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C級の白い訓練服は卒業し、新しい服にチェンジした。

白いストライプが肩から両腕と一直線、襟にも一つ線が横に伸びている深い青色(濃藍色)色のジャージ、黒のショートパンツに黒いニーソックス、試しに換装したらカワイイ服だった。

服を変わるときに技術者さんたちに髪の毛の設定の変更もお願いした。日常生活でいつも腰まである髪を結ばずにいたせいでC級の時もそのままにしていたが、戦闘訓練となると、髪の毛がバサッと纏まってないために視界がいつも狭くなってしまっていた。

せっかくトリガーが正隊員のものになるからそのついでに設定を変えてもらい、髪の長さを短くしてショートカットにした。

髪の毛以外は全く頼んでいないのでお任せだったが、1番要らないと感じたのは首にあるサングラスだった。使わないのに。

「どこかでみたことあるような……」そう言われても私は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B級になったら大体はチームを組んで、チーム共通の服にするが、私は誰にも誘われなかった。知らない人とチームを始めるのは少し緊張するから自分から誘いにも行けない。 村上先輩が言っていた所属先の希望を聞くアンケートだって聞かれてない。まさか忘れられたのかと思ったがもしそうなら服の変更だって聞かれなかったはず。少し足りない頭で考えながら少しガヤガヤと騒いでいる声が聞こえてくるラウンジの端で机に伏した。

 

 

 

 

分からないときは誰かに聞くべし、とお祖父ちゃんに昔から言われていたがここには知っている人があまりにも少ない。トリオン慣れの練習の時にお世話になったオペレーターの人たちは自分がいる隊での仕事に追われてて話しかけにくい。1番気安くて相談もしやすかった宇佐美先輩はここ最近見ていない、彼女が1番忙しいのだろうか。「風間隊にいつでも遊びに来てね~」といつも言っていた、結局行こうと思う前に毎回本部の廊下などで会っていたから実は行ったことがない。

 

 

 

自分から会いに行って話を聞いてもらいたいと思うほど誰にも誘われなかったことに落ち込んでいる。その事実がツラいので今日は自分から会いに行こう、それで甘やかしてもらうんだ。

風間隊も他の隊室にも訪れたことがないのでお土産が必要だったかとまた少し落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

■□■□■□

 

「はい、どちら様ですか?」

風間隊の部屋を見つけて、チャイムを鳴らしてドアを開けてもらうと宇佐美先輩じゃない女の人がいた。風間隊は全員男の人って聞いてたから風間隊の新メンバー?と思いつい首をかしげる。そんな私の様子に気付いたのか自己紹介してくれた。

 

 

「私は三上歌歩、今期から風間隊のオペレーターになったの。」

 

 

三上先輩、多分私よりも年上の、予想していた人とは違い焦りながらも謝罪と自分の名前を言う。

 

 

「あっすみません、えっと、最近B級になりました、最上唯です!えっとあの、宇佐美先輩はどうしたんですか?」

 

 

名前を言うと少し驚いて、そうなの!と先輩が笑った。

 

 

「あなたが最上唯ちゃんね!オペレーターのみんなから聞いたことがあるわ、将来有望で色んな隊に誘われそうだって。」

 

三上先輩はあの特訓には参加していなかった。それでもオペレーター内で話題になっていたらしい。

三上先輩の褒めてくれた言葉に照れながらも否定する。私は実際誘われていないです。そう言えば不思議そうな顔をされた。

 

 

 

 

 

 

 

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「それでね、栞ちゃんは支部に転属することになったの。それで私は栞ちゃんの推薦で風間隊の後任オペレーターを任されたの。」

 

質問に答えてくれて、なんだか頼れるお姉さんの雰囲気が漂っていた。宇佐美先輩とはまた違う甘えたくなるタイプだ……

 

「あの、どこの支部に配属されたか教えてくれませんか!私、宇佐美先輩の連絡先持ってなくて、」

 

 

以前、会っている内に聞きたかったが話し込むと頭から抜けてしまい毎回聞き忘れていたことが仇になった。

 

 

「ええいいわよ、栞ちゃんは玉狛に今は所属してるわ。」

 

 

教えてくれた場所は聞いたことがあった。

 

 

 

 

「…玉狛」

 

そこは、私がいつか会いに行かなければいけない人が居る場所だった。ジンユウイチや、ボーダー最強部隊のいる一目置かれている特異点。

 

 

 

 

 

 

 

そして近いうちに私は玉狛に行くことになる。

 

 

 

 

 

 


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