最上の娘   作:かんよう植物

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多分、誤字はないと思います。




第5話

 

 

行くことになった理由は、そこの支部長に呼ばれたからだった。

呼ばれた、というより実は県外に住んでいる祖父に会いに行けと先日電話で言われたのだ。

中学生になったばかりでの一人暮らしに今更ながら心配しついに不安が積もり祖父が三門市にいる知り合いに面倒を見てくれるよう頼んだらしい。知り合いとはつまり宗一の葬式で初対面でありそれ以来祖父とちょくちょく連絡を取り合っていた林藤という男だった。

 

祖父が林藤に頼んだのは、ご飯だった。唯があまり自炊をせずにパンや冷凍食品ばかりを食べていると知った祖父は電話越しに激怒していた。

 

 

「あれほどご飯を炊けるようになれと言っていたのに!!」

 

 

 

定期的に連絡を取り合っていてその際に林藤に愚痴として話したら、

 

 

「それじゃあ俺が食べさせますよ、ウチの隊員たちもその子に会えたら喜ぶだろうし。」

 

 

と向こうから提案してきたらしい。そんなわけで唯は学校帰りに玉狛支部に向かっていた。

 

 

祖父にはこれからずっとお世話になるように言われたがそんな迷惑をかけてしまってもいいのか?事前に会った時そう聞くと初めて会ったのに林藤支部長は私の頭を撫でて心配するなと笑っていた。

 

 

「迷惑なんてかけまくりで大丈夫だ、おまえの親父さんには俺も迷惑かけてたからな。子供はそんな感じで良いんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

▲△▲△▲△

 

 

川の上にある建物が玉狛支部だと林藤さんが言っていた。支部の基地は、使わなくなった川の何かを調査する施設を買い取ったものらしく、そのために川の真ん中に建っている。 

 

支部であるのに他の支部と違って支部が受け持つ窓口業務がなかったりボーダー内で発言力がそれなりにあったりと不思議な立ち位置にいる。

 

祖父に言われた通りに買ってきた菓子折を手に持ちながら玄関のインターホンを押す。聞こえてきたのは女の人の声で、名前を言うとはーいと言いながら電源が切れた。

 

 

数秒後、ドアが開き髪を結んだ女の人の顔が覗いていた。

 

「唯ちゃん!」

 

 

私を見るとパッと目を輝かせながら更にドアを開けて私に入るように促してくる。

 

 

 

初めて会ったと思うのに異様なまでに歓迎してくれているのが伝わってきて少し困惑する。ワタシ、初対面。

 

 

 

 

リビングに着くと、色んな人がいた。

 

 

 

 

まず外国人っぽい人が紙テープの輪っかを繋げた飾りを両手に持って突っ立っていた。一番最初に目がいって、あっちも私に気づくと会釈してきた。

 

 

次に見えたのは制服を着た男の人が、真っ赤な制服を着た女の人の指示で机を動かしている。

 

「とりまる、今日は人数が一人多いからソレ動かした後椅子も持ってくるわよ!」

 

 

「わかりました……そういえばコレ、動かし方を1つでも間違えたら爆発するんですよ」

 

 

なんて喋っているのが聞こえた。流石に爆発はしないだろう、分かりやすいウソをつくんだなと思っていると、女の人は顔を青ざめながら震えた声で叫んだ。

 

 

 

「う、ううううそ!動かしたのは鳥丸だけど命令したのはあたし……あたしのせいで爆発するぅ!!?」

 

 

 

涙目になりながら一人で慌てている彼女を眺めていると、下から引っ張られる。

 

 

 

 

 

 

「きにするな、こなみはいつもだまされてる。」

 

 

 

何故かカピバラに乗っている得意顔のお子さまがいた。

クイクイとスカートを引っ張ってしゃがむように要求してくる。しゃがんで目を合わせると、腰に手をあてて自己紹介してきた。

 

 

 

「オレはりんどうようたろう!5歳だ!」

 

 

 

【トリオン感知】で感じるこの5歳から感じるトリオンは中々大きく、将来有望だと思った。

 

 

 

 

「私は最上唯、12歳だよ。よろしくヨウタロウくん。」

 

 

 

玄関で一番最初に会った──ゆりさんは、料理の準備を手伝いのためヨウタロウくんに私のことを頼んで

キッチンの奥へと行ってしまった。

 

 

「ゆいちゃんだな。おれのこぶんにならないか?そしたら雷神丸にもさわらせてあげるよ」

 

 

子分になれなれ攻撃をかわしていると料理を持った大柄な人がキッチンから出てきた。後ろからゆりも取り皿を持っていた。だんだんと人が集まり、座っていく。

何処か適当に座ればいいかとみんなが座り終わるまで待とうとしたらヨウタロウが今度は手を引っ張りながら唯を主役席へと連れて行く。外国人っぽい人はミカエル・クローニンというらしく、よろしくとだけ言って座り直した。

 

 

 

 

「ん?………ウソ!!もう唯が来てる!!とりまるがだましたから結局レイジさんたちが準備終わらせちゃったじゃない!あたしたちほとんど何もしてないわ!」

 

 

「小南たちがはしゃいでる間に終わらせちゃった~

 

あっ唯ちゃんだヤッホー!

お客さんの唯ちゃん待たせてちゃダメだからね!」

 

 

 

宇佐美は変わらずメガネをキラーンと光らせていた。

 

 

 

 

 

「唯、隣座るわよ。」

 

 

 

1番感情表現が激しかった女、小南が唯の隣に座った。

これでまだいないのは林藤だけとなった。

 

 

 

 

「おっ、来たな唯」

 

 

2階から降りてきた林藤、これで一応は全員揃ったらしく、少し早めの夕飯となった。

 

ここで名前を言うべきかと思ったが、何故か全員唯の名前を知っており唯が相手の名前を覚えるだけになった。

 

 

「唯!今日はレイジさんの料理なの、こっちに来てから不健康な生活してたならコレ食べて虜になるわよ。足りなかったら今日は特別にあたしのおかず分けてあげるわ!」

 

 

 

「小南、興奮して箸を人に向けて指すな。」

 

 

たくさん話しかけてくる小南を机の反対側にいる木崎が注意した。

 

 

並べられた料理は、つやつやの白米におかずは鶏の唐揚げに卵焼き、ネギの味噌汁と大根サラダといった唯にとっては久しぶりの一汁三菜となっている。サラダ以外はすべて湯気が上がっていて食欲をそそるものばかりだ。

あまりの美味しさに箸の進みが速くなってしまい、ご飯をいっぱい食べきってしまった。それに気づいた木崎がご飯をよそってくれるらしい。お礼を言いながら茶碗を渡し気になっていたことを林藤に聞いてみた

 

 

「ジンユウイチさんはいないんですか?」

 

 

 

周りの空気が冷えた気がした。一部の人が反応していた。さっきまで勢いよく話しかけてきていた小南は驚いて目を見開いて口を閉ざし下を見て、木崎はため息をはき、ゆりは上手く笑えていない。

 

 

 

「迅は今日防衛任務中だ、高校生だから夜勤はないが帰ってくるのは遅いから会えるのは今度だな。」

 

そう説明した林藤も頭を掻きながら困った顔をしている

 

 

「いやあ、お祖父さんから聞いてると思うけど最上さん…おまえのお父さんにはお世話になったからな。玉狛には最上さんを知ってる昔からの連中は多いし本部にも少ないけどいるんだ、」

 

 

 

歯切れが悪いまま言葉を吐き出していく。こんなに空気が悪くなるなら食後にでもすればよかった。まさか彼がいるか聞いただけでこんなに雰囲気が凍り付くとは思わなかった。

 

 

 

 

「三門市にいた最上さんのことを知りたくてボーダーのスカウトを受けたんだろ?それなら俺たちよりも迅に聞いた方が良い、アイツは最上さんの『弟子』だったんだ。」

 

 

 

 

 

一時のギスギスは陽太郎が食後のアイスを買いに行こうと唯を誘ったことで解消された。

アイスを買いに出かけたのは唯と陽太郎、雷神丸だけでは夜は危ないということで烏丸と小南がついてきた。烏丸は食料の購入も頼まれている力要員だ。

 

コンビニでアイスを選びながら話題として出した。

あまり先程のように暗い雰囲気にならないように、唯なりに気を付けた結果だ。

 

 

「小南先輩、」

 

「なに。」

 

「迅さんってどんな人なんですか?」

「あたしよりボーダーの後輩でヘラヘラ笑うあたしの従兄弟になんとなく似てるって言われる、趣味が陰湿な男よ。」

 

 

こちらに、目を向けずにズバズバと言う小南に唯は瞠目した。

 

 

 

 思ったより、迅悠一は変わってる?

 

 

 

小南はアイスをカゴに入れながら続ける。

 

 

「年はそんなに変わらないのにあまり子供っぽくないわ。まあサイドエフェクトとか今までの環境も影響してるからああなったんでしょうけど………迅はね、唯がボーダーに入るのを割と早めに知ってたらしいわよ。ボスから唯が入ったことを話したずっと後にそう聞いたわ。それでも会いに行かなかったのはアイツもまだ子供ってこと。」

 

 

 

「子供っぽくない子供?それで会えなかったのは子供だから?うーん…難しい。」

 

「多分最上さんの娘に初めて実際に会うから緊張でもしてるんじゃない?…最上さんって子煩悩だったからアンタの写真たくさん持ってたの。ここに住んでる人は全員1度は見たことあるわ。昔のどんどん成長する姿は見慣れてるけど今はもう写真も新しいのが……数年前で止まったから。」

 

「私の写真?そんなものがあるの?」

 

 

 

 

まさかと自分の姿が写された写真がこんな所にあるとは知らなかったつい敬語を忘れるが、小南は気にせず頷いた。

 

「(私に、会えなかった……私の会いたい人)」

 

 

 

 

烏丸や陽太郎と合流して会計を済ませた後、唯が小南に聞くことはもうなかった。

 

 

□■□■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いざ対面すると、何処かで会った気がした。

この胡散臭い雰囲気を前も感じたことがある。

 

 

 

 

「初めまして、最上唯ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ゆりさんが少し空気になってしまった…
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