最上の娘   作:かんよう植物

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この前感想をもらったと思いますが、返信するタイミングが見つからないうちに削除されていました。
感想を書いてくれた方、返信は出来ませんでしたがくれたことにとても喜びを感じます。嬉しいです。ありがとうございます。


第6話

 

 

「迅悠一です。キミのお父さんにお世話になっていました。よろしく。」

 

 

 

気のせいであった。初めましてと言われたのなら唯の勘違いだったのだろうか。

 

明るい茶髪に透きとおった緑の瞳、黒い学ランにあまり合わない首からぶら下がっているサングラス。

微笑んでいるのにあまり好印象に感じない。まだ学生の筈なのに達観しているような目つきだ。

 

 

 

「最上唯です。あの!迅さんは私の父親と…」

 

 

「いや~~~大きくなったよな、最後に写真で見たのは小学校真ん中くらいか?あっ写真見る?最上さんが持ってたの全部纏めてるアルバム、ボスの部屋に保管してた気がする、持ってくるよ。」

 

「いや、その前に聞きたい…ことが、あるんですけど………」

 

 

 

言葉を遮られた。その後に言葉を紡いでも言い終わる前に2階へ上がっていってしまった。

 

結局その後は自分の昔の写真を見るばかりだった。アルバムの存在は存在を仄めかしていた小南や木崎も知っていたらしく、懐かしいと言いながら唯の頭を撫でたりしてくる。

初めて見たらしい宇佐美は興奮して可愛いを連呼し烏丸は無表情にじっと見ていた。

唯のことを呼び捨てで呼ばれたり自分のことを何故知っているのかと疑問に思っていたことは、自分の父親がこれらを持って彼らに見せていたからなのだと唯は腑に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

その人は親バカだったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

顔合わせでこの日は終わった。夕飯もまたご馳走になり、今日はカレーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また別の日、迅さんに会った。最近ちょくちょく会う。向こうからやって来て少し話して去って行く。お決まりのパターンとなっている。

今日は学生服じゃなく私服だった。ジャージを私服とするのは祖母に禁止され学校以外で着たことがなかったため初めて迅のジャージの私服を見たとき

 

「なんで学校のジャージ着てるんですか?」

 

と聞き周囲を笑わせた。

迅は無言でぼんち揚げを唯に差し出した。

 

 

 

 

本部のラウンジでポケーッとしていたら話しかけてきた。迅さんに隊を組んでいるのか聞くと、

 

「オレはS級だからね」

 

と言われた。迅が持っているトリガーは唯が持つ普通のトリガーとは違い、かなり稀少な黒トリガーと言われる特別なモノだ。持っているだけで自動的にS級へ繰り上げられ、隊を組むことが出来ない。それほどボーダー内ではトップの戦闘力。

防衛任務が終わった後も特に用事もなく時間を潰していた。隊にも所属しておらず以前も言ったが、唯は友達もいなかった。話す人もこの場におらず、話しかけてくれた迅につい話してしまう。

 

 

 

「私、何処の隊にも誘われなかったんです。」

 

 

「うん」

 

「スタート時にはかなりポイントをくれて有望視されていたと思うけど、サイドエフェクトでB級になるのが遅れたせいかなって今では思います。だからこの隊服が同じ人もいない、少しだけ寂しいです。

 

まだ完全に使いこなせないサイドエフェクトが重りに感じて、人見知りだし、他の人一人誘う勇気もなかった。強くなりたいのに…」

 

 

誰にも言えなかった悩みも隊を組んでいないという唯の今欲しいものの中に入っていない迅にならとスラスラと口から出てしまう。

 

 

「私より後に入った人たちも早い人は隊に入ったりしていて、同じスカウトでも村上先輩と私じゃ期待に応えた数が全然違う………凄く羨ましい、私も、強くなりたい」

 

 

 

B級にようやくなってからも続く唯の劣等感はベタベタしていた。

強くなりたいと言う気持ちは人一倍あるのに伸び悩んでいた。

 

 

「強くなって何をしたい?」

 

また同じ質問だ。あの朝の公園でも、迅さんは同じ問いかけを唯にした。

 

彼は唯が会いたかったあの迅悠一で、いつもぼんち揚げをくれようとしたり、会えても父親のことは全く話してくれなくて、話を上手いこと遠ざけてくる。たわいも無いことなら多少教えてくれたが、肝心なことは聞けなかった。

 

 

とにかく迅悠一は必ず願いを聞いてくれる都合のいい男じゃなかった。

 

 

 

確かな答えはまだ出せないとても困る質問だった。強くなったその先を考えたことは一度もない。

考えてみて、イメージする材料があの時はなかったから、今からそれを考えてみた。

あの時から、今私の中にはあるんじゃないか。

 

 

 

ひとつ。唯の中で心に残る悔しさがあった。それを思い出した。不完全な、けど確かな答えに近い気持ち。

 

助ける力がなかった自分が不相応に一人を助けようとしたことを。

 

 

 

 

「近界民を倒すだけで、未来を考えていないと君は死ぬ。明日を想像することは、生きる活力だぜ?」

 

 

また同じことを言っている。

ああ、やっぱりこの人はあの朝をちゃんと覚えているんだ。これが小南の言っていた会わなかった理由だろうか。

 

 

「強くなったらまた強くなって、ボーダー私があの子を守る力をつけたいです!」

 

 

突然の大きな声に他の隊員たちもなんだと目を向けてきたことで途端に己の行いに恥ずかしくなった。

 

 

 

 

 

強くなったらまた強くなると、馬鹿丸出しのような答えに迅は特に驚いたりせずに笑った。嬉しそうに目を細めて立ち上がりこちらを見下ろした。

 

 

 

「来いよ、オレが師匠になって唯を強くしてあげる。」

 

 

師匠になる宣言に唯はもちろんラウンジにいた隊員たちも仰天していた。

 

 

 

 

「で、でも迅さんってS級なんですよね?教えてもらっても良いんですか?」

 

 

 

すべての視線を集めながらも動じない様子で迅は飄々と更に続ける。

 

 

 

 

「S級でも別に教えるのは禁止されてないよ。スコーピオンはオレも使ってたし強いよ?。それに、唯はオレが育てた方が強くなるって、オレのサイドエフェクトが言ってる。」

 

 

 

迅のお誘いにすぐに返事できない。突飛なことが起こると唯は頭が働かなくなり考えがいつも纏まらない。

 

 

 

「つつつ強くなります!………これから、よろしくお願いします。」

 

 

数十秒過ぎてから、ようやく返事が出来た。

どもっていたが。

 

 

 

 

「よろしく。」

 

 

 

こうして唯と迅は師弟関係となった。

 

未来では実際に教えてもらうことは微々たるもので、大体は迅の伝手を使った辛い特訓になることを今は迅しか知らない。

近い未来で己が指示した相手と戦っている唯が視える。

最初は仮想トリオン兵で数をこなしていたが、そのうちに対人戦闘となる。

経験の差から、切り刻まれたり狙撃で頭が吹っ飛んだりするたびに唯の顔は青くなっている。

 

 

「あ」

 

 

 

なんて可哀想なことを、と思いながら頭の中でメニューを考えてみる。思いついたその後に唯を見てみれば、先程よりも泣きはしないが顔色が青いどころか白くなってたりする未来が増えた。

 

 

 

 

「(泣いちゃったらぼんち揚げで慰めるかぁ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







「迅さん、質問なんですけど」


「はいはい師匠に聞いて」



「かつりょくってなんですか?」


「さっき言ったこともしかして理解してない?まってなんか恥ずかしい」

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