最上の娘   作:かんよう植物

7 / 10
今回捏造あります。もうトリオンについて捏造しちゃいました。
ところでお腹が痛い。明日発売日だから?昨日の夕方に突然腹がキリキリとし始めました。食べすぎかな。


第7話

   

唯のそれはトリオンを感じることは出来ても

人がどこにいるのか分からない。トリオンに酔うと報告書に書かれてあったのは、多すぎるトリオンを感じて処理しきれない負担となっているから。

 

「特に訓練室なんかは顕著で、上下左右存在するもの全てがトリオンで構成された場所だからそれまで感知して酔うって結果になるかな。それが唯が弱い理由だ。」

 

「B級に上がれたのも、最初の一撃で決める戦い方で勝っていって、それなら酔いが酷くなる前に終わるからな。でも、B級同士の戦いだとすぐに決まることは減る。」

 

 

 

 

防衛任務では難なく近界民を倒しているが、ランク戦になると勝率は乏しかった。

実際、開始直後に転送された時に酔っているのかかなり顔色が悪いのがよく見えた。そして一撃で決まらず体を動かせずにそのまま緊急脱出(ベイルアウト)だ。

 

 

「生まれつきのサイドエフェクト、これは持っていて当たり前、人に言われて初めて特異さに気付く。いやむしろなんで皆は持っていないのか不思議がる……

 

唯のいた環境でもちろんトリオンで出来た建物もトリオンが多い人間もいなかった。慣れることないまま今まで過ごしていたんだ。」

 

 

人が本来感じる筈はなかった、人に外れた力を持ってしまったが制御する力を唯は持って生まれてこなかった。そして、育った環境の中でもトリオンを使うような場面に直面したことが今までなかった。

トリオン体になってから慣れるように励んだ訓練、最低限、気絶しない程度までしか体が耐えられない、そこまでしか改善されなかった。

 

 

 

 

 

ランク戦で勝とうと思っても決着を付ける前に体を動かせなくなりその隙に倒される。しかも酔いが治まらずその日のうちに何回も行うことが出来ない。

数ヶ月もの間、この状態が続いた唯は強くなれない自分にじれったさを感じていた。

 

 

 

「(私は弱い、私は強くなれない)」

 

どんな時も頭にはこの言葉が張りついている。寝る時も必ず強く思い出して寝つきが悪くなる。

 

 

サイドエフェクトを元々知っていた者や、噂で聞いたことがあるという人達とも何回も戦ってきた。

何度やっても埋まらない差に、憐れみのような視線をもらったことだってある。言葉で「弱ェ」と目の前で言われたことも。同い年のある男の子にはもう嘗められている。「弱い人」認定されている。

言い返せるほどに今より強くなるというビジョンが見えなかった。解決策が見いだせないまま戦っても意味がなく、ただポイントが減っていった。

泣いてはいけないのに、泣きたくなる毎日だった。

こんなサイドエフェクトは、ただの重りだ。どんなに期待されていても使いこなせないならただの邪魔なものだ。

 

 

 

 

 

 

「勝てなくて落ち込んでるって聞いたけど、安心しなよ。これから勝てるから。」

 

 

暗い気持ちの中で、解決の光が差し込んでいるように感じた。軽い口調で言った迅を凝視しながら次の言葉を待つ。堪えて白くなる程に握りしめた手の平の力を緩めて迅を見上げる。

 

 

近界(ネイバーフッド)はトリガーの技術がこっちよりも発達してるから個人建物なんかでも普通にトリオンが応用されてる。まぁ絶対唯は近界にいけないな~。暫くしたら克服して行けるかもしれないけど。ちなみに唯は近界に行ってみたい?」

 

「ねいばーふっど?」

 

「そう、近界。……昔からボーダーにいた人は何回も行ったことがある向こう側の世界だ。あっちにはオレたちのような人間も住んでいる、3年前の侵攻もそこにある国からのものだ。犠牲者や行方不明者をたくさん出したあの。そんな怖い場所に行きたい?」

 

向こう側の世界の不安になるようなことしか言わない迅。唯を行かせたくないからか、近界を褒めるようなことは一切言ってこなかった。

 

「行きたいとは思わないです。私が絶対に行けない場所なら無理してまで行こうとは考えません。」

 

 

そう、と迅は返す。どこか安心したようにため息を吐いている。

 

「話を戻そう。それで、トリオンで出来た建物、三門市には本部しかないんだ。アレは半永久的に耐久度を持続するために普通のトリオンとは違うんだ。

アレはすぐに消せない。唯のサイドエフェクトは初めて来たときは生身でも感じ取ったらしいけど今は反応しなくなったって報告書に書いてあった。つまり完全に物質化されたトリオンにはもう耐性がついたんだ。」

 

 

 

 

 

確かに唯は初めて本部に着いたとき、鼻がずっとムズムズしていた。アレはサイドエフェクトが本部の建物に反応していたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「一方でランク戦で設定されたステージの建物は、質は同じだけどすぐに消せるようにされている。そうしないと効率が悪いからね。訓練室のトリオンは武器と一緒で1回消すともう一回作り直せるのが利点だ。こっちにまだ唯の処理能力が追いつかないんだな。

だったら、処理を最初からすればいい。ボーダーの訓練室の場所の設定は数は多いけど、建物に含まれるトリオンだけ予め処理しておけば、反応はしなくなるんじゃないか?って、鬼怒田さんたちから聞いて答えもらったよ。」

 

「そんなことできるんですか?」

 

「できるさ。例えばオペレーター達は処理能力が必要不可欠だからな。実際にオレのサイドエフェクトで楽しそうに戦う唯の未来が視えるんだ。」

 

唯は、困惑している。この力を克服するには自分が慣れるまで戦うしかないと思っていた。制限された中で強くなるしかないと思っていた。

迅の提案なら力を借りることでこの力に振り回されないかもしれない。強くなれるかもしれない。しかし、唯は迅を責めたくなった。迅だけではない、今まで戦った人達に対してもいやな感情が湧いてくる。

 

 

 

 

「(でも、いちばん私が嫌なのは…)」

 

 

 

「未来が視えているのに、助けてくれなかったんだ。」

 

 

「………」

 

 

「見かける度に、悲しそうな顔してると思ったらすぐにヘラヘラ笑ってこっちにくるの、私知ってる。私が負け続けて同い年の人に下に見られてたり、防衛任務中との差が酷いって陰で言われてたことも全部ずっと視てたなら、その顔に納得する。

そんな顔しないように表情ちゃんと繕ってよ、小南先輩が言ってた暗躍も失敗しちゃうよ。なんで、私の前でなんでそんなに繕えなかったの?

分かってる。未来を教えられてもそれはいい方向に進まない。教えられた未来でも進み方が違うと変わっちゃうなんて誰かに言われなくても知ってるよ。

…こめんなさい、酷いこと言った気がする。」

 

唯は迅の顔が見られない。唯が言った言葉は理不尽だ。

勝手に自分が弱い原因を迅のせいにしてしまった。迅のサイドエフェクトは本人から直接聞いていた。「未来が分かるサイドエフェクト」、目の前にいる人の未来が分かる。迅は未来視を使ってボーダーに大きく貢献している。未来を視ていい方向に進ませようと積極的に暗躍をしている。趣味と言っていたから素直に尊敬は出来ないが。

 

もっと早く強くなれていたかもしれないというIFを想像してしまう。そしたら唯は味わったことのないこの苦しみをまだ知らなかったかもしれない。そんなことをつい考えてしまう。もうそれはあり得ないのに。

 

 

 

 

 

「迅さんはいい人。悪いのは私。私の師匠になるって言ってくれたのに、迅さんの気持ちを無視して酷いこと言っちゃった。だけど、今まで強くなれなかった原因が分かったなら、私はもっと強くなってみせる。迅さんを責める前に強くならなきゃ、迅さんのせいだって言ったことをそれで取り消したい。あっでも迅さんはあまり信用しすぎるなって言われてたからどうしよう、今からでも迅さんの弟子になるの取り消しした方がいい?」

 

 

 

「フォローしようと思ったけど取り消しはダメ。せっかく頑張った(暗躍した)からこのまま続行。」

 

 

 

 

 

 

先程からテンションの浮き沈みが激しい少女の新たな1面を内心少し戸惑い感じながら、迅は唯にトリガーを渡した。それは先日エンジニアに点検してもらった唯のもの。実は迅はそこにちょっかいをかけて点検が終わったこれを無断で受け取り唯に渡さずにいた。そのまま玉狛のエンジニア、クローニンに頼んである処理をして貰った。

 

 

 

 

 

「新しい処理が施されているそれなら、もう唯はこれ以上弱いままじゃないよ。」

 

 

「酔わない?」

 

 

「もう酔わないトリガーになったよ。」

 

 

 

 

嬉しそうな顔をして受け取ったトリガーを優しく扱う唯。悩まされていたことがこんなに簡単に呆気なく解決してしまった。まだ試していないがこれなら強くなれると予感した。

 

 

 

「それ使って今日から特訓だ。」

 

 

「今日は玉狛に呼ばれたけどこれからずっと玉狛でやるの?」

 

 

「いや今日の特訓はあっちでやれないから玉狛でやるけど他の人に手伝ってもらうときは本部でやるよ。」

 

 

 

奥の狙撃手用の訓練室、まだ唯が入ったことのない場所。そこでこれから特訓をするらしい。

玉狛にはご飯を食べに来たことしかない。食べた後に陽太郎や雷神丸と遊んで遅い時間になったら車で送ってもらう。それが唯と玉狛の関係だった。

それが少し変わる。食べに来るだけかもしれないし、食べる前に迅に稽古をつけられるかもしれない。

ひとつ増えただけでも少し新鮮に感じるだろうか。

 

既に入っていった迅が待っている。どうやら先程言っていた準備が整ったらしい。

 

 

 

 

唯はトリガーを握った。いつもは酔いを覚悟に強く緊張していたが、今は少し違う。

悩みがすべて消えて、これからは無理しなくても戦う事が出来る喜びと期待に興奮している。

 

 

 

 

 

「トリガー起動。」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。