以前から興味はあったし、自分の小説の感想でもその単語を見かけたり、ランキングを除くと大体その単語を見かけたり……
というわけでFateの二次創作です。
連載ではなく短編なので息抜き程度にしていきたいです。
何ともちっぽけな人間だったのだろう。
自分でも自覚できるほど、その人生は惨めで、何の価値も無いものだった。
生きるだけで精一杯だ……何て言い訳を常に振りかざし生きてきた。
その人生は全て自分が生きる為だけのもので、他者の為にした事など何一つ無かった。
感謝をされた事なんて一度も無かったし、むしろされた事と言えば罵られたりするぐらいのものだった。
当然だ、他者の為に何かをするという人間として当たり前の事を、自分という人間はしなかったのだ。
いや、するのが怖かったのかもしれない。
何故そんな人間になったのかは知らない。
生まれつきかもしれない、両親の愛情が全く注がれなかったからかもしれない、そうする事でしか生きていけないと、自分勝手な考えをしていたからかもしれない。
もしくは……愛というものが理解できなかったからだろうか。
何にせよ、自分という人間はそういう奴だった。
後悔はない……といったら嘘になる。
本当は他者に優しくしてあげたかった、愛を知りたかった。
けれど自分はそれを恐れた、臆病な人間だったから。
もし優しさを、愛を知ったら自分はどうなるのだろうか。
全く予想ができなかった故に、自分は恐れたのだ。
それに気が付けたのは、結局死ぬ寸前の時だった。
まるで映画のフィルムのように、自分の今までの人生がその一瞬で全て再生されたようだった。
その一瞬で、自分の人生がどれだけ無意味なものだったのかを知った。
"嗚呼、つまらない人生だった"
そして嘆いた。
余りにも遅すぎる嘆きだったため、何もかもが手遅れだった。
結局死ぬ事でしか、自分の過ちに気付かなかった愚かな人間だった。
"——もし、もし次があるのなら、今度こそ"
愛を知ろう、情を知ろう、意味のある人生にしよう。
愚かな人間は、哀れにもそんな事を頭に浮かべながら、その無意味な人生に幕を下ろした。
そして、その次が訪れたのだ。
あまりにもそれは突然で、それでいて今度とないチャンスだった。
俗に言う生まれ変わりという奴だろうか。
気が付けば自分という人間は、全く違う人間になって再びこの世に生を受けていた。
しかし前世の記憶という奴は、殆ど無かった。
かつての自身の名前も覚えてない程に。
しかし、前世の自分は無価値な人間だった、次あるのなら今度こそ意味のある人生を歩みたい……それだけは自分という魂に深く刻まれていた。
だから聖人を目指した。
聖人というが、何も本物を目指しているわけではない。
単に、周りの人に優しくする事が出来たら良いな、それくらいのものだ。
しかし問題もあった。
新しい自分は、人一倍病弱だった。
生まれつきアルビノという奴で、その肌や髪は雪よりも白く、日光に暫く当たっているだけで火傷したかのように腫れ上がる。
加えて視力も右眼の方は殆ど無く、とても弱く傷つきやすい身体だった。
けれどそれくらいで止める気は無かった。
むしろこれは前世の罰、罪なのだと自分は考える。
だから弱々しく、触れただけで折れてしまいそうな身体で、自分はできる事をし続けた。
幸いというべきか、無理をせず細心の注意を払えば、死に至るまではしなかった。
『クラウディア・オルテンシア』
それが今の自分の名前だ。
「…………クラウディア」
「……んむぅ」
声がした。
さっきまで夢か何かを再生していた頭が、その声によって再起動を始めた。
「クラウディア、椅子に座りながら寝ていたら身体を痛めるぞ」
「…………あなた?」
徐々に意識が鮮明になっていき、視力が無く眼帯をしている右眼を無視して、左眼だけを開ける。
すると自分の顔を覗き込む男が一人そこに居た。
「調子が悪いのか、ならばベッドまで運ぶとしよう」
「いえ、大丈夫よ。少し眠ってただけ。それに今日はいつもより調子が良いの、もう寝るだなんて勿体ないわ」
「そうか、無理はするなよ」
「……本当は無理をしている私を見たかったりする?」
男は答えず、フッと笑うだけだった。
「お帰りなさい綺礼さん」
「あぁ、ただいま」
そして何時もの挨拶を交わす。
男の名前は言峰綺礼。
長身で、神父服に身を包んだこの男は、私の夫だ。
一味違った綺礼さんが書きたかっただけなんです……
Fateを知ってからこのサイトでいくつかFateの作品を読ませて頂いているのですが、何というか皆様の作品凄いですね。
引き込まれるような作品ばかりで、楽しく読ませて頂いてます。