キレイなアサガオ   作:よっしゅん

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 ねぇ、男の子と女の子……どっちだと思う?

 

 さぁ、私は別にどちらでも構わん。

 

 もう、つまらない人ね。

 

 それはすまないな。それよりも、お前が出産に耐えきれるのかを心配した方が良いのではないか?

 

 ……大丈夫、耐えてみせるわ。どんなに辛くても、私は耐えてみせる。

 

 ……そうか、うっかり忘れていたよ。無茶はお前の取り柄だったな。

 

 えぇ、昔から無茶をするのは好きなのよ私……

 

 あぁ、知っているとも。

 

 もう……じゃあ先に名前、考えておかない?

 

 名前?

 

 えぇ、とっても素敵な名前を……実はもう一つ考えてあるの。

 

 ほう、気が早いな。まだ妊娠したとわかったばかりではないか。

 

 別にいいじゃない、早いに越したことはないわ。

 

 そうか。

 

 そうよ。それでね、折角だからあなたの故郷の言葉を使う事にしたんだけど……

 

 私の? あぁ、通りでここ数日、日本辞典を読み漁っていたわけか。

 

 み、見てたの? ……えっとね、女の子だったらの話なんだけど、あなたの名前と同じような意味を持つ言葉にする事にしたわ。

 

 ほう、是非聞かせて欲しいものだ。

 

 笑ったりしないでね? もし女の子だったら、名前は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、靴があるわね……もしかしてあの子帰ってきてるの?」

 

「なんだ、知らないのか? アレの通ってる学校は今日午前終わりだ。特に予定もないのなら、帰ってきて当然だろう」

 

 ……そういえば昨日、そんな話をしたような。

 

 いつもよりも長い散歩を終え、無事に家に帰ったのだが。

 

「なんだ、それなら少し待って、三人で散歩すれば良かったわね」

 

 私の言葉に夫は、そうだなと返事をした。

 

 そう、実は私と夫の間には子どもが一人いる。

 そして居間からテレビの音が聞こえるということは、今『娘』はそこにいるということだ。

 靴を乱暴かつ丁重に脱ぎ、小走りで居間に向かう。

 そしているであろう娘の名前を私は呼んだ。

 

「『カレン』、お帰りなさい」

 

「それはこっちのセリフです。……ただいま、お母さん」

 

 案の定そこには、既に部屋着に着替えてリラックスしている娘の姿があった。

 

 カレン・オルテンシア。

 それが娘の名前だ。

 由来は至ってシンプル、夫が綺礼……言い換えると清潔という意味のキレイが日本語にあって、それに関連した名前を付けたかった。

 だから『可憐』という名前を付けたのだ。

 夫には苦笑されたが、私は良い名前だと確信している。

 

 娘の容姿は私そっくりだ。

 つまり娘もアルビノを引き継いで生まれてしまったのだが、幸いにも私よりは遥かに健康なので、普通に学校には通えるし、今のところ介助も必要ない。

 私のように苦労しなくてよさそうなので、安心もするが同時に少しだけ羨ましくもある。

 

「買い物ですか? 私の好物の激辛チップスは買ってきてくれましたか?」

 

「ただの散歩よ、お父さんと一緒に」

 

 私がそう答えると、何故か娘は怪訝そうな顔をする。

 

「どうした、母さんには挨拶をするのに、父さんにはしてくれないのか?」

 

 すると夫がヌッと私の背後から現れ、部屋に入ってきた。

 そして夫の顔を見るなり、娘はあからさまに表情をムスッとさせて言った。

 

「黙りなさいこのダニ神父。身体が弱いお母さんを連れ回して何のつもりですか?」

 

「おや、相変わらず嫌われたものだ。しかしそれは誤解という奴だ、私が連れ回したのではなく、母さんが私を連れ回しただけだ」

 

 と、突然喧嘩ムードが始まる。

 しかし私は別に慌てたりしない。

 だって夫と娘のこれは、何時ものやり取りだからだ。

 

「ふん、何処までが本当なのやら。性根が腐っているあなたのことです、どうせ休みたがる母さんを無理させて歩かせたのでしょう」

 

「ただの言い掛かりだな。むしろ、私はお前の方こそ無理にでも歩かせた方が良いのではないかと思うぞ。運動もろくにしていないというのに、基本は家にこもってるお前のことだ……また増えたのではないか?」

 

「最低です、まさか実の父が娘にセクハラ発言するエロ神父だったとは。何故私がこんな神父の種からお母さんのお腹で育つ事になったのか不思議でなりません」

 

「か、カレン……家の中とはいえそういう発言はあまりしないでね」

 

 なんだか娘の私生活が心配になってくる。

 学校とかでもそんな調子だったりはしないと信じたいものだ。

 

「お母さんもお母さんです。散歩ならせめて私が帰ってきてから行けば良かったのです。今日は午前中に帰ると伝えていた筈ですが」

 

「そ、それは……その」

 

 どうしよう、忘れてたなんて口が裂けても言えない。

 

「……まさか忘れていたと?」

 

「うっ……その、ごめんなさい」

 

 しかし沈黙していても、すぐにバレてしまうのは明白。

 あからさまに私を見る目が鋭くなった娘。

 どうやら火に油を注いでしまったようだ。

 

「なに、あまり気にするな。コレは単に嫉妬しているだけだ」

 

 すると夫の大きな手が私の小さな頭に優しく置かれた。

 ……嫉妬?

 

「例えるなら、好きな玩具を取られて拗ねた子どもだ……本当はお前と二人きりで散歩したかったのに、その役目を私に取られたと嫉妬しているだけだ」

 

 夫がそう言うと、娘の身体が僅かに揺れ動いた。

 

「なにを馬鹿なことを、別に嫉妬なんてしていませんし」

 

 と、若干早口気味で反論する娘だが、対して夫はそれがおかしいのか、クツクツと笑い出す。

 

「なにを急に笑っているのですか気持ち悪い」

 

「いや、すまないな。思っていたよりも動揺するものだからついな」

 

「別に動揺もしてません。ですから今すぐその不快な笑いをやめてください」

 

 ……なんというか、平和だ。

 多分この夫と娘による戯れあいは当分続きそうなので、私は今のうちに家事の続きでもするとしよう。

 

 

 

 




十話くらいで終わらせようかと考えてます
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