ISヒロインズとオリ主のお話   作:ジャーマンポテトin納豆

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昨日ぶりです。






92話目

大沢さん達十人と山の中に入って行く。

俺の格好は勿論浴衣だ。幸いなのは靴を履いてきていた事だろうか。

ただやはり普段の運動しているときの格好とは違い動きずらいのはある。

 

「凄いな……そんな格好でこれだけは山中を踏破できるとは……」

 

「それに物凄く移動速度が速いですね。何も持っていないというのもありますが幾らなんでも速すぎる」

 

後ろの方に居る人達が何か言っているがよく聞こえない。

 

「……大沢さん、何処に奴らが居るのかは分かるんですか?」

 

「いや、正直な所を言えば分かりません。ただ恐らくだが指揮を執るための車両やそれに近しい物がどこかにあるはず。そしてそれらは指揮を執るために……」

 

「……通信を取っている」

 

「その通り。だから今は電波を辿っています」

 

闇雲に走っている訳じゃなかったんだな。

下手に先頭に出ないで正解だった。

俺だけだったら今頃迷子確定だし。

 

 

それからさらに十分程走っていると一人が声を上げた。

 

「隊長、電波反応を探知。民間用の物ではありません。明らかに軍事用の電波回線です」

 

「よし。詳細な位置は?」

 

「二時の方向、距離凡そ二キロの地点に」

 

「通信の傍受は可能か?」

 

「既にやっています」

 

「俺達の行動に気付いている節は?」

 

「ありません。それどころか我々の位置を特定できておらず大騒ぎをしているようです」

 

「黒か?」

 

「はい。見つけ次第殺せだのなんだの騒いでます」

 

おぉ……なんか物騒な事を言いまくっているようで。

それにしてもこの距離で俺達に気が付かないって何をしているのだろうか?

警戒がザル過ぎるんじゃないか?此処まで来るといっそ罠を疑った方がいいくらいだ。

 

 

 

そう考えているうちに奴らの通信車両やらが見えてきた。

一度向こう側からは見えずに自分達からしか見えない場所に移動する。

そして大沢さんは部下の人達に指示を出している。

 

「……どうしますか?」

 

俺が聞くと大沢さんは、

 

「我々に気付いていない、見失っている今が好機です」

 

大沢さんは今までに見た事のない顔でそう言った。

そして俺に言った。

 

「いいですか?今から私達は奴らに奇襲を掛けます。そして我々は銃火器を持っている。当然相手もそれなりの武装をしているでしょう。これがどういう事だか分かりますか?そしてこれから何が起きるのかをしっかりと理解していますか?」

 

そう言ってこれから俺達は何をするのかを改めて認識させられる。

 

「……勿論です」

 

「……………………」

 

大沢さんは俺の目をじっと見る。

 

「それなら行きましょうか。大河君を含めた五名の班と私を含めた六名の班に分けます。大河君達をα、私達をβと呼称します。βが敵陣内に潜入。αはそれの援護を。もしISが出てきた場合については大河君、頼みましたよ」

 

「……任せてください」

 

そんな感じの簡単な作戦会議を終えると大沢さん達はすぐさま潜入していってしまった。

俺達は高台の茂みに隠れてαチームを援護し始めた。

部下の人達はどこからか狙撃銃を取り出して二人一組を作った。

 

「大河君、申し訳ないが周辺の警戒を頼みたい」

 

「……任せてください」

 

警戒任務を与えられたのでISのハイパーセンサーのみを起動して索敵する。

 

 

それからは特に何もなかったが急に敵陣の方が慌ただしくなり始めた。

それと同時に部下の人達が発砲を始めた。

俺は一瞬気を取られてしまったが直ぐに警戒に戻る。

 

このまま終わればよかったがそう簡単に事が運べる訳がなかった。

 

 

 

突如としてISの反応が現れたのだ。

それも三機も。

そして部下の人達は大沢さん達に通信を送り始めた。

 

「こちらβ1。α1応答せよ。送れ」

 

「α1。どうした?送れ」

 

「ISが現れました。撤退を具申します。送れ」

 

「了解。これより撤退を開始する。援護しろ。送れ」

 

「了解。援護する。送れ」

 

「それとこちらも出すぞ。送れ」

 

「了解。大河君、出番だ。すぐに出れるかい?」

 

「……何時でも行けます」

 

「よし。こちらβ1。送れ」

 

「こちらα1。送れ」

 

「今から出ます。送れ」

 

「了解。通信終わり」

 

そう言うと大沢さん達は通信を切った。

そして部下の人が俺の方を向いていった。

 

「大河君。ISを任せたよ」

 

「……はい。それでは行ってきます」

 

そして俺はイージスを展開し直ぐに舞い上がった。

 

 

 

 

ーーーー side αチーム ----

 

 

 

αチームは通信を切った瞬間に駆け出していた。

 

「急げ急げ!IS同士の戦闘に巻き込まれたくなきゃ死ぬ気で走れ!」

 

「んな事分かってますよ!……やべぇ!もう来た!」

 

「通信切ってからまだ二、三秒しか経ってないっすよ!?」

 

「しるか!んなことはいいから走れ!」

 

しかし流石は第四世代機。いや、ISだからだろうか。

七百メートルはある距離を数秒で飛んで来てしまった。

走りながら彼らは話す。

 

「クソッ!奴らパッケージを見た瞬間に全機飛びついて行きやがった!」

 

「畜生!そんなに男が嫌いかよ!」

 

「なんで俺達じゃなくてパッケージなんだよクソッタレ!まだ十六歳だぞ!?それに殺しを俺達はさせようってのかクソ!」

 

彼らは知っている。生身の人間がISに勝てない事を。

戦車や航空機ならばやりようによっては勝てるだろう。だがISはそれらの兵器を紙きれ同然の様に引き裂いていくのだ。

どうして生身の人間がISに勝てようか。

そして彼らは同時に思った。

 

まだ、たったの十六歳の少年に守ってもらう事しか出来ないのかと。

 

援護を要請したのはいい。何故ならISにはISをぶつけるしかないのだから。

でもそれは彼らの中では子供に殺しを命じたのと同じだと思っているのだ。

 

そしてそんな彼らの事など気にも留めないかのように上空で四機のISの戦闘が始まる。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

飛び出してすぐに三機のISが向かって来た。

しかし俺は戦わずに三機の間を通り抜けて行く。

置いて行かれた奴らは反転して追いかけて来る。

 

そうだ……そのまま俺に付いて来い……

 

追い付けるようで追い付けない速度で高度を取る。

少しでも大沢さん達に被害が行かないように。

 

ある程度高度を取った瞬間に減速、反転。

瞬時加速で擦れ違いざまに一機を落とす。シールドエネルギーはたったの一撃を加えただけでゼロに。次にかすりでもすれば終わりだ。

 

まぁ、第二世代の、それも個人用にカスタムされている訳でもない、挙句の果てにシャルロットレベルの操縦技術があるわけでもないのだ。それでこの一撃を耐えろと言う方が無理だろう。

しかしそれでも向かってくる。絶対防御がも確実にダメージを通さないという事では無い。絶対防御を超えるダメージを食らえば、大怪我は免れないだろう。

 

下手をすれば、死ぬ。

 

にも拘らず突っ込んでくるのは何故か。

そんなものは考えなくても分かり切っている。

 

俺を殺す為。

 

 

 

いいだろう。受けて立ってやる。どの道此処でお前たちを放っておけば家族や、織斑達に危害を加えるのだろうから。

ならば今ここでこいつらをーーーーーー

 

 

 

 

殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

殺すと決めてからは早かった。

一番最初にダメージを与えた奴から順番に落としていった。

その時の、彼女たちのは一生忘れることはないだろう。

 

憎悪、恐怖、怒り。

 

そんな感情を抱えた顔で落ちて行った。

 

ふと自分の手に違和感を感じて、手を見ると震えていた。いや、手だけではなく身体も震えていた。

 

なんでだろう?なんで俺の手は、身体は震えている?

 

 

どれだけ考えてもその答えは出てこなかった。

 

 

 

大沢さん達と合流した時には既に警察や自衛隊と言った公安組織が向かっていると言われた。

しかしそれから警察や自衛隊が到着するまで誰も話しかけてこなかった。

到着した人たちも含めて。

 

 

 

 

ーーーー side 大沢 ----

 

 

大河君がISを落とした。

本来ならばこれは自分の命も部下の命も大河君の命も助かって嬉しいはずなのだ。

にも拘らず私を含めて部下たちは一様に暗い顔をしていた。

 

まだ、十六歳の少年の手で人を殺させてしまった。

 

死んでいないかもしれない、何てことは無い。

絶対防御が発動してもあの高さからの落下の衝撃には耐えられないだろう。

 

そして大河君が帰って来る。

私達はその顔を見て何も言えなくなってしまったのだから。

言葉では表せられない程の、様々な感情が入り混じっている顔。

そしてその輝く、優しさを持った目は、

 

 

どす黒く濁っていた。

 

それは到底十六歳の高校生の目には合ってはならない色だ。

そしてその目にさせてしまったのは私達だ。

 

 

警察と自衛隊の部隊が来ることを伝えたきり、私達は話しかける事が出来なくなってしまっていた。

そして応援が到着した後も誰一人として話しかけることは出来なかった。

 

 

「隊長……なんで彼があんな目に遭わなければいけないのですか……?」

 

「分からん……」

 

そんな事分かるわけがない。俺だって聞きたいのだから。

 

「本来は俺達が彼の事を守って幸せに暮らしてもらうはずだったのに……なのに守ってもらってばかりで、あの時だってそうだった……俺達はただ見ていることしか出来ない……」

 

こいつの言うあの時とは福音暴走事件のことだろう。

あの時、我々はただ見ていることしか出来なかった。一度目の出撃のダメージで万全の状態ではない形で出撃して腕を失った。

その時は遠くでただただ見ていることしか出来なかった。

 

「隊長……俺は、力の無い自分が恨めしいです……」

 

「あぁ……」

 

拳を固く握りしめて自分に彼を守るほどの力が無いことを悔やみ続けた。

 

 

ある者は小さな声でひたすらに謝罪を。

ある者は己の力の無さを悔やみ。

ある者は少年が手を汚さなければならない今の世の中に憎しみを抱き。

 

それぞれが様々な感情でその場に立っていた。

 

 

しかし同時に皆で強く固く心に誓った。

 

 

 

 

ISには乗れないがそれでも、もう彼がその手を汚さなくてもいいように今よりも遥かに強くなろう、と。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 




思ったよりも短かった。

今回は試験的に特殊フォントを導入してみました。
自分で見て、

「これはねぇわ」

と思ったら修正します。

正直な話、特殊フォントって何が何だかよくわかってねぇ。
分かる人いたら教えてください。


感想、評価等くださいな。



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