尚余裕でシリアスに突っ込む模様。
もうシリアスはお腹いっぱいなんだよぉ!
前回も書いたじゃん!
でもこうしないと話が成り立たなくなるので仕方ない。
諦めよう。
「キャァァァ!?!?!?」
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は土下座をした。
今に至る説明をするには少し前に遡る。
ボーデヴィッヒとの話が終わって部屋に戻る。
ドアを開けると誰も居なかった。
しかし風呂場からは声が聞こえてくる。
声からしてデュノアだろう。
......しっかし女みたいに歌うな。
ガチャ
「はぁー、気持ちよかったぁぁ............え?」
「......デュノア、出たのか?それなら俺もは......いる......何?」
ドアが開く音がしたので声を掛けながら振り向くと、そこには見た事のない金髪美少女がががががが!?
えっ!?何!?どういう事!?
どちら様!?
あれ、なんかデュノアに似てる!?
まじどういう事!?
「デュ、デュノアか......?」
そう声を掛けると顔を赤くしながら、
「キャァァァ!?!?!?
叫び声を上げた。
そりゃそうだろう。
なんたって男に裸を見られたんだから。
そうなると俺は必然的に行動は決まって来るわけで、
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その場に勢いよく土下座をした。
やべぇ!?覗きじゃん!?犯罪じゃん!?逮捕!?刑務所!?人生お先真っ暗!?
やべぇやべぇやべぇと考えていると声を掛けられた。
「......えっと、その、輝義?」
「はい、なんでございましょう?
如何なる罰もお受けいたします。どうか命だけは......!」
「いや、あの大丈夫だから、ちょっと部屋の外に出ててくれないかな......?」
「......分かりました。晒し首という事ですね?」
「だから違うってば!殺しなんかしないよ!
大人しく待ってて!」
「はい!」
そう言われ部屋の外に出る。
そして自分への戒めのために正座をする。
「大河君何やってんの?」
「......自分への戒めです」
「え?」
通り過ぎる同級生に変な目で見られながら待っていた。
時間にして五分程だろうか?
ドアが開き、入る許可が出た。
「輝義?もう入っていいよ......?」
「......分かった」
流石に落ち着きを取り戻して、冷静になる。
だって夢のはずだもの。
俺は金髪美少女の裸とか見ていません。
部屋に入るとデュノアが待っていた。
いつものジャージを着ているが、胸がいつもと比べて明らかにでかい。
早速現実から逃げようとするが、そうは問屋が許さない。
「......輝義、話があるんだけどいいかな......?」
元気のない声で聞いてくる。
これはしっかり話を聞かなきゃダメなやつか。
「......あぁ、構わない。そっちのタイミングで始めてくれ」
「ふふっありがとう。優しいね、輝義は」
「......そんな事はない」
デュノアは軽く息を吸うと話し始めた。
「えっとね、僕は女なんだ。騙しててごめんなさい」
あぁ、だからか。
初日に違和感を感じたのは。
「ちゃんとなんで男としてここに来たのか説明するね」
そう言って語り始めた内容は、少なくとも俺一人でどうこうできるものではなかった。
「僕はね、いわゆる妾の子ってやつなんだ。僕の実家は知ってる?」
デュノアの実家?なんだそれは?
全く思い浮かばないから首を横に振る。
「僕の実家はデュノア社って言う会社なんだ。
輝義の乗っているラファールを開発した企業だよ」
あぁ!!
納得がいった。
「......それがどうした?」
「最初にも言ったけど僕は妾の子なんだ。
それでお母さんが死んじゃって。
で、僕はお父さんに引き取られたんだ」
よくあるかは知らないが、金持ちにありそうな話だな。
そう思うが、俺は声を発さずにただ聞く事に徹する。
「それからは大変だったなぁ。
家に行ったら本妻の人に思いっきりビンタされたんだもん。
その後にISの適性検査を受けて、適性がある事が分かってデュノア社のテストパイロットになったんだ。
そんな時だった。
世界で初めてISの男性操縦者が見つかったってニュースが流れたのは。それからびっくりだったよ。僕を男としてIS学園に送り込むなんて話が出てきてさ」
「元々デュノア社は第三世代機を開発出来なくて焦ってたんだ。
今、ヨーロッパじゃ欧州統合防衛計画っていうのが進められているんだけどね?今すぐにでも第三世代機を開発しないと計画の機体の選考レースに出られなくなっちゃうんだ。
それにどこの企業もだけど、国から補助金を貰ってISの開発を行ってるんだけど、補助金を打ち切られそうなんだ。
だから、今すぐにでも開発する必要があったんだ。
だから、IS学園に行って男性操縦者のデータと白式の機体データを盗んで来いって言われたんだ。
一夏のを取って来いって言われたけど最悪輝義のデータだけでもいいって」
「こんな事が成功するわけが無いのに、無理矢理実行したんだ。多分政府の方にも深く関わっているから実行に移せたんだと思う」
「男性操縦者のデータは日本が秘匿してるんだ。
個人情報であり、このデータを元に非人道的な事が行われないようにって。だからこのデータが手に入れば各国に差をつけられる」
「だけどバレちゃったからもうお終い。
強制帰国の上に責任とか罪を全部なすりつけられて刑務所行きかな。
どう考えてもスパイ行為だから」
ここまで黙って聞いていたが、あまりにも理不尽すぎる。
だが俺にはどうする事も出来ない。
......いや、何とかなるかもしれん。
「......デュノア、お前はどうしたいんだ?」
「どうって、どういう事?」
俺はデュノアの意思を確認する為に聞く。
「......お前はどうやって生きたい?
自由に生きたく無いのか?」
こう言った瞬間、デュノアは叫んだ。
「自由に生きたいよ!
普通の女の子として生きたい!
たくさん可愛い服を着たい!
誰かを好きになったりしたい!
だけど、もう無理なんだよ......
それとも輝義がどうにかしてくれるの......?」
「......あぁ、もしかしたら何とかできるかもしれない」
「やめて!そんな事聞きたく無い!
希望を抱いて、もしダメだったらもっと辛いから!」
「......デュノア」
「嫌だよぉ......
もう辛いのはやだ......」
「デュノア」
「......何?」
そう言って振り向いた顔は泣いていた。
「大丈夫。俺がどうにかするから。
だからちょっと待っていてくれ」
「......本当に?信じてもいいの?なんで助けてくれるの?」
「いいか?人間ってのは誰かに指図されて生きるもんじゃない。自分の、自分だけの幸せを見つけるために生きるんだ。
だから幸せのために戦うんだ。
自分だけじゃない。家族や友人、大切な人の為に戦う人もいる。
俺は、誰かの幸せの為に戦いたい」
「デュノアにだって幸せを求める権利がある。
デュノアが言ったように、可愛い服を着る自由がある。
誰かを好きになる自由がある。
普通の女の子として生きる自由がある。
だから、諦めるな。
挫けそうになったら、誰かに助けを求めればいい。
支えてもらえばいい。
俺だって沢山の人に支えられて今の俺があるんだから。
助けを求める事は恥ずかしい事じゃぁない」
そう言うとデュノアは泣きながら、
「助けて、助けてよぉ、もうこんな生き方をしたくない.....」
「あぁ、任せろ。超協力な助っ人に頼んでみる。もしダメだったらちょっとフランスに喧嘩売ってくる」
俺はそう言ってスマホを開き、ある電話番号に掛ける。
数コール後にある人が電話に出る。
「もすもすひねもす!、てる君が大好きな束さんだよ!
何の用かな?もしかして夜のお誘い!?」
「違いますから。
少し話をしてもいいですか?」
「うん?いいよ。でもちょーっと待ってね」
「はい」
そういうと、束さんはキーボードを叩き始めた。
デュノアが後ろから声を掛けてくる。
「ね、ねぇ?誰と電話をしてるの......?」
「......束さんだ」
「えっと、もしかして篠ノ之束博士......?」
「......そうだ」
そう答えるとデュノアはふらふらっとベッドに倒れこんだ。
大丈夫だろうか?
「あ、てる君?今この回線を盗聴されないようにチョチョイのチョイってやったから安心していいよー」
「......ありがとうございます」
「うん!
で、話って言うのは?」
俺は今までの事を話す。
そしてどうにか助けてもらえないかと頼んだ。
すると束さんは、
「ちょっとその子に変わって貰える?」
「......はい。デュノア」
ん?返事が返ってこない。
見てみると、膝を抱えてドナドナと聞こえて来そうなオーラを放っていた。
「......デュノア?」
「もう、馬鹿なんじゃないの?篠ノ之博士と繋がりある人に手を出すとか馬鹿なの?アホなの?死ぬの?」
おぉう!?
「ありゃ?どうしたの?」
束さんが聞いてくるのでこの惨状を見せた。
ちなみにホログラムディスプレイが出てきて顔が見えてます。
束さんすごい。
「......うわぁ、束さんでも関わりたくない感じなんだけど......」
「デュノア!」
「ひゃい!?輝義!?どうしたの!?」
「......束さんが替わって欲しいそうだ」
「えぇ!?僕に!?」
「......とりあえず替われ」
「あ、あの初めましてーーーー」
こっからは聞いてない。
あんまり聞くようなもんじゃないと思ったから。
「さて、てる君!私は協力するよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「いいのいいの。この前はお世話になったからねー。恩返しだよ。まぁこれに限らず頼ってきてね」
「はい、ありがとうございました」
「うん、じゃおやすみ」
「おやすみなさい」
そう言って電話を切る。
俺はデュノアの方を向いて、
「良かったなぁ!これで自由になれるぞ!」
抱き上げてグルグル回る。
「ちょ、ちょっと輝義!?」
あまりにも嬉しくてついやってしまった。
「す、すまん......」
「ううん、ありがとう。私を助けるためにこうして手を貸してくれて」
「......気にするな」
「でもなんで助けようとしてくれたの?」
何故助けるのか理由を聞いてくる。
「......まぁなんというか、安い正義感が動かされたからだろうか?」
「ふふっ、何それ、変なの」
デュノアは笑いながら、そう言う。
「でも、ありがとう」
デュノアは笑いながら言った。
「......飯にするか」
「えっ!?輝義ご飯食べてなかったの!?」
「......あぁ、ちょっとボーデヴィッヒの様子を見に行っていてな。食い損ねた」
「えっと、じゃぁ僕が作ってあげようか......?」
まさかの申し出に一瞬固まるが、なんとか返事を返す事が出来た。
「......いいのか?」
「うん、僕は一生掛けても返せない恩があるから、これぐらいお安い御用だよ」
「......そうか。なら頼んでもいいか。」
「任せて!」
そう言ってキッチンに立った。
しばらくするといい匂いがしてきた。
今か今かと待ちわびていると、その時が来た。
「完成!お待ちどうさま!」
「おぉ......!」
すごい美味そうだ!
「えっと、
ラタトゥイユと、ジャガイモのグラタンだよ!」
らたとぅいゆ?
それはなんぞ?
「ラタトゥイユはね、沢山野菜が入ってる料理なんだ。
ジャガイモグラタンはその名の通りジャガイモが入ったグラタン!」
俺は待ちきれずに、うずうずしていると、
それを見たデュノアは、
「クスッ、どうぞ召し上がれ」
「頂きます!」
おぉ!
うまい!
何というかうまい!
俺に食レポは無理だな。
うまいしか言えない。
「どう?美味しい?」
「あぁ、とてもうまい!」
「そっか、よかった。でも誰も取ったりしないからゆっくり食べた方がいいよ?」
美味くてつい勢いよく食べていたら窘められてしまった。
「すまん、気をつける」
その間も食べ続ける。
するとあっという間になくなってしまった。
「......ご馳走様でした」
「はい、お粗末様でした。......これでいいんだっけ?」
「......あぁ、合ってる」
「じゃ、片付けちゃうね」
「......ありがとう」
「うん。すぐに入ると体に良くないから少ししたらお風呂に入ってね」
「......分かった」
しかし、何というか、デュノアはあれだな、お母さんだ。
風呂に入って出る。
「うわっ!?」
つい、パンツと短パンだけ履いて出てきてしまった。
そうだった、俺の身体は傷だらけなんだった。
見て気持ちのいいものではない。
すぐに着替えなければ。
「......さっきはすまない」
「う、うん。大丈夫」
「ねぇ?」
「......ん?」
「その身体の傷って......
あ、答えたくなかったら答えなくていいよ?」
別にそんなトラウマなものでもないから、教える。
「......学園が襲撃された事は知っているか?」
「うん。五機のISが襲撃してきたって聞いてるよ」
「......これはその時出来た傷だ」
「えっ!?どういう事?」
俺はあの時の事を話す。
その後俺がどうなったのかも。
「そうだったんだ......ごめんね、こんな事を聞いちゃって」
「......いや、構わないさ。
男にとって友人や家族を守る為に、ましてや女を守る為に付いた傷はどんな勲章よりも価値がある。
そして、皆に心配を掛けた事を思い出すためのものでもある。だから次、もしまたああいう事が起きたら、絶対に無事に帰る。そう思わせてくれるものだ」
「輝義は強いね」
「......そんな事はない」
「ねぇ、もし僕が助けてって言ったらどんな時でも助けに来てくれる......?」
こいつは何当たり前の事を聞いてくるのだろう?
「......当たり前だ。それが重要な式典だろうがなんだろうが助けに行く」
「ありがとう、嬉しいなぁ」
少し頬を赤くしてそう笑って言った。
「それじゃ寝よっか。織斑先生に怒られたくないしね」
「......あぁ、そうするとしよう」
「......ねぇ、輝義?」
「......なんだ?」
「今日だけでいいから、その、一緒に寝ちゃダメかな......?」
こいつは何を言っているんだ?
うっ!?
そんな目で見るな!
ダメだぞ!そんな事は!
ダメでした。
あんな不安そうな目で見られたら誰だって勝てねぇよ。
「えへへ、輝義の手すっごいおっきい」
「......いいから寝ろ」
「はーい」
楽しそうにしてんなぁ。
「よいしょっと」
「......おい、何してるんだ?」
「ん?腕枕だよ?」
何を当たり前の事を聞いてんの?
みたいな顔された。
俺なんか間違った事言った?
「今日だけだから」
「......まぁ今日だけならいい。だが明日は無しだぞ」
「うん!
そうだ、僕の事をいつまでもデュノアじゃなくてシャルロットって呼んでほしいな」
「......分かった。シャルロットは本当の名前か?」
「うん。シャルロットは僕の本当の名前なんだ。
お母さんがつけてくれた大切な本当の名前」
「......シャルロット」
「何?」
「おやすみ」
「うん、おやすみ輝義」
そうして俺達は寝始めた。
次回あたりにラウラとシャルsideの話を書こうかなと思ってます。