箒達にこってり絞られた次の日。
部屋でゆっくりしていると、電話が掛かってくる。
「……もしもし」
「あ!てるくん!こんばんわ!」
束さんですね。
どうしたんだろう?
「……はい。こんばんわ。今日はどうしたんですか?」
「昨日、亡国機業の奴らと会ってたでしょ?」
おう……
マジカヨバレテル。
なんでや?
「……何故そのことを?」
「束さんにてるくんの事で分からない事なんてないんだよ!」
まじか。
なら仕方ないね。
「……そうですか」
「うん!それでねそれでね!」
「……はい」
「てるくんの専用機が完成したんだよ!」
随分と早いな。
「……早いですね」
「てるくんのために頑張ったんだ!臨海学校の時に渡せると思うから!ちーちゃんに言っといてくれないかな?」
何故だ?
自分で言った方が早いのに。
「……ご自分で言えばいいのでは?」
「いやぁ……またなんかお小言を言われそうで……」
あぁ、そういう理由ね。
「……分かりました」
「ありがとう!てるくん!じゃ、臨海学校で会おうね!」
「……はい。おやすみなさい」
「うん!おやすみ!」
その後は言われた通りに織斑先生の所に報告しに行ったんだけど……
ご乱心でした。
あれはやべぇ……
今現在俺は臨海学校に向かう車の中。
なんでバスじゃないのかって?
だって入れないんだもん。体がでかすぎてどうやっても入れなかったんだよ。
実際、乗ろうとして胸板が引っかかってしまったのだ。
その際、皆に笑われた。あの織斑先生ですら笑っていたのだ。
それに入れたとしても座れる席が無い。
だから先生たちが車をレンタルかどうかは分からないが用意してくれたのだ。
でっかいやつを。
多分、バンかなんかだと思うんだけど、座席が全部取り外されていたのだ。
しかも天井が高い。背中を曲げなくて済む。
それに床にもマットが敷いてあって痛くない。
いやまぁこれでも少しばかり横がきついんだけども。
そこらへんは我慢するしかない。
それにしても織斑先生が免許持ってたことにびっくりだわ。
「大河、すまんな」
何を言っているんだ?
俺が感謝する事はあるけど何故俺が謝られてるんだ?
「……何故ですか?」
「こんな狭い車に押し込めてしまってな。皆と一緒に騒ぎたかっただろう?連絡を怠った我々のせいで引っかかってしまったことと、入り口で引っかかった時に笑ってしまった事もだ」
あぁ、そのことですか。
「……大丈夫ですよ。それに皆が居なくても織斑先生がいますから」
そう言ったら、何故か少し頬を赤くして、
「そ、そうか……」
と言って黙ってしまった。
なんか悪い事言ったかな?
「……どうかしたんですか?」
「な、なんでもない!」
そうですか。
体調崩したとかじゃないならいいんだけど。
その後は俺が眠ってしまったから特に会話をするでもなく、到着するまでのんびり寝ていた。
ただ、スコールさんに言われたことが気がかりだ。
起きなければいいが、それはないか。
ーーーー side 千冬 ----
今日から五日間の臨海学校が始まる。
初日と二日目は機材の搬入やらなんやらで自由時間になる。
三日目からはⅠSを使った実習になる。
一般生徒は学園から持ってきた機体を使って班ごとに分かれ、
試合、とまではいかないものの簡単な模擬戦を行う予定になっている。
専用機持ちは別行動になる。
内容は、各機体の新装備のインストール、及びその装備の試験を含めた実地テスト。
洋上での試合を行う。
ここまではいい。
ただ、正直今までの事を考えるとまた何か起きそうで怖い。
そんな不安を抱えていたためか教師全員、大河の事をすっかり忘れていたのだ。
別に存在をではなく、その体格ゆえの問題を。
前日になって大河がバスに乗り込めないのではないかということに気が付いたのだ。
なので大急ぎで校長の轡木さんに相談したところ、中古で車を用意してくれた。
それでも座れないので技術部の二、三年に頼んで座席を取り外し、床にマットを敷き、天井を高くし、改造した。
そして私達はこれで何とかなるだろうと安心してしまった。
そして、やらかしてしまったのだ。
そう。
大河にこの事を伝え忘れてしまったのだ。
当日、その事を知らない大河がバスに乗り込もうとして入り口で引っかかると言う珍事が起きた。
いやもう、可笑しすぎて笑ってしまった。
本人はバツが悪そうにしていたがあれは誰だって笑ってしまう。
普通に考えて無理だろうに、何とかして乗ろうとしたのか、あの分厚い胸板が引っかかってしまったのだ。
何とか抜け出した大河に説明し、車に乗せ今に至る。
それに謝らなければならない。
謝罪したところ、大丈夫だと言って来たのだ。
それに皆が居なくても私が居るから大丈夫だと。
……ふふ。嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
その後は大河が寝てしまったので運転をしながらもう少し会話がしたかったと思ったが、寝顔が見れたので良しとする。
ーーーー side out ----
「大河、あと十分程で着くぞ。起きろ」
その声によって俺は目を覚ました。
「起きたか。ほら見てみろ、あれが泊まる場所だ」
そう言って織斑先生が指を差した先にあったのはでかい高級感が半端ない旅館と、海だった。
正直、日本の海岸だし、所詮は臨海学校だろって舐めてたわ。
「……おぉ!」
思わずそう声を漏らしてしまうほどに綺麗なんですけど。
海もすげぇ綺麗。
なにこれ、金掛けすぎじゃね?と思っちゃう俺はやっぱり庶民なんだな。
「ほら、取り敢えず降りる準備でもしておけ」
「……はい!」
あぁ、楽しみなんですけど!?
「「「「「「ついたーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」
車を降りるなりそんな声が聞こえてきた。
皆さん元気ですね。
皆きゃいきゃいはしゃいでる。
そこへ、俺を呼ぶ声がする。
「輝義!こっちだ!」
声のする方を向くと織斑がぶんぶん手を振っていた。
「いやぁ、すっげぇなここ」
織斑がそう漏らす。
「……あぁ」
近くで見ると更に凄い。
「そういや千冬姉とのドライブどうだった?」
唐突に何を聞くんだね君は?
「……いきなりなんだ」
「いやだってよ、二人きりだぜ?なんかなかったのか?」
織斑、頼むからもうやめてくれ。
箒達の目が凄い。
「……何もない」
取り敢えずこれしか言えない。
「えぇ……そうなのか?」
そうなんです。だからもうやめてってば。
それにお前は弟としていいのかそれで?
この後、皆で旅館の女将さんに挨拶をして各自部屋に行くことに。
ちなみに俺は何故か山田先生と同じ部屋だった。
マジでなんでなの?
織斑は織斑先生とだから姉弟どうしで問題ないけど。
今日はここまで。
また昼間に投稿出来たら投稿します。
遅くても夜には投稿できるはず。
感想、評価等くださいな。