福音を落とした後、束さんからの検査を受けて俺自身の身体には異常なし。
イージスの方は展開装甲が全て使えなくなった以外は問題なし。
SEを充電しさえすれば直ぐに使えると言われた。
イージスは今、念のための点検とSEを充電するために束さんに預けている。
展開装甲については後日、束さんが新しく作って持って来てくれるとの事。
ただ、
「あー……これは全部作り直すのに数日掛かっちゃうかなぁ……それに今回ので強度不足だって分かったから改良も施したいしね。それまで待ってて」
って言われた。
有難い。
取り敢えず報告は明日にして今日はもう休めと言われた。
正直かなり疲れていたので飯を食ってから風呂に入って部屋に戻ると布団が敷いてあった。
しかも俺の足が出ないように二枚使って。
机の上に置手紙が置いてあった。
山田先生からで、
今日はお疲れ様でした。
私はまだ仕事がありますが大河君はちゃんと休んでくださいね。
明日は通常通りに行うそうです。
追伸
お布団引いておきました。
早めに休んでください。
山田先生、マジ天使かよ……
オペレーターをして自分も疲れているはずなのに、俺に気を使ってくれるなんて……
ありがたやありがたやなどと思いながら布団に入ってすぐに寝てしまった。
多分、八時過ぎぐらいだったと思う。
それから何時間たったかは分からない。
部屋に織斑先生が飛び込んできた。
何事かと思って織斑先生を見た。
「大河!!起きろ!!緊急事態だ!!」
その声で飛び起きた。
時計を見れば二時になっていない。
「……どうしたんですか?こんな時間に」
「消えていたはずの福音の反応が再び現れた!!」
どういう事だ!?
何があった!?あの時確かに落としたはずだ!!
「急いでパイロットスーツに着替えてコントロールルームに集合しろ!!」
そう言って走って行ってしまった。
クソッ!!落とした時にちゃんと確認していればこうはならなかったはずなのに!!
確認を怠った俺の責任だ……
織斑先生が走って行った後、直ぐに着替えてコントロールルームに走った。
着くと既に皆は集まっていた。
「よし、これで全員だな!時間が無い。説明を始めるぞ」
そう言ってモニターに映し出された映像を見る。
「八分前に突如として海に落ちた福音の反応が検知された。福音は既に移動を始めている。先の迎撃作戦での距離を考えると此処に到達するのに残り十七分も無い。
これを放置すれば間違いなくここを襲撃するだろう。そうなれば死者が出る。何としても防がなければならない。よって直ぐに迎撃に向かってもらう」
「……すまない皆……あの時俺がしっかり確認していれば……」
「今はそんな事を気にしている場合ではない」
そう言って織斑先生はモニターに向き直る。
「それでは作戦の説明をする。今回は全員で総攻撃を仕掛ける。取り敢えず時間を稼いでくれ。その間に他の生徒たちを避難させる。すまないがまともな作戦を立てている時間もない。それと……束、いるんだろう?出て来い!」
織斑先生が呼ぶとまたしても天井から束さんが出てきた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」
「ふざけていないで答えろ。大河の機体は出せるか?」
俺の機体の事だった。
「行けるよ。でも展開装甲は予備で作ってあった三枚しか無いからね。それでもいいんだったらすぐにでも出られるよ」
状況が状況だから展開装甲が無くても行く。
既に俺の覚悟は出来ている。
「分かった。すまん大河。行ってくれるか?」
それでも織斑先生は聞いてくる。
そうしなければならないから。
意思を確認するという名の命令を。
「……行きます。覚悟は出来ていますから。そんな顔をしないで下さい」
「そうだぞ千冬姉」
あ……お前……
ポコッ。
軽く織斑を叩きながら言った。
「そうだな。私がしっかりしなければいけないのにな」
そう言って息を吐き、改めて言った。
「これより防衛戦を開始する。準備は整っているな?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
「よし!出撃!!」
さぁ!!第二ラウンドの始まりだクソッタレ!!
現在、俺達は福音に向かっていた。
出撃する前に山田先生が、
「昼間の迎撃戦の時に通信が妨害されました。恐らく今回も妨害されるでしょう。予め言っておきますが、通信は出来ないものと思っていて下さい。
なのでこの周辺海域の地図を渡しておきます」
と言って地図を渡してきてくれたのだ。
その地図を見てラウラが、
「此処に岩礁地帯があるな……
旅館からの距離も十分離れている。
セシリア、昼間に換装した長距離狙撃用パッケージはそのままか?」
「えぇ。そのまま積んでありますわ。それがどうかされたのですか?」
「全員山田先生に貰った地図を見てくれ」
そう言われ、地図を見る。
「ここに岩礁地帯がある。しかも丁度いい事に福音との会敵予想場所だ。
これを使って私とセシリアで狙撃を仕掛けるからここまで誘導してくれないか?」
それには賛成だ。
正直な話、元とはいえ軍人の意見なのだ。
取り入れるべきであろう。
皆も同じようで頷いている。
そこにシャルロットが直ぐに疑問を投げかける。
「分かったよ。でもセシリアはまだしもラウラは弾数があまりないんじゃ?」
「そこの心配は要らない。篠ノ之博士が昼間に拡張領域に新しい武装をインストールしておいてくれた。砲撃が出来なくなってもこちらが使える。それでも弾数の制限はあるがな」
何それ初耳なんですけど。
射撃武器とか羨ましい……
ゲイボルク?あれは違うだろ。
「そうなの?なら大丈夫だね」
「それと一応だがシャルロット、護衛についてくれるか?」
「分かった。でも状況次第じゃ輝義達の援護に回るよ。それでもいいなら」
「それでいい。頼む」
「それと、輝義達の情報によれば全方向に高威力のエネルギー弾を弾幕でバラまける。
注意しろ。距離を取ったからと言って安心するな、射程もあるそうだ」
俺と織斑が戦った時に入手した情報を伝える。
そうして確認を行っていると、簪が警告の声を上げた。
「皆!前方に福音が見えた!」
その瞬間、全員の顔が引き締まる。
その言葉で俺達は福音をハイパーセンサーで見る。しかし昼間に俺達が戦った福音とは明らかに姿形が違っていた。
「おい!!輝義!!」
「あぁ!!姿形がまるで違う!!」
その言葉に全員が驚く。
「どういう事だ!?」
「分からない!昼間に見た福音とは全然違う!!」
「……まさか二次移行ですの!?」
セシリアの言葉に誰もが凍り付いた。
背筋に悪寒が走る。
「冗談じゃない!!あれは無人機だぞ!?まさか搭乗者が居なくなってから二次移行したとでも言うのか!?」
「でもそうとしか考えられないよ!?どうするの!?」
「クッ!!先程の通りで行く!!変更している時間は無い!!」
その言葉を皮切りにセシリアとラウラ、シャルロットは岩礁地帯からの射撃を、俺達は近接戦を挑んだ。
そこから地獄のような時間が始まった。
ラウラの新武装
名称 雷神の鉄槌(ミョルニルまたの名をトールハンマー)
由来は北欧神話に登場する雷神トールのもつ鎚から。
所謂、荷電粒子砲の事で束さんが設計、製作。
束さんお手製という事もあり威力などは折紙付き。
電力の問題はほら、束さんだからちゃんと解決してる。
名称 ミストルテイン
由来は北欧神話のオーディンの息子、バルドルの命を奪ったヤドリギの矢から。
所謂、陽電子砲の事。
撃った時に空気に触れて放射能をまき散らすがそこは流石束さん、ちゃんとそう ならないようになっています。
威力?束さんが作ったんだ。察しろ。
上の物と同様、電力問題は解決済み。
「束さんは中途半端なものは作らないし渡さないから安心して!」
てことでこんな感じ。
ちゃんとした説明は後日書きます。
次回、束さんがラウラにあげた新武装の登場です。
感想、評価等くださいな。