ヒロイン達とイチャコラさせたい……
ーーーー side 千冬 ----
大河の手術が終わるまでは私は何もできない。
だから外で待っていることしか出来ない。
もどかしいな……
大河の腕の手術が終わって一息つく。
束の事だから失敗は無いだろうとは思っていたが、いざとなるとこう、何と言うか来るものがある。
取り敢えず山田先生には今日一日大河の方にかかりっきりになるからクラスの方は頼んでおいたからここで大河の事を見ていられる。
暫くして大河の目が覚めた。
しかしまだ麻酔が残っているのか眠そうにしているし喋れないようだ。
それを見た束がもう一度寝るように促すとすぐに寝てしまった。
その顔を見ていると束も眠そうにしている。
大方、腕の方に掛かりきりになって寝ていないのだろう。
そうとくればとっとと寝かせてしまった方がいい。
後で大河が目を覚ましたら説明やらなんやらをしなければならないからな。
一言いって束を寝かせた後、大河の顔を見ていると本当に起きているときはしかめっ面だが寝ているときは穏やかで優しそうな顔をしている。
起きているときもそうすれば初対面の人間に恐れられる事は無いだろうに。
まぁ言っても直らなさそうだしな。
そうしているうちに手が大河の頭に伸びていた。
無意識の内にだ。
何故だろう?
まぁいいか。
そう思いながら頭を撫でる。
少しゴワゴワしているが、それでも柔らかさのある髪の毛だな……
暫く撫でていると少しだけ、本当に少しだけ笑った。
こんなに温かくて優しい顔が出来るのに、本当になんで起きている時に出来ないんだ……?不思議だ……
そうしてしばらくたつが全然飽きないどころかむしろ良い。
なんかこうしていると可愛いな……
頭を撫でていると二時になっていた。
そして大河も起きる。
束は起こしても起きないからほっとこう。
帰ってくるまでに起きればいいか。
それから食堂に大河が食べる物を何か取りに行った。
ガッツリ行ける物……
親子丼でいいか。
「すいません、親子丼を一つお願いしてもいいですか?」
「織斑先生じゃないかい。どうしたんだい?仕事で遅れたのかい?」
この人とは結構顔を合わせる。
部活で朝練があるものや先生方の為に朝の早い時間帯から食堂はやっている。
その時によく顔を合わせるのだ。
「いえ、大河に食事を持っていこうと思いまして」
「あぁあの子かい。なんだ、調子でも悪いのかい?」
「そんなところです」
「だからここ何日か見かけなかったのか。ならちょっと待ちな。あの子はいつもたくさん食べるからね。作るのにも時間がいるんだ」
そう言って厨房に入っていく。
大河のやつ、何時もそんなに食ってたのか。
まぁ、あのガタイだからそれも納得できるか。
暫くして戻って来る。
とんでもない量の親子丼と共に。
は?なんだあれは?山の間違いか何かだろう……?
「織斑先生もやっぱり驚くかい?」
「それはそうですよ……もしかして毎食これだけの量を……?」
「そうだね。まぁいつもならここにプラスで何品か付くんだけどね。最初は大変だったよ」
何がだろう?
この量を作る事だろうか?
「何がです?作るのがですか?」
「いや、あの子は最初に此処に来た時に特特特特盛りでって言って頼んできたんだよ。
そんなの分からないから私ら基準で持ったんだけどね、満足した顔じゃなかったのさ。あれはまだ足りないって顔してたからね。悔しくてしょうがなかったよ。それから試行錯誤しながら量を調整していったんだ」
あいつ……
何時も食堂ではそんなことが起きていたのか……
「ほら、早くもって行ってあげな。体調が悪いのにこれだけ食べて問題ないんだろうかね?ま、あの子だから大丈夫な気もするがね」
「はい。ありがとうございます」
「あいよ」
そうして部屋に運んだのだが、落とさないようにするのに苦労した。
部屋に着くと食べながらでいいから束の話を聞くように言った。
しかし食べずに聞いている。
束によれば合併症やらの心配も少ないから安心していいとの事。
放っていても慣れれば動かしにくさは消えるし、リハビリをすればもっと早く良くなるとも言っていた。
それなら安心だな。
話が終わるとすぐに食べ始めた。
おぉ、すごい勢いだな。
圧巻だぞこれは。
大食い選手権に出たら優勝できるなこれは。
食べ終わるのを待っていたがこいつの胃袋は絶対おかしい。
授業についても聞いてみたが明日から授業に出ていいとも言った。
遅刻をしないように釘を刺してから仕事に戻った。
教室に向かってから、他の生徒たちに聞かれないように場所を移してあの場に居た、この事実を知っているメンバーに束から聞いた事を伝えると何人かは泣きながら喜んでいた。
あいつはとことん幸せ者だな。
そう思いながら仕事に取り掛かった。
ーーーー side out ----
腕が元通りになった。
んでもって束さんに疲れてるだろうから寝ろって言われて寝た。
それはいいんだけどさ……
なんで起きたら隣に束さんが横になって一緒に寝てんの?
もしかして俺記憶にないだけでやっちゃった!?
いやでも服はちゃんと着ているし大丈夫なはず!
でも、幸せそうな顔で寝てるもんだから起こし辛い……
でも起こさないと箒達が来たら何を言われるか分からないからここは心を鬼にしなければ……!
「……束さん、起きてください」
声を掛けながら強めに揺する。
しかしこれでは起きない。
それどころか離そうとしたら嫌がって思いっきり抱き着いてくる始末。
ヤバいぞ……!これじゃ他人から見たら完全にアウトだ……!
「起きてください!束さん!」
かなり強めに揺すったり声を掛けたりしているのに全然起きない。
しかも既に時刻は三時四十分になる。このままでは完全に尋問コースだ……!
どうしよう!?全然起きてくれない!さては俺に注意された後も徹夜してたな!?
いやそうじゃねぇ!どうやって起こせばいい!?
このままじゃ俺はまた正座する事になっちまう!
「嫁?いるか?」
そう言って入って来たのはラウラだった。
あ……
オワッタ……
「む?寝ているのか?」
「……起きてる。起きてるが今はこっちに来ないでくれ……!」
「何故だ?何かあるのか?」
「……ちょ!?」
そう言って布団を剥ぎ取られた。
もうだめだ……
俺の人生オワッタ……
「ん?博士が何故嫁と一緒に寝ている?」
「こ、これはその、ふ、深い訳がありまして……」
怒られる!
そう思ったのだが違った。
「ズルいぞ!私も嫁と一緒に寝たい!」
……ん?
「……今なんて言った?」
「だから私も嫁と一緒に寝たい!博士だけズルいぞ!」
うちのラウラはとっても良い子だった……
でもそれを許すと後でどうなるか分からないから今は断る。
「……また今度な。だから起こすのを手伝ってくれ」
「む……それならばいいだろう」
そう言って起こすのを手伝ってくれた。
純粋な考えのラウラに対して俺はこんな汚れた考えを……
すまない……
「博士、起きてください」
二人で起こしても起きない束さん。
どうしよう!?もう十分ぐらいしかないよ!?
……そういえばラウラとクロエってどこか似ている気がする……
そうじゃない。今は束さんを起こすことを考え…………ん?
ラウラとクロエは似ている……
確かクロエが最近冷たいって言ってたような……?
「……ラウラ、束さんにこう言ってみてくれ」
「?」
そう言って耳打ちする。
これなら絶対起きるはずだ。
確証はないけど。
「本当にこれで起きるのか……?」
「……大丈夫だ。絶対起きる」
「そうか……ならやってみよう」
そう言って息を吸ってラウラは言う。
「お母さん起きてーーー!!」
そう。これなら絶対起きるはず。
束さんはクロエに冷たくされて寂しいはずだから。
我ながら最低な作戦である。
「はっ!?どこかで私を呼ぶ声が!?」
でも束さんは簡単に起きた。
どんだけなの……
「お母さん?」
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!ラウラちゃんお母さんですよーーーー!!」
起きたのは良かった。
でもラウラが犠牲になった。
具体的には捕まってめっちゃ可愛がられてる。
「あぁもう素直でいい子だなぁ!!可愛いっ!!食べちゃいたい!!」
「?博士は私を食べるのか?美味しくないぞ?」
「超純粋!!それと私の事はお母さんって呼んで!!」
「分かった。お母さん」
「-----っ!?」
「お母さん、どうかしたのか?」
「てるくん……私は幸せだよ……」
「……そうですか」
何だこれ。
訳分かんねぇな。
結局その後皆が来るまでラウラの事を存分に可愛がった。
そして箒に見つかり今現在、何を訳の分からない事をやっているのかと怒られている。
なんか悪い事したなぁ……
暫くして解放された束さんは、ぐったりしながら
「帰ったらくーちゃんを思う存分可愛がろう……」
そう言って帰って行った。
ただ帰り際にラウラが、
「また会おうお母さん」
と言ってニコニコ顔になって帰って行った。
今回は怒られなかった。嬉しぃ……
その後、皆がそろったところで腕の状態を説明しようとしたのだが、どうやら織斑先生に既に聞いていたらしい。
「輝義さん、良かったですわね」
「本当だよ。もう戻らないかと思ったんだからね?」
それは本当に申し訳ない……
「これからどうするんだ?訓練にはもう出るのか?」
それなんだよな……
聞いておけば良かった。
「……分からん。取り敢えず後で織斑先生に聞いてみる」
「そっか。早く輝義と訓練したいぜ」
もう少し待ってろ。
完璧に治ったら存分に相手してやるから。
「輝義、あたしの相手もしてよね」
「……分かってる」
それよりも、先ずはやらなきゃいけない事がある。
「……箒」
「なんだ?」
「……治ったら思いっきり鍛えてやる。覚悟しておけよ」
「っ!あ、あぁ!よろしく頼む!」
頭は下げなくていいから。
「……頭を上げてくれ」
「う、うむ……」
あ、ちょっと恥ずかしかったのか少し赤くなってる。
「……という事だ。皆も手伝ってくれるか?」
皆にも協力を求める。
皆に手伝ってもらった方がいいからな。
「勿論よ。箒ちゃん、しっかりついてきてね?」
「箒、大丈夫。一緒に頑張ろう」
皆口々に了承する。
「あ、ありがとう……ぐすっ……」
おぉう泣かないでくれよ。
今日一日は皆の温かさを改めて実感した日だった。
今回で福音戦の後日譚は終わりです。
感想、評価等くださいな。