縁石には勝てなかったよ……
思いっきり前に横回転かましながら吹っ飛びました。
いや、結構視界がグルグル回るもんだからこんな感じなのかと思っちゃいましたね。
怪我の方は受け身を取ったので擦り傷と二箇所に痣だけです。
頭を守っといてよかったぜ。
風呂から出た後、十一時になっていたし結構はしゃいでいたから眠くなって寝てしまった。
起きたら朝だった。
今日の午後七時までに学園の寮に帰らなければならない。
外出届を出しているとは言え、記入した午後七時までに戻らないと反省文にお説教を食らってしまう。
他の生徒はそこらへんは緩いのだが俺と織斑は立場上どうしても厳しくならざるを得ない。
もし俺が言った時間を過ぎてもその場所に現れなかった場合には緊急事態として警察やら公安やら自衛隊やらが捜索をして、見つからなかった場合は即応準備態勢で待機している部隊が色々とやるそうな。詳しくは知らんが。
まぁそんな訳で今は午前十時。
今の今まで寝ていて織斑に起こされた。
「おはよう輝義」
「……ん。おはよう」
「朝飯は食えるか?」
「……食う」
「そっか。なら顔洗うなりなんなりしてリビングに来いよ。もう出来てるし千冬姉と弾は食い始めてるからさ」
「……あぁ」
そう言うと織斑は下に降りていく。
……まだ眠い。
飯食ったら二度寝しようかな……
「おはよう」
「……おはようございます」
織斑先生に挨拶。
「お、輝義やっと起きたか。おはよう」
「……おはよう」
弾にも挨拶。
「輝義、ほら朝飯」
そういって織斑が俺の席に飯を乗せたお盆を置く。
メニューは和食でザ・日本の朝ご飯って感じで焼き魚にご飯、味噌汁と卵焼き(しょっぱい方)というもの。しかもご丁寧に俺の分は特特特特盛り。
焼き魚なんて五枚も乗っている。
「……すまないな。手間を掛けさせる」
「何言ってんだよ。こういう時はありがとうだろ?」
そうだったな……
「……ありがとう」
「おう。それに作り甲斐があって楽しかったからな」
「……そうなのか」
「そうなんだよ」
そんな会話をしてから食べ始める。
「……頂きます」
「召し上がれ」
一口味噌汁を飲むと丁度いい加減の味噌が効いている。
うめぇ……
卵焼きもうまいし焼き魚も焼き方がうまいのか何なのか分からんが旨い。
物凄く箸が進んだのはしょうがない。
ちゃんとおかわりも用意されていてご満悦な俺でした。
「輝義は何時に帰るんだ?」
「……余裕を持って六時には出ようと思っている」
「そうなのか。なら少し待ってててくれ。昼飯の材料を買ってくるから」
「……俺もついていくぞ」
そう言われて俺もついて行こうと提案するが、
「あぁ、大丈夫だよ。足りないもんを買うだけだから。ゆっくりしていてくれ」
そう言うと出かけてしまった。
しかしな……ゆっくりしろ、か。
何をするか考えていると織斑先生がリビングに戻ってきた。
「一夏はどうした?」
「……買い物に出かけました」
「なんだ、あいつは客人を放っておいて買い物か」
「……昼飯の材料を買いに」
「あぁ、そういう事か」
そう言ってキッチンに向かい、コーヒーを入れ始めた。
「砂糖は入れるか?」
「……何もなくて大丈夫です」
「そうか」
俺の分も入れてくれているらしい。
「ほら」
「……ありがとうございます」
「気にするな。それと……」
「……はい?」
「敬語と先生呼びはやめろ」
そう言われても……
いきなりは無理だし、これからも呼べるかどうかは分からないし……
「……ですが」
「学園では構わんがプライベートでもやる必要はないだろう。私も名前で呼ばせてもらうぞ」
「……しかし」
「ほら、言ってみろ」
拒否できそうにない……
「……やらなければだめですか?」
「やらなきゃだめだ」
「……どうしてもですか」
「どうしてもだ」
少し笑いながらそう答える。
これはもう逃げられないやつだ……
「……分かりました」
「それなら早く呼んでみろ」
なんでそんなに嬉しそうなんですかね?
「……千冬……さん」
「まぁ……それならいいか。だが、何時か必ずさん付けもやめろよ」
「……はい」
良かった……納得してくれた……
でもさん付けも何時かは取らなきゃいけないのか……
「それで?お前は一学期どうだった?」
「……そうですね」
一学期かぁ……
どうだったかな……
「……本当に色々ありましたね。ISの適性が見つかったと思ったらIS学園に放り込まれて最初からいきなりセシリアと模擬戦をやることになって」
「あれが始まりだったな。あの後に輝義が私の元に鍛えてくれって頼みに来たんだっけな」
あれが無かったら本当に今の俺は居なかっただろうし。
「……多分、これまでの人生これからの人生で一番濃くて充実している時間だったと思います。これからもそうだとは思います。でも正直な所、友人が出来たのもここに来てからが初めてですし」
「良かったな」
「……はい」
その時に最初から最後までニコニコと普段の学校生活では考えられないような笑みだった。
正直、普段とのギャップが凄すぎて破壊力がおかしかったです。
だってさ!?最初から最後までニコニコしてたんだよ!?
学園ではいつもしかめっ面がだよ!?絶対に誰にも見せた事ないやつだよあれ。
優しい顔でふわっと笑った時はめっちゃドキッとしたぜ……
普段からああしていたら間違いなくファンがもっと増えるぜ。
「あぁ、一つ聞きたいことがあるんだった」
「……どうぞ」
「一夫多妻」
その単語を聞いた瞬間、超絶ビクついたのはしょうがないと思う。
だって俺以外知らないと思ってたわけだし。それを千冬さんが知っているなんてどうやって予想できようか。
「身に覚えがあるな?」
「……何故それを知っているんですか?」
「少し前にな、政府の方から聞かされてな。驚いたぞ全く……」
「……口外するなと言われていた物ですから」
「別に怒っている訳じゃないさ」
「……ならどうして?」
本当になんで聞いてきたんだろうか?
「どうするのかと、思ってな」
そうだったな……
これも早めに返事をしなければならないことは分かっている。
だが、一夫一妻の世の中で生きてきた俺にとってはそう簡単に飲み込める物ではない。
自身の安全を考えれば必要な事は分かってはいる。
「そんな顔をするな。別にどちらを選んでも誰も責めはしないさ。まぁ争奪戦は激化するだろうが」
そう言ってくれるのは本当に、本当に有難い。
「……正直な所、一夫多妻を選んでも俺みたいなのについてきてくれる人は居なさそうですし」
「ま、今すぐって訳じゃない。しっかりと考えて自分がどうしたいのかを選べばいいさ。それに……」
「……それに?」
「お前の事を慕っている奴はお前が考えているよりも多いものだぞ?」
え……なにそれすっごい気になる。
その言葉が気になって聞いてみたのだが、
「これは私から言うようなものではないからな。ま、いつか分かるさ」
そう言って教えてくれなかった。
そう言えば織斑の帰りが遅かった。
何かあったのだろうか?
まぁ本人は元気そうだったから大丈夫だろうが。
輝義、千冬の会話中の一夏君
「あれ……?輝義と千冬姉が話してる……」
(早速アピールし始めたのか……いい傾向だぜ。これは邪魔しちゃ悪いな……もうしばらく二人きりにしておこう)
そう思った一夏君は弾君の家にお邪魔していましたとさ。
今回も短めです。
感想、評価等くださいな。