グリッドマンももうじき最終回
少なくとも僕たちの退屈を救いに来てくれたヒーローでありました
楽しんでいただける人がいれば僕もまた救われます
ではどうぞ
一通り泣いて冷静さを取り戻した甲斐は頬を思いっきり赤くしながらコンビニで買った水を一口飲んだ
調や切歌の視線を受けながら、背中を向いている甲斐は呟く
「…はっずかしい所見せたな…」
「大丈夫だよ甲斐さん。あれ、いわゆる〝男泣き〟ってやつでしょ?」
「弱さもあってこそ、デスよー」
励ます二人に感謝しつつ、それでも恥ずかしいもんは恥ずかしいのだ
切歌も先ほど購入したいちご牛乳を飲みながら、不意にといった感じで呟く
「ところで今日学校どうするデス? もうお昼に差し掛かろうとしてるデス…」
「完全にサボっちゃったね。今日はもうこのままお昼ご飯食べて遊ぶ?」
「そう…だな。ゲーセンでも行くか」
「おー!甲斐さん話が分かるデス! 最近稼働したアーケードゲームやりたいって思ってたデスよー!」
爛漫な笑顔を見せる切歌を調はジーッと見つめながら
「だけど無駄遣いはダメだよ切ちゃん」
「―――わ、わかってるデスヨ」
たぶんわかってないなこれ
胸の中でそんな事を思いながら、甲斐は歩き出した
そしてその後ろを追っかけるように切歌と調が歩み寄る
二人は、自然と甲斐の両隣に並んで、そのまま並行して歩いて行った
◇
その日は正直に言って最悪と言っていいほどの一日だった
せっかく問川を消すことができて気分が良かったのに、意味のわからない事ばかり連続で起きてはっきり一気に気分は下降してしまった
巻き添えで何人か死んだだろうが、怪獣の移動方向にいた向こうが悪いのだ
申し訳ないとは思うが、運命だと思って諦めてもらおう
翌日の学校で一部とはいえ情報も収集できたのはいい事だ
情報、とはアレクシス曰くお客様らしい奴らのこと
一方はよく知ってるから問題ないといえばないが、もうひとりメカメカしい感じのウルトラマンっぽい奴の名前は、どうやらグリッドマンというらしい
そして、記憶消去の影響を受けてない人たちが最低でも四人はいた、ということ
その内のひとりである響裕太からうまいこと情報を聞き出そうとしたが、上手いこと聞くことができず最っ高にイライラしたが、教室に戻る際にぶつかってきた担任教師でついにアカネの感情は爆発する
謝りもしないし、ながらスマホとかやってる教師なんかいっそ消えていいと思うのだ
「ってわけで、できた新作!」
ごとり、とパソコンの前に新作の怪獣を置く
見た目こそシンプルなデザインだが、その身体は光線を吸収し、己のエネルギーと化してレーザーとして打ち出す機構を持っている
<おぉー。いい出来だねぇ…。何に使うんだい?>
「えへへぇ。うちの担任殺そうかなって」
<また何かあったんだねぇ?>
「人にぶつかっといて謝んないのは非常識だよねぇ?」
<良くないねぇ>
「でしょ!? そんな訳で、よろしくぅ♪」
<了解っと。―――インスタンス! アブリアクションッ!!>
◇◇◇
時間は少し遡る
そんな訳で一行はゲームセンターに来て、調と切歌は甲斐と一緒に遊んでいた
メダルゲームやクレーンゲーム、格闘ゲームにアーケード
こういうところで遊んでいると、どうにも時間の感覚を忘れてしまう
(…裕太たち、今頃どうしてっかなぁ)
ゲームで遊びながら、ふと甲斐はそんな事を思った
そんな彼らも、今現在問川たちがどうなったか突如現れたサムライキャリバーという人物と一緒に調べて回っているのだが、そんなこと甲斐は知る由もなかった
「甲斐さん?」
「え?」
「どうしたの? ボーッとして」
「あ、あぁ。…その、前現れた青い巨人って何かなーって」
「あぁ、あのどことなくロボットみたいな巨人? …確かにアレが何かはわかんないね」
ふむー、という様子で調が顎に手を載せて考える
そのはずみで、彼女の髪のツインテールがふわりと揺れた
「…けど、今考えてもわかんないね」
「ま、そりゃあな」
「調ー、甲斐さーん。むつかしいこと考えてないで、もっとあそぼーデース!」
たたたーっと駆けてきた切歌に、甲斐は手を掴まれた
そしてそのまま、優しく甲斐の手を包み込むように握り締めて、自分の胸の前辺りに持ってくる
「…別に、甲斐さんが光の巨人になれるからって、戦う必要はないはずデス」
「え?」
「…戦うことで甲斐さんが傷つくなら、それは悲しいデス。まして、大事な友達がいなくなって、ぶっちゃけ甲斐さんも不安なはずデス。…優しいから、甲斐さんは口には出さないかもデスけど」
「―――切歌」
「無理して戦わないでもいいんデス。薄情ですが、なんならいっそ前出てきた青い巨人に押し付けちまえばいいデス。…甲斐さんに何かあったらあったら、私たちは…」
「そんな顔すんなよ切歌」
俯く彼女のオデコを、握られていないほうの手でこつんと小突いた
切歌は「あう」と短い悲鳴を上げながら手を額に当ててこちらを見つめてくる
「大丈夫だよ。…うん、俺は大丈夫だから」
笑顔と一緒に呟く甲斐ではあったが、その目が揺らいでいることを、調は見逃さなかった
そしてそれを何となく察したのか、切歌も調の方へと視線を向けている
(甲斐さん…)
ウルトラマンになれる、という事実はきっと彼の運命を大きく捻じ曲げてしまうだろう
響さんたちがいなくなったように、運命はきっと曲がり出している
―――どうして甲斐さんなの?
そう思わずにはいられなかった
大事な友達がいなくなって、不安定だというのに、きっと光は彼に戦いを強要するだろう
そしてそれを止める術など、調と切歌にはない
だけど、今この時間だけは、どうにか甲斐のそばにいたい
許されるのなら、―――出来るなら、ずっと
◇◇◇
「!」
ドクン、と甲斐の体に電気のような衝撃が奔る
不意に動きの止まった甲斐に向かって、隣にいた切歌が怪訝そうな顔で彼に声をかけた
「…甲斐さん?」
「―――来る…」
「え?」
短く呟いて甲斐はカバンを背負いなおすと出口へ向かって走り出した
突然のことで意味が分からず、切歌と調も顔を見合わせると彼を追いかけて走り出す
ゲームセンターを出ると、甲斐は視線を一点に集中させている
切歌と調もまた、甲斐に釣られて目を動かすと、そこに一匹の怪獣がいた
白っぽい体にずんぐりとした体躯…頭の不揃いな両目はどこを見ているのか、こことは違う別のところを見ているみたいだ
「甲斐さん!」
「―――え?」
「逃げるデスよ甲斐さん! いつこっち来るか、わかったもんじゃねーデス!」
切歌と調に引っ張られるように、甲斐は走り出した
それでも意識だけは、怪獣の方へと向きながら
◇◇◇
怪獣の腹部から何かが形成され、そこからレーザーが放たれた
真っ直ぐ飛ぶその光は街を容赦なく両断し、射線上にいた全てを破壊していく
「ちょっと雑すぎー! もっと狙って撃ってよー!」
他者から見ればただの破壊活動にしか見えないが、創造主たるアカネには瑣末なことではあるが、一つの目的があった
シンプルにそれは、イラつかせた担任を
先ほどのレーザーも殺す意味合いで撃ったのだろうが、まるで狙いがズレてしまっていた
<ところでアカネくん、今回の怪獣の名前は決まっているのかな?>
「名前? …うーんとね…―――あ、デバダダンなんてどうかな!?」
<おぉいい名前だねぇ! 先のグールギラスといい、アカネくんはネーミングセンスもあるようだ>
「ちょっと褒めすぎだよアレクシスぅ、悪い気はしないけどさっ」
にししーと笑いながらアレクシスに返答するアカネ
それはどこにでもある日常的な会話なのかもしれない
すぐ近くで、怪獣が無差別に暴れていることを除けば、の話だが
◇◇◇
どこまで走ったかは、正直覚えていない
だけど遠目からあの怪獣の全体像が見えるくらいには離れたと思う
「はぁはぁ…ここまで離れれば、大丈夫かな?」
「たぶん大丈夫なハズデス…ぜぇ…ぜぇ…」
ちらりと切歌は甲斐の方へと視線を向ける
彼は何度か立ち止まったが、それでも最終的に切歌と調と共に、逃げることを選択してくれた
だが何回か、視線だけは向こうへとやっているところも見えた
やっぱり―――彼は
「! 調!」
切歌が不意に指を指す
指された方向を見ると、ビルの上に一体の巨人がいるのが見えた
デザインこそはかつての青い巨人に似ているが、カラーリングは赤をベースにしたものに変わっていたのだ
「前出てきた巨人!」
赤い巨人はビルの上から飛び降りると、速度そのままに蹴り飛ばしながら地上へと降りると、接近戦を始める
蹴り、拳を幾度かぶつけ、尻尾を両脇に抱え込むとそのまま身体を大きく回し、勢いよく放り投げる
吹っ飛ばした怪獣に向かって、赤い巨人は追い討ちをかけるように以前繰り出した左手の甲から繰り出す光線―――グリッドビームを撃ち込んだ
どうやら今回は甲斐さんが変身せずに済みそう―――そう思った切歌と調の気持ちを嘲笑うように赤い巨人が撃った光線を怪獣は表面の鏡のような装甲で弾き、腹部のレーザーで反撃したのだ
「デス!?」
「光線が!?」
そこからは一気に巨人が劣勢となる
尻尾での攻撃、腹部からのレーザー…きっと、このままじゃ―――
そう思った時、甲斐は切歌と調の前に出てきていた
彼が何をするのか…それはもう分かりきっている
「…甲斐さん…」
「…悪い、調、切歌。…お前らの気持ちも嬉しい。…だけど―――」
「甲斐さん」
彼の言葉を遮って、調が彼の手を握る
優しく握られたその手に、彼女の温もりが伝わる
「…大丈夫だよ甲斐さん。…正直、きっと戦うんだろうなって、分かってた」
「調…」
「甲斐さんの性格的に、ああいうのは見逃せないでしょ?」
そう言って調は笑顔を見せた
いつもと変わらないその微笑みに、思わず甲斐も笑顔になる
「…だけど、忘れちゃダメデスよ」
調の隣にやってきて、同じように切歌もまた笑みを浮かべた
彼女は真っ直ぐ、甲斐の目を見つめて
「甲斐さんは一人じゃないんデス。―――だから、一人で背負い込まないで」
告げられた言葉に、甲斐はゆっくりと、そして深く頷いた
最後に切歌と調、一人ずつ頭を撫でながらついに甲斐は走り出す
赤き巨人が戦う戦場へと
◇
走りながら甲斐は、カバンの中からオーブリングを取り出した
カードケースは常にズボンにぶら下げるようにしているし、そこらへんは問題ない
邪魔になったカバンを其の辺にぶん投げると、手に持っているリングへと視線を向ける
「―――俺はもう迷わない…! アイツらがくれた勇気で、恐怖を乗り越えてみせる…―――ジーッとしてても、ドーにもならねぇ! …ですよね! ジードさん!」
そして甲斐は自分の顔の前にリングを交差させると、勢いよく前に掲げる
リングは眩く輝き、甲斐の身体を包み込んだ
◇
インナースペースと呼ばれる異空間の中で、甲斐は以前と同じように、一枚ずつカードを取り出す
「―――ウルトラマンさん!」
名前を叫び、まず一枚をオーブリングにリードさせる
<ウルトラマン!>
そのままリングはカードを光の粒子へと変換させると、甲斐の左側にウルトラマンの幻影が現れた
「―――シュワッ!!」
そのまま今度は二枚目のカードを手に取る
「―――ティガさんっ!」
<ウルトラマン ティガ!>
「―――テェア!!」
リードされたカードが同じく光の粒子となって、甲斐の右側へティガの幻影も出現する
そこから、気合と覚悟の問題だ
「―――光の力、お借りします!!」
そう叫び、オーブリングを上に掲げ、スイッチを押す
するとリングの翼状の装飾が展開し、甲斐の体をウルトラマンへと変えていく
<フュージョン アップ! ウルトラマン オーブ! スペシウム ゼペリオン!>
◇◇◇
ジャンクショップ絢にて
そこにはグリッドマン同盟と呼ばれる人たちがいる
グリッドマンである響裕太を中心として、宝田立花、そして内海将の合計三人からなる同盟だ
「どうすんの内海くん! これじゃあ…!」
「俺に言われてもなんともできねぇよ! くっそ…せめて、あの怪獣に何か弱点があれば
響が変身するグリッドマンがダメージを負うと、目の前のジャンクにもそのダメージが伝達する
その度にバヂリバヂリと危うい火花が迸るのだ
そんな様子を少し離れた所でサムライキャリバーと名乗る男性が見守っていた
「…!」
ぴくり、とサムライキャリバーが目を細める
その後で、彼は静かに、それでいてはっきりと言葉を口にした
「く、来るか」
「え? 来るって…」
「し、知っている筈だ。もう一人の、巨人…」
キャリバーがそう呟くのと、ジャンクの画面に変化があったのは同時だった
今まさに止めを刺さんと腹部から放たれた怪獣のレーザーが突如として現れた光に遮られた
ポワン、という独特な音と共に、その巨人は現れる
「あれって…!」
「オーブだよ! ウルトラマンオーブ! グリッドマンを助けに来てくれたんだ!」
「う、内海くんなんかテンション上がってない?」
興奮する内海を余所に、立花は再びジャンクの画面へと視線を向ける
そこにはグリッドマンを守るように仁王立ちする、ウルトラマンオーブの姿がそこにあった
◇◇◇
インナースペースの中で、大きく深呼吸を何度か繰り返す
きっと自分程度がその名前を口にするのは、おこがましいかもしれない
だけどこれは決意の表れでもある
自分自身の口から言うことで、運命から逃げないということ、大事な人を守るという決意ができそうな気がするからだ
だから、甲斐は大きくそれを叫ぶ
◇
「<俺の名はオーブ! ―――闇を照らして、悪を討つ!>」
叫び、オーブはデバダダンの方へと駆け出した
とりあえず身体全体を用いてタックルをぶちかまし大きく距離を空けてみる
先ほど見ていた感じだと光線系はきっとあの表面に弾かれてしまうだろう
なら光輪系の技はどうだろうか
とりあえず両腕を交差させ、右手を顔の隣に持っていき、そこに光輪を生み出し、それをデバダダンに向けてぶん投げる
だが投げられた光輪は虚しくもデバダダンに当たった瞬間に砕け散ってしまった
これには思わず甲斐自身もインナースペース内で「堅っ!?」と変な声を上げてしまった
動揺した隙を逃すことなく反撃と言わんばかりにデバダダンがレーザーを放つ
オーブは咄嗟に手で円を描き、スペリオンシールドを生み出すと、相手が放ってきたレーザーを相手に向かって跳ね返す
跳ね返されたそのレーザーも先ほどのグリッドビームと同じように、弾かれて霧散してしまった
(自分のも防げんのか。…まぁ自分のレーザーだから、そら防げるか―――なんて言ってる場合じゃない!)
今も放ってくるレーザーを適当に空の方へと弾いていくがこのままではジリ貧だ
何か、何かないかと考えている内に、防ぎそこねたレーザーがオーブの腹部にヒットし、大きく仰け反ってしまった
すかさず追い打ちにデバダダンはレーザーの出力を上げてオーブにぶっぱなす
仰け反っていたため、そしてすぐ後ろにはグリッドマンもいた為に、オーブを避けることができずにその一撃を食らってしまう
「ヅアァァァァッ!?」
そのまま空中に投げ出されるが、何とかオーブは体制を立て直し、地面へと着地する
どうしたものか、とオーブは考えるように立ち直し、身構えた
◇
「くっそ…オーブでもダメなのか…!?」
ジャンクの画面を見ながら内海が髪をかきつつそう呟く
不安そうにジャンクを見ていた立花は思わずキャリバーの方を見た
ここに始めて来た時、ジャンクを最適化させてくれた彼なら、グリッドマンのことを知っているからなら、もしかしたら何とかしてくれるかもしれない
このままじゃあ…グリッドマンが…響裕太が死んでしまう
藁にもすがる思いで、立花はキャリバーに向けて叫んだ
「何とか、何とかならないんですか!?」
「―――ならない」
しかし返ってきたのは非情すぎる一言だった
「そんな…!! グリッドマンの知り合いなんじゃないんですか!? 知り合いなら、グリッドマンを助けてください!!」
「―――それなら出来る」
「…え?」
急な手のひら返しに、立花は戸惑った
困惑する立花を余所に、ツカツカとキャリバーはジャンクの画面の前に歩いていき、そして
「―――アクセスコード! 〝グリッドマンキャリバー〟!!」
叫ぶと同時、裕太と同じように彼の体が光となってジャンクの画面へと吸い込まれた
◇
しかし無情にも、再度デバダダンは腹部のレーザーをリチャージし、また放ってくる
オーブはそれをスペリオンシールドでもう一度防ごうと考えたが、その衝撃が来ることはなかった
突如として現れた一振りの剣が、そのレーザーを防いだからだ
「<あれは!>」
<俺を使え、グリッドマン!>
その声は、レーザーを防いだ剣から聞こえたものだ
グリッドマンはゆっくりと立ち上がると剣の傍へと跳躍し、「あぁ!」とその言葉に同意しながら剣を握る
「―――電撃大斬剣―――」
<グリッドマンキャリバーッ!!>
大きく身構えるグリッドマンに、オーブはそうかと納得する
(そうか、弾かれるならたたっ斬る…それなら装甲とかも無視できる…!)
甲斐がそう思い至った時、インナースペース内で変化が起こった
◇
カードケースが勝手に開き、そこから二枚のカードが甲斐の傍をぐるぐると回り始めた
本能的に、甲斐はそのカードがなんなのかを悟る
こうして現れてくれた、ということは力を貸してくれるのだろう
ならば、遠慮なくお借りするだけだ
甲斐は再度リングを前に掲げなおすと、宙を舞うカードからまず一枚を掴んだ
「―――セブンさん!!」
<ウルトラ セブン!>
「―――デュワッ!!」
左側にに現れた幻影を視界に収めつつ、今度はもう一枚のカードを掴み、同じようにリングにリードさせる
「―――エースさん!!」
<ウルトラマン エース!>
「―――トワァァァァァ!!」
そうして左右に現れた幻影と共に、甲斐は目を隠すようにリングを持つ手を動かしたあと、大きく両手を開いてゆっくりと回すように自分の腹部辺りに持ってきながら、天へとリングを掲げてスイッチを起動させる
「斬れ味イイヤツ、頼みます!!」
<フュージョンアップ! ウルトラマン オーブ! スラッガー エース!>
◇
グリッドマンがキャリバーを構えた瞬間、オーブもまた眩い光に包まれた
光が収まると、そこには先ほどとは別の姿となったオーブがいたのだ
肩はまるでウルトラセブンのような姿となり、頭の形状はどことなくエースにも見える
「<切り裂け闇を! 光と共に!!>」
オーブはそう叫び、再び身構えた
◇◇◇
「なにあれ!? 武器とかあんの!? いや、っていうか、何あのフュージョンアップ!? あんなのテレビでなかったじゃん!?」
<やれやれ。困ったお客様たちだ>
「デバダダンッ! あんなのに負けないでーっ!」
◇◇◇
「<グリッドマン! アイツをぶった斬るぞ」
「あぁ!」
スラッガーエースとなったオーブがまず先陣を切り、大きく弧を描いて跳躍する
背後へと移動する途中で、オーブは両手に小型の光輪のようなものを生み出した
それをデバダダンの方へと勢いよく何度も何度も投げ付ける
「<ウルトラギロチン連打ァ!>」
幾重にも投げられたそのギロチンの雨はデバダダンの行動を阻害するには十分だった
しかもエースの力で生み出したギロチンはスペリオン光輪とは威力が上なのか、なんどか突き刺さりデバダダンにダメージも与えていた
デバダダンの背後に着地したオーブは両手にエネルギーをチャージし、上下に開くように動かす
するとエネルギーは実体化した刃となり、それを掴むとオーブは再度身構える
「<バーチカルスラッガー!>」
彼が構えるのと、グリッドマンが動き出したのはほぼ同時だった
まずグリッドマンが背にあるブーストのようなもので加速し、地面を滑りながら接近しキャリバーを振りかぶる
「グリッドォォォォォォ…」!<キャリバーァァァァァ…!!>
そしてそれと同時にオーブもバーチカルスラッガーを両手に持って、勢いよく回転し接近し始める
「<スラッガーァァァ…!!>」
「<エェェェェンド!!>」
「<エーススライサー!!>」
上から下へと繰り出された、グリッドキャリバーエンドと、切り抜けるように横へと凪いだスラッガーエーススライサーが交差する
上下左右と切り裂かれたデバダダンは、雄叫びをあげる間もなく爆散するのだった
◇◇◇
「…また、助けられてしまったな」
背後から声をかけられる
それはキャリバーを携えたグリッドマンだ
オーブは首を横に振ると
「<いいや。逆に俺も、その剣に助けられた。斬るって発想出てこなかったからな>」
<き、気にするな。お前という協力者がいてくれること、嬉しく思う>
持ち手付近にある緑色の球体が発光して声が聞こえた
喋れるんだ…喋ってたなそういえば
「これからも、君が良ければともに戦ってくれないか?」
「<愚問だぜグリッドマン。…願ったり叶ったりさ>」
差し出されたグリッドマンの手を、オーブはがっちりと握り返した
すると地上の方から、聞き慣れた声がしたのを、オーブの耳は捉えた
そこへ視線を向けると、切歌と調が手を振っていたのが見える
「<じゃあまた、だ。グリッドマン>」
「<あ、ちょっとまって!>」
人間へと戻ろうとしたとき、グリッドマンとは違う声が聞こえてくる
声の質からして、たぶん裕太だろう
っていうか、以前聞いた声はやっぱり間違いじゃなかったみたいだ
「<? どうした?>」
「<き、君って…甲斐、なの?>」
「<―――さぁ、ご想像に任せるぜ。それじゃあ、あばよ!>」
見えてはいないだろうがインナースペース内で笑みを浮かべるともう一度手を交差させ、両手から光を放ちウルトラマンとしての返信を解く
自分が光となった瞬間にグリッドマンの気配もなくなったので、きっと彼も人間に戻ったのだろう
光が甲斐としての体を形作り、切歌と調の前に降り立つ
五体満足な彼を見て、切歌と調は嬉しそうに笑みを浮かべた
「よかったデース! 無事で何よりデース!」
「一時はどうなるかと思ったけど…一安心」
感極まったのか、抱きついてくる切歌を撫でながら、調に向けて笑みを浮かべる
「…調、切歌」
「? デス?」
「どうしたの?」
「―――ただいま」
「―――デス…」
「―――うん…」
『おかえり(デース!)』
「切歌と!」
「調の」
『ウルトラヒーロー大紹介!』
「という訳で、最初のヒーローは、この人デース!」
<ウルトラ セブン!>
「地球に二番目にやってきたウルトラヒーローだね」
「ウルトラ六兄弟の一人、そして今も活躍しているウルトラマンゼロのお父さんデース!」
「続いて、二枚目のヒーローは、この人」
<ウルトラマン エース!>
「ウルトラ六兄弟の一人で、五番目にやってきたウルトラヒーローだね」
「多彩な超能力と光のカッターを用いた切断技のバリエーションは右に出るモノはいねーデス! ギロチン王子の名は伊達じゃねーデス!」
「次回もまた見てくださいね」
「それではまた! なのデース!」
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テーンテテテンテンテンテーン!
あれからおおよそ一週間、何事もなく平穏な日々を送っていたのだが、そんな平和を打ち破るかのように、何と学校の近くにまた新たな怪獣が現れやがった!
すかさず変身して立ち向かうグリッドマンと俺だったが、どうもグリッドマンの様子がおかしい…、おいグリッドマン、どうしちまったんだ!?
次回、GRIDMANORB 「敗北 スカイダッシュマックス」!
輝く光は、疾風の如し!