いやぁ、最終回はもう色々ヤベーイですな
そこまで行くかわかりませんが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします
「チーム名を決めた方がいいと思うのデス!」
先の怪獣を倒してから、おおよそ数日経った
現在時間はお昼時、今日は珍しく天気もまだ快晴なので屋上で食事を取ろうとなって、屋上にやってきて適当に腰を掛けてさぁ食べようとなったとき、切歌が不意にそう叫んだ
「…どうしたの? 切ちゃん」
「あまりにも唐突でびっくりしたぞ。どうしたホントに」
調がむぐむぐとお弁当を食べながら首をこてんとしながら口を開き、その隣で惣菜パンを食べながら調に続いた
切歌はぐわしとこぶしを握り締めながら
「いえデスね、やっぱりこれから一緒に戦ってくというのデスから、チーム名を決めた方がいいと思ったのデスよ」
「戦うの甲斐さんなんだけど」
「私たちだって気持ちでは一緒に戦ってるデス! 調だってそう思ってるでしょ?」
「それは―――そうだけど」
「ということで、なんかチーム名の案、ないデスか? 甲斐さん」
「急に振られてもな…」
何を言うのかと思ったら
しかしまぁ、改めて戦う決意をした訳なのだし、心機一転としてそんなのもいいかもしれない
惣菜パンを食べ終えてパンが入っていた袋を閉じるとうーむ、と甲斐は考えだす
「さ、サムシングサーチピープル…」
「それオーブ本編に出てきてるじゃないデスか」
「そんなん言われてもパッと思いつかないぜ。…そう言う切歌は?」
「私デスか? んー…そーデスねぇ…チームザババ…とか?」
「意味わかんねぇよ! っていうかザババってなんだ!?」
「よ、よくわからんのデス! なんか頭にパッと思い浮かんで…」
そんな風に言い合いをする二人を尻目に、調はうーん、と考えながら、じーっと空を眺めていた
そしてふと、思いついたように二人の方へ視線を向けて口を開く
「ウルトラマン革命、なんてどうかな?」
調が不意に発したその言葉に、切歌と甲斐は彼女の方へ向ける
「…革命…? 何に?」
「意味なんてないよ。語呂合わせで選んだようなものだし。けど、強いて言えば、いつかこの世界を平和にしようっていう意味での、革命」
「なんか言葉の響きもいいデスね! 声に出してみると気持ちがいいデス!」
確かに切歌の言う通り声に出してみるとなんか妙にしっくりくる感じがする
しかし革命、か
いつの日か、怪獣がいなくなればいいのだが、それまで革命は終わることはなさそうだ
「じゃあ、それで決定で。切歌は他に案はある?」
「ねぇデス! 私もそれに賛成デース!」
「じゃあ、今日から私たちは、〝ウルトラマン革命〟だね」
調が笑顔でそう呟く
それと同時に昼休みを終わらせるチャイムの音が鳴り響き始めた
「おわ! いかんデス、ごはん食べるの忘れてた!」
「話に夢中になるから。調は大丈夫か?」
「うん。二人が言い合ってるときに食べ終わった」
「うう、痛恨のミスなのデス…」
◇◇◇
そんな三人を、屋上の入り口で隠れて見ていた一人の女性
女性―――新条アカネはうーむ、と考える
「…あの子ら、あんなに甲斐くんと仲良かったかな」
むろん、今までが仲悪いとかそういうんじゃない
なんだか以前よりも距離が近いという感じがするのだ
深く思考する前に、アカネはふるふると首を横に振ると
「まぁいいや。そろそろあの子も仕上げに入るし、今日は早めに帰って作業に取り掛かろっと」
三人のことを視界から外すと、アカネは踵を返して歩き始めた
もう少しだ、もう少しであのグリッドマンを撃破出来うる怪獣が完成する
その事実は、アカネの顔を無意識に笑顔にさせた
「———楽しみだなぁ…ハハッ」
◇◇◇
平和な日々が続き、一週間が経とうとしていた
今日はあいにくの雨、かなりの強さで空から降りしきる雨粒が地面や建物を濡らしていく
「…こんな雨の日でも学校って行かなきゃいけないってのが、学生の辛いところだよなー」
飲み干したラムネのビンをゴミ箱に捨てながら、甲斐はカバンを背負いなおして家を出る
シンドイとは言え、学校に行くのが学生の仕事みたいなものである
泣き言なんて言ったところで何も変わるわけじゃないのだ
いつもと同じ道を歩きまたいつもと同じように調、切歌と合流
他愛のない話をしながら学校への道中を歩いていく
改めて平和な日々を過ごして実感したが、やっぱりこういう何気ない日々が大切なのだと思い知らされる
学校へと到着し、調や切歌と別れると真っ直ぐ教室に向かわず、確認したいことを確かめるべく甲斐は誰もいないであろう屋上の入り口へと歩いていった
こんな朝早い時間に屋上へと向かう生徒などいないだろう
とは言っても今絶賛雨天中なので屋上に出るわけにはいかない
まぁ人通りが少なければそれでいいのだ
改めて人通りの少なさを確認したところで、甲斐は腰にぶら下げてあるカードケースから中のカードを全部取り出した
そこにあるのはウルトラマンやティガ、セブン、エースなどなど、リングに用いることができるカードの数々だ
甲斐とて、この一週間何もしてなかったわけではない
怪獣との闘い以外にも、使用できるようになったカードはたくさんある
そんな訳でこの一週間、夜になると誰もいないであろう山の中江へとひとっ走りして、そこで組み合わせることができるカードの種類を実際にリードして確かめていたのだ
結構このオーブリングは融通が利くみたいで、ティガみたいに胸元にリングをもってって変身してみたら等身大のサイズで身を変えることができたのだ
そんなことを思い返しながら、手元のカードを改めて確認していく
テレビ本編で用いられたカードはもちろん、マックスに、アグル、レオ、ゼロ、コスモス、ヒカリ、ネクサス、ダイナ…
何枚か見たことないカードがあるから少し驚いたが、それらも一応リードしてどんな形態になるかは確認済みだ
まぁ実際に体を動かした(軽く運動はした程度ではあるが)訳ではないので、あとは実戦での一発本番となるだろう
「甲斐くん?」
「じゅねっす!?」
不意に投げかけられた言葉にびくりと体を震わせる
カードに夢中になってた製で気づかなかった
恐る恐る後ろを振り向いてみると、そこにはクラスのマドンナ的存在の新条アカネがいたのだ
彼女は両手をバルタンのハサミのようにカチカチするしぐさをしながら笑みを浮かべて
「おはよう、甲斐くん。もうホームルーム始まっちゃうよ?」
「お、おぉ。悪ぃ悪ぃ、ボーっとしてたよ」
見ていたカードを取り敢えずポケットにしまい、甲斐はアカネの方へと歩き出す
「何してたの?」
「大したことはしてないさ。ただ何となく雨天の空を見てただけだよ」
「また黄昏てた感じ? 甲斐くんホント好きだねぇ」
「まぁね」
言ってくるアカネに甲斐はにぃっと微笑んで返す
ポケットに入れたカードの存在を改めて甲斐は確認すると甲斐はアカネと駄弁りながら教室へと戻っていった
◇
「…?」
教室に入ると、また妙な違和感が甲斐を襲ってきた
なんだか一人いない気がするのだ
改めて教室を軽く見渡すとその違和感に気が付いた
そうだ、なんかいないなと思ったら六花がいないのだ
サボりかなんかだろうか
まぁこの大雨だったらサボりたくもなる
実際甲斐自身もめっちゃ憂鬱だし
学校行くとき玄関開けて降りしきる雨を目視で見たとき「サボりてぇ…!」って何度思ったことか
自分を呼ぶ切歌と調の声で我に返り、今日もまた我慢して登校してきたわけではあるが
ちらりと同じクラスの響裕太へと視線を向けてみる
なんでかはわからないが、どうにも彼は悩んでるようだ
立花がいないのも何か関係はあるのだろうか
ま、考えても仕方ないし、真面目に授業でも受けようかなーと黒板へと視線を改めて向けた、その直後だった
ズズゥン! と少々ドデカい足音が聞こえたような気がした
なんだ? と思いながらふとその音が聞こえた方を見てみると
紫色の怪獣が、こっちに向けて歩いてきていた
「…えぇ」
思わずそんな素っ頓狂な声が出ていた
当然、クラスのみんなもそっちに視線が釘付けになる
各々持っているスマホで写メを取ったり、呑気に動画を取ったりしてSNSなどに上げるものもいたりとその反応は多種多様だ
そして同じとき、ガラスを突き破って一人の男がクラスに突っ込んできた
っていうかアグレッシブだな、なんて感想を内心で呟きながら突っ込んできたその男をよく見ると、いつかコンビニで裕太をめっちゃ見ていた人だと気づくのに、時間はかからなかった
「時間が…ない!」
教卓を掴んで突っ込んできた威力を殺しながら床にスタイリッシュ着地をした後で、再度全身をバネに跳躍すると裕太の方へと飛んでいく
「うぇ!? ええ!?」
彼の横に着地するや否や裕太をひっつかむとそのまま窓ガラスをオープンして飛び降りようとする
「裕太!?」
近くの内海もどうにか裕太にくっついてこのクラスから去っていく
律儀に裕太らを拉致(?)っていった人物はそのまま二人を抱えていくと超人的な体捌きで校庭を駆け抜けていった
「…嵐みたいなやつだったな」
感想を呟きながらズズゥン、という足音に引き戻される
刹那、視線を外にいる怪獣へと向ける
「やっばい近い近い!」
興奮しているのかはっすはスマホでかしゃりかしゃりと写メを取る
やがて怪獣の進行方向に気が付いたのか、なみこが呟いた
「―――っていうかこっち来てない!?」
その呟きに、クラスの中は阿鼻叫喚となる
そんな中、新条アカネは机の上にひじをついて、見えないように笑みを浮かべていた
◇
不意に、携帯が震える
ガタガタとクラスのみんなが大急ぎで逃亡を加える中、甲斐もそれに倣いながら携帯を開く
どうやらラインが来ていたようだ
グループライン、ウルトラマン革命、送ってきたのは切歌だ
□
切歌<見ましたか!? あの怪獣!
甲斐<あぁ、確かに見えた
調<とにかく、いったん合流しよう
□
そんなラインのやり取りをした後で、甲斐は改めて足を動かす
すっかり他のクラスも逃げた後のようで、周囲には倒れ散らかした机などで散乱しており、もぬけの殻に近い状態だった
下駄箱に来るとそこには既に切歌と調もスタンバっている
「甲斐さん!」
調がこちらに向かって靴を投げ渡してくる
「おっと! サンキュ!」
短く礼を言うと、上履きを脱いで地面に己の靴を置いてそれを履く
それと同時、空が光り輝き、そこからグリッドマンが現れて、紫色の怪獣と戦いを始めた
「お! やっぱり今回も来たデスね! えっと、なにマンでしたっけ、メガマン?」
「グリッドマンだよきりちゃん、メガマンは海外のロックマンの名称」
「…いや、けど、なんか様子がおかしいぞ」
甲斐の言葉に、調と切歌の二人も二体の戦いへと目を向ける
怪獣の放つ光線を食らい倒れ伏したグリッドマンに、怪獣は馬乗りになりそのまま拳を握り顔面を殴打し続ける
これはさすがに不味い、急いでこちらも行かなければ
「二人とも隠れてろ、俺も行く」
「合点デース!」
「気を付けて、甲斐さん」
二人の視線を背に受けて、甲斐はオーブリングを取り出すと、一度顔の前で交差させてそのリングを突き出した
◇◇◇
「<死ねぇ! 死ねぇ! 死ねぇッ!!>」
ガツン、ガツンと何度も拳を振り下ろす紫色の怪獣
名前はアンチと呼ぶらしい
誰が見てもグリッドマンの劣勢は明らかだった
そんな光景にテンションしてる一人の女性がいる
もう誰もいないクラスに一人、机に座り靴を脱いでいる一人の女子
名前を新条アカネ
怪獣アンチの生みの親だ
「いいぞーアンチくんッ! そのままやっつけろーっ! あっはははは!」
どうして向こうが戦う意思がないかは知らなんだが、向こうの事情なぞこっちには関係ない
潰せるときに叩き潰しておかないと
「でもなんか物足りないんだよねぇ…あ、ウルトラマンオーブいないからか」
そういえばそっちのことをすっかり忘れていた
アンチ作るのが楽しくてすっかり頭から吹っ飛んでいた
「…お、噂をすれば」
刹那、空が淡く光ったと思ったら、中空からオーブスペシウムゼペリオンが現れて、アンチに飛び蹴りを叩き込んだ
「いいねぇ…うまくいけば、二人とも消せるかも…!」
◇◇◇
「デュアッ!」
叫びと共に、オーブはアンチにキックを打ち込む
大きく吹っ飛ぶ紫色の怪獣を視界に捉えながら倒れ伏しているグリッドマンに言葉を飛ばす
「<何やってんだグリッドマン! 動きが鈍いぞ!>」
「<待って、オーブ…あの中には、人間が…!>」
「<なんだと…!?>」
確かに怪獣の正体は人間という可能性を考えなかったわけではない
だが少なくともちょっと前まで殺意全開でグリッドマンをぶん殴っていたアイツが人間なのだろうか
可能性はなくはないが…どうする
「<現れたか、ウルトラマンオーブ…! 貴様を消すこともまた、俺の使命だ!>」
「<おう、俺も入ってんのか! 人気者は辛いねぇ!>」
相手の言葉に冗談を返しながら、オーブはアンチに向かって走り出した
そのタイミングで、以前と同じようにまた、空から一振りの剣が飛来してくる
グリッドマンキャリバーだ
グリッドマンはそれをキャッチしてアンチに向かって構えながら
「裕太、ここで私たちが戦わねば、多くの犠牲が出る!」
「<でも!!>」
「大切な仲間も! トアッ!!」
バックステップで交代したオーブと入れ替わるようにキャリバーを持ったグリッドマンが前に出る
するとアンチは己の両腕に二本爪を伸ばし、グリッドマンのキャリバーと切り結ぶ
実力はほぼ互角…しかし両腕にある分、向こうの方が僅かに優勢か
「<屈め、グリッドマン!>」
オーブは声を出すと同時に、ハンドスラッシュを打ち込んだ
屈んで転がって距離を離すグリッドマンと入れ替わり、今度はオーブがアンチと接近戦を開始する
<スラッガーエース!>
光とともにフュージョンアップをして自身の姿をスラッガーエースへと変化させて、バーチカルスラッガーを具現化させて、相手の爪に対抗する
だがやはり二本という相手のアドバンテージは大きいか
オーブは隙を見てアンチの腹を蹴飛ばして距離を離すと、バーチカルスラッガーの刀身にエネルギーを込める
「<スラッガーァ…! エースカッターッ!>」
刀身から斬撃を飛ばし、相手へとダメージを試みる
だが、次の瞬間アンチはその場か消えた
否、消えたのではない、高速で移動しているのだ
「ヅァッ…!?」
速い!
あんなに巨体なのになんてスピードだ
かなりの速度から繰り出される、アンチの爪の攻撃に、次第にグリッドマンとオーブは追い込まれていく
「<トドメだぁ! 消えてなくなれぇぇぇぇぇ!!>」
アンチの全身が発光し、身体中からガトリングのように光弾がグリッドマンとウルトラマンオーブへと降り注ぐ
「ヅアァァァァッ!?」
「うおぉぉぉぉぉ!」
繰り出された光弾の連打は確かにグリッドマンとオーブを捉え、直後、大きく爆発する
爆風や煙の中で、グリッドマンは彼の隣で倒れ伏すと、その場で消えてしまった
オーブも同様に爆風を目くらまし代わりにし、切歌と調がいる場所に己の光を打ち出し、その変身を解除してなんとかこの場をしのいだ
◇◇◇
解除したと同時に、甲斐はゴロゴロと地面を転がり回る
「甲斐さん!」
「甲斐さんっ! 大丈夫!?」
転がる甲斐に切歌と調は手を差し伸べた
駆け寄ってくる二人の手を取りながら、大きく息を吐く甲斐はゆっくりと立ち上がる
だがその足元はおぼつかない、ダメージが蓄積したみたいだ
「きりちゃん、一度甲斐さんを家に運ぼう」
「合点デス! …甲斐さん、歩けるデスか?」
「あぁ、その程度なら、問題ない…」
短く返答し、甲斐は二人に支えられながらゆっくりとだが歩き出した
…グリッドマンは無事だろうか
◇◇◇
「…倒した…! あっはは…完全に死んだねぇ…」
ただ一人、クラスの中から間近であの巨人たちの戦いを見ていたアカネもまた、その事実に興奮していた
ようやくだ、ようやく邪魔な相手がいなくなったんだ…!
ズシン、とアンチがこちらに向けて歩いてくる
そしてそのまま手を差し伸べてきた
アカネは靴を履きなおすとアンチの手に飛び乗って、そのまま導かれるように頭のてっぺんにその足を下す
降りしきる雨が身体を濡らす中、アカネはそんなこと気にもせず今の感情を爆発させた
「―――ぃぃいやったぁぁぁぁぁっ!! あっははははっ! アハハハハ!! アハハハハッ!!!」
雨の中、怪獣の上で少女の声が響き渡る
その声を聞いているものは、アンチ以外他にいない
やがて、街全体を霧が包み込み始めた
霧が晴れたころ、〝何もかもが〟元通りだった
壊れていたはずの地形も、煙を上げて倒壊していた家屋やビルも、元通りだった
ウルトラマン革命
名前に意味はない
革命、の部分はUNIONの二番目の歌詞から拝借