謎解きはディナーのあとでを性別逆転で   作:さくらい

3 / 6
ネクタイは殿方の首にございます 3話

 ホテルのフロントをチェックしたところ、やはり三上貴也は犯人と二人でここに宿泊していたらしい。

 予約時の名前は田中だ。フロントに設置されている防犯カメラの映像を確認したところ、チェックインの記帳をしたのは三上だった。

 その首元には、きっちりネクタイが締められている。あれは、エンポリオアルマーニの新作だな。

 しかし、残念ながらその周りに犯人らしき人物の影は映っていない。

 フロント係に断わって、三上が書いた名前と住所を確認する。氏名欄には田中隆也、そして住所欄には神奈川の地名が記載されていた。

 ボクは神奈川の地名には明るくないので、その住所が本当に存在するのかどうかはわからないが、三上の自宅の住所でないことは確かだ。

 

「やったーっ! 宝生君、犯人の名前は田中なんじゃないかな?」

「そんなわけないでしょう警部。三上が適当に使った偽名に決まってます」

「もう、わかってるわよ。ちょっとした冗談じゃない」

 

 三上が咄嗟に、相手の名字を偽名に使用して記帳したという可能性もあるにはあるが、そんな簡単に犯人に辿り着けるなら、刑事は必要ない。

 田中というありふれた名字は、如何にも偽名っぽかった。

 

「しかし、三上がチェックイン時に偽名を使ったという事は──」

「説明しよう! 宝生君! 男が偽名を使うときは大抵なんかしらやましいことがあるものよ! まあ、大方不倫でもしてたんじゃないかしら?」

 

 ボクが言おうとした事を、風祭警部は素早く奪い取って自慢気に早口で捲し立てた。ホントにもうこの人は。

 

「ドクターの不倫相手っていったらナースかなぁ、女医かなぁ、元患者ってセンもあるかしらぁ。どう思う? 宝生君」

「さあ、どうでしょう? でもとりあえず、勤務先の病院に行ってみましょうか」

 

 ボク達はホテルでの捜査を同僚たちに任せ、一足先に慈愛九条第三総合病院に向かった。

 ボクは今日、自宅から直接現場に急行している。その時は、ウチのメイド兼運転手である影山にリムジンで送ってもらったので、現在ボクには病院へ行く足がない。

 仕方なく、風祭警部の愛車であるジャガーの助手席に座ることとなった。その車体のカラーは陽光照り返すシルバーメタリックで、目に悪い事この上ない。

 全く、警部は頭も悪ければ趣味も悪い。

 

「警部、なんでジャガーなんか乗ってんですか?」

「え〜、ジャガーカッコいいじゃない」

「いや、まあ車種の好きずきは人それぞれですけど、警部って『風祭モータース』の社長令嬢じゃないですか。風祭モータースの車には乗らないんですか?」

 

 そう、風祭警部は風祭モータースという中堅自動車メーカーの創業者一族のお嬢様なのだ。

 風祭モータースの車は、その独創的な造形と独創的な機械設計により、一部のマニアからは『走る美術品』、もしくは『走らない美術品』と呼ばれる。

 その造形美は奇抜にしてオンリーワン。同業他社には、絶対に真似できないものと言われている。

 そして、燃費の悪さと故障率の高さは業界ナンバーワン。同業他社には、絶対に真似してはいけないものと言われている。

 そんな風祭製自動車は、自動車修理工が選ぶ好きな車ランキングのトップオブトップを数年連続でひた走っていた。

 もちろん修理工に好かれている理由は、すぐ故障して走らなくなるからだ。

 噂では自動車修理工の収入の約半分を、風祭製自動車の修理代金が占めているとかいないとか。

 

「ウチの車もいっぱい持ってるんだけどね、え〜っと全部で二十台くらいかな」

 

 そんなミニカー感覚で自動車を所有しているとは、やはりこの人はそれなりにお嬢様なのだな。

 かくいうボクも、その気になればミニカー感覚でベンツでもポルシェでも所有できるのだが。

 

「今、ジャガー以外全部壊れちゃってるのよ」

 

 さすがは故障率業界ナンバーワンだ。そんな車絶対乗りたくないので、ジャガーで我慢しとこう。

 

 急発進と急ブレーキを繰り返す、風祭警部の危なっかしいドライビングによって、ボク達は慈愛九条第三総合病院にたどり着いた。

 あんな冷や汗ものの運転を披露されるくらいなら、ボクがハンドルを握ったほうがマシだ。と言っても、実はボクも運転にはあまり自信がないのだが。

 一応十八歳の時に普通免許は取得したが、それ以来、全く運転したことがないペーパードライバーなのだ。

 なんせウチにはリムジンが掃いて捨てるほどあるし、その運転手も気分次第でリストラしまくれる程余っている。

 可哀想だからリストラなんかしないけど、最近のボクの送迎を担当している運転手は影山ひとりなので、仕事にあぶれた他の運転手たちはグラサンに黒服姿で雑用をこなしている。

 勤務中にリムジンを呼びつけたりしたら、ボクが超絶お金持ちである宝生家の人間だということがバレてしまうので、病院から国立署に戻るときはハイヤーを呼ぼう。

 ハイヤーって経費で落ちるんだろうか、別に自費でも構わないけれど。

 

 病院の受付で警察の認識票を見せて事情を説明すると、なんといきなり院長室に通された。

 まずは三上貴也の、直属の上司あたりと面会することになると思っていたのだが、もしかして三上貴也は、院長の覚えがいい出世頭だったりしたのだろうか。

 風祭警部とともに簡単に自己紹介したあと、豪奢なソファに腰掛ける。

 院長の名前は九条陸三郎というらしい。三男坊とみた。

 慈愛九条グループは親族経営だから、第一病院は陸一郎が、第二病院は陸二郎が院長を務めているのかな? 陸一郎、陸二郎という安直な名前はボクの適当な想像だけれど。

 早く詳しい話を聞きたいという院長に、風祭警部がとっちらかった説明をする。

 途中途中でボクが適切なフォローを入れてなければ、院長は半分も理解出来なかっただろう。

 犯人はおそらく三上貴也の愛人らしいということは、まだ伏せておいた。

 

「まさか、貴也君が……そんな」

 

 院長は血の気が引いた真っ白な顔でそう呟いた。

 ボクは、院長の三上貴也に対する、『貴也君』という親しげな呼称が気になったので、その事について訊いてみる。

 

「ああ、失敬。三上先生はウチの娘の婚約者なのですよ。ほんの二週間ほど前に婚約したばかりで、まだ公にはしていなかったのですがね」

 

 驚いた。ということは、慈愛九条グループが親族経営であることを考えると、三上貴也は次期院長の有力候補だったというわけだ。

 これは俄かに、犯人は次期院長の座を狙う権謀術数の輩である可能性が出てきたぞ。なんだか白い巨塔サスペンスじみてきた。

 

「失礼ですが、娘さんに御兄弟は?」

 

 ボクがそう訊くと、院長は僅かに顔を顰めた。権力闘争に端を発する殺人だと疑っているのを、見破ったのだろう。

 ボクも、悟られるのは承知で訊ねたので、それは別にいい。

 

「三上先生と婚約していたのは、次女の二葉です。御察しの通り、三上先生には婿養子に入ってもらい、行く行くは彼にウチの病院を任せるつもりでした。しかし、長女の一華は、それに対して異論は無かった筈です。一華はウチで内科医として勤務しているのですが、あの娘は出世に興味がない現場主義な上に、結婚もしないなどと言っているのです。院長の座を狙って三上先生を殺めるなどあり得ません。そして、他に兄弟はいません」

 

 ふむ、刑事相手だけあって、かなり腹を割って話してくれているようだ。

 この話が本当なら、白い巨塔サスペンスはお蔵入りかな。

 

「三上先生の婚約者にはお姉さんがいらっしゃるんですか。はあ……ひひっ、ふぅん、へぇ〜、ほぉ〜」

 

 はっひふっへほーってバイキンマンかアンタは。風祭警部は間違いなく、三上貴也を巡る姉妹同士の三角関係を想像している。

 ニヤニヤと笑う彼女にボクがドン引きしていると、突然、院長室の扉が勢いよく開いた。

 

「お父様っ!」

「二葉っ! 来客中だぞ、騒々しい」

「お父様、貴也さんが、貴也さんが殺されたというのは本当なのですかっ!」

「なっ、何故それを、まだ連絡していないというのに」

「受付で働いている女性に連絡を受けたのです……」

 

 勢い込んで入室してきたのは、どうやら九条二葉さんらしい。彼女は白いハンカチを握りしめていた。真っ赤に充血した目には涙が浮かんでいる。

 

「……お父様、本当、なのですか?」

「……どうやら、事実らしい」

 

 二葉さんは、ああっ、と叫んで膝から崩折れた。慟哭しながら涙を流す様は、婚約者の死を心の底から悲しんでいるようにみえた。演技だとは思えない。

 二葉さんが泣き止むまでには、長い時間を要した。

 涙が止まった事で、多少の落ち着きは取り戻したようだが、それでも時折まだ嗚咽を洩らしている。

 

「刑事さん、お願いです。早く犯人を捕まえてください」二葉さんは気丈に振る舞い、風祭警部に強い目を向けた。

「ええ、ええ、勿論そうしたいと思っておりますとも。その為にも、二葉さんにはいくつか質問があるのですが」

「それが犯人逮捕に繋がるならば、なんでもお答えします」

「では、日付でいうところの今日の午前零時から二時、どこにいらっしゃいましたか?」

 

 二葉さんの目が、はっと見開かれる。ボクは警部の隣で、あちゃーと頭を抱えた。

 もうちょっと訊き方ってもんがあるだろうに。

 

「それは、アリバイ確認というものですか? 私を疑っていらっしゃるの?」

「いえいえ、二葉さんを特別疑っているわけではありません。形式的な質問ですよ。関係者全員に訊いて回ります。ですから九条院長にも、同様の質問をさせていただきます」

 

 警部は、九条親子の顔を交互に見遣りつつ言った。

 

「仕方ないね」院長は嘆息しつつ口を開く。「しかし、零時から二時となると、アリバイは無い。自宅で眠っていたからね」

 

 まあ、大抵の人はそうだろうな。むしろ、確固たるアリバイがあった方が何かしらのトリックが疑われるかもしれない。

 

「私もその時間は自宅で眠っていました。アリバイはありませんわ」

「一応、御自宅がどこか伺っても? 実家暮らしですか?」

 

 警部め、院長には自宅の場所を訊かず、二葉さんにだけ訊いたら、二葉さんの方を特別疑ってますよって言ってるようなもんじゃないか。

 

「いいえ、今は一人で暮らしています。ここから五分ほど歩いた所にある、マンション・クジョーに住んでますわ」

「マンション・クジョーというと、三上先生と同じ?」警部は確認するように言った。

「はい」

「クジョーというマンション名から分かる通り、ウチで経営しているマンションなのですよ。ですから、ウチの病院関係者には格安で貸したり、分譲したりしています。職場と自宅が近い方が色々便利なので」

 

 成る程、院長のいう通り色々メリットはあるだろう。通勤のストレスが無くなるし、急患にも対応しやすい。四六時中呼び出されたりしたらたまったもんじゃ無いだろうが。

 しかし、これで二葉さんが犯人である可能性はほぼ消えたと言っていいだろう。

 同じマンションに住んでいる婚約者と、近場の安ホテルに泊まりに行くというのは妙な話だ。せめて、もう少し高級なホテルか、遠方の観光地ならわからないでもないが。

 それに、婚約者とホテルに泊まるのに、偽名を使うのはおかしい。

 

「ふむ、どうやら二葉さんが犯人の可能性は低いようね」

 

 風祭警部が小声でボクに耳打ちしてくる。対面で座っている二葉さんに睨まれた。疑われるなんて心外なのだろう。

 

「実は我々は、三上先生と親密な関係の女性が犯人だと見ているのです」

 

 風祭警部の言葉に、九条親子が眉を顰める。そして、ボクも眉を顰める。もうちょっと遠回しに言いなよ、警部。

 

「貴也さんが、浮気をしていたとおっしゃるの?」

「ええ、そういう証拠もありましたからね。あたしの口からはとてもとても言えない証拠が」

 

 風祭警部の言い方だと、余計卑猥に聞こえる。避妊具ってハッキリ言えばいいのに。遠回しに言うのはやめなよ、警部。

 

「貴也くんは誠実な男だった。浮気など信じられない」院長が三上貴也を庇うように言う。

「まあ、浮気なんてワイドショーでもよく聞く話です。というわけで、三上先生とそういう関係にあったと思しき女性を挙げて貰えますか?」

 

 警部のズケズケした物言いが怒り心頭に発したのか、二葉さんは目の前のテーブルをバンッと叩いて立ち上がった。

 

「そんならあの女に決まってらぁっ! あの女、普段から人の婚約者に色目使いやがって、この間なんて腕まで組んで歩いてたしっ!」

 

 どうやら二葉さんの怒気の対象は、警部ではなくあの女なる人物らしい。さっきまでの楚々とした口調は崩れて、荒々しい江戸っ子みたいになっている。

 

「あの女とは?」楽しそうに警部が訊ねる。この人も大概ゴシップ好きだ。

「ナースの高原真奈実ですわっ! あの泥棒猫が犯人に違いないですわっ!」

 

 荒々しい口調で言うと、ですわ、という語尾が関西弁に聴こえる。

 

「ナースですか、医者とナース、有りがちねぇ。では早速、その高原真奈実さんと面会させて頂けますか?」

「わかりました」

 

 院長が頷いたところで、警部はスーツのポケットからスマホを取り出し、「さあて、ちゃんとメモしとこっと。た、か、は、ら、ま、な、みっと」などと態とらしく呟きながら、カメラモードで二葉さんを連写している。スマホが立てるピコンッピコンッという音がうるさい。

 九条親子は、珍しい生き物を見るような、唖然とした目を風祭警部に向けた。

 

 ナースセンターのバックヤードにある休憩室で、高原真奈実と面会できるように院長が取り計らってくれた。

 ボクたちは足早に院長室を出てナースセンターに向かう。

 

「さっき撮った九条二葉さんの画像は、解析班に回すんですね?」

「そうよ。九条二葉のセンは薄いけど、一応ホテルの防犯カメラに映ってないか確認しないとね」

 

 もうちょっと自然にできなかったのかよ、とか、怪しさ満点の演技だったぞ、とか色々文句は浮かぶが、この警部に言っても仕方ないので流しておく。

 

 ナースセンターの休憩室には、既に高原真奈実がいた。パイプ椅子に座って煙草をふかしているが、院内って全面禁煙じゃないのか?

 狭い室内に紫煙が篭って目がしぱしぱした。

 高原さんは灰皿がわりの缶コーヒーに吸い殻を落として、「どうも」と会釈した。

 二葉さんも美人だったが、この人もそれに負けないくらいの美貌だ。煙草の似合う大人の女ってところか。

 警部は挨拶もそこそこに、さっとスマホを取り出して高原さんを連写する。

 高原さんは怪訝な顔で警部を見つめながら、「この人、初対面の女を連写するクセでもあるの?」と訊いてくる。

 ボクは適当に、「はい! この人にはそういうクセが有ります!」と流した。

 風祭警部も「はい! あたしにはそういうクセが有ります!」と言っているので、それで良かったのだろう。

 

「それで? 刑事さんたちが私に何の用?」

 

 白い簡素なテーブルを挟んで椅子に腰掛けたボクたち刑事に、高原さんはそう訊ねてきた。

 三上貴也が殺されたことは院長から聞いている筈だが、悲しんでいるような素振りは見せない。

 

「三上先生の件は聞いていますね?」

「ええ、殺されちゃったみたいね。惜しい人を亡くしたわ」

 

 警部の質問に答える高原さんの言葉は、ひどく平坦で、冷たく聴こえた。職場の仲間が亡くなったら、もっと取り乱すと思うのだが。

 犯人なら、たとえ心の中でどう思っていようと、もう少し落ち込んだ演技をすると思う。

 つまり、この人は犯人ではないということか。いや、あるいは、そう思わせる為にわざと冷静に振る舞っているのやも。

 いやいや、実は冷静に振る舞っているけど、内心は取り乱しているのやも。

 なんだかこんがらがってきたから、とりあえず話を聞こう。

 警部が訊ねたところ、高原さんにアリバイは無かった。その時間はひとりで自宅にいたという。

 自宅はマンション・クジョーではなく、国立市にある安いマンションらしい。

 病院関係者は家賃を割引かれるといっても、看護師の給与ではマンション・クジョーは高級に過ぎるようだ。

 しかし、高原さんは国立市民か、犯行現場のホテルに近いな。

 

「あなたが三上先生と只ならぬ関係にあったという話を聞いたのですが、それは事実ですか?」

 

 警部の問い掛けは直接的すぎる。高原さんが犯人だったら、そんな訊ね方して「はい、事実です」なんて答えるわけないだろ。

 

「はあ? 私が三上先生と? 誰よそんなこと言ってるのは。三上先生は私なんかより、院長のお嬢さんと親しくしてらしたと思うけど?」

 

 その院長のお嬢さんから聞いた情報なのだが、情報源は秘密だ。

 

「実はその院長のお嬢さんから聞いたのですよ。あなたが三上先生に色目を使ったり腕を組んだりしているのを見たとね」

 

 あっ、バカ警部め、情報源を簡単にバラしやがった。

 

「何言ってるのよ、色目なんか使ったことないわ。腕を組んだことはあるけど、そのくらいのスキンシップ、恋人じゃなくてもするでしょ」

「恋人じゃない人と腕を組んで歩くんですか?」警部はカルチャーショックを受けたような表情になる。この人、意外と身持ちは固いのかも。

「もちろん、相手が誰でも彼でもそんなことするわけじゃないわよ。三上先生は美形だったから、連れて歩くと気分が良いのよ」

 

 そういえば、高校時代のボクのファンクラブにも、そういうスキンシップの激しい子が結構いたなあ。ま、ボクも美形だから仕方ないね。

 

「では、あなたは三上先生とは特に親しかったわけではないんですか?」

 

 自己申告を鵜呑みにするわけには行かないけど、本人にこれ以上訊いても答えは変わらないと思うよ、警部。

 

「ええ、三上先生とそういう関係だったのは、九条のお嬢さんでしょ。どっちかは知らないけど」

「えっ、それはどういう意味ですっ?」

 

 声の調子を弾ませて、警部は勢い込む。姉妹の三角関係! メロドラマ展開! と、彼女の目は爛々と輝いた。

 

「お嬢さん姉妹は、どちらも三上先生の事を好きだったと思うわ。一華先生なんか、よく噂になってたし」

 

 二葉さんと婚約していることは、まだ公にしていなかったらしいが、二葉さんではなくお姉さんとそういう噂があるのか。三上貴也ってモテるんだな。

 

「新たな事実発覚ね宝生君。これは是非とも、九条一華にも話を訊かないと」

「そうですね、警部」

「貴方達の口振りから察するに、犯人は三上先生の恋人なわけ?」

 

 恋人というか、愛人というか、浮気相手というか、まあそういう関係の女だ。

 半ばバレているとはいえ、容疑者である高原さんに言うわけにはいかないので、ボクたちは口を噤んだ。

 しかし高原さんは勝手に判断したのか、ふぅん、と頷いた。

 

「三上先生は九条姉妹以外にも、女医にナースに女性患者に、とにかく人気があったわ。私はゴシップ関連の噂は九条姉妹くらいしか知らないけど、三上先生の恋人を特定するのは難しいかもね。彼のプライベートについてなら、私より詳しい人がいるから、その人に訊いてみたら?」

「詳しい人? どなたですか?」耳寄りな情報に、ボクは食いついた。

「長迫政美さんていう人。三上先生とは大学の同期って言ってたかな」

「大学の同期ということは、お医者さんですか」女医だろうか。

「いいえ、政美さんは看護学部卒だから、私の先輩」

 

 ナースか、もしやその人が三上貴也の恋人という可能性はないだろうか。ボクがその旨を訊ねると、高原真奈実はちょっと小馬鹿にしたような皮肉げな笑みを見せた。

 小馬鹿にされたのはボクか長迫政美か、ボクには判断がつかなかったので、小馬鹿にされたのは風祭警部であるという結論で納得した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。