グリフォンの背に跨り、ゴールを決めた春日部だったが、その手が手綱から離れ、そのまま崩れる。
『何!?』
「春日部さん!?」
安堵の声を漏らす暇も、賞賛をかける暇もない。春日部は慣性にのまま落ちていく。助けに行こうとした黒ウサギを逆廻が掴む。
「は、離し――」
「待て!まだ終わってない!」
焦る黒ウサギと止める逆廻。すると、ふわっと、春日部の体が翻る。慣性を殺すような緩慢な動きはやがて落下速度を衰えさせ、遂には湖畔に触れることなく飛翔する
「「「「「………は?」」」」」
その場のほとんどが絶句する先程までそんな素振りを見せなかった、春日部が湖畔の上で風を纏って浮いている。
「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
逆廻の軽薄な笑みに、むっとしたような声音で春日部が返す。
「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」
「ただの推測だ。お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。そんな芸当は人間にはできない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか……と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」
『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい』
「うん。大事にする」
「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。……ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」
「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」
「木彫り?」
『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや』
「ほほう………彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」
頷いた春日部は、ペンダントにしていた木彫りの細工を白夜叉に渡す。
白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて急に顔を顰める。それに逆廻と久遠も隣から細工を覗き込んだ
「複雑な模様ね。何か意味があるの?」
「意味はあるけど知らない。昔教えてくれたけど」
「……これは」
白夜叉だけでなく、逆廻や黒うさぎも鑑定に参加する。表と裏を何度も見直し、幾何学線を指でなぞる。
「材質は楠の神木……?神格は残っていないようですが……この中心を目指す幾何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」
「うん。私の母さんがそうだった」
「生物学者という事は、系統樹を表しているのかな……どう思う白夜叉?」
「おそらくの……ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い!本当に凄いぞ娘!!本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは!これは正真正銘"生命の目録"と称して過言ない名品だ!」
「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」
「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。「うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ! 実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」
「ダメ」
耀はあっさり断って木彫り細工を取り上げる。白夜叉はお気に入りのおもちゃを取られた子供のようにしょんぼりとした
「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」
「まぁ、待て。その前にもう一つ、ギフトゲームがある。そこの小僧、待たせたな」
春日部のギフトに唯一反応しなかったのが、もう一人の来訪者。
名を
逆廻たちが、白夜叉のゲーム盤を見た時も全く動じず、決闘と言った。
逆廻としても、そんな天の事が、少なからず気になっていた。
『ギフトゲーム名 The Sunset
プレイヤー一覧
天一斗
・クリア条件 白夜叉に認めさせる。
・クリア方法 白夜叉へギフトを行使し、全力を出す。
・敗北条件 プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟印』
「承認」
「小僧。ハンデはいるか?」
「いらん」
直後、大地が割れた。
「ほう?面白い!」
一気に距離を詰めた天の拳を、跳ね返そうと拳を前に突き出す。
だが、天はそれに動じず、その拳を振り抜く。
「〔逆転〕+〔増幅〕×〔無抵抗〕」
「何?!」
二人の拳がぶつかり合った瞬間、白夜叉の拳が一方的に跳ね返された。
「〔増幅〕+〔回復〕-〔疲労〕」
「バカな。加減したとは言え、このわしが跳ね返されるじゃと?ますます、面白いのう!?」
「戦闘狂が……〔付与〕×{〔金剛〕+〔疾風〕}」
「はあぁ!!!」
狂が乗り出したのか、白夜叉は、今度は大きな火球を生み出す。
それに臆した様子は無く。天はただ、飄々と拳を構えた。
「溶けるな。〔加重付与〕×{〔激流〕+〔虹彩〕}」
その拳は、虹色に光りながら、迫り来る火球に向かって振り抜かれた。
瞬間、光の柱がその拳の直線上に立ち、火球を消しとばした。
「なんだと?!ならば、これでどうじゃあ?!」
その光景に驚く白夜叉であったが、今度は先程よりも燃え盛る火球を複数生み出し、そのまま投げつける。さらに今度は自身も白く燃えながら。
「上等……。〔加重付与〕×{〔剛力〕+〔電通〕}」
強力な火球前に、今度はさっきよりも低く構えた天は、人とは思えないスピードで飛び上がり、先ず火球を回し蹴りで弾き飛ばすと、空中でまた飛び上がり、白夜叉とぶつかり合う。
「く、くく!これも、受け止めるか!ならば、これならばとうじゃ!?」
「クソッタレが。〔逆て……いや、出し惜しみ無しでいくか」
「何を考えておる?!このままでは、おんしの負けじゃ!」
太陽の光と同等の明るさの炎が、二人を飲み込もうとするが、天は眼を醒ます。
「【我が、腕に滾れ】【我が、脚に集まれ】【我が、身に宿れ】【祖は、森羅万象を悉く】」
そして、炎が飲み込むと同時に、白夜叉は地面に叩きつけられ、その炎は霧散した。
「これで、俺の勝ちだな」
そう言ったのは、全員が初めて見た天の感情が入った表情だった。
キャラ設定
名前 天一斗
性別 男
年齢 16歳(回帰時は、不明)
所持ギフト
神力算
その他神器多数
概要
現在は、人間ではあるが元々はさまざまな力の概念の複合体の化身。
力あるものが生まれた瞬間に生まれた存在である為、宇宙誕生前から存在はしているが、本人もかなりの前のことで覚えていないことが多い。
箱庭では、一桁外門に本拠地を置く日本神話系統髪たちのコミュニティの『高天ヶ原』に所属しており、異世界に居た時も時々戻っては酒を交わしていた。
招待された後は、食客としてノーネームに末席に座っている。
性格は、基本的に自由主義者であり自分や他人が何をするにしてもそれほど気にはしないが、気に食わない事が起きれば、理不尽な理由を叩きつけるなど、色々と面倒。
ギフト紹介
全ての力の原点である存在を証明するギフトであり、彼や彼の神格そのもの。
既存の能力の原点となった能力を使えはするが、あくまで原点である為、本来の力とは違ったものになっている。
しかし、その名に秘められた文字の力を使って、能力を吸い取るなどと言う裏技を使う事ができる。
万能な能力の一つだが、人となっている間は能力の殆どが制限されている。
神格を解放し、力の化身としての能力を復活させる。
さらに、進化したり強化された能力を最初の状態に戻す事も出来、主人公補正などやご都合主義なんかもぶち破ったり出来るメタギフト。
力の本流も含めて、基本的には使われる事の少ないギフト。
神力算
言霊を力に変えて、それを計算と同じように組み合わせる事のできるギフト。
組み合わせ条件はあるが、それが計算として成り立つならば、どんな事も再現可能なある意味全能なギフト。
人となる前に、一斗が創り上げたお気に入りのギフト。
式の仕方次第では、人の身で神に届く程にまで強くなれる。