「君が絶望の淵にいると言うなら、僕はそこに行く」
「貴方が、私のことを知らなくても私は構わない」
比翼の鳥と言う生き物がいるらしい。
「君が笑っているのだと僕は感じていたい」
「貴方が、前を向いていられるのを感じていたい」
雄と雌、それぞれ左右半分の身体に、一つの翼を持った哀れな飛べない鳥だ。
「誰かじゃダメなんだ。君じゃ無いとダメなんだ」
「貴方だけでは嫌だ。もっと、私を頼って欲しい」
雌雄同体。雄と雌がそれぞれをそれぞれが支え合って、生きていく。
そんな鳥だ。
「君を世界は許さなかった」
「貴方を周りは理解しなかった」
自分一人ではまともな地を歩くことすら難しいその鳥が、恋人と共に飛ぶその姿に憧れた。
「逃げたと。悪にその背を向けたと叫んだ」
「たった一人だけを守るその正義を否定した」
かの者は言った。「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん」と
「そんなものを俺は捨ててしまった」
「そんな事を私はして欲しくなかった」
天地に置いて、その愛途絶える事なく二人寄り添い合って睦まじく生きる。
「だから、堕ちた」
「だから、去った」
故に、比翼連理。
『私が来た!!!!!』
頼もしいその声が、スマホのモニターからスピーカーを伝って聞こえる。
ああ……、やっぱりあの人は凄いのだと、心の底から感じる。
林間学校で、ヴィランたちに襲われてかっちゃんを攫われた。
友として、ヒーローを志す者として、僕は居ても立っても居られなかった。
それは、僕だけではなかった。
雄英でかっちゃんといつも一緒にいた切島くん
そして、助けてに行こうとする僕らを止めた飯田くんもまた、そうであった。
あのままであったのなら、僕らは八百万さんの発信機を頼りに、ヴィランたちの下に向かっただろう。
けど、彼女が僕たちを止めた。
「行かせないよ」
ヒーローでは無い。ただの一般教員であった彼女の目は、いままでに見たことの無いほど力を持っていた。
「友達を攫われた。しかも、目の前で起きたのなら尚更」
僕たちを見続けて彼女は、続けた。
「でも、それでも君たちが行くべきでは無いよ。君たちが、色んな信念を持ってこの雄英に来たことも、ヴィランに攫われた友達のことで焦っているのも分かるよ」
「だからこそ」と彼女は、一度瞑った目を再び開けて僕たちに人差し指を立てた。
「進んできた道は違っても、辿り着く場所は同じだよ。それは、雄英だけじゃない。ヒーローを目指す君たちのような学生たちもヒーローとなり、日々を過ごす人たちも誰しもがこう思ってる筈だよ」
「“最高のヒーローになる”ってね」
笑いかけた彼女は、僕ら一人一人の顔を見ていき、広げた手を心臓の所にかざしてこう言った。
「気持ちは大事だ。それでも、君たちはまだまだ子供だよ。それに、君たちが憧れたヒーロー達は、君たちの友達一人助け出せない人たちかい?」
そう言うと彼女は、「それじゃあ、ね」と言って部屋から出て行った。
色んな意味で困惑していた僕らに、彼女の言葉は痛いほど身にしみた。
気持ちはまだ、助けに行きたい。でも、
「頑張れ!オールマイト!」
届かないかもしれないけど、必死で叫んだ。
だって、今までも彼の戦う姿はかっこよかったのだから。
「あはははは!!!無様だねぇ!?オールマイトォ」
「ぐうぅ……」
瓦礫の街とかした神野で、ボロボロのオールマイトにオール・フォー・ワンが嫌らしい声で言う。
オールマイトの姿は、人々が知る筋骨隆々な肉体では無く。普通の人のような不格好な姿であった。
「これで、終わりにしようオールマイトォ!!!!」
すまない。心の何処かでそう思ってしまった。
「いいや。終わらない。終わらせない。あの子達には、彼が必要なのだから」
オール・フォー・ワンの不気味な巨腕が、オールマイトに振りかぶられた時その腕は、あり得ない方に曲がりグシャアッと何かが潰れた音が聞こえた。
「君は………?」
「オールマイト。何て顔をしているんですか?ヒーローは、何時も笑っているんでしょう?」
彼女を見たことがある。
自分を助けた者を見て、オールマイトは場違いな事を思った。
「さて、久しぶり、一年ぶりだねと言っておくよ。オール・フォー・ワン」
「ああ!!誰かと思ったら、
「その名で…………その名で彼を呼ぶなぁぁあ!!!!!」
咆哮。そして、周りが歪む。
オール・フォー・ワンは、それにひるむ事なく数多ある個性を使ってそれに対処する。
「彼は、
「いいや彼は、ジャッジ・キルだ。君のせいで堕ちたヒーローさぁ!」
巨悪と無銘。
ヒーロー免許もヒーロー活動も何もした事がない彼女の実力は、その場にいたプロから見てもプロと見紛うほどのものであった。
多様な攻撃を繰り出すオール・フォー・ワンを全て、対処しているだけでもオールマイトの目には驚愕に思えた。
実力は互角。誰もがそう思った。
「ガハッ!」
彼女が突然、吐血した。
その瞬間を逃すまいとオール・フォー・ワンが、あの巨腕を振りかぶる。
直撃。避けようとする彼女であったが、よろけてしまう。
ガアァン!
だが聞こえてきた音は、明らかに肉体に当たったような音では無かった。
「やぁ、やはり来たね。ジャッジ・キル」
「……………」
棚引く長髪の黒髪に、真っ黒に塗り潰されたお面。
灰色のコートを風になびかせながら、オール・フォー・ワンの巨腕を刀一本で受け止めるその者は、こちらを見る彼女に眼もくれずにその細い腕でオール・フォー・ワンの腕を弾き飛ばした。
「ストライカー。君なのか?」
「……………」
「君、なんだね……」
ボロボロのオールマイトは、痛む身体を抑えながらそう言った。
そして、今まで無言だった
「
「…………っ!!!」
言葉にならなかった。
ヒーローネーム ストライカー
後輩とは言え、その実力は素直に尊敬出来た。
けど、彼はたった一つだけ世のヒーロー観からズレていた。
どんな人でも助けるのではなく。たった一人の想い人を救う。
そんな彼は、忽然と姿を消した。
そして、ヴィラン ジャッジ・キルが現れたのはそれから数日後の出来事だった。
「
掠れた声で、彼女が彼の名を叫ぶ。
「
「そんなの良い!私はそんなの望んでいない!」
悲痛な叫びそれは、彼には届かなかった。
「立て、オールマイト。お前が膝を着くにはまだ早いぞ。お前たちの力はそんなものか?」
まだ、
終結したのち、ジャッジ・キルは姿を消した。
それを追うように、雄英一般教員
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、やっと見つけた……!」
「………何で追いかけて来た」
私が彼を見つけると彼は、悲しい顔でそんな事を言ってきた。
その表情を見て私も泣きそうになってくる。
「比翼の鳥………」
「っ!!………もう、無理だ」
「そんなの私は知らない!」
そうだ。世界が何であろうと、私がどうなってしまおうと構わない。
私が私であれるように振る舞える。そして、彼がそばに居てくれる。たったそれだけで、私は人生を楽しめる。
だって、彼は最初に言ったのだから。
「
「……俺はもう、そこには行けない」
「行けないなら、私がそこへ行く!立てないなら、私が立つ!笑えないから、私が笑う!泣けないなら、私が泣く!だから、私を見てよ!私を感じてよ!私に気づいてよ!」
「………歪」
言葉が次々に出てくる。
今まで、我慢して来た物が次々に出てくる。だって、やっと彼に会えたのだから。
「……なぁ、お前はまだ俺を見てくれるのか?」
「当たり前でしょ?」
「まだ、俺を信じてくれるのか?」
「当然!」
「俺は、やり直せるのか?」
「それを、一緒に考えていくんでしょ?」
二人寄り添いあって、生きていく。
彼が好きな比翼の鳥のように。
だって、その方が素敵でしょ?
真金歪
雄英勤務の一般教員。
愛が曲がりに曲がりまくって、デレ以外が無くなったデレデレのヤンデレ。
個性:歪曲
様々な物を捻じ曲げてしまう個性。
とても強力な個性ではあるものの、感情の暴走やふとした時の怒りなどで暴発してしまう危険性もある個性。
基本的には、実像しかその影響を受けないが、暴走している時などは時間など事象も曲げることも出来る。
ただし、自身に対しても影響が強いため、何度もは使う事は出来ない。
己の無力に打ちひしがれて堕ちたヒーロー。
名前だけはとても有名なダークヒーローみたいな、人気があったりもするが、基本的に殺るのは凶悪犯。
個性:強刃
手で握ったナイフや刀の刀身の強度や鋭利さが増す単純なものだが、それを扱う技術に長ければ、No. 1にだって届きうる程の個性。
あくまで、刃ありきの個性であり増強する個性な為、折れる時は折れる。
身体的負荷は特にない。