君には世界がどう見える?   作:抹茶スフレ

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誕生日だったようなので。


前半の口調は焦りの現れとでも思ってください


聖夜前の贈り物〜駆け出しサンタとの出会い〜

 ぷおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 

 

 

 青森への道をフェリーに乗っていくことにした。

 たった今汽笛を鳴らして出発する。

 

 僕は今、船の甲板で波に揺らされる船の揺れを感じている。人によってはこの揺れが苦手な人はそれなりにいるだろうけど、僕からすれば、この揺れはとても心地いい。といっても、実は船に乗るのはこれが初めて。結構ワクワクしている。

 

 昔は、わざわざ船に乗って海を渡るより、特訓として泳いで渡ることにしていた。今思えばバランスの良い筋肉がついたけど、さすがにあれはバカだったよ。しかも真冬にもやってて死にかけたし。

 

 でもま、おかげでイヴと出会えたんだから、反省も後悔も、微塵もありはしないけどね。

 

 .........元気かな、イヴ。

 

 

 

 頭の中に、元気そうにこちらに手を振って駆け寄ってくる、僕と同じ白髪で金目のミニスカサンタが浮かぶ。

 

 

 

 

 ...............あ、こけた。

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 日本を飛び出して7年と4ヶ月

 僕は今、

 

 

 

 

 

      絶賛死にかけているところだ。

 

 

 

 

 

 ガクガクガクガクブルブルブルブル

 

 

 やばいやばいやばいっ!!!

 さっきからずっと身体の震えが止まらない!!

 誰だよただでさえ寒いグリーンランドに、しかもこの真冬の豪雪の中海を泳いだ大馬鹿は!!?

 

 ああっそうだよ僕だよ!!ちょっとした出来心だったんだよ!!うぬぼれてたんだよ!!ちょっとだけ『自分って他の人とは違うんじゃね?』とか考えてしまうような年齢なんだよ!!できると思ってたんだよ!!わかってよ!!

 

 

 

 ていうかなんか凄く嫌な予感がする。

 

 頭上に気をつけろと勘が訴えかけてくる。

 

 

 上を向く。直後、後悔した。

 

 

 「はっ!!?えっちょっま...ぐっ!!!」

 

 

 どしゃっ!!、という音とともに上から落ちてきた何かに下敷きにされる

 何か白くて丸い袋、感触からして中には大小さまざまな箱状のものが入っていることがわかる。

 

 

 「あ、終わった...」

 

 

 あんな馬鹿なことをしなければ、寒さで震える事しかできない身体を、無理矢理にでも勘に従って動かしていれば、こんなことには。

 

 『ほら早く来なよ、千嘉』

 『おにーちゃん!!はーやーく!!』

 『ちーちゃんの匂い...なんか落ち着くー』

 

 

 ああ、これが走馬灯ってやつなの?

 てかなんで走馬灯にあのヤブ医者が出てくんの?

 

 そんなことより、まだ、こんなとこで終わるわけにはいかないんだけどなー。身体が、どうしても動かせない。

 

 

 

 それに...

 

 

 ......なんか、急に.......ねむ................。

 

 

 

 

 ごめん.........美嘉ねえ、莉嘉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん、プレゼント入れた袋、いったいどこに落としたんでしょう?」

 

 明日の本番に向けて予行演習をしようと出てきたはいいものの、今日は年に一度の豪雪らしかったようで、目の前は真っ白でなんにも見えなかったです。そのせいで予行演習どころではありませんでしたし、しかも、突然起こった強風にソリがグワングワン揺れて、プレゼントが落ちちゃいました。

 

 どうしましょう。緊張感を出すために、持ってきたプレゼントは明日配るものですし、おじいちゃんに内緒で来たから、バレたら怒られちゃいますぅ。

 

 「多分、ここらへんだと思うんですけど......」

 

 プレゼントを落としたと思う港にやってきました。目の前は酷い豪雪でさっきからずっと真っ白です。

 そこから白い袋を見つけることなんて、出来るんでしょうか...

 

 はっ!!いけませんいけません!サンタなんですから、なんとしてもプレゼントを探し出して良い子の子供たちに配るんです!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うぅぅぅ。さすがに寒くなってきました」

 

 あれから、別行動していたブリッツェンと合流して、一緒に探しても、プレゼントはまだ見つかりません

 

 「ぐすっ、どぉしよぉ、ブリッツェン」

 

 このままじゃ、クリスマスプレゼントを楽しみにしている子供たちに、プレゼントを届けられなくなっちゃいます。

 

 ブリッツェンが慰めるように指先を舐めてきますけど、私の瞳から流れる涙は止まってくれません。

 

 「きゃっ。.........うえ~~~ん。うぅ、ぐすっ、ぐすっ」

 

 なにかにつまずいてしまい、こけた私は、立ち上がれずに、我慢できず、その場で泣いてしまいます。涙が白く降り積もった雪に吸い込まれては消えていく光景に、また涙を流しちゃいます。止まりません。

 

 

「う、ぅぅぅぅ...」

「!!?きゃ~~~!!!」

 

 

 突如聞こえた呻き声。

 それは、私の足元から聞こえてきました。

 思わず叫んでその場を飛びのいて、恐る恐る振り向いて声の正体を確認して初めて気づきました。私がさっきまで泣いていた場所の真下に、人が埋もれていたことに。

 

 

「だ、大丈夫ですか!!?」 

 

 

 急いで助けようと近づいた、その時でした。

 

 

 「...涙なんて、拭って......周り、ちゃん...と、見なよ。」

 「え??」

 「探しものは.....案、外....すぐ、ちか...く」

 「.........」

 

 

 この人は、なにを言ってるんでしょう。まさか、あの時のことを見ていたのでしょうか。聞こうとしても、気絶してしまったので、どう仕様もありません。早くこの人を病院に連れて行かないと!

 

 

 頭では、確かにそう考えている筈なのに、私の身体は、雪を掻き出してはいませんでした。

 

 

 目を拭って、心を落ち着かせて、周りを注視していました。

 1つの違和感も見逃さず、砂漠の中から一粒の砂を探し出すように、集中していました。

 

 「あ」

 

 そして、見つけました。

 雪の白とは違う。自然にではなく、人工的に作られた白。探し求めていた、プレゼントの詰まった袋。

 驚くことにそれは、私の目と鼻の先にあって、雪に埋もれている人の頭上に、鎮座していました。

 

 「!!!ブリッツェン!」

 

 私の意を汲んだブリッツェンが、すかさず雪に埋もれた人の服の襟を咥えて引き抜きぬいちゃいます。その間にプレゼントの詰まった袋をソリに乗せた私は、上着を脱いでブリッツェンが引き抜いた人を包みます。寒いのなんて関係ありませんっ!

 

 「すごく弱いけど、心臓も呼吸もあります。ブリッツェン!!超特急で家に!!」

 

 冷静になったことで気づきました。港からなら、病院よりも私の家の方が近いです。

 死なせるわけにはいきません。多分この人は私が落としたプレゼントの詰まった袋の下敷きにされてこうなったんだと思います。

 それにこの人のおかげで、この一年を良い子に過ごした子供たちに悲しい思いをさせなくて済むんです。

 サンタクロースの名に懸けて、助けて見せます!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「この......もんが!!.........く、人1人を......とこ...だっ...ぞ!!」

 「は...。......んなさ...」

 

 なんだ。声が、聞こえる。僕は......いったい。

 たしか...落ちてきた何かに押しつぶされて、目が覚めたら、目の前に口説きたくなるくらいに可愛い女の子がいて、けどなんだか困ってたみたいだから、勘を頼りにアドバイスをして、それから......うーん。それからが思い出せない。

 

 というかそもそもここはどこ?

 知らない天井だ。

 僕は千嘉?それともSENKA?

 

 目を覚ました今の現状は、どこかの建物のベッドの中で寝ていた。という事しかわからない。

 

 ふむ、この状況から推測するに、一番可能性が高いのは、あの女の子に保護された、というところかな?

 

 その証拠に、未だに違和感の残る腕を動かして布団を捲れば、着た覚えのないクリスマスカラーの寝間着の上に、これまた着た覚えのない白のロングコート。

 

 

 勘も特に反論することがないことから、多分この推測は間違ってないと思う。

 

 

 だとしたら、まず真っ先に御礼を伝えよう。そう思い、眠っていたベッドからから立ち上がろうとした瞬間。

 

 

 「あっ、だ、駄目です!まだ動いちゃ駄目ですぅ!!」

 「は??」

 

 

 

 一瞬だけ、立ち上がろうとしたときに3メートル先に見えた少女が、一瞬で距離を詰め、反応の余地なく肩を押さえられてベッドに押し戻される。

 

 え???なにいまの。

 理解はできたけど、理解することは一応できたけど。女の子一人の動きに反応するどころか、押し倒されるなんて、え??なに、この子が凄いの?僕が雑魚いの?

 

 

 「あと少しで凍死するところだったんですよぉ。無理に動いちゃ、メッ、なんですぅ。」

 「ああ、ああああ!!.........なんだぁそういう事かー。よかったー」

 「?なにがですか?」

 「いや、男としての矜持が...ね」

 

 よかった。別にこの女の子よりも力が弱かったとか、雑魚かったとか、そういうのじゃなく凍死仕掛けた時の後遺症で一時的に筋力の低下やら動体視力の低下やらなんやかんやあってあの結果になったってことらしい。

 

「あ、申し遅れましたぁ。私はイヴ。イヴ・サンタクロースですぅ」

 

 

 

 

 

 

 

これが駆け出しサンタと僕の出会いと、一夜の冒険の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今日中までに間に合わなかったので、青森に変わって次は今回の話の続きにします。

〜イヴ・サンタクロース〜
HAPPY BIRTHDAY

☆9評価及び2nd評価して下さった『アブソリュート・ゼロ』さん。☆7評価及び3rd評価して下さった『グリグリハンマー』さん。
評価ありがとうございます!

以降は順番つかないです。

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