椚ヶ丘中に転入してから1週間が経過した。
その間、タコに仕掛けられた暗殺は数多くある。
例えば離れた位置から狙撃したり、タコの死角から拳銃で射撃したり、他にもすれ違い様にナイフで襲ったり、話してる最中にナイフで刺そうとしたりしたが、それら全ての暗殺は
そう簡単に殺せないのは仕方無いにしても、せめて1本ぐらい触手を吹き飛ばしたい皆は遂にクラス一斉射撃を仕掛ける事にした。
そんなワケでいつも通り登校した俺達は、タコが教室に入ってくるまで、ただじっと待ち続けた。
そして──
「皆さんおはようございます。今日も良い天気ですね。さて、HRを始めるので日直は号令を」
扉を開けて教室に入ってきたタコは教壇に立つとそう言った。
その言葉に本日の日直である、渚は大きく息を吸い込み言い放つ。
「起立!」
渚の号令と共に俺達は席を立ってタコへと各種の銃を向ける。
クラス全員分の銃口が全て自分に向いてるのに、タコは一切狼狽えたりせずニヤニヤ笑っている。
毎度の事だがあの顔はムカつく。
「気を付け!」
次の号令で俺達は銃の安全装置を解除して射撃可能にする。
そして最後の号令を渚が発した。
「れ──い‼」
その号令を合図に俺達は一斉に
──スパパパパパァーンッッッ‼‼
次々とタコに向かって飛来するBB弾の雨霰。
その弾雨をタコは魚が水中を泳ぐようにして簡単に避けている。
「出欠を取りますが発砲したままで結構ですので、呼ばれたら銃声に負けないような大きな声で返事をしてください。それでは磯貝君」
出欠を取りながらタコはBB弾が飛び交う嵐を物ともしていない。
そうしてしばらくタコは出欠を取っていたが、やがてクラス全員分の出欠を取り終えた。
それと同時に射撃も止まる。
「停学中の赤羽君を除き、本日も皆さんは無遅刻無欠席……素晴らしい! 先生とても嬉しいです!」
クラス一斉射撃を避け切ったタコはそんな事を言いつつ、朱色の丸を顔に浮かべた。当然触手は1本も破壊出来ていない。
「今日も先生
俺達の戦果にタコの表情は相変わらずニヤニヤとしたムカつく笑みだ。
「数に頼る戦術は悪く無いんですが、それでは個々の思考を疎かにしてしまう。目線、銃口の向き、指の動き、それら全てが単純で読みやすい。もっと工夫をしましょう。遠山君のようにね」
タコの言葉に皆は一斉に俺を見る。
「先生、遠山のヤツ、何か工夫してたのか?」
「その通りです前原君。遠山君は目線でのブラフ、時おり飛ばしてくる殺気、そういう行動を起こす事で、先生の意識を皆さんの射撃から外していた。お陰で先生は何発か避け切れず服に弾を
「成る程、そういう事か……でも先生、本当に服に掠っただけか? 実は体にも当たってたのに我慢してるだけじゃないよな?」
「そうだよ。だってどう見てもこれただのBB弾だもん」
前原の言葉に対触手生物物質で作られた弾を持った岡野が賛同する。
その岡野の言葉に皆も賛同した。
「そうまで言うなら確かめてみましょう。誰でも良いので先生の触手をその弾で撃ち抜きなさい」
「じゃあ、私が撃つ」
タコの言葉に速水は手を挙げると、抜いていた銃の照準をタコの触手に合わせて発砲した。
──パンッ!
軽い発砲音と共に銃口から飛び出した弾丸は、狙い違わずタコの触手を撃ち抜く。
「よし!」
2mの距離から5㎝と細い触手を撃ち抜いた速水は喜びの声を上げた。
体育の時間や昼休み、休日なども使って練習してきた成果が出て嬉しいんだろうな。そう思って速水を見ると可愛らしい笑顔を浮かべていた。
この前も思ったが、いつもクールな表情の速水が笑うと、普段の印象と相まって3倍はカワイイ、その笑顔に見惚れていた俺は慌てて速水からタコに視線を移した。
そこでは千切れた触手がトカゲの尻尾のように、床の上でビチビチと跳ねている光景が広がっていた。キモッ!
「前にも烏間さんが説明したと思いますが、国が開発した弾──敢えて『対先生特殊弾』とでも名付けましょうか。この特殊弾ですが君達には無害でも先生には有害な弾です。当たれば先生の体を形作る触手細胞など豆腐のように破壊出来る。もちろん数秒あれば再生しますが」
タコがそう言った通り、触手が千切れた場所から新たな触手が生えてきた。
超速再生かよ。殺すには厄介な能力だな。
「ああ、それといくら君達には無害だとは言え、目に入ると失明する恐れがあるので、先生を殺す目的以外で室内での発砲は極力控えてくださいね」
そう俺達にタコは注意した後、顔色を緑のシマシマに染めて言ってきた。
「卒業までに殺せると良いですねぇ」
タコがそう言ったと同時にHR終了を報せるベルが鳴り響いた。
「さて、それでは皆さん。銃と弾を片付けて授業の準備をしましょう」
その言葉と同時に俺達は床に散らばった弾を掃除し始めた。
午前の授業が全て終わり、昼休み開始と共にタコは中国の四川省へと、本場の麻婆豆腐を食いに空を飛んでいった。
その様子を見ていると──
「キンジ君、お弁当食べよう!」
「遠山、一緒に食べよう」
「遠山君、一緒にお弁当食べない?」
あかり、速水、矢田──3人の少女が弁当を持って俺の席にやって来た。
昨日は倉橋と岡野も一緒だったが今日は違うらしい。
俺としては正直なところ、杉野や渚などの男友達と食いたいのだが、なぜか2人共『せっかく誘われたんだから、こっちの事は気にせず一緒に食べてやれよ』的な視線で毎回見られるため、最近は諦めてる。
「どうせ拒否しても一緒に食うんだから早く座れ」
投げやりな言葉を吐きながら弁当を取り出し、食べ始めると中身を見ていた速水が口を開いた。
「遠山のお弁当って茅野が作ったんだよね?」
「うん。そうだけど、それがどうしたの」
「見る度に美味しそうだなぁって思って」
「あ、それは私も思った。この唐揚げとか手作りっぽいのに美味しそう」
「昨日の夕飯の残りを詰めただけだよ」
「それでも美味しそうだよ。ね、凛香ちゃん」
「うん」
「そんなに誉めてくれるなら、これをあげたくなっちゃうよ」
恥ずかしそうに頬を染めたあかりは、自分の弁当からだし巻き玉子を箸でつかみあげると、対面に座る2人の方へと差し出した。
それを半分ずつ2人は頬張った。
その瞬間、あかりと矢田と速水の3人を囲むようにして百合の花が見えた気がしたが、恐らく目の錯覚だろう。
そう思いながらだし巻き玉子を食べた2人は頬に手を添えてうっとりしてる。
「「……美味しい」」
「ホント? ありがとー!」
あかりが嬉しそうに礼を言うと、だし巻き玉子を食べた速水が自分の弁当を見ながら口を開いた。
「お返しに何かあげようとは思うんだけど、自信作はさっき食べたから明日で良い?」
「私も明日で良い? 今朝は時間が無かったから冷食ばっかりなの」
「2人共、無理しないで良いよ」
「それは分かってる。それにしても本当にカエデちゃんの料理は美味しかったよ」
「ホントにその通りね。茅野っていつ頃から料理を始めたの?」
「小学校に入った頃かな。速水さんは?」
「私もその頃かな。矢田は?」
「2人と同じく小学校に入った頃だよ。まあ、私の場合はちょうど弟が産まれたから、お姉ちゃんとしての自覚が出たのかも知れないけど」
そう言った矢田の言葉に速水が反応する。
「そういえば矢田って弟が居たんだよね?」
「うん。凛香ちゃんは1人っ子だっけ?」
「そうよ。お陰で小さい頃はきょうだいが居る子が羨ましかったなぁ。ちなみに茅野と遠山にはきょうだいって居るの?」
速水の問に一瞬だけあかりは眉を寄せたが、すぐさま何事もなかったように首を左右に振って答えた。
「居ないよ。お姉ちゃんとか欲しかったんだけどね。でもキンジ君にはお兄ちゃんもお姉ちゃんも居るよ」
「そうなの?」
「あ、ああ、兄が1人で姉が……2人? いや、1人……かな」
俺の言葉に速水と矢田は揃って頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。
よく分からんよな。言ってる俺も分からんし。
何しろ、イリーナ姉さんを除いたもう1人の姉は
「遠山の言ってる事はよく分かんないけど、取り敢えずきょうだいが居る事は確かなんだね」
速水の言葉に頷いた時だ。
「どうだ。ヤツを殺す糸口はつかめたか?」
そう言いながら教室にタコの監視任務に就いている烏間が入ってきた。
昨日はいなかったが、休日はいるんだな。
そんな烏間の問に磯貝は応じる。
「速すぎて全然です。さっきも中国に行ったばかりだし」
「そうか。向こうの人間が殺ってくれれば良いが……あまり期待しないでおこう」
「だったら、先生が中国から帰ってきたタイミングで自衛隊の迎撃ミサイルを撃てば良いんじゃないですか?」
「もちろんそのつもりだが……それも望み薄だろう」
そう返された磯貝は俯く。
「とにかく、世界広しと言えどヤツと至近距離で接する機会があるのは君達だけなのだ。どんなに可能性が低かろうが完遂するしかない。それだけは理解してくれ」
烏間はそう言い残して教室を出ていこうとしたが、俺の姿を捉えると近くまでやった来た。
「君が遠山君だね。資料を見て直接話したいと思っていたんだが、遅くなってすまないな」
そう言って弁当を食べる俺を見据えた烏間は……何か言おうとした様子だったが、結局それは言わず──
「武偵としての君に聞くが必要な装備品はあるだろうか?」
「あー……強いて言うなら実銃が使いたい。室内で撃つならエアガンでも問題無いけど、屋外で撃つと飛距離が出なかったり風の影響を諸に受けたり、色々と問題があるからエアガンだと力不足かな」
「成る程、つまりヤツに効果のある弾が欲しいワケだな」
その言葉に俺は頷く。
「分かった。開発するように伝えておこう。しかしエアガンが力不足と言う事は他の生徒達にも実銃を渡した方が良いのだろうか?」
「それはどうだろう。銃──力を持つ者には責任が問われるし、力を持っても正しく使わなければ、銃口は自分に向く事になるからな」
「ふむ、確かにそれらを検討した上で判断しなければならんな。まあ、それは追々考えるとしよう。それはそうとヤツの殺害依頼を受けた武偵に配布する決まりの物を渡しておく」
烏間がそう言って俺に差し出してきたのは1枚の紙だ。
それを受け取って内容を確認すると『殺人許可証』と書かれており、それを見た俺は目を見張る。
「ちょっ、これッ⁉」
「簡易版のマーダー・ライセンスだ」
「な、なんで……?」
「9条に引っ掛からないための措置だ。もちろんそれが効力を発揮するのは
烏間の話を聞くまでは正直突き返そうと思ったが、そんな事を言われては返せないため、渋々受け取った俺はすぐに折り畳むと生徒手帳に入れた。
しかし9条──武偵法9条で禁止されてるのは
あのタコはどうみても人には見えない。それなのになぜ許可証を渡してきたのだろう? 考えても分からないな。
そのため、許可証の件を放置する事に俺が決めた時、烏間は速水に声を掛けていた。
「君は速水先輩──速水鷹斗さんのご息女だな」
烏間にそう言われた速水は驚きながらも答える。
「は、はい。確かに鷹斗は父ですけど、父とはどのような関係ですか?」
「ああ、俺が武検になった頃。1人前になるまで育ててくれたのが鷹斗さんだったんだ」
「そうだったんですね。父がお世話になります」
「いや、俺の方こそ世話になりっぱなしだ」
驚いた。速水の父親も武検で烏間の先輩だったのか。
世間は狭いな。
「そういえば最近父と会ってませんけど元気ですか?」
「ああ、任務で中東にいるが健在だよ」
「そうですか、それが聞けて良かったです」
父親の無事に速水が安堵すると──
「それでは失礼する。母君にもよろしく伝えてくれ」
そう言って烏間は軽く頭を下げた後、俺達と共に弁当を食べていた矢田とあかりをチラリと見て、僅かに眉を寄せたが何も言わず去っていった。
そんな烏間を見ながら俺はあかりに声を潜めて呟く。
「気付かれたかもな」
「……多分ね」
あかりの正体までは分からないだろうが、普通の生徒では無い事は見抜かれただろう。さすがは武検である。
昼休みが終わり、5時限目の国語もそろそろ終了という時間、それは起こる事となった。
「──それではお題に沿って短歌を作ってみましょう。ラスト7文字は『触手なりけり』。その通りに書けたら先生のところへ持ってきなさい。文法の正しさや触手の美しさを表現出来ていた生徒は帰ってよし! あ、遠山君は補習があるので残ってくださいね」
やっぱり俺は放課後補習で居残りなんだな。
そう思っていると、あかりが手を挙げてタコに聞いた。
「先生、しつもーん」
「……? 何ですか茅野さん」
何だ? 今一瞬だけあかりの質問への返答が遅れたような……?
「今さらだけど先生の名前って何? このまま副担任がやって来ても区別出来なくて困るんだけど」
「名前……ですか? 名乗る名前は無いので皆さんが付けてくれて構いませんよ。但し今は課題に集中してください」
「はーい」
そうあかりが返事した後、タコの顔色が薄いピンクに染まった。
その瞬間、何の前触れも無く渚が席を立ち上がった。
(早いな、もう課題出来たのか?)
そう思って渚を見たが、すぐに違うと気付いた。
アイツ、殺る気だ。
その証拠に俺の位置から渚が持つ短冊の裏を見れば、そこにナイフを隠してるのが丸見え、それに対してタコ側からは渚が課題を提出に行ってるようにしか見えないため、一見不審なところは見当たらない。
だがな、渚。それではタコは殺れないぞ。殺気が駄々漏れだからな。
殺気を沸々と放出させている渚は静かにゆっくりとタコに近付き、ナイフの間合いに入った瞬間、短冊の裏に隠していたナイフをタコ目掛けて振るうが、当然の如く止められている。
「……HRの時に言ったでしょう。もっと工夫しなさいと」
やはり簡単には殺れないかと思ったのも束の間、信じられない事に渚がタコに抱き付いたのだ。
その事実に驚くより前に渚とタコの間で──
──バカァァァンッッッ‼‼‼
閃光が瞬き爆音が響くと共に対先生特殊弾が周囲に飛び散った。
今の光と音と威力は……
そこに俺が至った時。
「っしゃあ! 1兆円いただきィ!」
「まさかコイツも自爆テロは予想してなかったろ!」
「ざまぁねぇな!」
そう言いながら寺坂、吉田、村松の不良3人組は教壇へと駆け寄っていく。
そういや昼食時に寺坂が、『暗殺の計画を進める』とか言って渚を連れ出していたが、まさかこんな方法で暗殺を仕掛けるとは思いもよらなかった。
そんな事を考えていると、席を立った中村が寺坂に詰め寄り、
「寺坂、アンタ渚に何持たせてたの⁉」
と、聞いていた。
その中村の問に寺坂は面倒そうに答える。
「あ? オモチャの手榴弾だよ。但し300発の対先生弾がスゲェ速さで飛び散るように、火薬を使用して爆発の威力を底上げした特注品だがな」
その言葉を聞いた中村は寺坂を睨み付け、「最低!」と吐き捨てて渚に駆け寄っていった。
そんな中村を見ていると、教室の後ろから加納が渚に駆け寄ったため、俺はあかりと視線を交わして互いに頷くと席を立った。
渚の怪我の具合を診るためにあかりが席を立って渚の方に向かうと、俺は寺坂の方へと歩み寄っていく。
「渚よォ、女子3人から心配されるとは、男冥利に尽きるな」
「寺坂、それがタコに向かって特攻した渚に掛ける言葉か?」
「ああ? 別に死ぬ量の火薬は仕込んでねぇよ。まあ、火傷はするだろうが治療費ぐらいなら俺の1兆円から払ってやるよ」
「成る程、つまり地球を救うために1人を犠牲にしたってワケだな」
「良く分かってるじゃねぇか。大を救うために小を切り捨てる。合理的な考えだ」
寺坂がそう言った途端、周りの皆が白い目で寺坂を見た。
「そうか。お前の考えは良く分かったよ。そんなお前に聞きたいんだが……何で自分が渚のようにタコへ向かって特攻しなかったんだ?」
俺の言葉を聞いた寺坂は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になる。
「さっき自分で言ってたよな。大を救うために小を切り捨てるって、その切り捨てる対象は自分でも良かったのに何で渚だったんだ。その理由を教えてくれ」
「い、いや、俺には爆弾のスイッチを押すという役目が……」
「そんなの吉田か村松に任せれば良い、もしくは吉田か村松のどちらかに特攻させても良かった。それなのに何で渚に任せたんだ? まさかとは思うが、自分が怪我したく無かったから渚に任せたワケじゃないよな?」
「…………」
再三に渡る俺の問い掛けに寺坂は何も言わない。
「沈黙か。まあ、それでも良いがこれだけは覚えとけ。自分がやりたくない事を他人に押し付けるな」
そう言った俺は苦虫を噛み潰したような表情の3人へ視線を向けた後、爆発に巻き込まれた渚の許へと向かった。
「カエデ。渚はどうだ?」
「平気。それどころか傷1つ無い」
「……は? あの爆発で無傷なワケが無いだろ」
「だったら自分で確かめれば?」
カエデに言われたため後ろから渚の様子を伺うと、確かに何かの膜に覆われた渚が無傷で教壇に寝ていたのだ。
「何だ。その膜は?」
「それは先生が脱いだ皮です」
俺の問に答えるように天井から声が聞こえたため、慌てて見上げてみると渚と共に爆発に巻き込まれたタコが天井に張り付いていた。
「生きてたのかよ」
「はい。実は先生は月に1度だけ脱皮して危ない場面を
その言葉に俺は納得する。
しかし超速再生だけじゃなく、エスケープ技まであったのか。
ますます殺し難い相手である。
そう俺が思ってると、タコは天井から床へと下りてきた。
「さて、先生として首謀者の寺坂君達にお説教したいところですが、3人共遠山君の言葉が利いたのか随分反省してる様子ですからね。お説教は渚君だけにしましょう」
「エエ⁉ 僕⁉」
「当たり前です。先生を殺すためとは言え自分を犠牲にしてはいけません! 自己犠牲は美談ではありませんよ! 分かったなら返事!」
「……はい。すみませんでした」
渚の謝罪にタコは頷く。
「分かればよろしい。ところでこれは寺坂君達にも言えることですが、次また今回と同じような暗殺を仕掛けてきた場合」
その瞬間、タコは風のように教室を出ていくと1秒も経たない内に表札を抱えて帰ってきた。
「君達以外には何をするか分かりませんよ。何しろ先生が政府と交わした契約は
俺とあかりには当てはまらないが、このタコから逃げる場所など皆無、その事が先程のタコの言葉で分かった。
「さて、叱るだけでは先生としては赤点なので、次は今回の暗殺で良かった点を誉めましょう。まずは寺坂君達、本物の火薬を使うというアイディアはすごく良かった。次に渚君、君の肉迫までの自然な体運びは100点だ。お陰で先生は完全に虚を衝かれました。但し、先程も言ったように何かを犠牲にする暗殺はNG。そんな生徒に先生を暗殺する資格はありません!」
そこでタコは皆の方を向くと声を大にして言う。
「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員それが出来る力を秘めた有能な
マッハで怒りマッハで誉める。スゲェ教師だな。
しかし有能な暗殺者って、俺とあかりは武偵なんだが……まあ、それは言わない方が良いだろうな。空気的に。
「……さて、ここで皆さんに問題です。先生は殺される気など微塵も無い、皆さんと3月までエンジョイしてから地球を爆破します。それが嫌なら君達はどうしますか?」
タコからの問い掛けに皆は力強い目で言った。
「「「その前に先生を殺します」」」
「ならば今殺ってみなさい! 殺せた者から今日は帰って良し‼」
皆の言葉にタコは顔を緑のシマシマに染めて言ってきた。
くそぅ、相変わらず俺達を舐めてやがる。
そう思いながら、まだ国語の課題が出来てないため、席に戻る途中に表札を見てみると、『茅野』って表札があった。
一体どこから取ってきたんだろう。てか、あの『遠山』って表札……よく見ると姉さん宅の表札じゃなく、巣鴨にある実家の表札じゃねぇか‼
そんな所から取ってくるんじゃねぇよ!
ちゃんとお前が返しに行くんだろうな?
などと思っていると、あかりが口を開いた。
「先生の名前ってこういうのはどう? 殺せない先生だから『殺せんせー』……とか」
「『殺せんせー』ですか……良いですね! 先生、その名前とても気に入りました! 従って今から先生の事は『殺せんせー』と呼んでください」
そんなワケでタコの名前が殺せんせーに決まったのだが、今はそんな事より無事に家へと帰宅出来るかどうかの方が心配な俺達であった。
書き終えてみれば8000文字を超えてました。
作中で軽く触れてますが、E組の生徒に実銃を持たせるのは有りか無しかを問います。詳しくは活動報告へ。