暗殺教室~君のために義を貫く~   作:緋色の焔

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色んな二次創作小説を読んでいると、たまにオリ主のプロフィールや設定を書いてる作品があるけど、あれって正直要らないと思う。
容姿のイメージだけを書けば、あとの情報は作品内に書けば良いからね。


3弾 善後策の時間

 瞼の裏に陽光を感じて目を開けると、そこは見慣れた寮の部屋では無かったため、一瞬どこか分からなかったが室内に香る匂いで姉さんの部屋だと分かった瞬間、自然と昨日の事が思い出された。

 

「やっぱり夢じゃなかったか……」

 

 ソファに身を沈めたまま口にすると──

 

「起きたか」

 

 不意に声が掛けられ目を向けると、そこには俳優やタレントが裸足で逃げ出すほど端正な顔立ちをした長髪の男──俺の兄さん、遠山(とおやま)金一(きんいち)が武偵高の防弾制服を着てソファに腰掛けていた。

 

「あれ? 何で兄さんが姉さんの部屋(ここ)に?」

「昨日姉さんにすぐ来るようにと連絡を貰ったからな」

 

 長い足を組んでいた兄さんの言葉を聞きながら、姉さんが掛けてくれたらしい毛布を持って体を起こすと脇腹が痛まない事に気付いた。全く痛まないワケでは無いが、昨日に比べたら大分マシである。

 

「お前は脇腹を痛めてる事を隠したつもりかも知れないが、姉さんは気付いてたからな。ゆえに日常生活を送るのに申し分無い程度には治療しておいた」

 

 そういや兄さんは外国で医師免許を取得してたな。姉さんも高度じゃないが看護助手の資格を取得してたハズである。

 

「そうか、ありがとう」

「礼なら姉さんに言え」

 

 兄さんが応じた時だ。

 リビングにゆったりとした白いワンピースに身を包んだあかりと、ピンクで薄手のオフショルダーセーターと黒地に白い花模様入りのミニタイトスカートに身を包んだ姉さんが入ってきた。

 そんな2人はそれぞれアクセサリーを身に着けており、あかりはあぐりさんの形見である緋色の宝石が付いたプリンセスネックレスを、姉さんは3年前の誕生日に俺がプレゼントしたチョーカーネックレスを首に巻いていた。

 

「おはよう。2人共」

「……」

 

 姉さんは挨拶してくれたがあかりは黙ったままだ。

 そんな2人がソファに腰掛けると兄さんが口を開く。

 

「キンジ、あかり。辛いとは思うが言わせて貰うぞ。昨日姉さんに聞いたが、あぐりさんが亡くなったそうだな」

 

 兄さんの言葉にあかりはギュッと下唇を噛んで表情を暗くした。

 それを見た姉さんはあかりを豊満な胸元へと抱き寄せる。

 姉さんはあかりを気遣って抱き寄せたのかも知れないが、当のあかりは巨乳に抱き寄せられた怒りと、あぐりさんが亡くなった悲しみの両方の感情が入り交じったような複雑な表情をしている。

 怒るか悲しむかどっちかにしろよ。

 

「キンイチ! もうちょっと優しい言い方は無いの!」

 

 あかりが表情を変化させた事に気付いた様子の無い姉さんは、兄さんに苦言を申した。

 

「これでも言葉は選んだつもりだ。それで2人共、昨日何があったのか詳しく聞かせてくれ」

 

 マイペースだが割とせっかちな性格をしている兄さんの言葉に、チラッと俺はあかりの様子を伺う。

 

(自分から話せる感じには見えないな)

 

 あかりの様子を見て代わりに話した方が良さそうだと判断した俺は口を開いた。

 

「えーっと、関係無い部分は省くけど……」

 

 そう前置きして俺は昨日の事を語り出した。

 あぐりさんが手伝ってる研究所の警備任務を受けた事、警備が終わったタイミングで研究所が騒がしくなり、得体の知れない気配を研究所内から感じてあぐりさんを探しに向かった事、研究所内に入ってしばらくすると研究所が崩壊した事、そして瓦礫を這い出た先であぐりさんの遺体と、その傍らに異形な触手の怪物がいた事を語った。

 

「──触手の怪物か」

「ああ、現状であぐりさんの死因は他殺だ。あくまで俺の主観と状況証拠だが」

「だろうな。話を聞く限りでは俺もそう感じる。だが状況証拠は証拠としては弱い。他に気になった事は無いか?」

「気になった事……そういや、あぐりさんを探してる最中、センサーが付いた容器から何かが……いや、()()()()()()。触手が飛び出してきて俺の脇腹を直撃したんだ」

「あぐりさんの傷はどんな具合だった」

「腹部にでかい風穴が空いてた。あの時、防弾制服を着ていなかったら俺もあぐりさんのようになって……」

 

 そこまで言った俺は気付いた。

 昨日、あぐりさんの傷を見てた時に感じた違和感の正体はこれだ。

 

「恐らくあぐりさんの傷は触手に()るものだ。実際に触手の一撃を脇腹に受けた俺なら分かる。だが、事件か事故かの判断材料にならないな。怪物も触手を持ってるし……」

 

 俺の言葉に、ずっと黙っていたあかりが口を開いた。

 

「どっちでも良いよ。お姉ちゃんが死んだのはアイツの研究が原因なんだから……」

 

 アイツとはあぐりさんの婚約者の事だ。

 確か名前は柳沢(やなぎさわ)誇太郎(こたろう)だったな。

 

「アイツさえッ‼ アイツさえいなければ、お姉ちゃんが死ぬ事は無かったのに……ッ‼」

 

 憎悪の籠った目であかりが言い放った時、一瞬だけあかりの胸元で輝く緋色の宝石のような物が光った気がした。

 俺は目の錯覚かと思ったが、兄さんは眼光を僅かに鋭くさせていた。

 そんな兄さんはあかりに向かって口を開く。

 

「あかり。武偵法9条は覚えてるな?」

 

 武偵法9条。

 武偵は如何なる状況に於いても、その武偵活動中に人を殺害してはならない。

 そんなの武偵なら誰もが分かりきってる事なのに、なぜそれを兄さんは問い掛けるように言ったのだろう?

 

「良いか? 9条は破るな。お前に手錠を掛けたくないからな」

「……うん」

 

 真剣な兄さんの言葉にあかりは神妙な面持ちで頷くが、その目には憎悪の炎が灯ったままだ。

 俺はそれに気付いて問い質そうとした時、トン、トトン、トン……あかりがこちらを見ていないタイミングで左手の甲を兄さんが指で叩いてきた。

 

(これは──指信号(タッピング)か)

 

 指信号とは武偵が使う暗号の一種だ。

 モールス信号のようなそれを咄嗟に解読すると、和文で『後で話がある』と伝えてきたため『了解』と兄さんに返した。

 しかし兄さんからの話か。

 あかりにバレないよう、わざわざ指信号を使って伝えてきたって事は秘密の話なのだろう。

 何を話されても良いように気を引き締めておくか。

 

「そう言えばキンジ、テーブルに置いているノートPCとその容器は何なの?」

 

 姉さんは俺が昨日眠る前に、テーブルに置いていたノートPCと容器に目を向けて問い掛けてきた。

 

「何らかの情報を得ようと研究所から持ってきたんだった」

「ならば早速調べるか」

 

 俺の言葉に兄さんは頷き、ノートPCを手に取って、スイッチを押して電源を入れた。

 所々ヒビ割れていたため、正常に作動しないかと思ったが、特に問題は起こらなかった。

 キーボードもタッチパットも問題無く反応する事を確認すると、兄さんはいくつかのファイルを開けていく。

 その様子をしばらく見ていた姉さんは問い掛ける。

 

「どう、キンイチ。何か分かった?」

「幾つかな。まず触手だが、これは反物質の研究による副産物だ」

「反物質?」

「石油や原子力のようなエネルギー源だ。エネルギー量は両者を遥かに凌ぐがな」

「そうなのか?」

「ああ、たった0.1gで核爆弾1発分のエネルギー量に相当する。ただ、生産効率はかなり悪い。しかしこの研究ではその生産効率の悪さを克服しようとしてる──生きた人間の体を使ってな」

 

 生きた人間の体、つまり人体実験の事だ。

 それに思い当たった俺達は息を呑む。

 

「……それは、確かなの?」

「姉さんの疑問は尤もだが、確かだ。そしてその人体実験によって産み出されたのが触手だ」

「じゃあ、俺の脇腹を襲ったのは……」

「触手を兵器として運用したものだ。現にアメリカの軍事研究機関が触手細胞の構造を買い取っている」

 

 おいおい、アメリカさんよ。

 アンタらの頭がおかしいのは知ってたが、そんな物にまで手を出すなよ。

 SF系の映画みたいにいつか飼い犬に手を噛まれるぞ。

 

「触手の兵器利用は弾丸みたいに飛ばすだけなのか?」

「いや、恐らくキンジを襲ったのは地雷のようなものだ。触手には別の利用方法もある」

 

 その言葉に姉さんが問い掛けた。

 

「別の利用方法?」

「ああ、人体へと後天的に移植する方法だ」

「おいおい、そんな事して大丈夫か」

「大丈夫なワケがない。神経と密接にリンクしてるためいくつかの副作用がある。例えば激痛、能力低下、精神の不安定化、代謝の不安定化、つまり命に関わる副作用があるんだ」

 

 そう言って兄さんはテーブルに置かれた容器を手に取る。

 

「そしてこの容器の中身の液体こそが触手細胞──触手の種だ」

 

 兄さんの言葉を聞いた俺は容器を見る。

 チラッとあかりを一瞥すると、触手細胞が入った容器に目を向けていた。

 その視線に嫌な予感を感じた俺はあかりに声を掛ける。

 

「あかり、もしかしてお前、この触手を移植するとか言うんじゃないだろうな?」

「……命の危険があるのに触手なんて移植しないよ。それに何となくだけど、今の私は触手(そんなもの)より、()()()()()()を持ってる」

「もっと強い力? なんだそれは」

「分かんない。ただ、昔から力の存在は微かにだけど感じてたの、でも今はどういうワケかハッキリと感じる。力の使い方は分からないままだけどね」

 

 苦笑いを浮かべながらも更にあかりは俺に言った。

 

「まあ、そんなワケで触手を移植する気は無いから安心してよ。キーちゃん」

 

 そんな言葉と共にあかりは『心配いらないよ』と伝えるように、ニコッと笑みを浮かべた。

 その時、ふと何らかの気配を兄さんから感じ取ったため、視線を向けると再び鋭い眼光であかりの胸元に輝く緋色の石を見ていた。

 ネックレスの石なんかにそんな眼光を向けなくても良いだろう。

 よく分からない兄さんの行動に首を傾げた時、姉さんが声を発した。

 

「それであかり、貴女はこれからどうするの?」

「取り敢えず、お姉ちゃんが何で死んだのか原因を知りたい。そして理由によってはお姉ちゃんの仇を討つ」

「じゃあ、あぐ姉の亡骸の傍らに居たって言う怪物を捜さないとね? 心当たりはあるの?」

「無いよ。キーちゃんは何かある?」

「やな「アイツ」……アイツの居場所までは知らないが、怪物の居場所なら一応心当たりがある」

 

 俺は携帯を取り出して研究所で撮った書き置きの写真を見せた。

 

「怪物のヤツ、お姉ちゃんが担当していた椚ヶ丘中学3年E組の担任を努めるんだ?」

「らしいな。理由は知らないが」

「だね。でも怪物に会うためには椚ヶ丘中に通わなくちゃいけない事だけはわかるよ」

「書き置きによればそうだな」

「というわけでキーちゃん。一緒に椚ヶ丘中学校に転校しよう!」

 

 ……ん?

 今、あかりは何て言った?

 椚ヶ丘中学校に転校しようって聞こえた気がしたが……空耳だよな?

 

「あの、あかりさん。もう一度言ってくれると助かるのですが……」

「だから、一緒に椚ヶ丘中学校に転校しようって言ったんだよ!」

 

 どうやら空耳ではなかったらしい。

 てか──

 

「おいあかり! 転校ってなんだ転校って……」

 

 と、俺がそこまで言った時。

 

「椚ヶ丘中に転校するって事は、4月、いえ、引っ越しする時間を考えると、来週にはキンジと一緒に住めるのね! 今から楽しみだわ!」

「リナ姉、私も住むから2人きりになれると思わないでね」

「あら、あかりまで一緒に住む気だったの? というか家主である私が許可すると思ってるのかしら?」

「リナ姉みたいな男に飢えた女豹が暮らす部屋に、ピュアな羊のキーちゃんを放り込むワケにはいかないからね」

 

 当人である俺を無視して、話を続ける2人を呆然と見ていたら、肩を叩かれたため振り返ると、兄さんが顎でバルコニーを指した。

 

(そういや話があるんだったな)

 

 それを思い出した俺は姦しい女共を一瞥した後、兄さんが向かったバルコニーに出た。

 兄さんの隣に立ち眼下に広がる景色を眺めていると。

 ──リンゴーン──

 周囲に響き渡るような荘厳な鐘の音が聞こえてきた。

 鐘の音が聞こえた方向に視線を向けると、300mほど離れた場所に十字架が立つ青い屋根の建物──教会──を見付けた。

 クリスチャン(カトリック)の姉さんが教会の近くに住むのは当然か。

 その教会を眺めながら兄さんに訊ねた。

 

「それで兄さん。話ってなんだ?」

「あかりの事だ」

「あかりの……?」

「ああ、もしあかりが何らかの事情で9条を破りそうになったら絶対止めろ。さもなくばあかり、延いては世界が危うくなる」

「危うくなるって、あかりは分かるが、世界までって言うのはさすがに大げさじゃないか?」

「今後のために詳しくは言えんが、本当に世界が危うくなるんだ。良いな。絶対に止めろ!」

 

 そう言った兄さんの眼は冗談を言ってるのような感じじゃなかった。

 

「わ、分かった。あかりが9条を破りそうになったら止める」

「頼むぞ。それと餞別(せんべつ)にこれも渡しておく。大切なものだから大事に持ってろ」

 

 ポケットから兄さんが取り出してきたのは、緋色に着色された破壊峰(ソードブレイカー)のある片刃のバタフライ・ナイフだ。

 

「持ってるのは良いが、使っても良いんだろ?」

 

 武偵は拳銃の他に刀剣を持ってるものだからな。

 俺も以前ベレッタ社のタクティカル・ナイフを持っていたが、この前の戦闘訓練で破損したため今は銃しか武装していない。

 

「ああ、壊したりしなければ構わない」

 

 だったら有り難く使わせて貰おう。

 

「それからノートPCと触手の種が入った容器は俺が預かる」

「ああ、正直俺が持ってても仕方無い物だしな……そういや兄さんはこれからどうするんだ? 俺は椚ヶ丘中に転校する事になりそうだけど」

「少し用が出来てな。星伽(ほとぎ)へ行ってくる」

「そうか、分かった。それにしてもあの2人、俺が椚ヶ丘中の編入試験に受かると思ってるのか?」

 

 椚ヶ丘中学校は偏差値66の進学校だぞ。偏差値最底辺の武偵高附属中に通ってる俺が受かるワケが無いだろう。校内で一番成績が良いあかりと違って。

 などと思いつつ俺は部屋の中を振り返り、ソファに座って話し合いを続ける見目麗しい幼馴染みと義理の姉を見る。

 

「思ってるんだろう。あの話から察するに」

「はは……落ちたらどうしよう? てか、十中八九落ちるぞ」

「その時は連絡しろ。何とかしてやる」

「何をどうするのか知らないけど、その時は頼む」

 

 兄さんの言葉に頷いた時、強風が吹き始めたため、あかりと姉さんが残る部屋の中へと戻る事にしたのであった。

 

 

 




前書きでさんざん好き勝手言ってますが、プロフィールや設定を書くなって言ってるワケではありません。最低限の情報だけで良いんです。
プロフィールや設定でネタバレ書く作者は絶対許さんけど(たまにそんな作品があります)
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