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指摘があったので、少し賞金額を下げます。
始業式は滞りなく執り行われ、現在は第11回目の入学式の真っ最中だが、俺達E組は出席しなくても良いと言われたため、旧校舎へ戻ってきた。
戻ってきたのだが教卓に教師の姿は無い。先程参加していた始業式でもE組の担任だけは紹介されなかったしな。
「先月の卒業式以降姿が見えなかった雪村先生だけど、とうとう始業式にも姿を見せなかったぞ。どこ行ったか知ってるヤツいるか?」
5列目先頭に座っていた前原が皆に聞いたが、当然知ってるヤツはいないため、誰も何も言わない。
「雪村先生辞めちゃったのかな?」
「だとしても何か言って欲しかったよな」
倉橋の言葉に杉野が発言すると、背が高く真面目そうな女子委員長の
「とにかく雪村先生の事は脇に置いといて、私達が気にすべきなのはこれからの事よ。私達は受験生なのに担任がいない、つまり誰にも教えを請えない状況で受験に挑まなきゃいけないのよ!」
その言葉を聞いた皆は「そうだ! 今年受験じゃん!」「塾に通わなきゃ」「浪人したら今度こそ親子の縁を切られて家から追い出されるかも知れない……」と
俺は学力最底辺の武偵高に進学するつもりだから、受験をそこまで重要視してないが皆は大変だな。
というか1人だけ親子の縁を切られそうなヤツがいたぞ。誰かは分からなかったが大丈夫か。
受験戦争で負けそうな皆が教室内で騒いでいると、ガラガラ、スライド扉を開けて見覚えのない1人の男が入ってきた。
その男の登場で騒いでいた皆は静まり男に注目する。
純白のワイシャツに無地のネクタイを巻いて濃紺のスーツを、カチッと着用した男は教壇に立つと低い声を発した。
「俺は防衛省特務部の
烏間と名乗る男はそう俺達に訊いてきた。
自衛隊を統括する防衛省の人間が突然訪ねてきた事に皆驚いているが、俺は別の事に驚いている。
(特務部なんて部署、防衛省にあったか?)
不審に思い烏間に視線を向ける。
身長180㎝、歳は20代後半。ガッシリとした体躯。ジェルで上げた前髪の下には、猛禽類を思わせる鋭い双眸があり、強面の印象を与えるが俳優のように整った顔立ちをしている。
雰囲気は全体的に真面目で堅物。
そんな雰囲気を醸し出せるのは、悪は許さないという正義の心を持った検事、または国のために命を捧げてきた自衛隊員ぐらいだ。
そして烏間が着ている濃紺のスーツの下──
その烏間の雰囲気と存在感には……
武装検事だった生前の父さんと同じだ。
つまり、この男──烏間は……
(武装検事……!)
そこに行き着いた俺は絶句し、瞠目し、戦慄する。
その瞬間、特務部という部署の意味が分かった。
恐らく特務部とは──
「あの、防衛省の方が一体、何の用でしょうか?」
皆が驚愕して何も言葉を発さない中、渚が烏間に問い掛けていた。
「連日連夜ニュースで取り上げられてるから皆知ってるな。月が7割消滅したという話を」
烏間の言葉に皆頷く。
「犯人はコイツだ」
そう言って烏間は親指で扉を差した。
(やはり……な)
扉に視線を向けて、少しだけ見えた
特務部とは
そもそも普通に考えれば、反物質みたいな核以上のエネルギーを有した危険生物を、監視も付けずに放置出来るワケがないのだ。
そしてそんな危険生物の監視を任せられるのは、それ相応の実力を持った人物でなければならない。そこで白羽の矢が立ったのが日本最強の公務員である武装検事の烏間なのだろう。
武検で無ければ監視も
(何、あれ……)
以前、研究所で見た時と比べて大分姿が変わってるため戸惑う。
最初見た時は人間が突然変異して、触手が生えた異形の生物のようだったのに、今教室に入ってきたのは体長が倍近く大きくなったコミカルな生物なのだ。
目の前の生物はどこで用意したのか知らないが、頭にモルタルボードを被り、有るのか無いのか分からない首に三日月の刺繍入りネクタイを巻き、アカデミックドレスを着用している。
そして以前と比べて最も違うのは触手の
最初は黒っぽかったと記憶しているが、目と口しか無い顔から触手の1本に至るまで、全身が黄色に変わっている。
その色合いがまたコミカルさを増しているのだ。
なぜこんなにも姿が異なるのかが分からない。ふとあかりが気になりチラッと様子を伺うと、あぐりさんの仇がコミカルな生物に変わっていたため、俺と同様に戸惑いの表情を浮かべている。
そんな心境でコミカルな生物……いや、色は違うがタコに似てるから今後はタコって呼ぼう。
そのタコは烏間より体格の良いメガネの男に銃を向けられながら、教室をペタン、ペタンと歩いて教壇に立つと言い放った。
「初めまして皆さん。私が月を爆破した犯人です。来年には地球も爆破する予定なのでよろしく。それと君達の担任になったので以後お見知りおきください」
「「「……は?」」」
タコの言葉、その後半部分を聞いた瞬間クラス全員が1つになった気がする。
──何言ってんだコイツ……と。
「君達の疑問は最もだが早速本題に入らせて貰う。
「「「…………は?」」」
再びクラス全員が1つになった。
そんな中、キノコみたいな頭の
「……あの、ソイツって宇宙から攻めて来たタコ型生物か何かスか?」
その瞬間、タコは文字通り海に棲むタコと同じで顔色を真っ赤に染めて怒った。
「失礼な! 産まれも育ちも地球ですよ!」
「全てを話せないのは申し訳ないが、コイツが言った事は真実だ。月を破壊したコイツは来年の3月には地球も破壊する。その事実を知るのは各国の首脳のみ、月の事は圧力を掛けて報道規制していたが、ネットでは既に色々と騒がれていた。すなわちこの事実を世界中の人々がパニックを起こす。その前にコイツを秘密裏に始末する。つまり……」
言いながら烏間はスーツを胸元に手を入れると、そこから全体が緑色のナイフを取り出して、目にも留まらぬ速度で振るった。
「暗殺だ」
烏間が振るったナイフをタコは驚くべきスピードで避けた。
「だが、コイツはとにかく速い‼」
言いながらも烏間は目にも留まらぬ速度で、タコを狙ってナイフを突き刺し続けるが一向に当たらない。
それどころかタコは烏間のナイフを避けながら、烏間の眉毛を毛抜きで丁寧に手入れしていく。
「……ッ……⁉」
武装検事としてのプライドが傷付いたような表情の烏間は、ナイフが当たらないと判断すると、悔しそうにナイフをしまって俺達に続きを話す。
「満月を三日月に変えるパワーを持つコイツ──超生物の最高速度はマッハ20だ。思考と意志を持って移動するコイツに攻撃を当てる事はほぼ不可能。つまり、本気で逃げられれば我々は破滅の時まで何も出来ない」
「それでは面白くないので私から国に提案したんですよ。殺させるのは
タコは毛抜きをしまって烏間の肩に触手を置きながら言葉を続ける。
その行動に烏間は激しく、イラッとした表情を浮かべるものの何もせず、ただ黙ってタコの言葉を聞く。
「椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならやってもいいとね」
先程と言ってたし、書き置きにも書かれてたが、本当に担任を務めるらしいな。
「あの、素朴な質問をしても……?」
俺は手を挙げながらタコと烏間を見る。
「ええ、構いませんよ」
「じゃあ、言わせて貰うけど、なんで3年E組の担任を務めようと思ったんだ」
「大事な生徒の質問なので答えたいのですが……そうですねぇ。ではこうしましょう。今E組の担任は私だけですが、いつかE組に副担任が出来た暁にはその方に
「つまり、今話す気は無いって事だな?」
「その通りです」
これ以上追及しても何も答える気は無さそうだな。
烏間を様子にも不審な点は見当たらなかったし、政府もコイツが担任を務める理由は分からないんだ。
烏間が伝えられてない可能性もあるが、それを言っても仕方無い事だ。
追及はここまでだな。
「分かった」
「他に質問のある生徒はいるか……いないようだから続きを話すが、コイツの狙いは分からん。しかし政府はその要求に対して、生徒に絶対に危害を加えない事を条件に承諾した。理由は2つ。1つは教師として毎日教室に来るなら監視が容易である事、もう1つは約30人の人間が至近距離でコイツを殺すチャンスを得るからだ」
成る程、マッハ20で動くヤツがわざわざ1ヶ所に留まるんだ。
地球を救う上でこれ以上の厚待遇の暗殺は無い。
「最期にコイツを殺った時の成功報酬を伝えておく。100億円だ。但しこれはあくまで
1兆円か……『国際エネルギー研究機関』にいくつの国が参加してたのか、詳しい数は分からないが、1兆円ぐらい集まる国数が研究に参加してたんだろうな。
「額が額だけに難しいと思うだろうが、幸いコイツは君達をナメ切っている。コイツの顔色が緑のしましまになった時はナメてる証拠だ」
そう言われてタコに視線を向けると、顔色を緑のしましまにしてニヤニヤ笑っている。
本物のタコ以上の皮膚だな。
「ヌルフフフ、世界中が束になっても私を殺れないのに、平和な島国で産まれた君達に殺られるワケがない。ナメるのは当然でしょう。この前も米軍が開発した最新鋭の戦闘機に襲われた時にも、逆に空中でワックスを掛けてやりましたよ」
烏間の時にも思ったが、なぜ手入れするんだよ。
「そんなワケで君達を格下に見てるコイツのスキを突いて欲しい。そのための武器──銃とナイフを支給する」
その言葉と共にスーツを着た2人組の男女が、烏間もタコに振るった緑色のナイフと、緑色のBB弾を入れたケース。そして銃。
全てエアガンだが各種の銃が揃っている。
拳銃がコルト・ガバメント、
「このBB弾とナイフだが君達には無害でも、コイツには効く特殊にして唯一の素材だ」
「唯一……? 実弾と本物のナイフは効かないのかな?」
烏間の言葉を聞いたあかりがボソッと呟いた。
タコを殺すのにエアガンだけでは心許ないため、実銃を使うつもりだったあかりは焦りから呟いたのだろう。
しかしそんな内心の焦りをあかりは微塵も表に出さなかった。
そんなあかりに脱帽していると、先程の呟きを聞いたのかタコが応じた。
「はい。効きません。実弾や本物のナイフなんかは体内で溶かしてしまうので、百聞は一見に如かずと言いますから試してみましよう。お願いします烏間さん……って、そっちじゃありませんよッ⁉」
エアガンを向けた烏間にタコは慌てて止める。
「本物の方でお願いしますッ‼」
「……はぁ、仕方無い」
そう言って烏間はスーツの胸元に右手を入れ、そこから出してきたのはエリート御用達のオートマチック拳銃──
烏間はP226を構えてタコに発砲した。だがしかし、撃ち込まれた弾丸はドロッとタコの体内から流れ落ちてきた。
ヤッベェ……本当に実弾効果無いのかよ。カバンに入れてある
ナイフがゴムっぽいため、その素材を弾頭に使用した
「このように私には通常兵器は効かないのです。すなわち私を殺したければ国が開発した
「良いか、地球が壊れれば逃げる場所など皆無。時間は残り少ないが1年以内に絶対殺してくれ。それから今まで話した内容は国家機密だ。ゆえに友人や家族であってもコイツの事は口外しないように」
「さて皆さん、残された1年間を有意義に過ごしましょう。ヌルフフフ」
こうして後に『殺せんせー』と呼ばれる、超生物を暗殺する授業開始のベルが高らかに鳴り響いた。
やはり烏間みたいな強者は、自衛隊員上がりの防衛職員程度で収まる男じゃなかったよ。
原作でも、ア〇ンジャ〇ーズでお馴染みのア〇ア〇マンやキャ〇テン・ア〇リカなど、アメコミのスーパーヒーローが所属していた