ジョジョの奇妙な冒険〜空条承太郎と9人の女神〜 作:ガリュウ432
承太郎とことりは2人を抱え、部室のドアノブに手をかける。
「ことり。もしかしたらこの先に、園田と同じように操られてしまった娘達もいるかもしれない。その時はこの場を走って逃げるぞ。いいな。」
「は、はい・・・。」
承太郎はドアノブを回す。先程開けた時とは比べ物にならないほどに重く感じる。それほど張りつめているという事だ。
「・・・誰も、いない・・・。」
「みんな、何処に行ったんだろう・・・。」
「・・・あまり詮索するのはよそう。先に穂乃果と園田の手当をするぞ。」
「は、はいっ!」
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簡易ではあるが、手当を終え、承太郎は時間を見る。
(3時半・・・か。)
「どうかしましたか?」
「いや、絢瀬に出会ったのが1時前、そして園田と戦ったのが2時半前くらいとすると、この調子だと全員は見つからないな。」
あまり時間は掛けられない。時間をかけず、9人全員、スタンドの確認をしなくてはならない。
「それでしたら、明日も来たらいいじゃないですか。」
「・・・構わないのか?」
「私達は今、テスト期間中ですから、午前中に襲ってくることは無いと思います。」
「・・・大変な時期に来てしまったな。済まなかった。」
「いえいえ。・・・どちらにしろ、こうなってたと思いますから。」
「・・・かもしれないな。」
そんなことを話していると、穂乃果と海未が目を覚ました。
「む、気がついたか?」
「はっ!?こ、ここは・・・。あ、承太郎さん・・・。」
「大丈夫だ。園田も無事だぞ。」
「そ、そうだ!海未ちゃん!大丈夫!?」
「・・・うう・・・、はっ!?わ、私は一体・・・。」
「・・・何も覚えてないの?」
ことりが様子が少し変な海未に話す。
「え、ええ・・・。先程までの記憶が少し曖昧で・・・。」
「おそらく君は操られていたのだろう。その状態で、スタンドを使って、私たちと交戦したよ。」
「そうですか・・・。でも、何故かわかるんです。自分のスタンドのことが。」
「どうやら、さっきの戦いで得たスタンドの知識は普通に体に叩き込まれてるみたいだな。その様子だと、発現させることも出来そうだな。やってみたらどうだ?」
「は、はい・・・。『未来の花《フューチャー・フラワー》』ッ!」
ズアォッ!!
「あ、・・・問題は無いみたいです。」
ふむ、スタンドも先程のような瘴気も感じられない。
精神に酷い乱れがないという事だ。
「海未ちゃん、じゃあ正気に戻ったんだね!?」
「え、ええ。・・・そういうことなのかも知れませんね。記憶が曖昧なのではっきりとは言えませんg」
「「よかったァァァあぁああああ!!」」
その言葉を聞いたことりと穂乃果は海未に思い切り抱きつく。
「うわわっ!?た、助けてください空条さぁ〜〜ん・・・!」
困った顔で承太郎に助けを求める海未。
「ふっ・・・。やれやれだぜ。」
「あ、海未ちゃんも承太郎さんのこと空条さんじゃなくて承太郎さんって呼べばいいじゃん!」
「えっ。」
「はっ?」
「さっきも言ったけど、みんなを元に戻す為にも、距離感だけでも近い方がいいよ!」
「い、いいんですか?」
「私の呼び方は何でも構わないが・・・。(またこのやりとりか・・・。)」
「じゃ、じゃあ・・・、それで。」
(やれやれ、相変わらずよくわからんな、女というものは。)
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お茶を入れてしばらく休憩していた頃、穂乃果が口を開く。
「そういえば、なんで扉直っていたんだろ・・・。」
「恐らく、私のフューチャー・フラワーの能力かと。」
「ん?そうなのか?」
承太郎は、海未からの思いがけない発言を聞き返す。
海未はそれに答える。
「ええ。私のあのホール、厳密に言うと、『未来へ送る』と言った方が正しいんです。どうやらホール飲み込んで、そのままホール内に保持し、未来に送る際にある程度元の姿に戻して未来に送るようなんです。」
「なるほど、上手く活用すれば治療にも使えそうだな。」
「まあ、あまりにも原型をとどめていなかったら、直せないようですが・・・。」
「構わない。第一にダメージを受けないことを優先するからな。みんなも、それは頭に置いておいてくれ。」
承太郎が、念を押すように言う。
彼女たちはスタンド使いの前に『スクールアイドル』だ。あまり怪我させる訳には行かない。
「・・・あれ?承太郎さん、指、切れてますよ。」
「・・・?」
そうことりから指摘され、承太郎は自分の両手を見る。
よく見ると右手の中指の第二関節あたりから血が出ている。
「恐らく、1番最初、リモコンを操作する際に絢瀬からの氷の攻撃を拳で叩いたのが原因だろう。・・・すぐに止まりそうだが、まあ、絆創膏を貼っておくか。」
「承太郎さん、はい、救急箱。」
穂乃果が、救急箱を持ってきてくれたので、箱を開く。
「・・・ん、絆創膏がない・・・。」
「おや、切らしているみたいですね。保健室に取りに行きましょうか。」
そういい、海未が立ち上がる。
「私も、自分のはる分だけでも貰いに行くか・・・。」
「私たち二人は待ってるから、気をつけてね。」
「ああ、二人もここに敵が来るかもしれない。ここも気をつけるんだぞ。」
「分かってますって!任せてください!」
・・・穂乃果はなんか心配になるな。
ことりと穂乃果は部室に残り、海未と承太郎で保健室に絆創膏を取りに行くこととなった。
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「さて、承太郎さんは部屋の前でお待ちいただけますか?」
「む・・・、何故だ?」
「突然部外者の人が保健室に来たら何事かと思われるかもしれませんからね。補充用の絆創膏と承太郎さんが今使う絆創膏は私がもらってきますので。」
「分かった。誰がいるかわからないから、気をつけろ。」
「はい。」
「ああ。何かあったら、直ぐに声を上げるんだぞ。」
「分かりました。」
海未はノックをし、慎重に保健室の扉を開く。
「・・・あら、海未。どうしたの?」
「真姫!無事だったんですね!」
「ええ、お陰様でね。海未も無事?」
「ええ。承太郎さんに助けて頂いて・・・。そうだ、真姫はここに私が来る前に誰か来ましたか?」
「いいえ、誰も来ていないわ。海未が初めてよ。・・・空条さんはいるの?」
「扉の前にいます。。こうなってしまったとはいえ、承太郎さんは部外者ですし、部外者が保健室に入ると何事かと思われてしまうと思って。」
すると、真姫が顎に手を当て、考える。
そして、
「・・・まあ、入っても構わないんじゃない?後で何かしら言い訳はできるわよ。今日は先生いないし。(・・・それに、聞きたいこともあるものね。)」
「そ、そうですかね・・・。」
「海未、西木野。絆創膏はこれか?」
「なんでもう既に入っちゃってるんですか!?(のよ!?)」
「いや、なかなか絆創膏を取ってこないから私が取っても構わないかと思って・・・。」
「混乱を避けるためにやったのに意味がないじゃないですか・・・。」
承太郎は、絆創膏を1枚、そして救急箱の補充用の絆創膏の箱を1箱取り出す。そして傷口が完璧に埋まるように絆創膏を張りつけた。
「さて、承太郎さん、戻りましょうか。真姫も一緒に部室に。穂乃果とことりも待っていますし。」
「ええ・・・。でもそのまえに、・・・聞きたいことがあるわ。空条さん。」
そういい、真姫は承太郎になにか突きつける。
ヒヤリとした雰囲気。・・・刃物だ。
「・・・それが君のスタンドか?」
「そうよ。空条さんの言っていたスタンド。エリーがあんな風になった瞬間に私にも発現したわ。これも含めて、知っていることを話してちょうだい。」
「・・・いいだろう。だが、私のわかっている範囲迄になるが・・・。」
「ええ、構わないわ。」
そう答え、真姫は自分のスタンドを引っこめる。
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「単刀直入に聞くわ。・・・今回の騒動、あなたが原因かしら?」
「ちょ・・・、真姫・・・!」
「海未、失礼なのは承知済みよ。だけどこれは重要なことよ。」
まあ有り得る質問だ。
承太郎は顔色一つ変えず、首を横に振り、静かに否定する。
「・・・そんな訳はない。自己紹介の時に言った通り私はSPW財団の者で、この学校に『スタンド使いが現れた』という情報を掴んでやってきたんだ。」
「・・・ま、分かり切ってたことだし、余計な詮索だったわね。悪かったわ。・・・あともう1つ。何故こうなったかは分かるかしら?」
「・・・正直なところ、わからない。予想としては2つある。」
「聞かせてもらおうかしら。」
「・・・まず、私が1番目に考えたのは『DIO』という男が復活した影響・・・だ。」
「DIO・・・?」
承太郎はDIOの説明を手短にすませる。
そして、自分のスタープラチナが発現したのはDIOが復活したことによるものだと説明する。
「・・・なるほど。・・・だとしたら、少し『時期が遅すぎる』んじゃない?」
「その通りだ。私が発現したのが13年前。君たちのもこれによるものだとしたら、あまりにも差が大きすぎる。」
3人でこの説はないと決める。
承太郎は考えたくはなかったが、『1番有り得る説』を切り出す。
「・・・これが最も有り得るのだが、『矢』・・・、に触れてしまった場合だ。」
「・・・矢?」
真姫はその単語を聞き、首を傾げる。
「ああ。・・・その矢に貫かれたり、傷をつけられると、『その人間に適正があった場合、スタンドが発現』するんだ。」
「・・・まさか、これのことですか。」
そう言うと、海未がポケットから出したのは砕けてはいるが、紛れもなく矢の先の破片だ。
「ッ!?未だ日本に存在するというのか・・・!?いや、まあそれは関係ない。・・・海未、これどこにあった?」
「私の机の中に・・・。中から教科書を取り出そうとした時に、何かに引っかかれた感覚がして、取り出したらこれが・・・。」
一つ気がかりなのは、彼女達がスタンドを得る際に体調を崩さなかったかだ。矢で発現する場合は前例はないが、高熱を発していてもおかしくはない。
「海未、それに引っかかれたのがスタンドの発現の原因で間違いない。だが、その後体調を崩したりはしなかったか?」
「いえ、特に・・・。この矢を見つけたのが確か、ちょうど一週間前ですから、その間に体調を崩したりはしませんでしたね。」
その海未の発言に真姫も同意する。
「私も海未と同時期ぐらいだわ。おそらく、μ'sのメンバーはほぼ同時期にこの矢に触れたと見て間違いないわね。」
スタンドが発現する際に発熱したり、体に異常が出ないということは、かなりの精神力と身体力の持ち主だということか。・・・トップを本気で目指す彼女達ならばどちらも得ていてもおかしくはない・・・か。
すると、真姫が突然、海未を凝視しだした。
「ま、真姫?どうかしましたか・・・?」
「・・・海未、アンタかなり体が
「・・・そう言えばさっきから、かなりの倦怠感が体を包んでいましたが・・・。まあ、これくらいなら・・・。」
その言葉を聞き、承太郎は横に首をふる。
「いや、これくらいと言って侮るべきではない。海未のスタンドは能力的にもエネルギーをかなり使うと見ていいだろう。多用は避けるべきだな。」
「さっき言ったことは正しいと見ていいわね。ま、この程度ならば私の能力でなんとかなりそうだわ。・・・少し痛いけど、我慢して。」
「え、ええ。」
「・・・『
真姫が己のスタンド名を言う。
すると、真姫の右手に病院で手術の際に使用する道具のメスに近い形の銀色に光った刃物型のスタンドが現れた。
「・・・真姫のスタンドは人型ではないのですね。」
「みたいね。私も、空条さんのスタンドを見て、人型もあるのだとわかったくらいよ。」
「スタンドの形は色々ある。基本的には人型だが、例えば拳銃のような形だったり、影がスタンドだったという敵もいた。私が高校生の時、特殊な体験をして、様々な敵と戦った時は戦闘機型のスタンドもいたよ。」
真姫と海未はスタンドと言っても多種多様な形があると知る。
そして、真姫は自分のスタンド、
「さっきも言ったけど、少し痛いから。我慢して。」
真姫は海未の制服の上着を脱がせ、カッターシャツの袖をまくり、腕にスタンドの刃を軽く押し当て、ゆっくりと縦に動かす。
「ぐっ・・・う・・・!」
「もう少しの辛抱よ。」
その状態を維持し、十秒くらい経ったところで刃を離す。
すると、刃を離した途端、切り傷が直ぐになくなる。
「・・・あれ?さっきまで体を包んでた重い倦怠感が・・・。」
「消えたでしょ?私のスタンドは斬った相手の体調を変化させるの。体調がよければ自然治癒力も上がるし、健康状態も良くなる。身体能力も多少アップするわ。でも、逆に体調を悪くさせることも出来る。人間にとってコンディションっていうのはとても重要なものなの。」
「・・・凄いですね、この能力は。」
「敵にあった時は間合いに気をつけなければならないな。」
承太郎が戦闘面での注意点を指摘する。
「ええ。私のスタンドはこのメスだけだから、攻撃する分には私自身で動かなくちゃあならないから。体に負担にならない程度に、自分で自分の体を切る必要もあるかもしれないわね。」
海未がその言葉を聞き、ゾッとする。
「・・・いい能力かもしれませんが、あまりその方法はしないでくださいね。」
「もちろんよ。・・・どうやら持ち主の私には効果が薄いみたいだし。でもま、しないよりマシかもね。」
「自分に使うなら、使い所は考えなくてはならないな。」
「・・・そうね。・・・空条さん。どうやら私はあなたを疑いすぎていたみたい。ごめんなさい。」
真姫は承太郎に対する非礼を詫びる。
「いや、気にするな。君がそう考えていたのも、無理はない。」
「そう、ありがとう。・・・そういえば、穂乃果とことりの手当は終わったの?」
「応急処置だけですが・・・。」
「じゃあ一度部室に戻りましょ。他のみんなも気になるけど、今は今いるメンバーの無事を確保しないとね。」
そういい、真姫は先程のふたりの応急処置に使った道具よりも高度なものを、保健室から取り出し、承太郎と海未に部室に一緒に来るように言った。
「・・・しかし、西木野と戦うことにならなくてよかった。」
「え、どうしてですか?」
「戦うとなっていたら、あれで切られたらさすがに負けていたかもしれん。体調と言うのは所謂自分の身体の話だ。そこの調子を操られるとなっては・・・どうしようも出来んからな。」
海未が先程ゾッとした理由。自分で海未はそれが少しわかったかもしれない。それは、真姫が自分の身体能力を上げるために自傷するかもしれないという危険性ではなく、敵としてきた時に、『自分の体』が敵になるかもしれないということからの恐怖心だったのか。
「・・・ええ。本当にそう思います。」
「どうしたの二人とも。早く部室に戻るわよ。」
真姫は2人のそんな心配を知る由もなく行動を急かす。
彼女が操られることは自我の強い彼女ではそうそう無いだろう。
海未はそう考えた。
それは、真姫がスタンドを得たとしても無茶をしないという信用からだった。
「ええ。」
「そうだな。穂乃果とことりの様子も気になる。私達もそろそろ部室に戻るとしよう。」
4人目の仲間は西木野真姫。彼女は海未や絵里のように正気を失っている襲ってきたりするようにはならず、承太郎のように独自に調べていたようだ。
しかしこれで、やはりこのスタンド使いとなったスクールアイドルを『何者かが操っている』という可能性がかなり強まった。そしてその犯人の手がかりは今のところない・・・。くまなく調査するしか無さそうだ。
to be continued…
ー次回予告ー
1日目の調査を終え、承太郎とμ'sの4人は共に下校する。
その途中、一行は再び馴染みのある顔と遭遇する。
それは、1年生組の小泉花陽と星空凛だった。2人は、絵里のように様子がおかしく、発現したスタンドを使い、一行を襲う。
「・・・自分の心配をした方がいいですね。」
「凛のスタンドは、キミの動きを合図にして動くにゃ。」
「動きが・・・読まれている!?」
「ぐ・・・!?足が・・・、動かないっ!?」
「対抗の術を見つけないと・・・!」
「もしや・・・、何か策があるのですか・・・?」
「ああ・・・。だが、この作戦を行うのであれば・・・、『1人に対し、複数人で相手をしなければならない。』・・・つまり、チームワークが重要になってくるな。」
第5話 「
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《Chara file Vol5》
MASTER NAME:西木野 真姫
STAND NAME:愛しき挑戦者《ダーリン・チャレンジャー》
《STATUS》
破壊力D
スピードなし《独立して動かせないため》
射程距離E
持続力A
精密動作性なし《持ち主の腕によるため》
成長性B
能力:メスで切った相手の体調を変化させる
音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sの作曲担当。
気が強く、どこか素直になれない性格だが、優しい心を持つ女の子。
当初は、承太郎が一連の騒動の原因だと考えていたが、承太郎と情報共有を行い、その考えを改め、和解。
スタンドで斬った相手の体調を自由に操ることが出来、体調を良くして自然治癒力や身体能力を高めたり、体調を悪くして、相手の調子を下げたり、動きを悪くさせたりできる。極限に悪くすれば、体の内部からダメージを与えられるかも。