シナリオブレイカー  ~警視庁特殊事案未然防止局~   作:アンギュラ

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自宅とは素晴らしい!



仕事で疲労しきった身も心も、瞬く間に癒してくれる。



さぁ!素敵な土日が始ま――


次回予告 最終回

   + + +

 

 

彼等に心を休めるときなどありはしない。

 

 

 

 

「【時間課 現状世界線保全班 班長 遊佐孝君】定期報告を頼めるかね?」

 

 

 

 

 

「はい、先の魔法少女事案による時への揺らぎは観測されず、また他世界線からの現時間の干渉、並びに現世界線から他世界線への時空移動なども観測されていません」

 

 

 

 

「宜しい。下がってくれたまえ」

 

 

 

部屋から出て行く遊佐を横目に、大島は一先ずの安堵の表情を見せた。

 

 

 

 

 

彼等の裏の動きは、時間への不用意な影響を及ぼす可能性がある。

 

 

 

彼はこうして定期的に時間を監視し、時空に歪みが生じないよう見張っているのだ。

 

 

 

 

(はぁ……自衛隊が戦国時代にとか、太平洋戦争時代にとかに転送されちゃうと時間が滅茶苦茶になっちゃうしね。それより――)

 

 

 

 

 

大島のバーコード頭が鈍く光る。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

彼は苛立ちを込めた表情を浮かべながら、宇宙課の三枝に視線をむける。

 

 

 

 

 

「それでは……新たな事案について話して貰えるかね?三枝君」

 

 

 

「この前駆逐した外来宇宙生物が、地球に悪の組織から奪取したと見られるペット……即ち¨怪獣¨を日本海溝内に潜伏させていた事が判明しました」

 

 

 

「それで?君ともあろう者がたかが¨それだけ¨でここに来る筈があるまい?言ってみたまえ。他に¨第3の組織¨が動いているのだろう?」

 

 

 

 

「流石は局長……既に気付かれていましたか」

 

 

 

 

「ああ、【ヒーロー課】が動き始めた時点で察していたよ」

 

 

 

 

「お察しの通りです。巨大外来宇宙生物を駆逐せんと、【正義の秘密組織】が動いているとの情報を得ています」

 

 

 

「全く……ヒーローと言うのは始末におえんよ。口先だけの正義を振りかざし、その名の下に街を戦場にする。全く……思考や思想パターンが宗教テロ組織や狂信的なカルト集団と全く同一とは恐れ入るね」

 

 

 

「同感であります局長。いかがなさいますか?」

 

 

 

「うむ……如何せん情報が足りん。彼等の情報を捜査する間の時間稼ぎとして、異世界課の【駆逐不可能生物封印班】を日本海溝に送って怪獣の動きを止める。それから魔法少女課の人員を正義のテロ組織に潜伏させて内部情報を得るのだ」

 

 

 

 

「我々宇宙課はいかがしますか?」

 

 

 

「君達は、怪獣が封印状態にある間、過去の資料から弱点や無力化の方法を探り、早急に駆逐してくれたまえ。絶対に上陸させてはならん」

 

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

三枝は敬礼を返して去って行く。

 

 

 

この事案は、怪獣を異世界課によって封印状態にし、魔法少女課の鳥谷を含めた班長クラス十数名が転送魔法で太陽の中心に転送する事で駆逐に成功。

 

 

正義の組織【コーストマン同盟】並びに【ピッチリ戦隊キュンキュンジャー】は、魔法少女課の内部調査で男性中心の構成で有ることが判明。

 

 

ヒーロー課が、貯蔵されている組織リストの中から¨女性のみ¨で構成されている悪の組織をリストアップして合コンをセッティングし、敵味方での禁断の恋と言う彼等が大好物な刺激的状況と、彼等のカラダの相性の良さを利用して見事瓦解されることにも成功した。

 

 

 

 

「それではお疲れ様」

 

 

 

 

大島は定時で帰宅する事が出来たのである。

 

 

 

 

愛妻家でもあり一人娘を溺愛している彼は寄り道などせず、夕日にバーコード頭を鈍く輝かせながら家路を急ぐ。

 

 

 

 

「ただいま!帰ったよ!」

 

 

 

「あなた?今日は早かったのね」

 

 

 

 

ローンは残っているが、暖かみのあるマイホームの玄関を開けた大島を妻のヨシエが笑顔で向かえる。

 

 

 

 

 

「ああ……仕事が早く片付いたんだ。それに、母さんとキョウコは晩御飯を食べたら旅行だろ?土日は会えなくなるから食事だけでも一緒にと思ってね」

 

 

 

 

 

 

「ふふっ!あなたがそう言うと思って今日は肉じゃがにしたの!」

 

 

 

「肉じゃがか!楽しみだ、キョウコはどうしたんだい?」

 

 

 

「部屋にいるわ。キョウコ~!お父さん帰ってきたからご飯にしましょ~!」

 

 

 

 

「は~い!」

 

 

 

 

2階から降りてきたのは、栗色のショートボブの髪型に、白いTシャツに黄色のショートパンツ姿の快活そうな印象の少女、キョウコだった。

 

 

 

 

彼の宝である。

 

 

 

 

大島とヨシエの愛を一身に受けた彼女は、毎年彼の誕生日に靴下やネクタイをプレゼントしてくれる心優しい娘へと成長していた。

 

 

 

 

彼がこのロクでもない職業に命を懸けるのは、一重に家族の平和を維持したいが為である事は言うまでもない。

 

 

 

 

 

「ハハッ!流石は母さんだ!美味しいよ」

 

 

 

「うん!美味しい!」

 

 

 

「ふふっ!ありがと!でも本当に良かったの?商店街の福引きで当てたペア旅行券、私達が使っちゃって……」

 

 

 

 

「そうだよお父さん。折角だからお母さんと一緒に行けば良かったのに……」

 

 

 

「良いんだ。いつも忙しい私を応援して貰ってるお礼さ。それにキョウコを家に一人にするのも心配だしね」

 

 

 

「もうお父さんったら、私もう高校生だよ?」

 

 

 

「でも心配は心配だ。それに商店街の福引きで沖縄なんて珍しいんだ。いつもは東京在住なのに浅草旅行とかだしね。良い機会だから遠慮せずに行ってきなさい」

 

 

 

「うん!ありがとうお父さん!」

 

 

 

 

満面の笑みを浮かべる娘に、思わず大島の表情も綻ぶ。

 

 

 

 

笑顔の絶えない食事つを済ませ、最終飛行機に向かう二人を見送った大島は、少し寂しさを覚えつつも、バーコードカツラを外してベッドに潜り、一時の眠りを貪った。

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

同刻――

 

 

特殊事案未然防止局

 

 

【生活保全課】

 

 

 

日常生活に潜む、物語の兆候を見逃さぬ様監視するこの課には、局の中で最も人員が多い部署であり、多数のモニターが設置された部屋では、24時間体制で監視が行われていた。

 

 

 

 

「竹山特捜!来てください!モニターに反応あり!」

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

 

この間の事案で、制服警官を演じていた竹山特級捜査員は、部下の監視員の声に表情を厳しくした。

 

 

 

「これは……思念モニターに反応か?なんだと思う?」

 

 

 

「解りません。ただ徐々に収束し、反応が濃くなっています!」

 

 

 

「いかんな……このままある一定値を超えると具現化するぞ!どうにか出来ないのか?」

 

 

 

「人の思念が起こしている事象ですからなんとも……しかし魔法少女課に依頼して発生している地点の人間に、特定の場所を印象づける夢を見させる事で、事象を誘導する事は可能です!問題は何処へ誘導するかですが……」

 

 

 

「異能があつまる局は論外、局員の自宅も同じだ。しかし例外ならある」

 

 

 

 

「局長の自宅ですか……」

 

 

 

「ああ、異能が無い局長の自宅なら不測の事態は起こり得ない。尤も、局長自身には悲劇かもしれんが……」

 

 

 

「宜しいのですか?」

 

 

 

「私も叱責は怖いが、事態が露呈した場合は更に怖い……責任は私が取るから頼む」

 

 

 

「解りました。これより魔法少女課長 M・M(マダム・ミネルヴァ)に依頼します」

 

 

 

 

 

そう、彼等に気を休める時など存在しない。

 

 

 

物語は往々にして、突如何の脈絡もなく始まってしまうのだから――

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

朝日が窓から差し込むのを感じるも、妻と娘が居ない状況で早起きしても無意味だと判断した大島は、暖かく柔らかい感触を満喫してもう一度布団に顔を埋め――

 

 

 

ムニュ……

 

 

 

 

や、柔らかい……だと?

 

 

 

確かに暖かく柔らかいのは確かだ。

 

 

 

だが、彼が感じたのはそう言う事ではない。

 

 

 

 

(これは……人肌だ!)

 

 

 

何やら危険を察知した大島が目を開けて飛び起きると――

 

 

 

「あ、あん❤ 」

 

 

 

 

灰色の髪をした巨乳美少女が水着で彼に股がっていた。

 

 

 

だがそれだけではない。

 

 

 

 

「んっ……あっ❤う、動かないでぇ❤」

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

彼の下にも、同じく白髪の巨乳水着美少女がいた。

 

 

 

つまり、大島はサンドイッチの具の如く、美少女に挟み込まれた状態で眠っていた訳だ。

 

 

 

普通、主人公と言われる人物達なら、間違いなく赤面して狼狽する事だろう。

 

 

だが大島は主人公ではない。

 

 

いや―― 【在ってはならない】

 

 

 

 

故に、彼は常軌を逸したこの状況を物語性事案であると確信し、直ぐ様状況の把握を開始する。

 

 

 

「先ずは私に股がっている君、名前を聞かせてくれないかね?」

 

 

 

「フトンです」

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

「布団です」

 

 

 

 

「………では私の下いる君は?」

 

 

 

 

「ベッドです」

 

 

 

 

「成る程……」

 

 

 

 

名だたる主人公達のようにツッコミを入れる事など無い大島は、全ての状況を把握した。

 

 

 

それを裏付ける様に、部屋からは家具が消え去り、体の大小はあれ美少女達に埋め尽くされている。

 

 

 

 

 

(これは¨擬人化¨か……すぐ局と連絡を取らなければ、その前に私のカツラとスマホは――)

 

 

 

無くなっていた。

 

 

 

間違いなくこの中にいる誰かが彼のカツラとスマホなのだろう。

 

 

 

「済まないが、私のスマホは誰かね?」

 

 

 

 

「は、はい!わたし……です」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

昔は無骨だった携帯端末も今やとてもシャープになった。

 

 

それ故か、ショートヘアであり引き締まったスポーティーな格好の彼女の胸は薄い。

 

 

 

「局に連絡を取りたいんだ。どうやって君を操作するんだね?」

 

 

 

「ココをスクロールして決定ボタンを押してください」

 

 

 

 

「君は私に、露出したお腹をスクロールしろと?それにソコは決定ボタンではなくチ……いや、遺憾だよ」

 

 

 

 

「でもそうしないと掛けられません!私はスマホです、お願い……掛けて!」

 

 

 

「破廉恥極まりないな。そもそもどうやって話すんだね?受話器など無いじゃないか」

 

 

 

「話すときは私の耳許で、向こうの会話は私があなたの耳許で囁きます」

 

 

 

「聞いた私がバカだった。それよりも私のカツラは――」

 

 

 

「………」

 

 

 

「まぁ君だろうね……あえて触れなかっ――いや、触れたくなかったんだ」

 

 

 

彼の目の前にはバーコードのカツラを被り、ベージュ色腹巻きなど変な服を着た¨変な美少女¨が立っていた。

 

 

 

彼女は目を寄り目にして――

 

 

 

「ダッフンd――」

 

 

 

「君は今、とてつもなく危険な領域の言葉を発しようとしている。私がそれを許すと思うのかね?」

 

 

 

「……」

 

 

 

ふう……

 

 

 

大島は溜め息を着く。

 

 

 

スマホの事例から見て、家庭用電話も同様とみて間違いはない。

 

 

 

だとすれば最早パジャマ姿のまま局へと向かうしかない。

 

 

 

しかし――

 

 

 

「なんだね君は。邪魔だからどきたまえ」

 

 

 

「いえ!あ、あのっ!私ドアですからノブを捻って貰わないと開きません!」

 

 

 

グラマラスな美少女が部屋の出入口に立ちはだかる。

 

 

 

「因みにだが、君の一体どこがドアノブなんだね?」

 

 

 

「こ、ここです〃〃」

 

 

 

「だからソコはチ……もういい。局がこの事態に気付かぬ訳がないからね。暫く待たせてもらうとするよ」

 

 

 

 

家具や文房具すらも擬人と化した360°美少女密室に監禁された大島は、久し振りに途方に暮れる事となる。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

現場に到着した竹山は唖然とした。

 

 

 

「はぅ~」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

彼の目の前には大島の自宅ではなく巨大なメイド美少女が鎮座していたのだ。

 

 

しかも何故か上半身は、服装に合わせた黒地に白いフリルの付いたメイドブラを露にして――

 

 

 

 

「竹山特捜、この中に局長がいらっしゃるのでしょうか?」

 

 

 

魔法のステッキを持って周囲に結界を張っている鳥谷も動揺していた。

 

 

 

 

「とにかく局長の無事を確認しなければ始まらないか……」

 

 

 

   + + +

 

 

 

「トゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥルルン!」

 

 

 

「呼び出し音も君の声なのか……素晴らしいクオリティだ。身体を振るわせるのはバイブ機能だろうが、さて……どうやって電話に出るか」

 

 

 

 

「ボタンはここ――」

 

 

 

「いやそれはチ……いや、ここは止むおえない。すまんキョウコ、ヨシエ!」

 

 

 

ピンっ!

 

 

 

 

「あぁん❤」

 

 

 

「極めて遺憾だ……」

 

 

 

鼻から頭の天辺に抜けるような甲高い声と共に、スマホの身体が弓なりにのけ反り、大島はそんな彼女に苛立ちの表情を向ける。

 

 

 

 

「息を荒げてないで、早く繋いでくれたまえ」

 

 

 

「は、はい……」

 

 

 

彼女は頬を上気させながら大島に近付き、身体を密着させて腕を彼の首へと回す。

 

 

 

(まぁ確かに電話する時は密着するが……これは無いだろう)

 

 

 

 

しかし背に腹は変えられない。

 

 

 

 

「私だ」

 

 

 

「んっ❤ああっ❤こちら竹山です、ご無事ですか局長!」

 

 

 

「ああ、どうやらこれは擬人化現象のようだ。とにかく【擬人課】と【異世界課】を呼んで対処してくれ」

 

 

 

「んっ❤ひぐっ❤解りました!至急救助に向かいます!ご自宅への突入許可を!」

 

 

 

 

「許可する。玄関の鍵は開いてるから、とにかく火急的速やかに頼むよ」

 

 

 

「あっ❤アへっ❤了解致しました!」

 

 

 

(破廉恥な……)

 

 

 

会話の度に彼女の柔らかな唇と吐息が耳をくすぐり、彼がスマホの耳許で話すと彼女が喘ぐ。

 

端から見ればイチャイチャしてるだけなのだが、愛妻家の大島は心底不快だった。

 

 

更に――

 

 

 

「竹山君!早く切りたまえ!」

 

 

 

「あぐぅ❤局長より先に切るなど、失礼ですよ!」

 

 

 

確かにそうだけど、今は違うだろう!

 

 

 

 

大島は呆れて言葉もでない。

 

 

 

彼は止むなくスマホのボタンを押した。

 

 

 

 

「いひっ❤」

 

 

 

 

大島の首に回る腕に力をが入り、スマホは瞳が上ずる程の歓喜の表情でのけ反る。

 

 

 

 

彼は、あられもない姿になってバイブモードへになってしまったスマホをベッドへと運び布団を掛けてあげた。

 

 

 

 

 

「あうっ!?ら、らめぇ~❤」

 

 

 

「こ、擦れちゃうよぅ~❤」

 

 

 

 

3人の巨乳水着美少女が折り重なる全く意味不明な状況だが、つまりはベッドに乗るバイブモードのスマホに布団が掛かった状態なのだ。

 

 

 

現状では助けを待つより他はない大島は、諦めた様に彼女達から視線を外し、バーコード頭の変な美少女と目を合わせた。

 

 

 

 

「ダッフンd――」

 

 

 

 

 

 

「早くしてくれ竹山君……」

 

 

 

 

大島は、この自宅を購入して初めて逃げ出したいと思うのだった

 

 

 




まったらどれだけ良いか……


社畜社会に土日など無いのだ
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