僕のアカデミア   作:kizuna

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0話 中編

顔を眩しく照らす光に、優しく揺さぶられるように目を覚ますとそこにあったのは見知らぬ天井だった。

 

なんて古典的な目の覚ましかたをしながら、周りの様子から病院にいることを把握する。

起きたばかりであまり回らない頭を回して、ベッドの上におかれた手紙をみながら、自分の状況を思い出そうとしてると、病室のドアがノックされ、三人が入室した。

 

「十夜君起きたの?体に違和感ない?なんでここにいるかわかる?」

 

明確に病院関係者だとわかる格好をした看護師がこちらを気遣うように、されど矢継ぎ早に質問をしてくる。

僕の体を壊れ物を扱うかのようにそっと触りながら。

 

「うん、体はもう大丈夫みたいだね。ちょっと青あざとかあるけどすぐに治るから」

「矢野さん、もう大丈夫ですかね」

「えぇ、ただし十夜君に何か異常が起こったらすぐに止めてもらいますからね」

「それは大丈夫です」

 

二人のスーツを着た男のうち年配の方が看護師に伺いをたてると僕に目を向け、

 

「十夜君。私達は刑事だ。まだ治りきらないうちにすまないがいくつか質問をさせて欲しい。いいかな?」

「うん」

「ありがとう。では、早速いくつか質問をしていこう」

 

それから僕は事件の詳細についてきかれ、素直に質問にそって答えていく。

 

「十夜君、ごめんね。疲れただろう。安心してくれ、これが最後の質問だ。君は、君にとっては助けられたと言えるのかな。きみを助けた相手を覚えているか?」

 

さりげなく聞いているように振る舞っていたが、それが本命の質問なのだとかんじ、僕は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで質問は終わりだ。手間をとらせたね。では矢野さん、私達はこれで。行くぞ只野」

 

そう言って二人は足早に病室から去っていった。

 

「さて十夜君、私は君の親戚が君を迎えに来てるから呼びにいってくるね」

 

病室から出ていった看護師を尻目に僕は手紙を眺めていた。

数分もしないで病室のドアがノックされるとあの場所にいたあの男がそこにいた。

 

「では、ご帰宅の準備が整いましたら受付に声をかけていってください。」

 

看護師が出ていくのを見計らいながら男は僕を褒めた。

 

「よくやった十夜。君は目を覚ましたばかりなのに、手紙の書いてある通りに僕のことをごまかした。なんとかできないこともないが、君がごまかさなければめんどくさいことになっていたのは確かだよ」

「一体どうやって手紙をおいたの?人が病室の外にいたはずなのに」

「流石だね。もう、空間を把握していたのか。だから、僕の手紙の意図を理解できた。たった6歳の思考能力とは、思えないほどだ。素の頭もいい、正に個性を扱うのにうってつけだ。」

 

思わず退院の準備をする手が止まる。あまりのべた褒め照れくさくなり、誤魔化すように質問を重ねる。

 

「僕はこれからあなたと生活するの?」

「そうだ、手続きは既に済ませておいた。あと、僕のことは先生と呼んでくれ」

「先生……?」

「何事もけじめというのは大事だからね。さて、そろそろここからでないとね」

 

止まっていた手をまた動かし始めながら準備をおえると、受付に声をかけにいくと、先程の看護師に。

 

「すみません、表は出られないのでうらからおねがいでしますか?」

「あぁもちろん。迎えも裏に止めてもらっていた」

「そうですか。すみません、なにせ報道陣が山の様に押しかけて普通の患者さんが来れなくなる程ですから」

「どういこと?」

 

二人の言っている意味がわからず聞いてみると、

 

「そうか、君は頭はいいが、世論の動き方、人の汚さというのを知らないのか。いいかい、十夜。君の両親は有名ヒーローだった。そして今回の事件は悲惨で衝撃的な物だつた。だから、世間は賑わい。マスコミも湧いてるのだろうね。どこからか彼らの息子である君がここの病院に入院したと知ったのだろう。それで押し寄せてるのさ。少し考えればわかるはずなのに人の感情を考えもしない。いや、君が悲しんでいることがわかって、それが使えると判断して、ここに集まった」

 

先生は僕の頭を撫でながら優しく語った。

 

「怒らないのかい?」

「怒らないよ、怒っても意味なんてないし」

 

 

僕の中に両親の死をいたずらに騒ぎ立てる事への怒りはないわけじゃない。

でも、先生の言葉には、僕の両親が徒に騒ぎ立てられていることへの怒りを感じた。

身近な人が両親のために怒ってくれていたことは、僕にとって救いのように感じた。

だから、落ち着いていられる。 

 

 

「そうか、十夜は優しいね」

 

先生にはお見通しだったようだ。

見透かされたことが妙に気恥ずかしく思わず顔を背ける。

 

 

「じゃあ行こうか」

 

そう言いながら僕たちは裏口へと周り、そこに付けてあった車へと乗り込んだ。

そのまま、集うマスコミを横目に病院から出ていった。

しばらくして、少しためらいながら先生は僕を見つめると

 

「十夜、家についたら君にあることを教えよう。いずれわかることでもあるし、君に直結することだ。君は知るだろう、人の醜さには限りというものがないのだということを。覚悟しておきなさい」

 

そう言い、先生はそれっきり車内では一言も喋らずにただずっと空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

家の中、広い一室のテレビの前、僕はそこで人の醜さ(おぞましさ)に出会う。 

 


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