とある極東の島国の大きな屋敷で一つ、新たな命が今夜生まれようとしていた。
ここは島国の中で有力な貴族の中で最も大きな力を持っているわけではないがなくてはならない力を持った一家がすんでいた。
その名を“暁”、暁家は魔術が一般的な中、未だに呪術を代々途切らさずに受け継いできた由緒ある家である。
島国は呪術が昔は一般的だったが魔術の威力や発動速度、応用のしやすさ等から呪術は次第に忘れられていった。今では完璧に扱えるのは唯一といって良いほどだ。
そんな由緒ある家柄でも暁家は皆、それをおごることなどせず礼儀正しく、親切で出来た人間だと周りから言われていた。
その家には現在、当主である優秀な父と母、それから一人娘の姫が蝶よ花よと育てられている3人が仲睦まじく暮らしていた。
そして今夜、新たな命が生まれようとしていた。
母が苦しそうに呻きながら数時間、ようやく子が産まれた。父は誰も命を落とさずにすんで良かったと安堵し、母は自分が命がけで生んだ子を抱こうとしていた。
しかし、母は我が子を抱いて顔を見た瞬間に
「ヒイッ!」
と、悲鳴をあげた。
なんとか理性が持ったのか我が子を投げ飛ばさなかったものの、我が子に対して思うはずのない感情を抱いていた。
そう、我が子の額の中央に妙な刺青のようなもの、それから左右に小さな尖ったまるで鬼の角のようなものがあったのだ。そんな人間にはとても見えない子が自分の腹から生まれたと考えた瞬間母はそんな現実が受け入れられないのか泣きわめき、疲れたように寝てしまった。
父はそんな子が生まれてしまっては我が家の看板に泥を塗ってしまうことになるのではと考え、産まれたばかりの我が子を殺そうとした。
けれども父は我が子を殺すことはなかった。愛する愛娘が産まれたばかりのタオルに包まれた我が子を大事そうに抱き締めるように守るように抱いていたからだ。
父は娘に甘かった。
娘の一言で真逆の意見に変えるくらいには、娘の一言で犯罪をするほどには狂ったように愛していた。
それから正気を取り戻した母と父は産まれたばかりの子のことについて話し合った。結局、男で異能力も強化系で娘の護衛にちょうど良いと考えた。
なぜか、それは姫は魔術に対しては天才的に向いていた、が体はとても弱く、病弱だった。
だから元から新しく生まれてくる子は姫の壁にしようとしていたのだ。だから結局は最初からそうなる予定だったのだ。
生まれてまもない子には酷すぎる運命だった。
圧倒的な差別の上に生まれた子、彼には幸せになる道など最初から用意されていなかったのだ。