とある魔術師の悲喜劇   作:フュージャ

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2話 優しさの裏には

それから数年が経った。

 

彼は成長した。

 

言葉を理解し、言葉を話し、自分の意思を持つようになってしまった。

 

今日もまだ小さい子につけるには酷すぎる訓練を受けていた。

 

母が魔術と勉学を

 

父が体術と呪術を

 

24時間、寝るときと食べるときを除いてすべてが訓練に当てられた。

 

普通なら子どもはそんな環境に耐えられずに泣きわめくだろう。まだ小さいのだから出来なくて当たり前の子とも多くある。だから仕方ないことだろう。

 

けれども彼は泣かなかった、文句の一つも言わなかった。

 

出来なくて当たり前のことでもこなし、親の無意味な暴言にも耐えた。

 

何故なら、彼は賢かったから。

彼はこの残酷な訓練に耐えれるほど賢かったから。

 

この状況がどうにもならないと理解していた。

本で読んで自分より辛い環境にいる子を知っているから

 

彼は自分はまだましだと考えた。外に出ても独りでは生きていけないと分かっていたから。

 

 

 

しばらくして母が休憩だといって出ていった。

 

母は彼を嫌っていた。

異能はこの世界では珍しく、唯一と異って良いほど受け入れられていた。しかし、外見に影響のあるものは皆と違うからか受け入れられず、差別した。酷いときは悪魔に憑かれている、悪霊が、悪鬼がと。

 

そしてそれは名家になるほど顕著であった。家の看板に関わるからだ。それは心優しいと評判の暁家も例外ではく、他の名家の中でも群を抜くほどに扱いが酷かった。

 

それでも周りから言われないのは両親がうまく隠し通していたからだろう。

 

 

 

コンコンッ

 

薄暗く、物がほとんどない生活感のない部屋にノックが響いた。

 

彼はそれが誰か知っていたのでなにも言わずに扉を開けた。この家で自分に用のある人の中でノックをするのは一人だけだったからだ。

 

「大丈夫?」

 

そう言って優しく彼の怪我に手当てをしていた。

そう、親が酷く当たる原因でもある姫である。

この家で唯一話してくれる、遊んでくれる、常識を教えてくれる唯一の味方であった。

 

「ねえさまがいるからへいき。ありがと」

 

まだ舌ったらずでもしっかりお礼を言えるのは姉がいたからだろう。

 

「ごめんね。私がなにも出来なくて」

 

姫はそう言いながら悲しそうな顔をして彼の頭を撫でた。

 

「ねえさまはわるくない。ぼくがつよくなればいい」

 

 

そういうと姫は嬉しそうに笑ってありがとうと言った。

 

姫は病弱だ。聡明で心優しく美しくても外に出ることは叶わない。

 

だから彼は姉を外に連れ出してあげようと考えた。きっと恩返しも含まれていたのだろう。

 

たとえ原因が姉でも、彼は自分の異能のせいでよくならないことを知っていた。姉が唯一の心の支えであったのはかわりないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫は部屋を出ると先程までの優しい顔が嘘のように歪んだ笑みになった。

 

しかし、母が後ろから声をかけると共に後ろを向いたときには先程の歪んだ笑みはなんだったのかと思うほど優しい慈しみの笑みに変わった。

 

 

 

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