彼の生活は時間が経つに連れて扱いはかいぜんされるどころかどんどん酷くなる一方だった。
島の人々は彼を無視し、石を投げ、あらぬことを口々に言った。姫を褒め称え、親は、人々は彼を認めることはおろか、名すら呼ぶことは一度としてなかった。
それは何故か。簡単である。その島に明日は訪れなかったのだ。
ある日突然のことである。
常にどこかで戦争が起きている国であるがその中で一番平和だった島すらも巻き込んだ戦争が起きたのだ。どんなに優れた魔術師がいたとしても実践を知らない者が実力を発揮できるはずもなく殺された。
それは島一番の使い手と言われた彼らの両親も例外なく死んだ。
周りからはたくさんの悲鳴、爆発音、何かの壊れる音、様々な音が集まってそれは不協和音を奏でていた。
自然に溢れた美しい島が灰と屍と血と炎だけの世界になったときに彼は初めて開放されたのだ。
しかし、彼にとってそれは許されるものでは無かった。彼が唯一心を許した姉の命すら無慈悲にも奪おうとしたのだ。
姫は体が弱い。だから戦禍になど耐えられなかったのだ。
彼は姫に精一杯の回復魔術をかけた。彼が気絶するなで続けられた。
それで助かったのは幸運なのか不運なのか。
きっと不運だろう。
だって彼らを拾ったのは戦争孤児を売りさばく奴隷商人だったのだから。
彼らは彼が魔術をかけ続けたおかげでとても綺麗でその美しさから高く売れると思ったのだろう。
それは間違いではなく、彼らはアルザーノ帝国の一番の闇オークションで最も高く売れたのだった。
そう、天の智慧研究会に売られたのだった。
天の智慧研究会は知っていたのだろう。彼らが異能者だということを
そこで待ち受けていたのは拷問ににた実験の数々だった。
そんなことをしてなんの意味があるのだろうか、彼は思考だけを回転させて機会をうかがうことにした。このままでは遅かれ早かれ彼と姫は死ぬことになるのを知っていたのだから。
だから彼は、彼らは従順なふりをして今を生き延びることを選んだのだった。
別にここでの行いに対しては何も感じていなかったのだ。彼らは、否、彼は知らない人がいくら死のうと何も感じないのだ。それを異常だと教えるべき人はどこにもいなかったのだ。唯一異常を感じたのは姉である姫のみで、姫すらもそんな弟に恐怖心を抱いてしまったのだった。
彼らはこれからどうなるのだろうか。
進む先は破滅か救済か。
彼を救う存在が現れればあるいは。
それは神のみぞ知る。