年下好きな早苗さんに義弟ができる話   作:かくてる

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まぁ、もうすぐでハーメルンさんを初めて一周年経つので、記念にと言うことで。

打ち切りになったらすいません……


1話 死にかけの少年

 一体どれぐらいの時間(とき)が経ったのだろう。

 ああ、もう体が動かないや、人間はどうして、妖怪に敵わないのだろう。

 どうして、人間はこんなにも弱いのだろう。

 自分の無力さを恨む。どうしても、僕はお姉ちゃんを救いたかった。

 あのまま、妖怪に食べられているお姉ちゃんを見ることは出来なかった。

 

 お母さんとお父さんもお姉ちゃんもみんな、妖怪に食べられていった。

 僕の前に落ちた形見は、家族の「内臓」だけ。あまりにも凄惨で、残酷な。

 

 かくいう僕も片目をえぐり取られた。

 最初は痛かったけど、片目が無いのが普通になって、これが当然なんだって錯覚もした。

 

 でも、それももう限界だ。

 

「ここが僕の死に場所……?」

 

 満月が真上に登るのが、木々の間から見える。

 ああ、自分も妖怪だったら、ああいう奴を殺すことも、家族を悪い妖怪から助けることだって出来たのに…。

 

「はぁ……つまんない人生だったなぁ」

 

 いや、そんなことは無い。お姉ちゃんにもお母さんにもお父さんにも、たくさん愛してくれた。でも、それは今日の晩で崩れ落ちたんだ。

 何も経験していない僕はもう幕切れなんだ。

 

「はは………」

 

 乾いた笑みと共に僕の意識はプツンと切れた。

 

 

 

 

 

 

 

「す、諏訪子様……これは…」

「……………ああ、こんな小さい子なのに、可哀想だ…」

 

 私、東風谷早苗は洩矢諏訪子様と共に朝の散歩へと出かけていた。

 しかし、守矢神社の鳥居から数メートルの木にもたれかかっていた少年を見て、散歩どころでは無くなった。

 

 内蔵がかき乱され、左目がポッカリと空いていた。恐らく、妖怪に襲われたのだろう。

 

「…守矢神社の隣で弔ってやろう……この調子だと、家族も殺されているんだろうね…」

「はい…」

 

 私は顔を歪ます諏訪子様の隣で静かに涙を流した。

 しかし、その悲しみは驚きへと変貌する。

 

「……ぁ…」

「っ!?」

「早苗、まだ生きてる!」

「ど、どどうしますっ!?」

 

 慌てる私は上手いこと呂律が回らないほどになっていた。

 それを諏訪子様も同じような顔をして宥めた。

 

「落ち着いて早苗っ!とりあえず、守矢神社まで運ぶよっ!」

「は、はいっ!」

 

 私は倒れている少年の肩を抱き、おんぶをする。

 顔が近くにあったので、息をしているか、聞き取れることが出来た。

 浅いけど、しっかりと息はしているし、心臓も動いている。

 だが、このままでは死んでしまうだろう。

 

 

 守矢神社に着いた私達はひとまず少年を布団に寝かせた。

 

「早苗は神奈子を呼んできて!」

「は、はい!」

「ちょっと、荒療治だけど、我慢してねッ、永琳呼んでたら死んじゃうからっ!」

 

 諏訪子様は唐突に少年のぽっかり空いた腹に左手を入れた。

 グシャァッという嫌な音が鳴った。私は少し吐き気を催したが、我慢して神奈子様を呼んだ。

 

「か、神奈子様っ!」

「ど、どうした?」

「今、瀕死の男の子を諏訪子様が助けています!神奈子様もお願いします!」

 

 縁側にいた神奈子様を呼び、こちらへ手招きする。小走りでやって来た神奈子様は少年の体を見て、少し顔を顰めた。

 

「これはっ……諏訪子、私も手を貸す」

「ありがとっ、…………っ!あった!」

 

 諏訪子様が探していたのは、何かの刃物だった。

 白くて尖った歯のようなもの。

 

「神奈子、後はお願い!」

「オーケー!」

 

 服も血まみれになった諏訪子様は一度下がった。次は神奈子様が詠唱を唱えた。

「人体復元」の呪文だった。これはかなりの霊力を使う大技で、子供ひとりでも半分は持っていかれるほど。

 しかし、それはいくら大怪我でも対応できる。

 首が飛んでも、その呪文で首と首が引っ付き、何事も無かったかのようにできる。その場合は8割ほどの霊力が消費される。

 

「おっけ、私もやる!」

 

 後ろにいた諏訪子様も同じ「人体復元」を唱え、みるみるうちに少年の体は治っていった。

 そして、数分後、お腹のあたりは何事も無かったかのように……はならなかったが、傷は全てふさがり、内蔵も元通りにはなったが、大きな塞ぎ口が出来た。

 

「はぁ……はぁ……良かった…」

「お疲れ様です。2人とも」

 

 私はタオルを渡し、座り込む2人を称えるとともに質問をした。

 

「どうして、刃物があるって分かったんですか?」

「腸に切られたような切り傷があった。それに、何だか、出っ張ってるところがあってね。内蔵ではない物が入り込んでるって確証はあったから、それを取り出したまでだよ。」

「へぇ……」

 

 さすが神様だ。と思った私は大きく頷いた。その後、布団で寝ている少年を見て思った。

 

「可愛い顔をしていますねぇ…」

「まだ小さいしね」

「ほっぺとかプニプニ……」

 

 ツンツンとつつく。静かに寝息を立てる少年はびくとも動かなかった。

 左目だけ、何だか窪みがあるのは、眼球までは戻らなかったということだろう。

 

「こらこら、一応けが人なんだからな、今日、永琳の所に持っていくよ」

「あ、じゃあ私が連れていきますね」

「……」

 

 私の提案に血だらけの2人は目を細め、私を睨みつけた。私は小首をかしげる。

 

「?どうしました?」

「どうして、そういう小さい男の子とは普通に関われて、大人の男には話そうともしないのかね……」

「そうだな、早苗、いつもそうだが距離を置きすぎだ、男性と」

 

 私は二人の話を「はぁ……」と言いながら聞くしかなかった。

 荒療治とはいえ、手術後で血のついた服を着たままの人に説教を食らうとは、なかなかシュールな光景だった。

 

「お前も年頃の女の子だ。そろそろ恋人のひとりやふたり」

「だって私、同い年から年上は嫌いですもん」

「……え?」

 

 私の答えに神様2人は口を揃えて素っ頓狂な声を上げる。

 

「い、いやいや、お前そんなこと一言もっ…」

「ええ、言ってません。というより、同い年から年上が嫌いなんじゃなくて、年下が好きってことですね。5、6歳くらい下の子が」

「……」

 

 私はスラスラと自分の好きなタイプを話していく。

 いわゆる「ショタコン」というヤツなのだろう。

 仕方ないだろう、同い年以上の男はみんなおじさんくさいし、何だか好きになれない。

 でも、無邪気で子供らしい子を見ると、何だかとても守ってあげたくなる。そんな子が好きだ。

 

「……まぁ、好きにしろ。ただ、お前、手は出すなよ?」

「だ、出しませんよっ……」

「どうだか、お互いが了承の上ならいいが、無理やりやらせると痛い目みるからな」

「何で手を出す前提なんですかッ」

 

 私はチラチラと少年を見ながら答える。それに説得力が無かったのだろう。

 

「まぁ、好きにしたまえ、今日は私と諏訪子でご飯作るよ。早苗はその子を見ててあげて」

「あ、はい……」

 

 2人は着替えとお風呂、食事の準備のために縁側を歩いていった。

 今日の天気はとても快晴で、気持ちのいいくらいの気温。私は少年の顔を見て微笑んだ。

 

「助かって良かった……」

 

 何故か「この子が死んじゃったらどうしよう」という考えがグルグルと回っていたが、あの2人なら、何とかなったみたいだ。

 

「それにしても……綺麗な髪……」

 

 少しパサついているが、銀色の髪は太陽の光で反射して、鏡のようになっている。

 私は少年に近寄り、頭を撫でた。滑らかな手触りでずっと撫でていたかった。

 しかし、その瞬間、少年の右目が開いた。

 

「あ……?」

「起きました?」

 

 少年は数回パチパチと瞬きをした後、大きく目を見開いて驚きの表情を見せた。

 

「あ、あああああなたは!?」

「落ち着いてくださいっ!別に襲ったりましません」

「妖怪っ!?」

「人間です!」

 

 すると少年は涙を流しながら頭を抱え、叫んだ。

 

「嘘だっ!そうやって騙して、僕のことを襲いに来たんだ!」

「………」

 

 叫ぶ少年をじっと見つめた後、私は少年の頭を両手で掴み、自分の胸に置き、優しく抱きしめた。

 

「大丈夫です。私は人間、それに、もうあなたを傷つけはしない」

「……う、うあぁぁ……」

 

 少年の方も大粒の涙を流した少年は私の背中に手を回して、強く抱き締め返してくれた。

 そんな少年を私は泣き止むまで抱き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい、見ず知らずの人にこんな…」

 

 泣き止んだ少年は我に返ったあと顔をトマトのように赤くし、必死に私に謝罪をした。

 

「いいんです。あなたが血だらけで倒れているのを見て、心配だったので……」

「…はい」

 

 私は彼の傷を抉ってはいけないと思いながらも、質問をした。

 

「妖怪に…襲われたんですね…」

「はい、家族みんな……僕の目の前で…」

 

 顔を歪める少年。それを見た私も心が締め付けられる感覚になった。

 

「あなた……名前はなんて言うんですか?」

「…有原(ありはら)(れい)です……」

「そう……じゃあ梁くんって呼ぶね?」

 

 私は手を差し出し、自分の名を名乗る。

 

「私は東風谷早苗。よろしくお願いします。梁くん」

「あ、はい…よろしくお願いします……」

 

 ニコッと最大限の笑顔で笑う。

 彼をまた悲しませるのはしてはいけない。

 

「梁くんは、住むところないよね?」

「……まぁ、一人暮らしは出来ないです……」

「なら、ここに住むといいよっ」

「そ、そんな急に……それに、早苗さん、家族は……」

「あ、大丈夫ですよ。神様なんで」

 

 私の何気ない一言に梁くんは目を見開いて驚く。

 

「か、神様ぁ!?」

「あ、ちょうど来たみたいですね」

 

 縁側から2人がやって来た。

 どうやら、朝食の準備まで済ませているみたいだ。卵焼きの匂いが漂っていた。

 

「お、目が覚めたみたいだね」

「梁くん。このお二方があなたを治してくれたんですよ」

「え、あ、ありがとうございます」

「うん、あ、私は洩矢諏訪子、土着神で、こっちが八坂神奈子、天津神」

「あ、あ、有原 梁です。よろしくお願いします」

 

 二人と、握手しようとした梁くんの顔はまだ信じられないという顔だった。

 しかし、握手した後は何かを感じ取ったのか、二人は神様だと分かったみたいだ。

 

「本当に神様なんですね……」

「お、話が早くて助かるよ。さ、朝食にしよう、梁の分まで作ってあるよ」

「あ、神奈子様、諏訪子様、梁くんをここに住まわしていいですか?」

「いいよ」

 

 あっけなかった。

 梁くんは驚きをやはり隠せないようで、口を開けていた。

 私達3人は当然と言わんばかりに首をかしげた。

 流石に家族を失い、住むところの無い少年を放っておく訳にはいかない。2人はそう考えているのだろう。

 

「さ、飯だ飯」

「い、いただきます……」

 

 茶碗を持ち、私は箸で米を口に運ぶ。いつもの味を噛み締めながら食べていく。

 

「それより、悪いけど左目は再生出来なかった。今日、医者に連れていって眼帯でも貰おう。人里に怖がられてしまうからな」

「は、はい……」

 

 恐らく、まだ現実を受け止めきれていないんだろう。

 下を向きながらチマチマ食べていく梁くんはとても愛らしく見えた。

 

「うふふっ、可愛い……」

 

 私がそう小さく呟くと梁くんはドキッと跳ね上がり、顔を赤くしていった。

 まだまだウブだなぁと梁くんを見て思った。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、梁くん。ここは守矢神社って所なんだけど、君には何かしらの役を担ってもらます」

「は、はぁ……」

「ちなみに私は巫女。でも、炊事も私が担当しているんです」

 

 とりあえず着替えた梁くんと共に永遠亭へと向かう道の途中、そういう話題を切り出した。

 

「なら、僕は家事を頑張ってみます。料理は難しいと思いますけど、洗濯掃除は頑張ればできる気がします」

「……ほほう、背伸びをする梁くんも可愛いです…」

「か、かわいいって言わないでください……」

 

 恥ずかしくなったのか、足早に歩いていく梁くん。

 私はニッコリと笑ってその後を走ってついていく。どうやら、梁くん、トラウマにはなってしまったけど、乗り越えられたみたいだ。

 ほっと一息付き、梁くんの手を握る。

 

「ちょっ……」

「梁くんはまだ子供なんですから、お姉さんがしっかり付いていないと」

「はぁ、では、よろしくお願いします…お姉ちゃん…」

「えっ」

「あっ」

 

 梁くんが唐突に私のことを「お姉ちゃん」と呼んだ。

 心臓が跳ね上がったのは、私の方かもしれない。ドキドキと高鳴る胸を抑えながら、梁くんを見る。

 どうやら、無意識で出てしまったみたいで、梁くんも顔を赤くしていた。

 

「ご、ごめんなさい、早苗さんがお姉ちゃんに雰囲気が似ているので……」

「それいい………」

「え?」

「梁くんっ、私のこと「お姉ちゃん」って呼んで!」

「え、でも……」

「いいのっ!」

 

 私は顔をずいっと近づけて、梁くんを説得する。

 顔を逸らした梁くんは諦めたようにか細い声を出した。

 

「わ、分かりました……ね、姉さん……これで許してください」

「〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 今までにない嬉しさがこみ上げてきた。

 新しい家族が増えるとともに、義弟が出来たのだ。

 それもとびきりの可愛さで、愛おしい。

 

「じゃあ行こっか、梁くん!」

「………はい!」

 

 私が手を引くと、梁くんは初めて笑顔を見せた。その顔は太陽に照らされて、とても眩しかった。

 家族を一夜にして失った梁くんの心をこれからも癒してあげようと、この時に決意した。




まぁ、こちらは更新少し遅めかも

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