年下好きな早苗さんに義弟ができる話   作:かくてる

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14話 次の日

「…………」

 

 暗闇の中、私は目を閉じて睡眠を貪ろうとする。しかし、そんな事は今の私には出来るはずがなかった。

 

(はわぁぁぁぁぁ!?)

 

 心の中はじたばたと慌てていた。

 

(え? 私何してるの!? 今、梁くんにキスしたの!? しかも口ッ!?)

 

 数秒前、私が無意識で行ってしまった行為を思い返す。

 梁くんの唇にいつの間にか吸い付けられていた。そんな不穏な言い回しでしか、今の気持ちを表現出来ない。

 

(…それに……告白までしちゃって)

 

 男の人としても、梁くんが好き。そう言ってしまった。これは紛れもない本心だった。

 

(だって……あんなこと……言われたら)

 

 お姉ちゃんと姉さんは違う。

 梁くんの実の姉の代わりになれたら、私としては本望だった。別に恋人になりたい訳でもなく、ただ梁くんの心を癒せれば、それで満足だった。

 でも、梁くんの眼中には私とお姉さんは別で捉えていてくれた。つまり、「姉」としてではなく、「東風谷早苗」という一個人として私を見ていてくれた。

 

(好きに……なっちゃうよ)

 

 想いが止まらない。なんて空想の話だと思っていた。恋心を知らないまま成人した私にとって初めての体験で、心臓の鼓動が鳴り止まない。それに比例するように、瞼も閉じない。

 

(……今日は徹夜コースかな……)

 

 とりあえず緊張をほぐそうと、私は目を閉じて梁くんにバレない程度に深呼吸する。そして、それは無意識の睡魔を誘ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────朝。

 

「んぅ……」

 

 太陽の光が窓から差し込む。畳の独特な匂いは守矢神社と酷似していた。

 少しずつ目を開けて、部屋全体を細い目で見渡す。知らない部屋で少し不思議に思ったが、すぐさま旅行に来たことを思い出す。

 

「あ、えと、おはよう。姉さん……」

「んぅ……おはよぉ……」

 

 閉じそうな瞼を擦って、体を起こす。脳はまだ眠っているようで、はっきりした思考ができない。

 

「……?」

 

 目の前にいる梁くんの顔が凄く赤い。それに、やけに私から目を逸らす。不思議に思った私は少しずつ思考を取り戻してきた。

 

「……〜〜〜ッ!?」

「えっ!? 姉さん?」

 

 昨日あったことを全て思い出す。私の脳裏に、昨日の映像がフラッシュバックした。その瞬間、私の顔は真っ赤に染め上げられた。

 羞恥心に耐えられなくなった私は布団をもう一度被る。全身が見えないように。

 

「や、やめて! 梁くん見ないでぇ……」

「な、何……?」

 

 恥ずかしくて死にそうな私にクエスチョンマークを浮かべる梁くん。

 

「き、昨日はごめんねっ? なんか色々盛り上がっちゃって……」

「昨日?」

 

 梁くんのファーストキスを無理やり奪ってしまったのは事実だから、その罪悪感だけ取り消そうと私は全身を布団に隠しながら謝罪をした。

 

「へ、変だよね。急に告白して、急にキスして……」

「……まぁ、うん。でも、気にしてないよ」

「……ほんと?」

「ほんとほんと……」

 

 羞恥心が抜けないが、今日は色々とこの温泉街を回るから準備はしなくてはいけない。

 

 

 

 

 そうだよ、もう告白もキスもしちゃったんだ。今更恥ずかしがっても

 

「……よしっ! 梁くん、風呂入ろう!」

「……えっと、何言ってるのかな」

「だって、私達恋人同士じゃん?」

「あのさ、姉さん。開き直ってるのか何なのか分からないけど、そんな関係じゃないからね?」

 

 もう恥はかくだけかいた。今更恥ずかしがっても過去は取り返せない。

 

「えぇー、じゃあ早く恋人になろうよぉ……」

「返事を待つって言ったでしょ。しかも僕まだ13歳だからね?」

 

 そう、色々あったが、もう私達が出会って1年半が経過するのだ。時が経つのは早いと感じたことはないが、これは実感せざるを得ない。

 

「うぅ……早く返事してよ……」

「嫌ですー。あと5年は待ってもらいますー」

「うえぇっ?」

「じゃあ、僕はお風呂に入ってくるね」

「えっ、待ってよ梁くん! 私も行くー!」

 

 温泉旅行二日目はなんだか一日目よりも濃い日になりそうだと、そう感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年が明け、早苗と梁が旅行に出かけた後、神奈子と諏訪子は暇を持て余していた。

 

「……ねぇ、神奈子ぉ」

「なんだ?」

「トランプしよトランプぅ……」

「……暇か」

 

 いや、正しくは諏訪子だけが暇を持て余している。神奈子はこれから蓬莱人と飲みに行くらしい。

 

「じゃあ、私は行ってくるから。とりあえず、ご飯は諏訪子の分だけでいいよ」

「はいよ。楽しんでらっしゃいな」

 

 神奈子を見送り、とうとう話し相手すらいなくなった諏訪子は大きなため息をつく。

 

「もう夕方か……」

 

 とりあえず、晩御飯を作りに行こうと、諏訪子は身を翻し、守矢神社内に入ろうとした。

 

「あら、諏訪子だけ?」

「およ?」

 

 背後から声がしたので、振り返ると、そこには

 

「こちらに来るのは久しぶりじゃない。レミリア」

「ええ、そうね」

 

 紅魔館の主、レミリア・スカーレットとその従者、十六夜咲夜がいた。二人は早苗と仲がいいので、色々つるむ事もあるが、特に用がなければ守矢神社に来ることもないので、少し諏訪子は驚いた。

 

「それで、何か用?」

「いいえ、パチェもフランもみんな遊びに行っちゃったから」

「ああなるほど。暇なのね」

「ひ、暇じゃないわよ。色々仕事もあるんだから」

「まぁ、とりあえず上がってよ」

「ええ、お邪魔するわね」

 

 守矢神社に入れない理由もないし、久々にレミリアとも話をしたかった私は躊躇いもなくレミリア達を上がらせた。

 

「悪いね。緑茶しかないけど」

「いいわよ別に。最近は東洋のお茶も嗜んでいるのよ」

「へぇ、レミリアもだいぶおおらかになったねぇ……」

 

 レミリアとは対面の席に座り、両肘をついて顎を乗せる。そして、レミリアを見てニコニコと笑う。

 

「それよりも、早苗は?」

「ああ、早苗なら梁と一緒に旅行に出ているんだ」

「梁……」

 

 突然、レミリアの目付きが変わった。諏訪子はそれを見てから思い出した。

 

(そ、そうだ。レミリアは一度梁と喧嘩したんだっけ……)

 

 もう一年ちょっと前の話だが、あの時は散々な目にあった。と諏訪子はしみじみと思い出す。

 

「あの餓鬼……まだ生きていたのね」

「……ねえ、レミリア」

「何?」

「……あいつは良い奴だよ」

 

 とりあえず、レミリアは梁を敵視している。このままでは梁もまたレミリアに出くわした時痛い目を見てしまう可能性もあるから。

 

「……早苗も私も、梁に救われてる」

「そう」

「あいつが妖怪を毛嫌いするのは理由があるんだ」

「理由? ただ忌み嫌ってるだけじゃないの?」

「違うよ」

 

 とりあえず、レミリアには話しても良いだろうと判断した私はレミリアを目を見据え、口を開く。

 

「あいつは妖怪に家族を殺されたんだ」

「……」

「それでね、神のイタズラとでも言うのかね。梁だけは重症を負いながらも守矢神社に辿り着き、生き残った」

「……神様が神のイタズラなんて言葉を使うのね」

「ちょっとした戯言さ」

「ガキの事情はわかったわ。だから私に刃向かったのね」

「そう。だから、あまりいじめるのはやめてくれないか?」

 

 そう、柔らかく伝える。レミリアは話の分かる奴だと判断してのお願いだった。

 

「……そうね。確かにあの時は申し訳なかったわ」

「良かった。また顔を出しに来てよ。その時は梁とも話して欲しい」

「でもね、諏訪子」

「ん?」

 

 諏訪子の言葉を遮るようにレミリアは続けた。

 

「私はね、あの子にイラついたから攻撃したんじゃないの」

「え?」

 

 レミリアは両手を握り、力を入れていた。それを不思議に思った諏訪子は背筋に冷たい汗が流れた。

 

「じゃあ、どうして……」

「あの子が、私を本気で殺そうとしたから」

「……」

「いいえ、言い方が違うわね」

 

 レミリアは改めて諏訪子を見て、少し畏怖のこもった声で諏訪子に伝えた。

 

「私はあの時、あいつに殺されると思ったから」

 

 諏訪子はその場で硬直してしまい、声すらも失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、姉さん。どこに行く?」

 

 本格的に温泉街を回ろうと私と梁くんは宿を出た。というが、ここまでほぼノープランだ。

 

「そうだねぇ……やっぱり何かお土産が欲しいかな」

「……諏訪子様や神奈子様にも買っていかないとね」

「そうそう、というわけでお土産屋さんにレッツゴー!」

「はいはい……」

 

 色々吹っ切れた私はもう恥など捨ててしまった。これからまた長いこと同じ家で過ごす相手だ。こんなことで恥ずかしがっていては仕方がないだろう。

 

「……姉さん。くっつきすぎ。あと手離して」

「ええー、いいでしょ別にぃ」

「やだ」

「わっ! ごめんって梁くん! 謝るから手をブンブン振らないでぇーっ」

 

 ここは時間の流れが穏やかだ。守矢神社も似たような環境かもしれないが、新天地という意味でいえばとても新鮮で心地がいい。

 

「……ね、梁くん」

「ん?」

「あれ……」

 

 私はある人に気づいた。

 そして、それを恐る恐る指さす。その先にいたのは、私も梁くんも親しい人物だった。

 

「あ、早苗さん、梁さん。こんにちは!」

「鈴仙さん!」

「ど、どうしてここに?」

 

 うさ耳の紫髪、ブレザーを着た玉兎、鈴仙さんがそこにはいた。

 

「僕達は旅行に来たんです。鈴仙さんは?」

「往診です。と言っても、昨日までで今日は休暇です」

「へえ、お疲れ様です」

「ありがとうございます、梁さん。あっ、そうだ」

 

 鈴仙さんは何か思いついたようにパンっと手を叩き、とんでもない提案をしだした。

 

「良かったら。一緒に行動しませんか? その方が楽しいですし」

 

 私はそれを聞いてムッと顔をしかめる。

 

「私達は二人で旅行に来たんですけどー」

「まぁまぁ姉さん。一人増えても何も問題ないし。鈴仙さんならきっと楽しいでしょ?」

「そういう問題じゃなくてぇー」

 

 少し鈍感さんなのかな? と思ってしまう。

 まぁ13歳の梁くんに女心を分かってくれとは言わないが、旅行の時くらいは2人きりでいたかった。

 それに……

 

「じゃあよろしくお願いします、梁さん。行きましょう!」

「わっ」

 

 鈴仙さんは梁くんの手を取り、引っ張る。

 そう、鈴仙さんは梁くんを特別視している。というのもかなり好意的な。

 人のこと散々注意しといて、結局は鈴仙さんも梁くんの事狙ってるんじゃないですかっ! と心の中でキレる。

 

「あれ、姉さん! 置いてくよ!」

「あーもう! 待ってよー!」

 

 今日は鈴仙さんと戦争になりそうだ。

最終的には?

  • 早苗さんと幸せルート
  • 梁くん独り立ちルート
  • 早苗さんとイチャイチャルート
  • もしかしたら鈴仙と幸せルート
  • 諏訪子、もしくは霊夢と幸せルート
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