年下好きな早苗さんに義弟ができる話   作:かくてる

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ごめん早苗さんが可愛すぎて先書いちゃった


2話 義眼

「綺麗に潰れちゃってるわねぇ…」

 

 永琳さんが梁くんの左目を見ながらそう言った。

 私もちらっと目を見るが、それは無残に眼球が潰れていた。

 

「……対処の仕方は色々あるけど、どうする?」

「と、言いますと?」

 

 梁くんは首をかしげながら永琳さんに訪ねた。永琳さんは指を一本ずつ立てながら答えていった。

 

「一つ目、眼帯をつけて大人しくすること。二つ目、妖力のこもった義眼を入れること。三つ目、普通の義眼を入れること。だけど、普通の義眼は今在庫切れよ。どれがいい?」

「義眼……ですか……」

「あら、そっちに食いこむのね、てっきり能力の方かと思ったわ」

 

 梁くんは本気で悩んでおり、私が口出しするのはお門違いだと思ったので、黙って梁くんの答えを待っていた。

 

「…義眼を付けてください」

「分かったわ。でも普通の義眼はちょっと在庫がないのよ。後日完成品を届けに行くわ」

「普通の義眼はどれくらい…」

 

 苦笑いをした梁くんは恐る恐る永琳さんに尋ねていた。永琳さんは指を顎に当て、上を向く。

 

「そうねぇ……材料集めから初めて……うどんげ」

「はい」

 

 そこから出てきたのは、紫の長髪、うさ耳で綺麗な顔立ちの少女、鈴仙・優曇華院・イナバがいた。

 

「義眼出来上がるのまでどれくらい?」

「…えー、1年半くらいはかかるかと」

「……なんでですかっ?」

 

 梁くんは乗り出すように問いただした。鈴仙さんは引き攣るように後ずさりしたが、すぐに返答した。

 

「義眼の元になる素材が幻想郷には無いのですよ。なので、紫さんに頼んで外の世界で探し回るしかないんです。それが約一年。そこから、師匠でも作るのに半年はかかるんです」

「…う……」

「どっちにしろ手術は必要よ。普通の義眼を待ってる間は腐らないように色々施さなきゃいけないし、恐らく、そっちの方が人体に影響が出るのよ」

「だから、姉さんおすすめは今すぐ義眼をつける事ね」

「……そう、ですか」

 

 梁くんが何を心配しているのか、それは私にも分かった。

 多分、妖力を埋め込まれて、妖怪に近くなるのが嫌なのだろう。

 当たり前だ、自分の家族と自分の体をズタボロにした生き物と同族になるほど屈辱的なものは無いだろう。

 

「…安心なさい。ただ軽い能力が付与されるだけよ。そこの早苗だって、能力はあるけど人間よ」

 

 チラリと、梁くんは私を見た。

 心配なのだろう。本当に私が人間なのか、本当は妖怪なのではないかという。

 しかし、私は屈託のない笑顔で梁くんを元気づけた。

 

「大丈夫ですよ、梁くん。私はれっきとした人間です。まぁ、普通よりは少しかけ離れてますけど……」

「…ほんとですか?」

「…ええ、ほんとです」

 

 可愛すぎるこの生き物。本当に男の子なのか?

 あのイヤラシイ目で見てくる太ったやつと性別一緒なのか?

 性別「男の娘」が本当に存在しているのではないだろうかと思える今日このごろだ。

 

「それじゃあ、今ある妖力入りの義眼でよろしくお願いします」

「……じゃあ早速準備するわね。早苗、あなたは悪いけど、応接室で待機してもらうわ」

「あ、はい。分かりました。梁くん、がんばって」

「…はい」

 

 梁くんはまだまだ緊張気味だ。妖怪に囲まれたこの環境になれるのはまだまだ時間が入りそうだ。

 私は診察室の扉を開け、鈴仙さんに案内された応接室でお茶を飲みながら考える。

 

「梁くんのあの傷……下級妖怪よね…」

 

 あの雑な食い荒らし方は、力の弱い下級妖怪だ。

 上級妖怪のルーミアさんや、風見さんなんかは、綺麗に血の一滴も残さないで食べる。

 上級妖怪の人たちは人間に好感を持っているため、犯罪者や、悪を働く人間しか食べないそうだ。

 力が弱いと言っても、人間よりは力も速さも桁違いだが、私や霊夢さんの様な力のある人間からしたら、相手にすらならないようなものだ。

 

「ってことは、守矢神社周辺の結界が弱っていたの……?」

 

 どうしてこう思うのかと言うと、梁くんが大怪我をしてもたれていた木から守矢神社間ではほんの数十メートル。

 つまり、そこで攻撃された。

 内蔵が出ているのに、数百メートルも走ってきたのなら、それこそ、梁くんは人間じゃない。

 

「でも、辺りに暴れた形跡がないのよね…」

 

 梁くんは奇跡的に意識が長いことハッキリしていて、あそこまで逃げて力尽きた、ということなのだろう。

 しかし、内蔵まで飛び出していて、「奇跡的」なんて使っていいのだろうか?

 

「ま、考えるだけ無駄かな」

 

 梁くんは今無事なのだから、いいだろう。と、言い聞かせ、鈴仙さんが用意してくれた緑茶をスズズと啜る。

 

「おいしっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、鈴仙さんが応接室に顔を出した。

 

「早苗さん。手術が終わりました」

 

 鈴仙さんが微笑んでいるのを見ると、どうやら成功のようだ。

 永琳さんに限って失敗は無いのだろうが、そういうのをフラグというので言わないでおく。

 

「ね、姉さん、どうですか……」

 

 鈴仙さんの後を付いてきた梁くんは両目がしっかりとあった。左目は少し黄色がかかっていた。梁くんの目は瑠璃色だったので、オッドアイとなっていた。

 梁くんの照れ顔と、まだ「姉さん」と言うのを慣れていないその愛おしさが私を硬直させた。

 

「か……」

「……ね、姉さん?」

「かぁぁぁわぁぁいいぃ!」

 

 ムギュぅっと抱きしめていた。

 私は梁くんの頭を胸に持っていき、顔を埋めさせる。当の梁くんはすっごい慌てていたし、隣にいた鈴仙さんも赤面して驚いていた。

 

「なになに、両目があるともっと可愛くなっちゃってぇ!梁くんったらぁ!」

「ね、姉さん、く、くるしっ……」

「もぉー、可愛すぎるよぉ……」

 

 さらに抱きしめる力を強くしてしまった。

 梁くんは私の肩に手を置き、引き剥がそうとするが、力がない。

 

「むぐぅ……」

「…んふふぅ……」

「ぷはぁっ!」

 

 私が一瞬力を抜いた瞬間、梁くんが私から離れてしまった。

 

「い、いきなり何するんですかっ」

「だって、可愛かったんですもん」

 

 しれっと、私が言うと、梁くんは耳まで真っ赤にして、耐えられなくなったのか、踵を返した。

 

「は、早く行きますよっ、姉さんっ」

「はいは〜い」

 

 私は上機嫌になりながら、付いていくようにする。

 その途中、鈴仙さんが呆れた顔で苦笑しながら、釘を指すように言った。

 

「早苗さん、ショタコンなのはいいですけど、手は出さないで下さいよ?」

「………」

「あっ、手を出す気なんですか?」

「またまたぁ、そんなことあるわけないじゃないですかぁ」

 

 と、何となく誤魔化してみる。

 まぁ、私も梁くんに手を出そうとは思ってない。梁くん自身が可愛そうだし、何より、私の自分勝手な行動で義弟に迷惑をかけるのなんて御法度だ。

 

「あなたの胸、相当破壊力あるんですから」

 

 鈴仙さんは少し睨みつけるように私の胸元を見た。

 鈴仙さんだって、胸大きいのに。というのは、野暮だと思ったので、「気をつけますー」とだけ言って、梁くんの後を追った。

 

「……あの子………なんか変よね…」

 

 鈴仙さんは私が背中を向け、数十メートル歩いたところで、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「梁くん、怒ってるんですか?」

「怒ってないですっ」

「え、だって、そんなに顔を赤くして…」

「い、いやこれは……」

 

 隣を歩いていると、梁くんはさらに顔を背ける。

 見れば見るほど、愛おしくなってくる。そう思う私はやはり変なのだろうか?

 いや、梁くんをずっと見れるなら、変態でもいい。

 そう考えてしまった私は、自分に呆れた。

 

「梁くん、帰りに何か食べていきますか?」

「あ……は、はい…」

 

 私は梁くんに身を寄せて、歩いた。そして、自分の手をよりも低い位置にある、梁くんの左手を握り、竹林を歩いていった。

 

 人里に出ると、人がたくさん出歩いていた。

 

「多いですねぇ…」

「……そ、そうですね」

 

 人里に出てから、梁くんの顔色はあまり好ましくない。

 家族が殺された直後に、故郷に帰るのは辛いだろう。それは、私にも分かる。

 

「梁くん、守矢神社近くにわたあめ屋さんがあるんですよ。そこに行きましょう」

「あ、はい…」

 

 無理して笑う梁くん。可愛らしいが、少し悲しげなその顔はこちらとしても心臓を掴まれた感じになる。

 

「んぅー、美味しいっ」

「ほんとだ……美味しい」

 

 2人でベンチに座り、守矢神社近くのわたあめ屋で買ったわたあめを食べていた。

 そんなわたあめを食べた梁くんの顔はキラキラと輝いていた。

 私はそれを横目で見ながら、自分もわたあめを食べる。

 絶妙な甘さが口内に広がった。

 

「……どう?梁くん」

「美味しいです…」

 

 少し、梁くんの声は震えていた。目も少しずつ潤っていて、遂には、涙がポロポロと出始めた。

 

「ど、どうしました!?」

「え、あ……いや、ごめんなさい……お姉ちゃんも昔はわたあめ屋さんでバイトしていたので……いつも食べてたんです……それを思い出したら…」

「…いいお姉さんなんですね…」

「……分かっちゃいますか?」

 

 また無理して笑う。

 少しでも、彼の心の癒しになれば。トラウマを忘れるのではなく、乗り越えられるように、手助けをしなきゃ。

 

「梁くん、辛い時には、辛いって言っていいんですよ?」

「え?」

「さっきから無理しすぎです。永遠亭でも、人里でも、ずっと堪えてたんですよね?」

「…そ、それは……」

 

 私は食べ終わったわたあめの棒をベンチに置いた。

 そして、梁くんを先ほどとは違い、優しく包み込むように抱擁した。

 

「今は私がお姉さんなんです。あなたのお姉ちゃんみたいにはなれないと思うけど……君のためなら、何だってするよ……」

「…姉さん…」

 

 言葉が時々砕けてしまうのは、少し恥を覚えた。

 しかし、やはり梁くんには、砕けた口調で会話がしたい。もっと近づきたい。

 

「………はい、ありがとうございます、姉さん」

「…あの、ちょっと思ったんですけど」

「はい?」

「敬語やめません?」

「…え、えぇ…」

「今日から姉弟で家族な訳ですから、敬語はよそよそしいですよ」

「…分かりました…」

「…け、い、ご!」

「分かったよ。姉さん」

 

 梁くんの顔は先ほどとは違い、強い目をしていた。

 屈託のない笑顔の中に、トラウマを乗り越えようとする強い意志が見られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰りの道中、私は聞いていなかったあることに気がついた。

 

「そう言えば梁くん」

「なに?」

「能力付きの義眼って、どんな能力が付いたの?」

 

 梁くんは「あっ」と言って、ポケットの中に入っていた一つのペラ紙を取り出し、広げた。

 

「えっと……未来を知る程度の能力?」

「……」

 

 私はその場で黙りこくった。

 当の梁くんも引きつった笑顔で私を見た。そう、梁くんの言いたいことは恐らく同じだろう。

 

「ね、梁くん。私言いたいことがあるんだけど」

「奇遇だね。僕もなんだ」

 

 しばらくの間、目を合わせてから、同時に出た。

 

『強そう』

 

 二人の声が同時に聞こえ、梁くんと私はその場で大きく笑った。

 

「…でも、色々便利なのかもね、未来予知かぁ…」

「姉さんの能力って何なの?」

「私は「奇跡を起こす程度の能力」だよ」

「……似たようなものじゃない?」

「そうね……」

 

 梁くんの左目は少し黄色い。ここから、能力が伝わるのなんて考えられない。

 つくづく、八意永琳さんは化物なんだなと思う今日この頃だった。

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