年下好きな早苗さんに義弟ができる話   作:かくてる

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早苗さん可愛すぎん?


4話 博麗の巫女

「いいか? まだ梁は若いんだ。お前が襲ってどうする?」

 

 かれこれ一時間は正座させられている。私の足はもう感覚がないほどに麻痺しており、ただ「はい……」と言うしかなかった。

 日も傾き、午後5時ほどになっていた。

 

 

 

 

 

「へぇ……君が」

 

 霊夢さんはまだ守矢神社に滞在していた。そのため、霊夢さんは何故か梁くんに興味が湧いていた。

 

「下級妖怪が人里に入り込むなんてね……」

「はい、蛙みたいな……急に僕の家に入り込んできて……」

 

 梁くんが襲われた経緯を話すと、霊夢さん苦い顔をして、梁くんに頭を下げていた。

 

「ごめんなさい。博麗の巫女である私が人里の結界を弱めたからだわ」

「ッ!? い、いいえ、頭をあげてください」

 

 人里は長い間、妖怪に襲われる事件がゼロだった。その代わり、人里以外での妖怪同士の競り合いなどが激化しており、人間に危険を及ぼす可能性が高いので、人里の周りに結界を張るよりも、広範囲に展開した方が今は安全なのだ。

 人間はみんなその事を把握しているし、文句はない。これは、予想外すぎる出来事で、霊夢さんが悪い訳では無い。

 梁くんはそれをわかって言っているのだ。

 

「仕方ないんです。妖怪は嫌いですが、永遠亭の方々やや諏訪子様、神奈子様みたいに、人間以外にも暖かい心の持ち主がいるってことを実感できましたから」

「………………」

 

 梁くんがこんなことを言ってくれるとは思わなかった。正座していた私は自然と嬉しさがこみ上げてるし、神奈子様も説教をやめて梁くんの言葉を聞いていた。

 

「……そう、なら良かったわ。梁、と言ったわね。強い人になるわ、あなたは」

「……え?」

 

 霊夢さんが淡々とそう告げた。唐突の発言に梁くんは首を傾げ、霊夢さんの次の言葉を待った。

 すると霊夢さんは梁くんの目を見据え、強く、こう発した。

 

「「しょうがない」とは口で言ってても、あなたの右目は闘志と復讐の思いで満ち溢れているわよ」

「っ!」

「その思いがいつかあなたを強くする。悪いことではないけれど、行き過ぎた行動は幻想郷を破壊する。それは、誰もがありうることよ」

「……行き過ぎた…………行動」

「そう、幻想郷は人間や妖怪、神などがパワーバランスを保って成り立っているの、どれだけひ弱な人間でも、強くなれば、それは崩壊する。つまり、幻想郷が認めたそのバランスが崩れ、土台が崩れたら上も崩れるように、幻想郷がパワーバランスという土台を失い、幻想郷もろとも崩壊するわ」

「なら、僕は……」

「私も早苗も力のある人間はいるわ。でも……」

 

 梁くんにぐいっと近づき、人間は知らない最大の禁忌を霊夢さんは口にした。

 

「『人間は妖怪よりも強くなってはいけない』」

「……」

「といっても、下級妖怪よりは強くなるのはいいけど、それこそ上級の妖怪達は幻想郷のトップに君臨する程なの。そこに人間がくい込むのは、終焉と同じ意味を持つわ。まだあなたがそうなるとは言いきれないけど、復讐のためなら、そこまで強くならない事ね」

 

 霊夢さんの忠告を聞いていた梁くんは少し戸惑いながらも、はっきりと答えた。

 

「僕は復讐はしませんよ。ただ、妖怪は嫌いです」

「……そう、まぁ、頑張んなさいよ。早苗は手の焼ける奴だから」

「ちょ、霊夢さんっ!?」

「あ〜」

 

 梁くんは納得したように私を横目で見た。自覚はあったが、直接言われたりすると傷つくものだ。

 

「梁くんまでっ!? 私別に変なことは………………してます」

 

 私はズーンと落ち込み、俯いた。それを見た梁くんと霊夢さんは2人で私を見て笑っていた。

 神奈子様は額に手を置き、大きくため息をついていた。

 

「霊夢さん。わがままなのは分かっているんですけど、最低限の強さは身につけたいんです。その指導をお願いしたいんですけど……」

「……まぁ、守矢神社は強者揃いだから、自然とそういうのは身につくとは思うけど。いいわよ、見てあげる」

 

 その会話の途中、私は割り込むように声を張り上げた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 梁くんのお世話係は私ですよ!? 戦闘の指導も……」

「姉さんだと、別のことに発展しそうで怖いから、霊夢さんの方が適任かも」

「そ、そんなぁ……」

 

 梁くんにストレートに言われて、私はがくんと肩を落とす。確かに実力は霊夢さんの方が上だが、最低限の弾幕ゲームは私だって御茶の子さいさいだ。

 でも、梁くんが霊夢さんの方が適任と言ったんだ。ここは素直に引き下がるしかない。悔しいけどっ! 

 

「そうと決まったら、早速教えていくわ、梁、こっち来なさい」

「は、はい」

 

 梁くんは霊夢さんに連れられ、庭へと足を運んでいった。私は「あぁ……」というか細い声を出しながら梁くんのあとを追っていた。

 しかし、私の前に、神奈子様が立ちはだかる。

 

「まぁーだ説教は終わっとらんぞ?」

「え!? あれで終わりじゃ……」

「んなわけあるか。いいか? お前は場所をわきまえなければいけないのだ……」

 

 ここからずっと、神奈子様の説教は続き、私の足は30分ほど身動きが取れていなかった。

 日がもうすぐで完全に沈む頃、私は縁側で梁くんの修行を見ていた。

 

「いい? この右手に集中して、そこから、見えないものが出現する意識をするの」

「見えないものが…………」

 

 霊夢さんは梁くんの右手をペタペタと触っていて、私にとっては凄く気分を害する行為だった。しかし、神奈子様も隣にいるので、変に動けないし、ただ唸るだけだった。

 

「うぐぐ……」

「早苗」

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 神奈子様のトーンはいつもよりも低かった。私はその声に背筋がぴーんと凍り、硬直してしまう。

 

「お前は、梁が好きなのか?」

 

 神奈子様の目は私を見据えていた。それを見た私は身体中の力を緩めて、淡々と語り始める。

 

「ええ、それはもう、たった1人の義弟ですから」

「……それは、恋愛というものにも入るのか?」

 

 恋。それは、ある一人のことを考えるとドキドキしたり、緊張したり。

 確かにずっと一緒にはいたいけど、梁くんと出会ってまだ間もない私達が一丁前に「守る」だなんて言えない。それに、一緒にいて緊張もしない。

 

「……梁くんに恋という感情は……」

 

 私は落ち着いて自分の心に聞いてみる。今は自分に正直になるべきだ。

 

「……曖昧ですね。恋、という範疇に収まるものではありませんね、梁くんは」

「はは、お前らしいな」

「ありがとうございます」

「褒めてない」

「あだっ」

 

 神奈子様のゲンコツが優しく私の頭をコツンと叩く。2、3回頭をさすった後、私はもう一度梁くんの霊夢さんを見る。

 

「でも、私は梁くんが大好きです。それだけは変わりません。親を失い、トラウマを今でも抱えても頑張る彼を私は好いています。梁くんの性格は絶対に一人で抱え込むタイプです。それを癒してあげるのは、私の役目かなって、義姉さんがやることなんでしょうね」

「…………お前、やっぱり梁に恋してるだろ」

「……かもしれませんね」

 

 神奈子様の答えに私はまた曖昧に返す。

 そう、今はまだ、この感情が「恋」なのか、「親愛」なのか、私には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が姉さんと諏訪子様に救われてから2ヶ月程が経過した。

 

 僕は毎週月曜日に霊夢さんの修行を受けていて、いつも体をボロボロにする。

 姉さんに一通り家事は教わったし、掃除も洗濯も料理もほぼマスターしたつもりだ。

 最近の悩みは、姉さんのスキンシップが過激なことだ。下着姿で僕の前に出たり、耳に息を吹きかけたりと、からかわれてばかりなのだ。

 

 

 

 

 今日も霊夢さんの修行を受けて、お風呂に入った後、後片付けをして寝床につこうと部屋へ入った。

 そして、倒れ込むようにベッドに入り込む。布団の気持ちよさはどこに行っても変わらない。

 最高の寝床だ。

 

 

 

 

 

 

 ………………ただ、一つの除けば

 

 

「…………姉さん」

「んー?」

「……何で僕の布団に入ってるのさ」

「だってぇ、梁くんの匂い好きなんだもぉーん」

 

 早苗姉さんはこう言ったスキンシップというかそういう行為が最近増えている。姉さんは綺麗さも可愛さもほかの人と比べて頭二つほど抜けている。

 そんな美人な人にされるのは男として嬉しくないはずがないと思う。もちろん僕も年頃だから、そういうのに興味を持つ時期でもある。

 

「……いいから、早く出て」

「いーやっ」

「早くっ」

「嫌だっ」

 

 この現人神は…………! 

 僕は呆れたように歯ぎしりをしながら、姉さんを睨みつける。早く寝たい僕は姉さんとは逆の方を向いて寝ることにした。

 

「そこに居てもいいから邪魔しないでね。姉さん」

「どーしてそっち向くの?」

「姉さんがイタズラするから」

「うふふー、こっちでも出来るんだからねっ」

 

 姉さんは一気に僕との距離を縮め、僕の背中から抱きついた。姉さんの大きくてふくよかな二つの山が僕の肩甲骨にふにゃりと当たる。

 

「ね、姉さん!?」

「うふふっ、可愛い慌てようね」

「や、やめてよ!」

「こっち向いてくれるまで離さなーい」

 

 まだ姉さんに力も勝てないので、されるがままになってしまう。それも納得がいかない。普通は男の僕が姉さんを助けるのに、今は完全に守られているのだ。

 

「……分かったよ」

 

 くるりと身を翻した。すると姉さんはにやりと笑って、両手を広げていた。

 

「引っかかった!」

「うわっぷ!?」

 

 もう一度、姉さんは僕に抱きついた。

 二人共、寝転がって、布団を被っているので、僕は思うように身を動かせない。それに、姉さんの胸が僕の顔全体を覆い、息も苦しい。

 

「ねえさ……」

「もー、かわいーなぁ!」

「もう出てってぇぇぇ!」

 

 こんな日が、最近ずっと続いてます。助けてください。

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