年下好きな早苗さんに義弟ができる話   作:かくてる

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おっくれたぁ


7話 守矢神社の晩御飯

「梁くーん」

 

 背後から早苗が声をかける。

 梁はトントンと包丁を使って野菜を切っていたので、目を離さず、応答をする。

 

「何、姉さん」

「霊夢さんが梁くんを奪うー」

「奪うって何さ。別に霊夢さんとはそんな関係じゃないよ」

「分かってるけどー、嫉妬しちゃうのー」

 

 巫女の仕事を終え、畳でゴロゴロする早苗。梁は包丁を置いて早苗を見る。

 早苗の胸についている2つの山が目立つので、梁は出来るだけ見ないようにした。

 

「き、今日も霊夢さん来てるから、そんなだらしない格好でいないでね」

「梁くん……? それは、この姿は僕だけのものって事……? きゃっ、梁くんイッケメーン!」

「…………」

「いや! そんな本気で面倒くさそうにしないでっ」

「良かった。自覚はあったみたいだね」

「やめてぇぇ!」

 

 早苗と梁の会話はいつもこんな感じだ。数ヶ月経って、2人は本物の姉弟のようになっていた。

 

「あら、いい匂いね」

「霊夢さん!」

 

 訓練の後、守矢神社でお風呂に入っていた霊夢。いつもの巫女服とタオルを頭に置きながら、食卓へとやってきた。

 その瞬間、早苗が霊夢の両肩を掴む。

 

「な、何」

「霊夢さん、梁くんは私のものです! 奪わないでください!」

「はぁ?」

「聞き流してください霊夢さん…………それよりも、ご飯食べて行きます?」

「え? いいの?」

 

 早苗の言うことを2人はスルーする。早苗はその場で「ううー」と唸るが、それさえ無視し、別の会話を続ける。

 

「はい、いつものお礼みたいな感じで、あまり良いものは作れませんけど」

「……じゃあ、頂くわ」

「はい、何かリクエストありますか?」

「特に無いわ、なんでも食べれるから」

「分かりました」

 

 梁はそのまま調理を続ける。霊夢はくるりと翻してリビングに座る。

 

「早苗、あんた本当に子供好きなのね」

「ええ、可愛いですし、年上には興味ありません」

「確かに、梁は可愛らしいわね」

「ですよね! あの女の子のようなすべすべの肌、太陽に光る銀色の髪……見惚れさすような青色と黄色のオッドアイ、慌ててる時の顔……笑った顔……ぐへへ……たまんなぁい」

「さ、早苗……」

 

 霊夢も例に外れず、早苗に対してドン引きを喫する。異変解決で様々な妖怪を見てきたが、これには耐性がないようだ。

 

「ごめんなさいね梁。やっぱり帰らせてもらうわよ」

「えっ、ちょ、霊夢さん! 冗談ですから!」

「無理よ、同じ巫女だからって思ったけど、やっぱり分かり合えないわね」

 

 冷えた霊夢の声が早苗に突き刺さる。今の早苗にとって、霊夢の目線は1番辛いものである。

 

「確かに、梁が可愛いのは分かるけど、行き過ぎた行動は慎む事ね。以前神奈子に叱られてたでしょう?」

「うう、そうですけどぉ……」

 

 モジモジと反論する言葉を探す早苗の後ろから、ガラガラと戸を引く音が聞こえた。誰がが帰ってきたのだろうか。

 

「失礼しまーす」

「……鈴仙さん!」

 

 気になった梁は手を拭いて玄関の方へと歩いていった。すると、そこにはマフラーを巻いた鈴仙がいた。

 

「どうも、梁さん」

「こんにちは、今日はどうされました?」

「いえ、薬の訪問販売のついでの寄り道ですよ。外は相当冷えてますからね、暖まらせて貰っていいですか?」

「もちろん、あっ、今から晩御飯なんですけど、鈴仙さんもどうですか?」

「頂いちゃっていいんですか?」

「ええ!」

 

 今日は12月20日。冬の真っ只中である。この数ヶ月、鈴仙とも交流を深めることが増えた。

 鈴仙は「お邪魔しまーす」と言いながら靴を脱ぎ、守矢神社内へと入っていった。

 

「あ、霊夢さんどーもー」

「んあ? 鈴仙か」

 

 コタツで寝転んでいた霊夢はそのまま目線だけを鈴仙に移していた。鈴仙はぺこりと霊夢に頭を下げる。鈴仙は躊躇いも何も無く、霊夢に入っているコタツに足を入れる。

 

「わっ、ちょ、鈴仙! このコタツは私のよ」

「ケチケチしないでください。そもそも守矢神社自体あなたのじゃないでしょう」

「私が最初に使ってたの」

「嫌ですー」

 

 2人の子供っぽい喧嘩を聞きながら、梁は料理を進めていた。

 

「梁くん、料理手伝おうか?」

「ううん、大丈夫、ありがとう姉さん」

「ぶうぅ、何か手伝いたいのにぃ」

「もうすぐ出来るからさ、待っててよ」

 

 こう言われてしまえば、早苗は黙って戻るしかない。少しムッとした表情を見せた後、早苗は身を翻した。その瞬間だった。

 

「っ!?」

 

 ツルッと早苗が足を滑らせた。早苗が脱ぎ捨てた靴下を踏んでしまったのだ。早苗は重力に従って、体が傾く。転ぶのを防ごうと体制を整えても、手遅れだった。

 

「早苗さ…………」

 

 鈴仙達も気づき、声を出そうとするが、早苗の体はいつになっても床につくことはなかった。体が床と45度ほど傾いたところで、止まったのだ。

 早苗の腹あたりには1本の細い腕が伸びていた。

 

「………………」

「あっぶないなもう……靴下脱ぎっぱなしにしないでよね。まぁ片付けない僕も悪いか……」

「あ、ありがとう梁くん……」

 

 顔を真っ赤にした早苗は梁を見ながら礼を言った。先程まで料理をしていたのに、ここまで素早く来れるとは鈴仙と霊夢も思わなかった。

 

「……さすがね、身のこなしも軽くなったじゃない」

 

 霊夢は机に肘をつきながら、梁を褒める。梁は照れくさそうに「ありがとうございます」と感謝した。

 一方の鈴仙はずっと梁を見つめたままだった。それを不思議に思った霊夢は気になって問うことにした。

 

「? ……鈴仙? どうしたのよ?」

「へっ? あ、いえいえ、なんでも」

 

 突然声をかけられて焦る鈴仙。微かに頬が赤くなっているのを、霊夢は見逃さなかった。ニヤッと笑って、察したような口ぶりで鈴仙を茶化す。

 

「ほうほぅ……梁はモテるのねぇ……」

「ちょ、霊夢さん!? 何を!?」

「いーえ? なんでもないわよ?」

「急になんなんですか……」

「鈴仙が最近守矢神社に顔を出す理由がようやく分かったわ」

「そ、それは……」

「いいのよ? 別にどうこう言うつもりは無いわ」

 

 鈴仙は恥ずかしそうに下を向く。まだあまり自覚していない気持ちをズバズバと霊夢に言われて羞恥心があったからだ。

 

「………………それにしても、あそこにいる緑の女はどうすればいいのかしら…………」

 

 霊夢は呆れたように、早苗を見る。顔から湯気が出そうなくらい紅潮させて、両手で顔を塞ぎ、体をクネクネさせている早苗がいた。

 

「キモイわね……」

「キモイですね……」

 

 二人はそんな早苗を見て少し……いや、かなり引いていた。

 

「あああんもう、梁くんイケメンすぎるぅ……」

 

 梁に聞こえない程度の小声で何か嘆いていた。確かに梁の素早い対応には二人も驚いたが、悶絶するほどの事だろうかと不思議に思っていた。

 

「姉さん、椅子をふたつ持ってきて欲しいんだけど」

「うぅぅぅ……」

「姉さん?」

「あー、梁。早苗は今使い物にならないから私たちがやるわ、どこにあるの?」

「えと、そこの物置に…………すみません」

「いいのよ、あなたの苦労が身に染みたから」

「?」

 

 訳が分からないまま、梁は最後の仕上げをしていた。今日は客が二人いるのでいつもよりも腕を奮った。

 そして、午後7時半、ご飯が出来上がる頃、神奈子と諏訪子もちょうど帰宅してきた。

 

「おっ、今日は一段と美味そうじゃないか」

「んねー、早苗がなんかキラキラ輝いてるのが気になるけど…………」

 

 諏訪子の隣で鼻歌を歌いながらニヤニヤしている早苗が気になって仕方なかったみたいだ。神奈子はそれを無視して、合掌する。

 

「では、いただきます」

 

 個々で合掌してから、箸に手をつけ、唐揚げに手を出した。諏訪子は大きく口を開けて食べ、霊夢や鈴仙は「フーフー」と息を吹きかけてからゆっくり食べる。

 

「うんまいわね……」

「ええ……丁寧な味付け……」

「少しいい鶏肉を使ったので…」

「そんな大した客じゃないのに」

「いいんですよ、お二人にはいつもお世話になっていますし」

 

 ニコリと笑う梁を見て、二人は少しグッと感動したような表情になる。

 

(不覚にも可愛いと思ってしまった私も、早苗や鈴仙と同類なのかしら……)

(はうう……梁さんはやっぱりいい子なんだなぁ……)

「? どうしました?」

「なんでもないわ。きっと梁は将来の嫁をダメにしてしまいそうね……」

「え、ええ……」

 

 霊夢の発言に梁は少し残念そうな顔をする。唐揚げはわずか15分程で全てなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「美味しかったわ、ご馳走様。また来るわね」

「ありがとうございました。また永遠亭でご馳走をご用意させていただきます」

 

 マフラーを着けた霊夢と鈴仙は一礼してから飛んで守矢神社を後にした。

 時刻は午後9時。あの後たくさんの雑談をして盛り上がったのだ。あと片付けをした後、梁は後風呂に入るだけだった。現在は諏訪子が入浴しているので、上がるのを縁側に座って待っていた。

 

「綺麗な星……」

 

 見上げると、たくさんの星々が数え切れないほど、不規則に並んでいた。明かりが少ない妖怪の山はその分多くの星が見える。

 

「梁くん、お風呂待ち?」

「あ、うん」

 

 先に風呂に入った早苗がバスタオルで頭を拭きながら顔を出した。濡れた髪のまま、梁の隣に座る。

 

「姉さん、こんなところ来たらまた風邪引いちゃうよ」

「だいじょーぶ」

「何を根拠に……」

 

 呆れた表情で見る梁の顔を見ていた早苗はニコリと笑う。

 

「ね、もうすぐクリスマスだね」

「クリスマスって……西洋の文化なんか取り入れるの……」

「毎年人里は盛り上がるんだよ?」

「知ってるけどさ……」

 

 そうして、梁は去年の人里でのクリスマス祭りを思い出す。

 姉と手を繋いで、笑いながら梁を連れていってくれた。「あれ買いたい、これ買いたい」といくらわがままを言っても「はいはい」と言って許してくれた。

 

「…………」

「今年は私と行こ?」

「……姉さん……」

 

 梁の悲しげな表情から察したのか、「今年は」と含みを込めた誘いをする。

 

「………分かった」

「ふふっ、やったぁ、梁くんとデートっ」

 

 にっこりと笑った早苗の顔を見て、梁の悲しさは少し和らいだ気がする。

 今の僕の姉は姉さんなんだ。今の家族はこの人なんだ。そう思えるようになってきた。

 

「今から楽しみだね、何買おっかな……」

「……だね」

 

 気持ちが落ち着いた梁はもう一度星を見上げた。

 その時、梁の左手は早苗の細い手の上にそっと乗せていた。

最終的には?

  • 早苗さんと幸せルート
  • 梁くん独り立ちルート
  • 早苗さんとイチャイチャルート
  • もしかしたら鈴仙と幸せルート
  • 諏訪子、もしくは霊夢と幸せルート
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