OVERLOAD 人類最終試練(凍結)   作:嵐川隼人

11 / 17
投稿が遅れてしまい、本当に申し訳ございませんでした!

まさか一か月も更新が遅れるとは思ってもいませんでした………


不慮の事故?

「…………って感じで僕は彼女と追いかけっこを始めたって訳」

 

「ふーん………」

 

 顔がトマトのように真っ赤に染まっているアズリエルの隣で、シンから事の顛末を聞く。

 

 

 

 

 話は数分前に遡る。

 

 俺が率いる部隊<ヴァルプルギス>の一人、シン・シルエスカ・ヴァーミリオンが俺の部屋で待機しているという説明をアルベドから聞いた俺は、すぐさま指輪で自分の部屋に転移した。

 

「アズリエル、大丈ぶほぁ⁈」

 

 アズリエルが無事かどうか確認しようとした瞬間、いきなりこちらにアズリエルが飛んできて、そのままぶっ倒れた。

 

「いてて…………ん?」

 

 起き上がろうとした時、右手で何かを掴んだ。何だろうと思って手を動かすと、やや大きめのマシュマロみたいだった。

 

「ぁ……………ぁ…………………」

 

 覆いかぶさるように倒れ込むアズリエルの顔がみるみる紅潮していく。口がわなわなと震え始め、今にも爆発しそうな勢いだ。

 アズリエルは顔を真っ赤にして後退りする様に俺から離れる。するとその様子を見ていたシンがニヤニヤした表情で、

 

「大胆なスキンシップだね、(あるじ)君」

 

「大胆?」

 

 そこで俺はハッとなった。えっ、ちょっと待って、てことはさっきの感触ってまさか………

 

「………………スーテーアー?

 

「っ⁈」

 

 突然響く、殺気のこもった冷たい声。

 ゆっくり視線を向けると、赤面状態で拳をボキボキと鳴らすアズリエルがそこに立っていた。

 彼女の後ろから、ゴゴゴという音が鳴っている気がした。

 

「えっと………その……………すいませんでした」

 

 そう言った途端、俺は彼女から人間離れした威力のアッパーカットを顎に喰らい、宙を舞った。見事な一撃だったのを覚えている。

 

 

 

 

 以上のことがあり、現在に至る訳だ。正直、アッパーで済んで良かったと思ってる。

 それにしても、アズリエルって結構胸あったんだな。服のせいで全然分からなかった。着痩せするタイプか?

 

「えっと、アズリエルさん?まだ、怒っています?」

 

「別に」

 

 いやいや、右手で拳を作りながら言われても説得力ないから、とは敢えて言わないことにしておく。もし言えば、もう一発拳が飛んでくるに違いない。

 その様子を見て、目の前にいる薄紫髪の少女は腹を抱えて笑っている。

 

「アハハ、主君は本当に面白いね」

 

「シン……………笑いすぎだ」

 

 シン・シルエスカ・ヴァーミリオン。 

 

 【失われる世界(ロストワールド)】の領域守護部隊<ヴァルプルギス>の幹部で、人狼(ワーウルフ)の最強種狼王(マーナガルム)を取得している、俺の最初のNPCだ。

 俺のNPCとは言っても、俺が作った訳ではない。元々彼女は、異形種最強職“人類最終試練(ラスト・エンブリオ)”を取得ためのイベントクエストで登場したボスだった。

 

 そのイベントが開催されたのは、ユグドラシルのサービスが始まって5周年を迎えた時だ。

 

 運営はその記念として、ユグドラシルにおける全ての頂点というコンセプトで作った三種のチート職業をイベント攻略者に配布するという大規模イベントを催した。その中でも“人類最終試練(ラスト・エンブリオ)”はユグドラシルで唯一“種族と職業の両方の性能を持つ特殊な()()”で、運営自身が公式で“規格外の職業”と掲示するほどのチート能力を持っていた。紹介映像に至っては、コメント欄に『何コレ、チートすぎるwww』『ワールドアイテム涙目』『ゲームバランス、ガン無視』といった表記が多数存在していた。

 

 参加条件は無し、誰でも参加可能。つまり、誰もが手に入れるチャンスがあるということ。更に相手はたった一人の人類最終試練(ラスト・エンブリオ)持ちボスモンスターのみ。

 言うまでもなく、この規格外な職業を手に入れようと、数多くの異形種プレイヤーが熱を入れて挑戦した。

 

 結論から言えば、挑戦者は全員惨敗した。記念すべき最初の挑戦をしたのは、平均レベル50の四人パーティで、巷では少々名をあげていたらしい。しかし開始から5分、HPの5分の1も削れないうちに全員がやられたという。

 

 流石にレベル50は低すぎたかと考えられ、今度は平均レベル80の6人パーティが挑戦した。が、これも完敗、ダメージすら与えられなかったらしい。

 その後も高レベルプレイヤー達が次々に挑戦し、ついにはレベル100クラスの有名ギルドのメンバー30名が挑戦するということもあったが、全員攻撃する暇すら与えられずに敗北していったという。挑戦したプレイヤーたちが全員絶望したのは、予想できるだろう。

 最終的にそのイベントは、『運営が作った攻略不可のクエスト』と言われ、挑戦するものが激減していった。

 

 それから一年が経ち、イベントの最終日となったその日のことだ。実はその日が、俺にとって初めてのユグドラシルだった。種族は天使、職業は戦士(ファイター)という至って普通の組み合わせだ。

 最初はチュートリアルに従い操作方法を学んだ。チュートリアルが終わると、俺は早速何かのクエストを攻略したいと思った。が、流石はユグドラシルと言うべきか、ほとんどが高難度のクエストで、俺ではとても攻略できそうにないと感じた。

 その時だ、スクロールを勢いよく下まで移動させると、一番下の欄に“亜人種限定、レベル無制限”と書かれたクエストに目が行った。おっ、これ良さそうだな、と思った俺は、そのクエストに挑戦することにした。それが、あの攻略不可とされたイベントクエストだ。

 

 ちなみにイベントに参加したプレイヤーは全員50以上の高レベルプレイヤーで、レベルたったの2(天使1+戦士(ファイター)1)で挑戦したプレイヤーは俺だけだった。当たり前だ、最初に平均レベル50の4人組パーティがイベントを攻略できなかった時点でそれ以下のレベルのプレイヤーが参加する訳がない。失敗するに決まっている、と皆考えるからだ。

 

 が、そんなことも知らない俺は、初期装備のまま彼女に挑戦した。すると、ありえない現象が起こった。

 レベル100クラスのギルドが全力を持ってしても傷一つ付けれなかった彼女に、なんと俺の攻撃が当たったのだ。しかもその一撃だけで、彼女のHPを4分の1も削った。今まで挑戦してきたプレイヤー達から見れば、バグが起きたかチートを使ったとしか思えないようなことだろう。

 

 だが運営によると、それはイベントを開始した初期から存在した仕様であってバグでもチートでもない、むしろ正攻法だ、という。その仕様というのが、人類最終試練(ラスト・エンブリオ)が規格外な強さを持つ理由となった特殊なスキルが関係しているのだが………まぁ、それは今回置いておこう。

 

 そんなこんなで俺はイベントで彼女を倒し、晴れてチート職業兼種族“人類最終試練(ラスト・エンブリオ)”を取得した訳だ。すると突然彼女が立ち上がり、

 

『まさか君みたいなルーキーに人類最終試練(ラスト・エンブリオ)の座を取られるなんて思ってもなかった。強いんだね、君は。

 …………よし、決めた。今日から君について行くことにするよ。君と一緒なら、もっと強くなれる気がするんだ』

 

 と、イベント会話が発生したかと思えばすぐに、

 

『NPCが仲間になりました!』

 

 という強制スクロールが発生し、なんと元ボスモンスターである彼女が俺のNPCとして共に行動することになった。ちなみにレベルは俺と同じ2(人狼(ワーウルフ)1+軽戦士(フェンサー)1)。

 実はこれ、運営が作成した裏イベントを、俺が偶然にも発見してしまったのだ。そのイベントの発生方法が、

 

 

『合計レベル10未満のプレイヤーが、初期装備のまま一人で攻略すると、ビギナーズボーナスとして限定NPCが配布される』

 

 

 こんなの、誰がわかるか⁈

 レベル50のパーティが失敗した時点で、たったレベル10未満のプレイヤーがソロで挑戦するとか考えられないだろ⁈

 

 と、一瞬思ったが、よく考えると、悪いのはプレイヤーである俺達だ。初めに50で挑戦したのが間違いだった。もっと低いレベルで参加すれば気付けたかもしれない。

 

 まあ、そういうわけで俺はユグドラシル初ログインから数時間足らずでチート職を手に入れた挙句、ボスモンスターを仲間にしてしまったというわけだ。そのボスモンスターが、シン・シルエスカ・ヴァーミリオンだ。

 

「いやー、それにしても見事なアッパーカットだったね、アズリエルさん。喧嘩とか慣れてるの?」

 

「喧嘩はしたことないわ。漆黒聖典の隊長さんと初めて会った時、ボコボコにしたことはあったけれど」

 

「初対面の相手をボコるって、一体何があったらそうなるんだ……」

 

「何って…………だってあの人、私と会って早々、『俺一人で漆黒聖典だ!』なんて大声で堂々と言ってきたのよ?しかも私を見下すような表情で。あまりにもムカついたから、すぐボコボコにしてやって、馬の小便で顔を洗わせたりして、彼のプライドをズタズタにしてやったわ」

 

「……………さらりとえげつないな、アズリエル」

 

「ち、ちなみに、その人はどうなったの?」

 

「『俺はゴミだ』とか思い始めて暫く鬱になった後、私に敬語で話しかけてくるぐらい()()()な性格に変わってたわ」

 

「「うわぁ…………」」

 

 過去を思い出し、フフフと不気味に笑いだすアズリエル。

 漆黒聖典の隊長さん(会ったことないけど)に同情したい気持ちになった。

 

「あ、アハハ……思ったより、ナザリックに早く馴染めそうだね、主君」

 

「そ、そうだな、ハハ、ハ」

 

 思わず俺達は苦笑いする。

 どうやら俺は、相当ヤバい人間を気に入ってしまったみたいだ。

 

「コ、コホン。ところでシン、君はどうやって俺が今日ナザリックに帰ってくることを知ったんだ?話によれば、アルベドはまだ君に俺のことを話していなかったらしいけど」

 

「あぁ、それ、エリナとミーティアから聞いたんだ。主君達が帰ってくる少し前ぐらいに、二人が嬉しそうな顔で人間を真実の部屋に持って行っていくのが見えてさ、気になって何かあったのか聞いてみたんだ。そうしたら二人とも、主君が今日ナザリックに帰ってくるって笑顔で話してくれてね、それで知った」

 

「成程な。ちなみに他に知ってるのは?」

 

「ヴァルプルギスの幹部全員には話してるみたい。ミーティア曰く、主君のために宴を準備してるって」

 

「俺のために宴を?マジで?」

 

「うん。あ、でも今は行っちゃだめだよ。主君はこの後、玉座の間に行って階層守護者達に状況を話すんでしょ?」

 

「うぐっ…………そうだった、忘れてた」

 

 今の今まですっかり忘れていた。

 そうだ、確かこの後玉座の間に行って、階層守護者達に会いに行くんだった。

 すると丁度タイミングよくアインズさんから伝言(メッセージ)が送られてきた。

 

「もしもし、アインズさん?」

 

『ステアーさん、そっちは大丈夫なんですか?』

 

「あ、はい。問題ありません。アインズさんの方は?」

 

『そうですか………こちらも大丈夫です。ちょうど今、俺が名前を変えたことと、ステアーさんが帰ってきていることを伝えたところです』

 

「わかりました。では今からそちらに向かいます」

 

『了解しました』

 

 そういうと、アインズさんは伝言(メッセージ)を切った。

 

「さて、と。じゃあ行くか。アズリエルも一緒に来てくれ」

 

「えぇ、わかったわ」

 

「僕も一緒に行ってもいいかな?一応ヴァルプルギスの代表としてモモンガ様……いや、アインズ様に一度挨拶するべきだと思って」

 

「あぁ、勿論構わない。それじゃあ二人とも、転移するから俺の腕を掴んで」

 

 翼を大きく広げ、掴みやすい態勢をとると、シンは左腕に、アズリエルは右腕に掴まった。

 そして俺は指輪“リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”を使い、守護者達が待つ玉座の間に向かった。




次回の投稿は、来月になるかもしれません。



話は変わりますが、UAが15,000を超えました。
いつも読んでくださる方、本当にありがとうございます。

まだまだ未熟な私ですが、これからもよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。